【完結】シルヴァリオサーガRPG実況プレイ   作:ライアン

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ギルベルトのステータスについてですが
トリニティでのステータスはオリハルコン埋め込みによる発動値の上昇と
セイファートによって付属性と集束性が1ランクずつ上がったものと解釈しておりその二つを実施する前の現段階(ヴェンデッタ時点)では
基準値:B
発動値:A
集束性:B
拡散性:C
操縦性:C
付属性:B
維持性:A
干渉性:B
と解釈しております。

内容が内容だったので原作のギルベルトのセリフをそのまま引用している箇所がありますがご了承いただければと思います。



白夜の審判

 

 交わされるのはお手本じみた流麗な剣戟。振るわれる刃に、否、その一挙手一投足そして一呼吸に至るまで両者が為す行為に無意味なものは何一つとして存在しない。速度も膂力も人間の常識をはるかに上回っているがそれもそのはず。両者は共にアドラーが誇る人間兵器(エスペラント)、その中でも最上位に位置する完成度を誇る本物の怪物なのだから。

 単純な性能任せでも常人を容易く蹂躙できるだけの才能を生まれながらに有していた両者だが、無論この両名は生まれ持った性能に驕り、競争中に寝こける兎の如き可愛さ等欠片たりとも有していない。生まれ持った才能を優れた師の下で得難き好敵手と切磋琢磨しながら全霊で磨いてきたという秀才の生きた見本とでもいうべき存在、それこそがタツヤ・奏・アマツとギルベルト・ハーヴェスという傑物たちだ。未だどちらもその本領を発揮していない小手調べの段階だが、両者の実力は完全に拮抗していた。

 

「流石だよ、我が友。こうして剣を重ね合えばわかる、君がその境地に至る為にどれほどの()()を重ねて来たかという事が」

「手合わせする相手が相手だったからな。そうあっさりと負けては彼らに申し訳が立たんというものさ」

 

 そう、両者の戦いは現状完全に拮抗している。拮抗しているからこそ特筆すべきはギルベルトの方となるだろう。何故ならばタツヤ・奏・アマツは常日頃よりクリストファー・ヴァルゼライドとチトセ・朧・アマツという帝国内でも最上位に位置する実力者と剣を交わしてきたのだから。あらゆる分野に於いて上達の一番の近道は切磋琢磨できる好敵手、あるいは自分の上を行く実力者と手合わせをする事とされている。自分と同等、あるいは同等以上の実力者との対峙が集中力を高め、ただの自習ではたどり着けない境地にまで導くのだ。ならばこそその相手に恵まれたタツヤ・奏・アマツの技量はギルベルトを上回って然るべきだったのだがーーー

 

「だからこそ俺も敬意を抱かざるを得んよ、お前がそれ程の境地に至る為にどれほどの修練を重ねたのかーーーそれがわかるが故に」

「当然の事だろう?何せ()()()()()()()のだからな。不撓不屈の意志を以てすれば不可能なことなどこの世には無いと閣下に教えて頂いたのだ。才を磨く事を怠るなどという度し難い怠慢、許されるはずもない」

 

 こうして両者が拮抗している理由、それは偏にギルベルトの重ねた努力の量がタツヤを上回っているが故に他ならない。当然の事だがどれほど勤勉だろうと一日は24時間しかないのだ。ましてタツヤにしてもギルベルトにしてもアドラーに於いて高い地位を持つ要人である以上、自由に使える時間というのは限られている。そして家族を持つタツヤと違いギルベルトはタツヤが家族との団欒に割く時間をも自らを磨く時間へと宛ててきた。才能は互角、積み重ねた修練の質に於いてはタツヤが、量に於いてはギルベルトが、それぞれ上を行き総合すれば両者の実力は互角ーーーそれがこの拮抗状態の正体であった。

 

「そう、不屈の意志と弛まぬ努力を以てすれば越えられぬ壁など存在しない。人に限界などというものは存在せず、()()()無限の可能性をその身に宿している。わかるはずだ、あの方の輝きをその目で見続けてきた君ならばこそ」

 

 初めて我が理想を打ち明けた尊敬する我が友よ、他ならぬ()()()()()()わかって欲しいのだとギルベルトは説得を試みる。

 

「そうだな、そんな夢物語を体現した存在だからこそ俺はクリストファー・ヴァルゼライドに敵わないと痛感させられた。クリストファー・ヴァルゼライドは不世出の英雄だよ。だからこそそんな()()()()()を全体に当て嵌めるべきではないんだよ!」

 

 そんな言葉に裂帛の気合を以てタツヤ・奏・アマツは応じる。親友の語る理屈を現実に当て嵌めようとした場合にどうなるかを予見するが故に。

 

