【完結】シルヴァリオサーガRPG実況プレイ   作:ライアン

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作者のスタンス:高嶺の花を娶りたいなら自分も高みへ昇るための努力をしましょう
身分違いの恋を成就させたいならやっぱり相応に努力しないとね!


お兄ちゃんは許しますん!

 

 おはこんにちばんわ。今日も今日とて軍事帝国アドラー副総統であるタツヤお兄様のお話を続けていきたいと思います。現状アドラーは包囲網を敷いてきた周辺諸国を逆に返り討ちにして領土を拡大したり、賠償金をせしめたりで順調に国庫が潤っていき好景気に突入。そして増えた税収で以てインフラ整備や社会福祉に金を充てるという好循環のまさしく黄金時代のただ中にあります。

 なおその黄金時代の立役者の一人である副総統はエスペラントじゃなければ死んでいる量の仕事をこなしている模様。「君主とは国家第一の下僕である」な状況です。なお息子に家督を譲ったパッパは隠居生活をエンジョイして専ら芸術鑑賞だったりをマッマとエンジョイしている模様。うーんこの。お兄様が隠居出来るのは一体何時になるんだろうね?それはそうとそんなお兄様の働きもあってアドラーは順調に発展しております。ここからはしばらくイベントの発生もないのでキンクリです。ちなみにキンクリ中にシズルさんがついに懐妊して出産しました。双子の兄弟でしたのでとりあえず名前の方は兄を「ミチカツ」弟の方は「ヨリイチ」と名付けました。何の心配もいらぬ私たちはいつでも安心して自分の人生に幕を引けばよい。お兄様がそんな心境で引退できるのは多分20年は先の事でしょう。

 それはそれとしてヴェンデッタのおよそ1年前となったこのタイミングでイベントが発生です。軍事帝国アドラー副総統であるタツヤ・奏・アマツの妹にして奏家令嬢のナギサ・奏・アマツちゃんが15歳になり社交界デビューです。アマツの令嬢、気立ても良くて超絶美少女、そして現アドラー副総統が溺愛している妹となれば当然のように群がる野郎共が雲霞の如く現れる事に……なる前に会話イベントが発生します。

 

「あのねお兄様……お兄様に大切な話があるの」

 

 そんなわけで社交界デビューを目前にした愛しの妹が話しかけて来ました。傍にアヤさんが控えているのはいつもの事ですが、どういうわけだかホライゾン家の長男も一緒です。

 

「どうかお願いです、ナギサさんとの交際をお許し下さい!」

 

 そんなわけでホライゾン家の長男のアシュレイ君がこのタイミングで交際の許しを求めて来ました。何せナギサちゃんは副総統であるお兄様の妹、もう15歳になったとなればそれこそ然るべき家の人間との見合い話なんてのが持ち上がってもおかしくはありませんからね。それこそ国内のみならずアンタルヤの十氏族なり、カンタベリーのアマツなりといった家との縁談だってあり得ます。その手の政略結婚は上流階級の基本ですからね。そしてホライゾン家は世間一般で言えば十分に上流階級ではありますが、そうした最上流階級と比較してしまえばやはり一枚も二枚も劣ります。だからこそこうして奏家現当主であるお兄様に直談判に来たんでしょうね。

 さて此処ですが二つ返事でOKするゲロ甘兄貴ムーヴすることも可能ですが、ここはやはり年長者として若人の覚悟を推し量るべきでしょう。プレイヤーである僕らはアッシュがナギサちゃんの為なら特異点ダイヴするような男だと知っていますが、お兄様はまだそこまでの確証を得られていませんからね。兄として妹の相手を見定めるのは当然の事です。というわけで受けろアシュレイ、知力EXによるロジハラ一歩手前の正論責めを。高嶺の花を自分の物にしたいというのならばこの程度乗り越えてみせぇい!

 

「それは……確かに今の俺はナギサに釣り合っているとは決して言えないかもしれません!でも釣り合っているようになって見せます!だからどうかお願いです!」

 

 ほほん言うたやんけアシュレイ。吐いた唾は呑み込めんぞ。そういう事ならこの一年間、お前には奏家の婿になるものとしてみっちり諸々学んでもらうからのう。当然途中で投げ出すようなヘタレにうちの妹は任せられへんぞ?

