鬼滅の人柱力   作:狼ルプス

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赤の閃光と上弦の月

珠世から依頼されて半年、鬼に遭遇するもどれも弱い部類の鬼な為中々十二鬼月にすら遭遇できていない。

噂になっているのなら相手側から来てもおかしくはないと思っていたが、おそらく取るに足らないと思われていると判断する。

 

 

そして春翔は現在、人気のない夜の町中を歩いていた。

 

「はぁ……珠世さんから依頼されて半年、十二鬼月にすら遭遇しない。俺って運がないのかな」

血清を作ろうにも鬼舞辻の血が濃くないと作り様がない為十二鬼月の血が必要であった。

 

「今気がついたけど、星がすごい綺麗に見える。電気がなかったらこんなにはっきり見えるんだ」

春翔は無意識に夜空を見上げ星空を眺める。春翔が過ごした時代とは違い、沢山の星が見える。

 

「それにしても、夜の町はすごい静かだな」

 

『なんだ…怖いのか?春翔』

 

「そうじゃない、静かな山や森を歩き慣れてるから……町中は新鮮に感じるんだよ」

春翔は夜は町中を歩く事は無く宿に泊まる、もしくは、森や山中だと木遁で家を作り野宿している事が多い。

 

春翔は基本、夜中の町を歩く事は滅多にない。

 

「と言うか九喇嘛、お前寝ていたんじゃなかったのか?」

 

『フン、いつまで経ってもブツブツブツブツ独り言が煩くてしょうがない。悪い癖だぜ?』

どうやら春翔は独り言をつづけていた為、九喇嘛の気に触ってしまったのだろう。

 

「(すまない、次からは気をつける)」

春翔はとりあえず九喇嘛に謝る。しかし九喇嘛がこの時間帯に起きているのは珍しい。

 

「(と言うかお前、俺の独り言で眠れないような奴じゃないだろ……今までなかったよな)」

 

『さぁな…だが、今日はやたらときな臭せぇんだよ』

 

「(きな臭い・・・か、お前の口からそんな言葉が出てくるとはな)」

春翔は神経を研ぎ澄ませ、いつでも対応できるよう辺りを警戒しながら町を歩く。

 

旅の際、別の町中や村などに鬼と遭遇した事はあったが、難なく倒す事はできた。しかし、中には鬼を神と崇める集落もあったり助けを求めた一人の村人に頼まれ、助けたつもりが罵倒されたりすることもあった。

助けを求めた村人はお礼を言ってくれたのがせめてもの救いだった。春翔は写輪眼を使い集落の人達の記憶を消したが、あまりいい気分ではなかった。

 

「(難しいよな、人間って)」

 

『フン……人間は単純じゃねえってことさ。誰しもお前みたいな善人ばっかだと思ったか?』

 

「(分かってるさ…そんな事)」

春翔は夜の町を歩き続けた。すると雲が開け、月明かりが照らしてくる。綺麗な満月が暗闇を照らす。

 

ガキィーン!

 

「なんだ……金属音?」

 

いきなりの金属音に春翔は立ち止まり気配を探る。

 

 

「(これは鬼の気配、しかも今まで感じた事がないくらい大きい。もう一つは…人か?まさか……)誰か戦っているのか!?」

春翔は鬼だけでは無く人の気配も感知出来た。探った様子だと戦闘が行われているのがわかった。

 

春翔は飛び上がり、音がした方へと屋根伝いに走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の外れにある広場……月明かりに照らされ、二人の影が浮かび上がる。

 

一人は虹色がかった瞳、そして眼球には「上弦弐」とあり、白橡色の髪を持つ特異な容姿の男で、もう一人は、長い髪に、蝶柄の羽織を着込み、頭の左右に蝶の髪飾りを付けた女だった。

 

 

「ケホッ!ケホッ!」

 

私は上弦の弐に傷一つ付ける事が出来ず地面に横たわっていた。

上弦の弐は今まで戦ってきた鬼とは別次元の強さを持っていた。鉄扇での攻撃に加えて氷系統の血鬼術使いだったみたいで、呼吸を使った時に血鬼術が肺に入り込んでしまったらしい。呼吸が使えなくなったようだ。

 

 

女は体中に傷を負い、吐血しており、満身創痍の状態だった。

 

男は笑みを浮かべ、ゆっくりと女に近寄って行く。

 

 

「辛いよね?けど大丈夫だよ、直ぐに俺が君を救済してあげるから!」

 

肺をやられ呼吸も使えなくなった少女は上弦の弐が殺しに来るのをただただ待っているしか無かった。

 

「(ああ、私……ここで死ぬんだ。あの子達を残して、しのぶを独りにして、せめて最後に…もう一度会いたかったなぁ)」

 

上弦の弐はそのまま私へと扇が迫ってくる。

 

 

「(みんな…大好きだよ)」

 

 

しかし

 

 

 

ヒュン!

