【完結】シルヴァリオサーガRPG実況プレイ   作:ライアン

36 / 69
ケラウノスの持つ力、それは次元破断


第38代総統
相似にして対極


 タツヤ・奏・アマツとギルベルト・ハーヴェス、両者の関係性は出会った頃から極めて良好であった。それは彼らが極めて近しい性質と方向性を持つ()()の関係性であったからだ。同年に士官学校へと入学を果たした彼らは同等と称して良い優れた才覚を有しており、さらには共にそんな才覚に驕る事無く努力を重ねる勤勉さを有していた。未だ若く対等の友人、切磋琢磨できる好敵手、そうしたものへの憧れを有していた両者は当然のように互いに興味を抱き交流を深めた。そうして胸襟を開いて互いの抱く想いを語り合えば、トドメとばかりに当時アドラーを支配していた血統主義に対する疑義までも共有していたとあっては両者が親友と呼べる関係性になるのは半ば必然というものであっただろう。

 彼らの抱く相手への敬意に偽りは何一つとして存在しない。胸の内を明かし合った時にたった一点相容れる事無く意見の違いこそ生じたものの、それもまたすぐさまにギルベルトの側がタツヤの側にこそ理があると認めた事で決定的な対立へとは至らなかったのだから。

 だがもしもギルベルトの側が理性を以て封じ込めたその己が真の望みを実現させんと動き出す時が訪れればその時こそが両雄が真の意味で激突を果たす時に他ならないだろう。そしてクリストファー・ヴァルゼライドという審判者の手綱を握っていた稀代の英雄の喪失はその時が現実のものとなった事もまた意味していた……

 

・・・ 

 

「さて奏総統閣下、私に対して折り入って話があるという事だったが」

 

 かつて魔星の祖たるカグツチが座していたセントラルの地下深く、決して邪魔が入らぬところで話をするためにと盟友に誘われるがままに付いてきたギルベルトは()()()()()()()()()()()己が上官となった盟友へと問いかける。

 

「今この場に居るのは俺とお前の二人だけ。タツヤで構わんぞ()()、敬語も不要だ。こんなところまで連れ出したのは他ならぬお前と二人きりで腹を割って話すつもりだからな」

 

 すなわちこれから行うのは軍事帝国アドラー第38代総統と第六東部制圧部隊隊長の会話ではなく、士官学校以来の盟友としての会話だと告げるタツヤの言葉にそっとギルベルトは微笑を零す。

 

「ではその言葉に素直に甘えさせて貰うとしよう、タツヤ。話というのは何かな?」

 

「直截に問う。先ほどの会議で伝えた俺の方針、君はどう思った」

 

 タツヤ・奏・アマツの明かした軍事帝国としてのアドラーを遠からず終わらせるという方針、それを伝えられた高官たちの反応は十人十色だった。ヴァネッサ・ヴィクトリアを筆頭に駐屯部隊を預かる者達は好意的な反応を示した。元より彼女たちはとかく勇み足になりがちな征圧部隊へのストッパー役となる事が多いし、併合した地域の治安の維持を受け持っている。戦いとはただ勝てば終わりではないという事が骨身に染みてわかっているだけに。

 一方当然ながら反発も相応に存在する。当然と言えば当然の反応だろう、覇権主義からの転換と言えば聞こえは良いが、それすなわち軍部にとっては権限や予算の縮小を意味するのだから。反発する者が出るのは必然と言える。当然会議は大いに紛糾したが、それでも流石は故ヴァルゼライド大総統が見出した傑物たちと称すべきだろう。新総統の語る内容に相応の理がある事がわかると感情的に納得しがたい想いを抱きながらも、一先ずは矛を降ろした。無論たった一度の議論で終わるほど国の体制を根本から変えていくというのは容易い物ではない。今後タツヤ・奏・アマツが語ったビジョンを実現させる為に多大な労苦を要する事は必然だ。

 だが、それでもタツヤはそれを成し遂げて見せるつもりだった。それこそが自身の務めであり、第二太陽を手中に収める事でアドラーを決して揺らぐことのない覇権国家にするという賭けに失敗した今、考えられる()()()()()であると思うが故に。そしてそんな未来を実現させるために避けては通れぬのが目前の親友であった。