 

「……覚悟しているつもりです。彼女の為なら、いいえ彼女と一緒ならきっと乗り越えられると」

 

「私からもお願いお兄様!私はアッシュが良いの!ううん、アッシュじゃないと嫌なの!」

 

「私からもどうかお願いいたしますタツヤ様。アッシュ様のナギサ様への想い、決して生半可な物ではないこと、お二人の傍にいた私もよく知るところです」

 

 とここで愛する妹と妹の従者からも援護射撃が飛んできました。しかしアヤさんは二人がむしろくっつかない方がワンチャンあると思うんですが、そういう風には考えずにこうやって主の為に援護する辺り本当に良い子ですね。こんな子が妹の傍に居てくれるというのなら兄としては安心というものです。まああんまり突っぱねって妹に嫌われたり、駆け落ちされても困るのでこの辺でとりあえずのOKを出して上げましょう。頑張りたまえよアシュレイ君。

 

「!?ありがとうございます!」

 

「ありがとう!お兄様大好き!」

 

 こらこらお礼を言うのは早いぞアシュレイ君に麗しの妹や、君達が結婚できるかはこれから一年の頑張りにかかっているのだからね。腑抜けた態度を見せるようだったらその時は妹の事は諦めて貰わないとならないのだからね。

 というわけでホライゾン家のアシュレイ君が奏家婿入りの為の修行期間に突入しました。これを見事乗り越えた暁にはホライゾン家は奏家に吸収合併です。両家の力関係的にそうなります。まあお兄様はアドラー副総統としての仕事が忙しいから、そっち方面はきっと妹夫婦に任せる事になるけどね。いくらお兄様がほぼほぼ万能の超人なおめぇどこの神祖だなスペックをしているとはいえ身体は一つしかない以上、やれることには限りがあります。ちなみにアッシュのスペックはプロジェクトスフィアが発動しないと軍人としては糞雑魚ですが、交渉能力とか調整能力とかそういう方面の能力は高めに設定されております。まあ「誰かと仲良くなるのが上手なとても優しい男の子」で商人の息子ですからね。そっちの方の適性は高かったのでしょう。本当にお前、なんでよりにもよって強欲竜団なんかに入っちゃったの。

 

 そんなわけで早いけど今回は此処まで。ご視聴ありがとうございました。

 

・・・

 

 私には兄がいる。「帝国の盾」「太陽神」「真の貴種(アマツ)」そんな風に呼ばれて讃えられている優しい兄が。

 私と兄の年齢は18も離れている。だからだろうか、私と兄は喧嘩というものをしたことがない。小さい頃から兄は私の我儘を嫌な顔一つする事無く聞いてくれた。

 とても忙しくしていて家には余りいなかったけど、それでもたまに時間が出来た時には私と遊んでくれる本当に本当に優しい兄だった。

 

「あのねお兄様……お兄様に大切な話があるの」

 

 だからだろう意を決して私たちの想いを打ち明けるという時、私は多分楽観していたんだと思う。優しい兄ならきっとアッシュと私の交際もこれまでのような快活の笑みを浮かべながら祝福してくれると。「水臭いな!もっと早くに言ってくれれば良かったというのに!!」なんて風に言ってくれると信じて疑っていなかったのだ。

 

「おや、ナギサにアヤ君、そしてアシュレイ君まで。今日は三人そろって一体何の用かな?」

 

 いつものように柔和な笑みを浮かべながら私たちを迎えた兄の表情はまるで太陽のように朗らかだった。そこには巷で謳われる鋼の英雄の盟友にしてアドラーの敵を焼き尽くす勇壮にして荘厳なりし“太陽神”等おらず、春の季節のお日様といった感じであった。

 

「どうかお願いです、ナギサさんとの交際をお許し下さい!」

 

 アッシュが緊張した様子で頭を下げて本題を告げる。私もアッシュに続いて兄へと頼み込む。そうすればきっと優しい兄の事だ、いつものように二つ返事で了承してくれるとそんな風に信じて。