「アイツを規範とする事、それ自体は良いさ。当人は何かと自分を卑下していたがそれでもやはりアイツは素晴らしい英雄だった。スラム出身であった男が一代で軍事帝国の頂点たる総統にまで上り詰め、さらには祖国へと黄金時代を齎した。その英雄譚(サーガ)俺達(アマツ)の存在によって血統主義へと傾倒するこの世界に於いて生まれが不遇な者たちに勇気を与えるに足るものだ。時代を再び逆行させない為にも、クリストファー・ヴァルゼライドという男をアドラー国民の範とする事、それに関しては俺も異論はない」

 

 新西暦に於いてアマツという特定血統は才能が発現しやすい。これは単なる権威付けではない厳然たる事実だ。極東黄金教という大和を権威とする宗教が発足したのもそうしてアマツが各国の有力者となったが故の部分が大きい。ではそうして特定血統の人間だけが()からの寵愛(贔屓)を受け、宗教によって権威付けもされた結果何が起こったかと言えば、それこそがかつてアドラーを支配していた血統主義に他ならなかった。

 そして優れた才覚を有して高い能力を備えているからと言って人格もまたそれに比例しているとは限らない。血統主義は階級の固定化を招き、階級の固定化は統治への緊張感を奪い、やがて上流階級の目に映らない存在は無視されるようになっていくーーーそれがかつてのアドラーの腐敗の原因だ。朧や漣のように良い意味で貴種としての自覚を持ち続けられた家は完全な少数派であり、タツヤのような存在はそれこそある種の突然変異なのだ。秀でた能力を持っていたとしても、()()()()()()()()()()に頑張ろう等と思える大人物は極少数の稀少例であり、自分や自分の周囲さえよければそれでいいと思う小物こそが大多数の普通の人間である以上、それはある意味で当然の帰結と呼ぶべきものだろう。

 

「ああ、本当に凄い奴だったよクリスは。アイツと同じ境遇でアイツのようになれたか?と問われればとてもじゃないが肯定なんて出来ん」

 

 だからこそタツヤ・奏・アマツは心の底よりクリストファー・ヴァルゼライドという男を尊敬しているし評価している。スラム出身という不遇の生まれで、満足に他者の愛情を受けることも出来なかった立場でありながらも、国を愛し民を愛しその未来の為に己が全霊を以て戦い続けた英雄を。それは貴種(アマツ)である自分には決して出来ない事だったから。その雄姿と輝かしき英雄譚(サーガ)は生まれや育ちで以て人を判断する事の愚かしさを知らしめるに足るものだ。故にクリストファー・ヴァルゼライドという不世出の英傑を権威化する事で血統主義への歯止めとする事、これは既定事項だ。

 本人はさぞや渋い顔を浮かべるだろうが、()()()()()というのはそうやって政治に利用されるのが世の常というもの。すまないが諦めてくれ、自分も死んだ後はさぞや好き放題に言われる事になるだろうからーーー等とタツヤは心中で一足先に逝った友へと詫びながら、今を生きている親友へと想いをぶつける。

 

「だからいい加減に気づけよギル、誰もがアイツのように生きられるわけじゃないんだよ。アレは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()紡げた英雄譚なんだ。可能性が無限だったとしても、それを現実に出来る人間はほんの一握りの存在なんだよ」

 

 そしてこれまた当然の話だが英雄というのは希少な存在だからこそ英雄と讃えられるのだ。世の中に存在する大多数の凡人でもそれが為せるというのならば、それは偉業等と讃えられない。極々当たり前の普通の事だと言われて終わるだろう。故にそんな()()()を偶像とするのならばまだしも、全体に適用するのは狂気の沙汰としか言いようがないだろう。

 

「そしてそんなアイツでさえも最期は敗北した。アイツならば勝つと信じて止めようとしなかった結果が今の混乱だ。わかれよギル、唯一絶対の正解も無謬の存在も決してこの世には居ないんだ。不出来で不完全な存在こそが、俺もお前も、そしてアイツも含めた人間なんだよ」

 

 その事をどうかわかってくれとタツヤ・奏・アマツは必死にその想いをぶつけるが

 

「ああ、違うのだよタツヤ。君ともあろうものが何故わからない。そうした()()()()こそが怠惰な豚共をのさばらせてしまう原因だという事に」

 

 当然のように余りにも鮮烈過ぎる光にその目を焼かれた亡者に優しき陽光は届かない。

 

「目的は達成できなかったが出来る範囲で頑張ったから善しとするーーーそんな勝利と敗北を同列視するが如き尺度が横行するからこそ衆愚はそれに甘んじ真に勝利を目指そうとしない。その出来る範囲というのは一体誰が定めたものだ?怠惰な己自身が定めたものだよ。何故ならば不撓不屈の意志を以てすれば不可能なことなどこの世には存在しないのだから」

 

