あれから一年の月日が経った。日本中流浪していたが、夜になるにつれ鬼に狙われては倒したりの繰り返しだ。
稀血、稀血と叫びながら襲いかかって来て、稀血について聞こうにも聞いてくれない。結局稀血がなんなのかここまで分からずじまいだ。
鬼狩りについて聞こうにも鬼も俺がそいつらの仲間だと勘違いされるのが殆どだ。
それと、風や動いた際に左前髪が揺れ、写輪眼が露わになり、眼を見た途端、鬼は“赤の閃光”と言って俺を恐れていた。
人に害をなす鬼は即斬り伏せた。
「ハァァァっ!」
『ウオラァァァッ!』
ある空間の中で紫色の巨大な鎧武者と、赤と黄色が混ざり黒の線がある一匹の巨大な狐が対峙していた。
鎧武者は剣を振るい、狐は尻尾で受け流し、その衝撃で余波が広がる。
「ふっ!やるな九喇嘛!」
『フン!このワシを舐めるな…春翔』
現在二人は手合わせをしている。しかしただの手合わせではない。九喇嘛はチャクラ体のままで、春翔は完成体須佐能乎だ。
「じゃあ・・・これならどうだ!」
春翔は須佐能乎の手のひらにチャクラを乱回転ながら球状を形成し圧縮する。
それだけではなく巨大な手裏剣の形状が現れる。周辺に振動と風を切るような高音が発生する。
「風遁・超大玉螺旋手裏剣!」
春翔は九喇嘛に向けて投擲する。
『ケッ!ワシを甘く見るなよ…春翔ォ!』
九喇嘛は九本の尾を使い、螺旋手裏剣を弾く。
「やっぱりそう簡単にはいかないか」
『あたり前だ…お返しにコイツをくらいやがれ!』
高密度に圧縮された巨大な玉を形成する。
「っ!尾獣玉か!」
尾獣が使用する高密度に圧縮された技である。
尾獣チャクラには+の黒チャクラと-の白チャクラがありそれを8:2の割合で混ぜて球状に形態変化させ、チャクラを口から放つ。
春翔も九喇嘛とリンクした状態と九尾チャクラモードになっている間使用できる。
九喇嘛は尾獣玉を春翔に放つ。
「ッ……!」
一瞬で尾獣玉と自身を入れ替える。そして須佐能乎状態の春翔の背後は大爆発を起こす。
春翔が使用したのは輪廻写輪眼の固有瞳術の一つ
天手力
視野に入れた対象及び空間でないと発動できないという難点はあるが、一瞬で任意の空間を“入れ替える”ことが出来る時空間忍術だ。
『チッ!左眼の瞳術か…』
「はぁ、はぁ、まぁ…な、刀で受け流すのもよかったが…こっちの方が確実に回避は出来るからな」
春翔は息をあげながら答える。
神威を使おうにも、現実に飛んでしまう為、時空間では使わないことにしている。
すると限界を迎えたのか須佐能乎は突如と消え、春翔は落下していく。
『チッ…ったく、世話の焼ける奴だ。』
九喇嘛は落下する春翔を受け止める。
「はぁ、はぁ、ありがとう九喇嘛…助かった。」
『…フン、あの時より長く戦える様なったじゃねぇか……春翔』
「ははは…一日中戦った柱間さんやマダラさんと比べればまだまだだよ」
九喇嘛は春翔を降ろした後、春翔の中に戻ってゆく。
「フゥー、やっぱりお前と相手してるといい運動になるよ」
『ワシはお前のトレーニングマシーンじゃないんだぞ』
「分かってる。と言うかそんな事一言も言ってないだろ」
こんな感じで九喇嘛とはよく会話をしている。普段は眠っていることがよくあるが、俺にとっては大事な家族だ。
「さて…そろそろ時空間から出るか流石に朝からぶっ通しでお腹も空いて来たし、おそらく現実は夜の筈。」
春翔は神威を発動させ現実世界に戻る。
「よっと…、うん、夜だな……早速飯屋でも探すとするか」
人気のない場所に現れた春翔は周りを確認する。
現在俺は都会に来ている。現代とは違い、周りは昔ながらの文化が広がっていた。
「やっぱり歴史の教科書と写真で見るのとまったく違うな……この場所が後に俺の知ってる建物に変わっていくのか……しかし今の時代、観光名所も少ないもんだな」
各地を流浪して分かったが、未だ村もあり技術も発展もない街がたくさんあった。大正時代というだけあってまだ発展途上の様だ。未来に残っている建造物を幾つが見たが、それが時代につれ俺が生きていた時代まで発展するのが春翔には信じられなかった。
「やっぱり科学って凄いんだな」
春翔にはこの一言しか出なかった。
暫く飲食店を探していたがどこも人がいっぱいの状態で中々入れそうな店が見つからなかった。