 

「何かと思えばそれか。まあ()()()()()のではないかな」

 

 ギルベルト・ハーヴェスは傑物だ。彼は幼少の頃より在るべき世界とはどのようなものかを考え続けてそれを実現するべく努力し続けてきた。故に彼の持つ見識は決して軍事のみに留まるものではない。政治に交渉術などその能力は多岐に渡り、()()()()を除けばおおよそ欠点らしい欠点がない目が眩む程に優秀な男だ。故にタツヤ・奏・アマツの次善を目指す方針も当然のように理解している。そう、タツヤ・奏・アマツの目指す未来はギルベルト・ハーヴェスをして()()()を与える事が出来るものだ。目前の盟友を()()()()()していればこそ()()()()の事はやってのけるだろうと確信している。後世の歴史家(賢しらげな批評家共)などはさぞや高く評価し、賢君として惜しみない賞賛を浴びせる事だろうと。

 

「ギル、言ったはずだぞ。俺は腹を割って話すつもりだと、そのためにわざわざこうして()()()()()()を設けたのだとな。第38代総統として血染処女(バルゴ)隊長に意見を求めているのではない。士官学校時代からの対等の親友として本心で語り合おうと言っているんだ」

 

「……それが君の望みというのならば私もまた本音を告げるとしよう、我が友タツヤよ。君の方針は聊か以上に慎重すぎる。率直に言わせてもらえば余りにも()()をし過ぎだと感じている。()()()()更に素晴らしい未来を目指せるはずだ」

 

 そう、あくまで()()()だ。目前の親友ならば()()()()の事はやってのけるだろうと評価していればこそ、語られた未来にギルベルトの心を揺り動かすものはなかった。むしろ歯がゆささえ感じている。()()()()()()()という事を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事を、()()()()()()()()()()()の親友がアドラーの歴史上屈指の賢君等と()()()()()を善しとしてしまっている事が。

 

「エスペラント技術という優位が働いている内に得られるだけの戦果を獲得する。そしてその戦果を以て内外にヴァルゼライド閣下亡き後もアドラーが健在である事を示し、その上で獲得した国家戦略上重要ではないいくつかの領土を手放すのと引き換えにアンタルヤからは金銭を得て、アマツという君の血統とコネクションを活かしてカンタベリー仲介の元諸外国と講和を行い、アドラーを外征型の国家から内政型の国家へと生まれ変わらせる。確かにそれならばアドラーに千年の繁栄とは言わずとも数百年の繁栄を齎す事が出来るだろう。君にはそれを為しうるだけの才覚も器量もそして気概も備わっているのだから」

 

 絶賛と言ってなんら差し支えない言葉を友人に対して語りながらもギルベルトの様子に陶酔めいた色はまるで見られない。むしろ苛立ちさえ見せていた。

 

「ならばこそ私は理解できないのだよ、タツヤ。君ともあろう者がそんな程度を善しとしてしまう事が。そうだろう?そんな次善で良しとする理由がどこにある。目指すべきはどこまでも最善の未来。閣下より未来を託されたならばこそ、閣下に甘えるだけではいけないだろう。遺産はあくまで遺産、その遺産を元により善き世界を作っていく事こそが我々生者の務めというものだろう」

 

 熱を帯びる言葉と共にギルベルトの瞳に狂気的な光が宿り出す。かつて理想に対して折り合いをつけていた時代ならばいざ知らず、理想の絶対値と出会いその目と魂を焼き尽くされた光の亡者は決して妥協などしないのだから。

 

「閣下はその宿願を果たされる事無くこの世を去った。だがその死と引き換えに素晴らしい遺産を我々に残してくれたではないか!極晃星(スフィア)、我々の振るう星辰光が児戯とさえ思えるあの力はただ強力な兵器に留まる代物ではない。アレはおそらく世界の法則さえ塗り替えうる代物だ!」

 