 

「アシュレイ君、君はこの軍事帝国アドラー副総統タツヤ・奏・アマツの妹であるナギサ・奏・アマツを娶るという意味を理解して言っているのかね?」

 

 直後聞こえてきた声は今まで聞いた事のない位冷ややかな声であった。向けられる視線もいつもの春の日差しのような柔らかくて温かなものとは全く違うこちらをどこまでも冷静に推し量っているかのように冷ややかで。「怖い」---と、私は生まれて初めて兄に対してそんな感情を抱いた。

 

「君の実家であるホライゾン家は確かに長年当家との付き合いがあり相応の信頼をしている。ならばこそ君がナギサの友人となることを咎める事もしていなかった。だが交際し、将来を共にしたいというのならば話は全く別だ。こういう言い方は余り褒められた言い方ではないが、ホライゾンの家は取引相手としてならばいざ知らず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。商国ならば十氏族、聖教国ならば欅を筆頭としたアマツ、あるいは武の名門ヴェラチュール家、文の名門ザンブレイブ家といくらでも然るべき嫁ぎ先はあるだろう。そうした諸々を覆すだけのモノを君は何か持ち合わせているのかね、アシュレイ・ホライゾン君」

 

 冷ややかに伝えられた兄の言葉に私はどこか足元が消えるような感覚に襲われた。それは確かに覚悟して然るべきだったのだろう、何故ならば私は()()()の人間なのだから。どこか外国に嫁いで祖国との懸け橋となることも大事な役目だとそう侍従長であるアマンダには教えられた。自分たちが裕福な暮らしが出来るのは貴種(アマツ)としての責務を果たしてこそだと目の前にいる兄に教えられた。でも私はそれを真の意味では理解していなかった。何故ならば私は優しい両親と優しい兄に大切に大切に育てられていたから。きっと頼めば優しい兄は今までのように私の我儘を聞いてくれる事、それを信じて疑っていなかったのだ。

 

「お兄様、私はアッシュじゃないと」

 

「ナギサ、黙っていなさい。私は今、お前ではなく彼に話を聞いている」

 

 言いたいことはあった。私はアッシュじゃないと嫌なのだと。彼じゃなければ自分は幸せになれないのだとそう言いたかった。でもそれはあくまで私の我儘に過ぎない。今の兄はどこまでも冷徹に覚悟を問うているのだと理解してしまったから。

 

「……残念ながら今の俺にはタツヤさんを納得させるだけのものは提示出来ないでしょう。確かにうちの家は奏の家と釣り合っているとは決して言えませんし、俺自身まだまだ半人前の若造です。とてもじゃないですけどナギサと釣り合っているとは言えないと思います」

 

「ならば諦めるという事かね?」

 

「いいえ、生憎と俺の彼女への想いはそんな風にあっさりと諦められるものじゃないんです。だからお願いです、どうか俺にチャンスをくれませんか?」

 

「チャンス?」

 

「はい、今の俺が彼女に釣り合っていないというのなら釣り合えるようになって見せます。その猶予を与えて欲しいんです。一年間、俺が彼女を娶るに相応しいかどうか試験なりなんなりをしてください」

 

「なるほど、ではそれに不合格となった時は潔くナギサの事を諦めるという事かね?」

 

「いえ、その時は一緒に駆け落ちなりさせて貰うことになるかと思います。彼女がそんな俺に付いてきてくれるならですけど」

 

 何気なく告げられたアッシュの爆弾発言、それに兄は一瞬呆気にとられたかのような表情を浮かべた後()()()()()()()快笑を挙げて

 

「随分と大胆なことを言うなアシュレイ君!身内の前で堂々と駆け落ち宣言とは!そこは普通、潔くナギサの事は諦めるというところではないかね?」

 

「生憎潔く諦められるほど俺の彼女への想いは軽くないんです。例えそれが褒められた事じゃないとしても、それしか彼女と一緒になる術がないとなったらそうさせて頂きます。……彼女がそんな俺に付いて来てくれるならですけど」