「やっぱりどの時代でも人はいっぱいか……この時間帯は流石に席が空いてそうな店はなさそう…………えっ?」
辺りを見渡していた春翔は衝撃な物を見てしまった。
店舗は道に面しており、扉が無く、暖簾の奥に6人掛けのカウンター席があるだけというシンプルな構造——
そして暖簾には[ラーメン一楽]と書かれていた。
「な…なんで『NARUTO』に出た一楽のラーメンがこの世界に、しかも見た目もまんまじゃないか」
いきなり視界に入り、驚きを隠せなかった。
「ラーメン一楽」といえば、主人公であるうずまきナルトが幼少期からの行きつけの店だ。ナルトにとって思い出の場所でもある。
「と、取り敢えず入ってみるか…席は空いてそうだし」
春翔は一楽の暖簾を潜り店内に入る。
「らっしゃい!」
一人の店長らしき人が来店を歓迎する。
しかも店長はまんまテウチさんで、近くにいた女性は愛娘アヤメさんだった。
「おっ?坊主…見ねぇ顔だな、もしかしてここは初めてか?」
「あ、はい…初めてです。」
「そうかい、アヤメ!お客様一名来店だ!」
「はーい!」
春翔は席に座る。時代が時代でまだ回転する椅子ではなく木製の椅子だ。
周りに貼り付けられたメニューを見ると色々とあった。
「えっと、味噌ラーメンをお願いします」
「はいよ!」
テウチさんは手際良く調理を開始する。
「お冷やをどうぞ」
「あ…ありがとうございます」
水をアヤメさんから手渡され一気に飲み干す。
「君…一人なの?見た感じ、まだ子供みたいだけど」
アヤメさんが話しかけて来た。
「はい…一人です。年は十六で、今は日本を旅して回っています。」
「えっ!十六で日本を⁉︎凄いじゃない君!だからそんな格好していたのね」
アヤメさんは俺の格好を見て納得してくれた様子だった。
「まぁ…色々ありまして」
「いいなぁ…私も行ってないところに行ってみたいなぁ、けど…嫌な噂も立ってるから出歩こうにも出歩けないからなぁ」
「噂?」
「ええ…今は収まってはいるんだけど、夜になると、行方不明事件が何度も起こったことがあったの。でもそれが急になくなって落ち着いたのよ」
『こりぁ…確実に鬼共の仕業だな』
「(ああ…でも、収まったって事は、誰かが鬼を倒したって事だろ。今まで遭遇した鬼が言っていた“鬼狩り”って奴の仕業だろうな)」
九喇嘛が噂の正体を上げたが、事実その通りだろう。中には術を使う鬼に遭遇した事もある。最初はチャクラの概念が存在していると思ったが、鬼達は発動する前に血鬼術と言っていた。
チャクラとは違う術式なのは分かったが、春翔みたいに複数の術を使えるわけではなかった。
「君も旅の道中は気をつけてね。」
「わかりました…お気遣いありがとうございます」
「味噌ラーメンお待ち!」
テウチさんがラーメンをテーブルに置く。シンプルだがとても美味しそうなラーメンだった。
「いただきます」
割り箸を割り、麺を箸で掴み、麺をレンゲに入れスープを絡ませ口に運びすする。
「……美味い」
想像していた味より美味しい、なんだかナルトさんが毎日のように一楽のラーメンに通うのもわかる気がした。
「だろぉ…うめぇだろ。うちの自慢の味だ。」
店長のテウチさんが誇らしげにそう応じてくれた。確かに前世を含め、俺が今まで食べて来たラーメンの中で一番美味しいかもしれない。
「はい…今まで食べてきたラーメンの中で一番美味しいです!」
「おっ、嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか」
春翔はそのままラーメンを食べ、修行後の事もあり、ご飯も頼み結果九杯も平らげた。
「フゥー、ご馳走様でした。」
「凄い…結構食べたね、君」
「さて…行きますか、お代…ここに置いていきますね」
「おう、毎度あり!」
春翔は立ち上がりお金を払い店を出る。
「まさか一楽のラーメンをこの世界で食べることになるとはなぁ、また機会があれば寄るか」
春翔は再び街中を歩き回る。
夜だと言うのに、どこを見ても人だらけ…大正も未来の東京とはそこまで変わらない様だ。建物はかしこに並び和風と洋風が混ざった感じだ。
「やっぱりまだ木造やレンガを使った建物が多いな……災害が起きたらあの強度じゃあっという間に大惨事になるな」