 そう考えればつじつまが合うのだ。大破壊によって神国日本が消えた後の世界、すなわち新西暦に於いてアマツの血統を有する者に優れた才が発現するようになった理由が。血統主義への反感を抱いていたギルベルトだが、何もそれらを全否定しているわけではない。人間も生物である以上否応なしに遺伝というパラメータが誤差の範囲であるとはいえ、与える影響もしかと認識している。

 だがそれにしても単に遺伝と片付けるには新西暦に於いてアマツの者が発現する才能は余りにも多岐に渡り過ぎていたし発現する確率も高すぎた。極東黄金教の教えではそれこそがアマツの人間が神に選ばれた存在であることの証左だという事になるのだが、その手の理屈をギルベルトは鼻で笑った。そもそも真に大和が神の如き存在だというのならば、世界をこのような不完全な状態にするはずがないし、その神に選ばれた存在であるアマツの人間が腐敗する事とてないはずではないか。

 故にそれらは国を越えて新西暦に於いて貴種として君臨しているアマツに権威付けをする(媚びを売る)事で極東黄金教の布教を容易にするためのもの、そう認識していた。

 だがそうなれば必然的にある疑問へ行き着く、ならば何故新西暦に於いてアマツの人間は優れた才を発現させる確率が偶然と片付けられないレベルで多いのかという疑問へと。そしてその疑問の答えとなるのが極晃星(スフィア)の存在だった。すなわち空に輝く第二太陽、アレもまた極晃星(スフィア)なのだろう。そして旧日本国の人間の意志が反映されていると仮定すればギルベルトの抱いた疑問は氷解する。同じ国の人間を贔屓する感情というのは人類の多数が抱く凡そ普遍的な感情なのだから。

 無論現段階でこれらは状況証拠でしかなくなんら確証があるわけではない。だがしかしこの世界にはない極楽浄土(エリュシオン)を齎さんとする審判者にとってはそれだけで賭けるに値するものであった。何故ならば賭けに出る事無く堅実な手を打つのみで叶う程に彼の悲願は生易しいものではないのだから。

 

「そう出来るのだよタツヤ!かつて我々が望み共に語り合った真に公正な社会、いいや世界を築く事が!ならば、そのような妥協に甘んじる必要がどこにある?私はヴァルゼライド閣下には及ぶべくもない二流の凡俗だ。だが君とならばきっとそれが為せると信じている」

 

 

「良く理解したよギル、クリスの言う通りだった。結局俺があの時語った言葉はお前の心に何一つとして響いていなかったという事か」

 

 悲哀をその瞳に宿していたのはほんの一瞬、すぐさま心の内で燃え盛る決意の炎がそれらを焼き払う。

 

「ギル、俺はお前の望む未来に賛同出来ない。お前の作ろうとしている理想郷は民の過半を切り捨てるが故に」

 

 その瞳に宿った()()()()に確かな敬意を抱きながらもギルベルトは嘆息する。

 

「ああ、()()それか。残念でならんよ我が友。かつてならばいざ知らず、ヴァルゼライド閣下の事を良く知る君ならばこそ賛同してくれると信じていたというのに」

 

 期待していたのとは真逆の回答が来たことにギルベルトは心底落胆する。半ば予感していたとはいえそれでもギルベルトは心から望んでいたのだ。目前の親友と共に理想郷を築きあげる事を。

 

「だがまあこれも良い機会だったのかもしれない。思えば君とは幾度も手合わせこそしたが、真に()()()()()かを決めた事はなかった。私の奉じる世界と君が作ろうとしている世界、どちらが正しいか雌雄を決する時が来たという事だ」

 

 故にさあ君の輝きを私に見せてくれと心底から寿ぐギルベルトの言葉にタツヤは静かに嘆息して

 

「ああ、そうだなギル。友人が暴走しようとしている時は殴ってでも止めてやるのが真の友情だ」

 

 ()()()()()()()()()()()を今度は果たすのだと確かな決意を宿しながら抜剣。

 ここに英雄の崇拝者と後継者は激突するのであった。

 




特異点にいる閣下は多分全力でお兄様応援している。貸せるものならきっと自分のガンマレイ貸してやりたい位の心境。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。