 意志の力の前には生まれも才能もこの世のありとあらゆるものは総じて誤差なのだとギルベルトは断ずる。何故ならばそれを体現した余りにもすさまじい実例を知っているが故に。

 

「そう、世の大多数はかつての私自身も含めて余りに不完全で不出来な者ばかりだ。だからこそ光は光で素晴らしい。その憧憬の方向を()()()()()としない限り、人の世は混迷に満ちたまま、自然に安楽という重力に引かれ堕落してしまうのだよ」

 

 何故君程の男がそれに気づかないのだともどかしさを覚えながらも、どうかそのことに気づいて欲しいとギルベルトもまた必死にその想いを尊敬する親友へとぶつける。

 

「清廉で、真っ直ぐで、常に前へと進む者がどうか肯定されて欲しい。どうか評価されて欲しい。お前は優れているのだとしっかり認められて欲しい」

 

 あの方や君のような素晴らしい存在こそが報われて讃えられるべきなのだと狂おしい情念を込めながら。

 

「だから完璧に公平な、一切の恣意が介入する余地のない人間の評価システムが欲しいのだよ」

 

 家柄が良いだけの存在、他者をだまして上手く成果をかすめ取った存在、報われるべき存在が報われず、裁きを受けるべき存在が見逃される、そんな不公正はあってはならないと我らはかつて共に語り合ったではないかと

 

「たとえば、早起きすればプラス何点、毎日欠かさなければ更に何点という風に……滑稽に聞こえるかもしれないが行住坐臥すべてが対象となるからには、当然こうした些事も含む。子供が当たり前にできることを大人ができないという不条理もままあるのが人間というものの奇妙さだからな。

 筋力や学力など能力に応じてプラス何点、生まれの環境と現在至った成果の差分を努力値として何点、夢を抱けば何点、それを諦めなければ何点……というように善き方向は加点され、一定に達すれば見合う報奨を得る。逆に、怠ければマイナス何点。仕事で手を抜けばさらに何点追加でマイナス。諦めたらマイナス何点……というように、悪しき行いには減点がありそれに伴う刑罰を受ける」

 

 語られるのは狂気の沙汰としか言いようがないおぞましき世界だ。そんな世界こそが素晴らしき理想郷ーーー極楽浄土(エリュシオン)に他ならないという、死後の審判に適用すべき考えを生者に適用せんと、光に焦がれる余りその慧眼を曇らせた審判者は粛々と語っていく。目前の親友ならばきっと理解し賛同してくれるはずだと祈りを込めながら

 

「誰に見られていなくとも、一人でいても、常にあらゆる行動が客観的に評価される森羅万象。平等に、誠実に、そのすべてにどれほど価値があるか相互に判ればはっきり証明できるだろう。どちらが上でどちらが下か。どちらの方が素晴らしく、どちらの方が醜悪か」

 

 お前たちのように恵まれた者達に自分たちの事はわからないと自らを高めようともせず、あまつさえそんな自分たちの方こそが普通でありお前達の方こそが異常なのだと言ってきた士官学院時代の数多の同輩達、軍に入隊後も散々に見てきた醜悪極まる怠惰な弱者の自己正当化、ギルベルトの頭に過るのはそんな心底侮蔑して止まなかった数多の落伍者達だ。

 

「光は光、闇は闇、英雄は英雄で屑は屑だ。決して誰にも言い訳できない。不正などさせはしないし許さない。優れた者に正当な評価が下されるように。塵は塵として、しっかり蔑まれて苦しむように。因果応報。それぞれに相応しい在り方をもたらしたいだけなのだ」

 

 かつてはそんな落伍者達を擁護する目前の親友の言葉に理があると認めた時もあった。才能に恵まれ、名家に生まれ、先天的に努力を好む素養を宿していた自分達が出来るようになれ出来ないのは怠けているだけだと言い放つ事は余りにも傲慢な事なのだと言う友の発言はギルベルトにとって認めるのも吝かではない理を含んでいたし、そう言える友の姿勢に敬服したことも決して嘘ではなかった。

 しかし、()()()()()()のだ。出来ない者は結局のところやろうとしていないだけだった。何故ならばそんな言葉を自分達に投げかけていた者達よりもはるかに不遇の身で有りながら、己が意志と努力で限界を突破していく英雄の雄姿がその目に焼き付いているのだから。その姿は生まれや育ちに先天的な才能差、そんなものは総じて誤差なのだと証明する生きた実例だったのだから。そんな素晴らしき存在を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()として扱う等それこそ人の持つ可能性と自由意志に対する甚だしい侮辱だろうと思うが故に。

 

「青臭く気恥ずかしい話だが、どうか笑わずに聞いてくれ我が友よ。私は真実、光を尊ぶ守護の盾に――“正義の味方”に成りたいのだ」

 