春翔も前世では田舎生まれの都会育ちだった為、人混みに慣れており、すらすらと歩いてゆく。
『おい春翔…気付いているか?』
「(ああ……誰かにつけられてるな。この感じは……鬼か?しかし今までとは気配が少し違うな。なんというか……敵意を感じない)」
九喇嘛も気付いていた様だが、店を出た後からつけられていて、視線も感じる。
姿が見えないところを見ると術を使っているのは確かだった。
『どうするつもりだ…春翔』
「(人通りが無いところに誘い出す。それだけさ)」
春翔は尾行している相手に悟られない様歩く。
そして人通りのない場所に来たところで変化させた刀を元の姿に戻し構える。
「姿を現したらどうだ」
今周りに人はいない。今なら軽い術くらいなら使っても目立つ事はない。流石につけてる鬼も俺が気づいていることを察しただろう。
春翔は左手に青い雷を纏わせる。
「出て来ないのならば強硬手段をとる……どうする?」
殺意を込めて左手の雷を更に強くする。
「お話を聞いていただけないでしょうか」
誰もいなかった空間から突如女の人が姿を現した。女性は何やら札の様なものを持っていた。
「内容によるが、変なそぶりを見せれば容赦はしない(この女、何もない所から…これも血鬼術ってやつなのか、あの紙が術式になってるのか)」
「はい、それで構いません。確認をしたいのですが、あなたは“赤き閃光」で間違いないでしょうか?」
女性は両手を挙げて会話を続ける。
「おそらく俺だろう……やはりお前の耳にも入っているみたいだな」
この女性に敵意や害意というものは感じられない。嘘をついている様子はないが警戒は解かない。
「私は、鬼ではありますが、人を食べる必要はありません。私は鬼舞辻無惨と敵対している者です」
「鬼舞辻無惨が誰かは知らないけど、どうやら貴女は…話が通じる様だな」
春翔は女性の言葉を信じ、左手の雷を沈め、刀を鞘に納刀する。
「もしかして、あなたは鬼狩りではないのですか?」
「やっぱりそう言うんですね。生憎俺は、日本を流浪している旅人です。まぁ、少し変わった忍でもありますけど」
「そうでしたか……私の名は珠世。一度、私の拠点に来ませんか?」
「良いですよ、一先ずあなたを信じます。俺は波風春翔、珠世さんには色々聞きたい事もあるからな」
「わかりました。此方へ、案内します」
暫く珠世さんと同行した。辺りには住宅街があったが、それはフェイクで、通常では認知できないように隠された屋敷があった。屋敷を見ると珠世さんが持っていた札と同じ絵が書かれていた。
「(成る程、幻影タイプか。さっき珠世さんが使っていたのは人から視認できなくなる術の様だ。)」
屋敷内に入り案内されると薬品の臭いが漂ってきた。
「(薬品の匂い、医者をしていると言うだけはあるな…)」
春翔の嗅覚は『NARUTO』のカカシ並みに鋭い。写輪眼を頼んだ際、その特性も付与されているみたいだ。
「珠世様!人間を連れてくるとはどういう事ですか!」
屋敷にはもう一人、人が…いや、鬼がいた。
「あの…珠世さん、もしかしてこの人も」
「はい…私と同じ鬼です。彼も私と同じで人を食べる必要はありません」
珠世さんの話ではこの少年?も同様に人を食べない鬼らしい。
鬼は見た目によらず長生きしている者もいる為、実際年齢はわからない、中には百年生きた鬼とも遭遇した事もある。
「おい人間!貴様、珠世様に何軽い口を聞いているんだ!」
「よしなさい愈史郎、この方は他の鬼が噂していた赤き閃光、波風春翔さん、客人です。」
「……珠世様がそう仰るのなら」
愈史郎と呼ばれた鬼は見た感じ同い年に見えるが、先ほども言った通り、見た目で判断はできない。さっき案内されている時に聞いたが、珠世さんはなんと四百年も生きているといわれ驚きを隠せなかった。
だって珠世さん、凄い綺麗だったから……
「とりあえず、話をしたい。俺は二人に害を加えるつもりはない」
「そうですね。続きは別室で話しましょう。」
珠世さんの案内で応接の間へ向かう。
「楽にしてくださって構いませんよ。」
「ありがとうございます。早速質問なんですが、俺が今まで遭遇した鬼は人を食う事に執着しているが、あなた達はそれがない。それは何故ですか?」