 

突如と文字の書かれた小刀が私と鬼の間に飛んできて地面に突き刺さると同時に人が突如現れた。

 

「螺旋丸!」

 

「え?」

鬼は突然の事で反応できず、手にあった青い球体を相手にぶつけられた。鬼は螺旋状の傷を負いながら高速で吹っ飛ぶ。

 

「おい、死んでは無いだろうな?」

 

上弦の弐を吹き飛ばしたのは左眼を覆う長い前髪が特徴的な少年だった。

 

しかし風で髪が揺れると、左眼は普通の目とは違うと分かった。波紋のような模様で色は薄い紫色、勾玉模様が複数配置されていた。

 

少年は私に近づき容態を確認する。

 

「無事か?意識があったら返事をしてくれ」

 

「き、きみ…は?」

触れてる手は不思議と安心するくらい温かかった。

 

「良かった、意識はあるみたいだ。直ぐに傷を治す。ジッとしててくれ」

少年は手を巧みに動かし印を組み、両手を重ねると、黄緑色の光が手を覆う。

 

その手を私の傷口に添えると、痛みが和らぐ感覚がしてきた。

 

「なに、を…」

 

「今は何も言うな、お前…相当傷が深いんだ。無闇に喋ると……」

 

手に黄緑色の光が現れたと思ったら先程までの痛みが無くなったことに気がついた。

不思議な人だった。いきなり目の前に現れ上弦の鬼を吹っ飛ばした後、鬼が使う血鬼術のような力で私を治療してくれている。

 

「あり……がとう」

 

「…………どういたしまして」

 

彼は笑顔で言葉を返してくれた。

 

 

少女は安心した途端、切れるかの様に眠るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇春翔視点

 

 

「眠ったのか…」

少女の表情はとても安心した様な顔だった。春翔は医療忍術を続け傷を塞いでいく。

 

『春翔…気付いてるか』

 

「ああ…安心するのはまだ早いみたいだな」

春翔は医療忍術を中断して、眠っている少女を抱きかかえる。

 

「いやはや、驚いたよ。君、もしかして人間かい?俺たち鬼の血鬼術のような力を持ってるけど気配は間違いなく人間だよね?」

 

先程、螺旋丸で吹き飛ばされた鬼がこちらに向かってきていた。

 

「こっちも驚いたぞ…まさか螺旋丸をまともに喰らってもう再生しているとはな」

 

「確かに今のはかなり痛かったよ。それに君、鬼狩りじゃないよね?」

 

螺旋丸を食らった今までの鬼は再生は出来ず、動けなくなる個体が多かったが、今回の鬼は再生させて平然と歩いている。

 

『春翔…奴の目を見て見ろ』

 

「(目?)」

九喇嘛が鬼の目を見る様促すと、眼球には上弦弐と刻まれていた。

 

「お前…十二鬼月か?」

 

「ヘェー、ただの人間なのに俺達十二鬼月のこと知ってるんだ」

 

 

「医者をしてる鬼に聞いたからな、お前ら十二鬼月と鬼舞辻のことも」

 

「医者をしている鬼?ああ、あの逃れ者の鬼かぁ」

 

 

上弦の弐は顔を顰める。この様子だと珠世さんは邪魔者なのだろう。

 

今この少女を抱えた状態で印を組むのは難しい。

 

「(九喇嘛……行けるか?)」

 

『ケッ!誰にものを言っている?』

 

「(ふっ、愚問だったな)」

 

 

「それに、夜明けまで時間がないし。君を殺してその子を救済しないとね」

 

「救済だと?これの何処に……救済があるんだよ!」

 

春翔はここに来るまで、食い散らかされた遺体を見てきた。しかも殆どが女性だった。匂いからして目の前の鬼がやったことは直ぐに分かった。

 

そして今度は今抱えている少女ですら殺そうとしている。

 

救済と言う名の殺戮だ。

 

「俺に食べられることで皆救われる。老いることも悲しむことも苦しむこともなく、俺の中で永遠を生きられるんだ」

 

「何を言っても無駄みたいだな……クソ野郎」

 

上弦の弐は扇を取り出す。

 

「君一人、その子を抱えたままじゃまともに戦えないよね?」

 

──血鬼術・粉凍り──

 

凍らせた血を微細な霧状にし、扇子で扇ぎ、周囲に散布する。

 

春翔に霧状の氷が接近する中、春翔の左眼の輪廻眼は童磨を視野に入れ───

 

 

天手力!