 

「と、彼はこんな風に言っているがお前はどうするナギサ?もしもそうなった時はーーー彼と結ばれるには駆け落ちするしかないとなったら奏の家を、私や父上や母上を捨ててもアシュレイ君を選ぶかね?」

 

 そう聞かれたら私の答えは一つだった。

 

「ーーーはい、お兄様。その時は私はアッシュに付いていきます。私はアッシュじゃないと嫌だから。育てて貰った恩を忘れた恩知らずで、アマツとしての責務を捨てた恥知らずな行為だったとしても。それでも私は彼と一緒に生きて行きたいから」

 

「ちなみにその場合は私もお二人に付いていかせて頂きます。私が仕えているのは奏の家ではなくナギサ様ですので」

 

 たおやかに微笑みながら私の一番の友達(アヤ)が言ってくれた言葉。それが私にとっては涙が滲んでくる程に嬉しい。

 

「でも勿論、それは最終手段です。俺だって本当はそんなことはしたくないですし、愛する彼女にそんなことをさせたくありません。タツヤさんをはじめとする家族の人たちに祝福されながら一緒になりたいとそう願っています。だからどうかお願いです!俺にチャンスを下さい!」

 

「……私も何もただの意地悪でこのようなことを言っているのではない。生半可な男にナギサは任せられない。君はきっと地獄を見る事になる、君が本来受ける事のないはずだった妬みに恨み、あるいは打算に基づきすり寄ってくる魑魅魍魎ども。このタツヤ・奏・アマツの義弟になるとはそれらと否応なしに向き合わねばならなくなるという事だ。---それでも尚、君はナギサと一緒になりたいというのかね?」

 

「……覚悟しているつもりです。彼女の為なら、いいえ彼女と一緒ならきっと乗り越えられると」

 

 好きな男の子が此処まで言ってくれているのだ。ここで何も言わなかったらそれこそ女が廃るというものだろう。

 

「私からもお願いお兄様!私はアッシュが良いの!ううん、アッシュじゃないと嫌なの!」

 

「私からもどうかお願いいたしますタツヤ様。アッシュ様のナギサ様への想い、決して生半可な物ではないこと、お二人の傍にいた私もよく知るところです」

 

 アッシュと私だけでなくアヤもそれに続いてくれて三人揃って頭を下げる。私にとってはとても長く感じる沈黙が少しの間だけその場に流れて……

 

「うむ!良いだろう!その年でそこまで言えたのならば上等というもの!!君の提案を受け容れよう、アシュレイ君!!」

 

 そこにはいつもと変わらないーーーいいや、いつもより上機嫌な様子な兄の姿があった。その目にも声にも先ほどまでの冷たさはまるでなく、春の陽ざしのような温かさがそこには満ちていた。

 

「!?ありがとうございます!」

 

「ありがとう!お兄様大好き!」

 

 喜びと共に私は兄に抱き着く。そんな私の頭を兄は優しく撫でた後苦笑して

 

「こらこらお礼を言うのはまだ早いぞ。何せお前もアシュレイ君もこれからが本番なのだからな。お前もこれからは今までのように勉強や稽古をサボったりせずに真面目にやらないとならないぞ」

 

 告げられた言葉に私は一瞬言葉に詰まる。

 

「……アッシュと一緒になる為だもん。頑張る」

 

 そうだ大好きな男の子と一緒になるためならばその位何て事はない!……多分。

 

「そうかそうか、ならば二人とも頑張りたまえ!どこかの誰かの為ではなく自分と愛する人の為にな!それもまた立派な動機なのだから」

 

 ハッハッハとどこまでも快活に笑う兄の姿に私たちはホッと胸を撫で下ろして、次の日からとてもとても大変な日々が始まるのであった……

 




お兄様はなんだかんだで妹であるナギサちゃんを溺愛していてその幸福を祈っているので割とゲロ甘です。アマツという貴種で原作と違って没落していない以上、この二人が一緒になるというのならこういう話があって然るべきだなと思って入れました(お兄様の私人としての顔と公人としての顔の二面性みたいなのも描きたかった)

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