「私たちは人を食らうことなく暮らしていけるようにしました。人の血を少量飲むだけで事足りる。不快に思われるかもしれませんが、金銭に余裕のない方から輸血と称して血を買っています。もちろん、彼らの体に支障が出ない量です」
その言葉を聞いて、春翔は一瞬吸血鬼がよぎってしまった。血を飲むだけで足りる時点でもはや吸血鬼に近い。
「愈史郎はもっと少量の血で足ります。この子は私が鬼にしました」
「え!?それは本当ですか?と言うか、鬼にしたって……」
「鬼舞辻以外は鬼を増やすことができないと言われていますが、二百年以上かかって鬼にできたのは、愈史郎ただ一人ですから…」
「あの、鬼舞辻とは誰なんですか?もしかして、俺が遭遇した鬼が言っていた“あのお方”に関係するんですか?」
「はい、関係しております。鬼舞辻無惨……千年以上前に、一番最初に鬼になった人喰い鬼の原種にして首魁。」
「鬼の首魁…」
「鬼舞辻の血は人間を鬼に変える事ができ、鬼にさらに血を与えると力が増強される。この能力を持つのは、鬼舞辻ただ一人。鬼舞辻は配下を誰も信用しておらず、もし奴に関する事を喋ったり、名前を口にしただけでも、その身が滅び去ってしまう“呪い”が、配下全員にかけられています。私は鬼舞辻の呪いは外している為、呪い殺される事はありません。」
「そうですか…、鬼舞辻無惨、鬼の首魁の名前が分かっただけでもよかったです。二つ目の質問になりますけど、稀血ってなんですか?人食い鬼に遭遇するたび言われるのですが…」
鬼と遭遇するたびに言われた、稀血とは……。
「やはりそうでしたか…… 稀血とは、珍しい性質をもつ人間のことを言います。鬼が稀血の人間を捕食する事で普通の人間の五十から百人分を食べたことに相当する力を得られる。簡単に言えば、春翔さんは鬼に狙われやすい体質と言う事です。」
「成る程、そう言う事だったのか。」
「お前…まさか知らずにずっと旅をしていたのか?」
「知っていたら質問しませんよ……それと、最後の質問になりますけど、鬼狩りとは一体なんですか?」
「人喰い鬼を狩る力を有した剣士、そしてその剣士を支える者たちが集まった政府非公認の組織。鬼からは鬼狩りと言われているが、名称は鬼殺隊、文字通り、鬼を滅殺する為の組織だ。」
愈史郎は鬼狩り、鬼殺隊について説明した。
「(そう言えば…神様がそんなこと言っていたな)」
春翔は転生の際、神様の説明内容をふと思い出した。
「他に何か聞きたい事はありませんか?」
「いえ…充分です。ありがとうございます。色々と聞けて良かったです。それに…鬼であってもあなた達みたいな人がいて少し安心しました」
「人? 春翔さん、私たちは鬼ですが・・・」
「確かにあなた達は鬼です。でも心は人間だって事はわかります。」
「……お優しいのですね」
「本心を言ったまでです。」
「貴様!何珠世様を口説いている!珠世様が穢れるだろ!」
愈史郎さんは俺に殴りかかってくるが、難なく片腕で受け止めた。
「落ち着け九喇嘛…チャクラを荒立てるのはやめろ」
「ッ……⁉︎」
春翔の右眼は朱色に変化した。そして、愈史郎は春翔の背後に巨大な獣が自分を睨み付けているのを感じた。
愈史郎はその姿に冷や汗が止まらず、尻餅をつき息を荒立てていた。
「愈史郎⁉︎」
珠世が愈史郎に駆け寄る。愈史郎は顔色が悪く尋常ではないほど震えていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、お前……一体何者なんだ?なんでお前の中に九尾の狐が」
「俺の大事な家族さ。」
今の愈史郎は化け物を見る様な目で春翔を見つめていた。
愈史郎は口が悪く、珠世以外には冷たい態度をとってくるが悪いやつではないのは春翔には分かっていた。さっきの行為は珠世の為にやっていた事は拳から伝わっていた。
珠世さんと愈史郎さんにあの後、九喇嘛や術について説明した。その後、珠世さんからは十二鬼月と言う鬼舞辻直属の配下について説明され、強い鬼の血を回収してきて欲しいという依頼も受けた。どうやら鬼を人間に戻す血清を作るために使うみたいだ。
愈史郎は猛反対していたが、珠世の言葉だと素直に言うことを聞いた。
旅の目的が一つ出来た春翔であった。