 

 

春翔は輪廻写輪眼の瞳術で、春翔と童磨の立っていた場所を入れ替えた。

 

 

 

「ゴホッ!あれ……どうして俺がここに?」

童磨は自身の術の範囲に入り込み霧状の氷を吸い込んでしまい吐血する。

 

 

「(あいつの術、氷遁を使うのか。あの様子だと奴の術の範囲内で息は吸わないほうがいいな、とりあえずは)影分身の術」

 

鬼の術を分析した後、その隙に春翔は少女を抱えながらも、なんとか両手の人差し指と中指を交差させ印を組む。

 

隣にもう一人の春翔が現れる。

 

影分身は残像を作り出す分身の術と違い、もう一人の“実体"を作り出す。

 

実体である為、基本的に一撃でも攻撃を喰らうと解除される。また、本体が気絶・死亡することでも術が保てず解除される。

 

しかし熟練者であれば影分身もいくらかはダメージを受けても活動を続けられるが、本体に比べれば耐久力は遥かに低い。

 

 

 

「この子を時空間へ、治療の続きを頼む」

 

「ああ、任された」

 

分身春翔は少女を受け取り、神威を発動させ、時空間へ飛ぶ。

 

「これで気にせず戦えるな」

 

「可笑しいなぁ、なんで君がそこに?そこはさっき俺が立っていた場所だよね、それに…さっきもう一人君がいたよね?君、本当に人間かい?」

上弦の弐は何がなんだかわからない様子だった。

 

「自分の能力を話すとでも思うか?それよりどうだった、自分の術を喰らった気分は」

 

「自分の術でやられるのは新鮮な気分だよ。それに君の眼、思い出した。君はあのお方が言っていた赤き閃光だよね?」

童磨は、春翔の瞳を見て下っ端の鬼の間で恐れられる人物を思い出した。どうやら春翔の噂は鬼の首魁まで耳に入っていたみたいだ。

 

「だったら何だ」

 

「あのお方からも君の抹殺命令も出てるからね…それに、君一人じゃ俺は倒せないよ」

 

「ふっ、誰が一人だって?俺は一人じゃない」

 

全身が薄いオレンジ色に光り、髪の一部が2本の角のように逆立ち、衣服は襟に6つの勾玉模様がある丈の長い羽織を身に纏っている。

 

「俺と九喇嘛で……お前を倒す!」

 

春翔は九喇嘛とリンクし、尾獣化する。

 

 

「へぇー!君、身体を変化させることができるんだ!でも何だろう……やっぱり鬼とは違う何かを感じるね。さっき言ってた九喇嘛って奴が関係するのかな?」

 

「お前に話すと思うか?先に言っておく、お前はもう…俺の動きについて来れない」

 

「へぇー、大きく出たね。夜明けまで時間がないし。君をさっさと殺して退散しないとね」

 

 

───血鬼術・冬ざれ氷柱───

 

上方から巨大なつららを春翔に向けて多数落下させる。

 

 

「九喇嘛」

しかし春翔はそのまま動かず、九喇嘛のチャクラの尾を使い氷の氷柱を砕く。

 

「アッハハハ!すごいね君。今のは尻尾かな?全部壊すなんて思わなかったよ。」

 

「………」

 

「無視は酷いなぁ……血鬼術・散り蓮華」

 

扇子を振るうとともに砕けた花のような氷を発生させる。

 

 

「ハアッ!」

しかし春翔は動かず腕を振るい、氷を風圧で砕く。

 

「嘘でしょ!?」

童磨も動揺を隠せない様子だった。まさか腕を振るった風圧で氷を砕くとは予想もしていなかったのだろう。

 

「それだけか?悪いが日が昇る前にお前を倒させてもらう。」

 

春翔は足に力を込め視認できない速さで、一瞬にして上弦の弐に接近する。

 

「ハッ!」

春翔は腕に尾獣チャクラで変形させ童磨を腹部を殴る。

 

「ゴハッ!」

童磨は口から尋常ではない量の血を吐いた。

 

「吹っ飛べ!」

春翔は立て続けに童磨の顎を殴り空高く舞い上げる。

空に高く飛んだのを確認した春翔は建物の屋根に移動する。

 

 

 

「いくぜ九喇嘛!」

 

『オウ!』

九喇嘛のチャクラを使い手の平に尾獣玉を形成する。それに加えて風遁を更に詰め、中心に巨大な手裏剣状の風のチャクラを覆うと、周囲に凄まじい轟音と震動が響き渡る。

 

 

「こいつで終わりだクソ野郎!尾獣玉螺旋手裏剣!」

 

春翔は童磨に向けて投げ飛ばす。

 

しばらくして童磨に着弾したのか、爆発が発生。周囲は爆発により空が明るく照らす。

爆発が収まると爆風が来たが、辺りは強風に吹かれた程度で建物には問題ない。

 

 

「実戦で使ったのは初めてだが…相変わらずなんて威力だ。空中に放って正解だったな」

 

『それよりよかったのか?奴の血の回収をしないで倒しちまったぞ』

 

 

「………ああーっ⁉︎そうだったぁっ!ヤバイ!どうしよう⁉︎折角十二鬼月に遭遇したの完全に忘れてた!」

珠世からの依頼を完全にド忘れした春翔……おそらく童磨は跡形もなく消し去った為、体の一部も残っていない。

 

『とにかく落ち着け、さっき時空間に送った小娘はいいのか?』

 

「そうだった…あの女の子も容体も確認しないといけなかった。神威!」

春翔は神威を発動させ時空間へ飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

「おい俺!その子の様子は」

春翔は時空間に入った時、分身体の春翔が治療を終えていた状態だった。

 

「ああ…大丈夫だ。ひとまず危機は脱した。」

 

「そうか、お疲れ様、もう消えても大丈夫だ。ありがとう」

 

「ああ…それじゃあ後はよろしくな」

分身春翔は人差し指と中指を交差しそのまま消えた。消えた瞬間、分身がやっていた情報が頭の中に入ってきた

影分身は分身が消えた際にその経験と情報は本体に還元されるという効果もあり、危険な場所への偵察や相手の動きの分析などで使われることもある。

 

「よし…後はこの子を現実に連れ戻すだけだ」

春翔は少女を抱き抱え、現実に戻る準備をする

 

「……う、ぅん」

ふと少女が目を開けた。そして視線を動かし、九喇嘛とリンク状態の春翔を見つめる。

 

「君は……さっきの」

 

「起きたのか?寝起きですまないがじっとしててくれ、これから現実に戻る。神威!」

神威を発動させ、春翔は少女を抱えたまま現実に戻っていく。

 

 

 

現実に戻り、空に目を向けると朝日が昇ってくるのが分かった。

 

 

「朝か、ううっ……眩しいな」

春翔は九喇嘛とのリンクを解除し元の姿に戻る。

 

「あ…あの」

 

「ん、どうした?」

 

「その……助けてくれてありがとケホッケホッ」

 

「あまり無理して喋らないで。傷は治したけど、全部を治せたわけじゃないから」

 

「ふふっ、そうね。少し呼吸がし辛いわ。」

 

「おそらくさっきの鬼の術を吸ったんだろう。肺に何か影響を及ぼしているのは確かだな」

 

「姉さんっ!」

 

遠くから声が聞こえてきた。俺は少女を壁側におろす。おそらくこの少女は鬼殺隊の為、仲間が駆けつけたのだろう

 

「それじゃあ…俺はこれで」

 

「待って!君の名前……教えてくれないかしら」

 

「波風春翔、通りすがりの流浪人だ。付け加えると、少し変わった忍だ」

 

春翔は飛雷神の術を使い一瞬にして少女の目の前から消えた。

 

 

「波風春翔…」

 

 

 

 

 

その後少女はなんとか立ち上がり、近くにあった春翔の飛雷神の術式付きのクナイを見つけ大事そうに両手で胸元に抱えるのであった。

 

 

 

 

 

 

「また……会えるといいな、春翔くん」 

 

花の少女が赤の閃光への淡い恋心に気づくのは…まだ先のこと

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