 かつて初めて共に理想を語り合ったあの日から自分の夢は何一つとして変わっていないのだと吐露された親友の本音、それを聞き終えた時タツヤ・奏・アマツの心に過ったもの、それは怒りでも哀しみでも嫌悪でもなかった。

 

「笑うものか、俺はそんなお前に救われたのだから」

 

 そう、タツヤ・奏・アマツが折れる事無く、怠惰に流される事無く進み続ける事が出来たのは間違いなく目前の親友のおかげだ。

 

「お前という親友が居たからこそ、俺は折れる事無く、己が心の理想を曲げる事無く自らを磨き続ける事が出来た」

 

 根っこの部分ですれ違っていたのかもしれない。それでも、アマツに生まれて両親も親類も皆血統主義者だったタツヤにとって同じ理想を抱いていると信じる事が出来る親友の存在、それがどれほどの救いとなった事か。

 

「そんな俺がお前の抱く祈りそれ自体を、否定出来ようはずもない」

 

 理解できる。共感できる。目前の親友が語る言葉が。出来ない者達に対して出来るようになれと叱咤したくなる気持ちが。何故ならばタツヤ・奏・アマツは生まれながらに()()()()であったが故に。

 

「ああ、ようやくわかってくれたのだな友よ」

 

 自分のような者が目前の親友が光の道を歩み続ける助けとなっていたという事実、そして自分の理想に理解を示してくれたことの喜びでギルベルトは破顔する。

 

「ならば―――」

 

「ならばこそ俺はお前を止めるぞ、ギル!」

 

 ギルベルトの語った根底にある想い、それがタツヤには理解出来る。共感も出来る。だが()()()()()()が故にそれに呑まれるわけにはいかないのだと、己が心を叱咤しながらタツヤは烈火の如き気勢と共に渾身の打ち込みを叩き込む。

 

「何故だ友よ、君は私の理想を理解してくれたのではないのか?互いの中にあった齟齬、それが埋まったのだろう?ならば、これ以上戦う必要がどこにある?共に手を携えて光を目指そうじゃないか」

 

 振るう剣にも動作にも一切の乱れは生じないままにギルベルトは問いかける。

 

「ああ、理解したさ。お前の根底にある願いと祈りは。頑張っている者こそが報われる世の中であって欲しいというその想い、それ自体は決して間違ってなんかいないさ。正しく在り続けようとする事は不自由でもどかしいものだ。正道を進み続けるという事はすなわち己を律して戒め続けなければならないという事だからな。正しく在ろうとすることが讃えられ、悪事に対しては相応の報いがある。社会にそうした()()()が無ければ人は容易に堕落してしまう―――俺の父と母がそうであったように」

 

 タツヤが愛する両親は公人としての責務を果たしているとは言い難い存在だった。だがそれは二人が殊更悪人だったというわけではない。積極的に他者の人生を弄ぶことに喜びを覚えるようなところも、使用人たちに対して殊更横暴に振舞うわけでもなかったと息子としての贔屓目抜きでタツヤは判断する。そう、二人は決して悪人ではなかった。ただ単に稀少例の側であった自分(息子)とは異なり、ただただ国や民といった、()()()()()()()()()()()()()()よりも自分達の視界に映る存在、同じ血を分けた親類を贔屓するだけの()()()()の人間だっただけなのだ。

 何故ならばかつてのアドラーに於いて、それは何ら非難に値するような事ではなかったから。むしろそんな中で正しき貴種足らんとしていた朧や漣の一族が同じアマツからどう扱われていたかを思えば、そうなる方が自然だったとさえ言えるだろう。そしてそんな正しき者、正しく在ろうとする者が疎まれ、馬鹿にされるような世の中であってはいけないという想い、それ自体は決して間違って等はいないはずだとタツヤは心の底より確信している。ならばこそ多くの血が流れる事を承知の上で自分達は戦ったのだから。

 

「だからこそお前が間違えてしまっているのは、それを()()()()で実現しようとしてしまっている事だよギル」

 

 鍔迫り合いの最中両者は互いに一歩も譲る気はないと言わんばかりに目前の親友(好敵手)を見据える。

 

「お前が作ろうとしているのは常に前を向いて進み続け事が出来る存在()()が評価される完璧()な世界だ。そんな世界に耐えられる人間が一体どれだけ居る?己が国に住まう民の過半数を切り捨てる所業、そんなものを善しとする事が()()()()()()堕落でなくて一体何だと言うんだ!」

 

 恣意が介在される事がない完璧な評価システム、そんなものが真に実現できるかという事、それは今回の問答に於いて問題ではない。

 何故ならば本来であればまずもって不可能なそれを実現し得る手段の当てが出来てしまったのだから。そして不撓不屈の意志を以てすれば不可能なことなどこの世にはないとギルベルトは強く信じているのだから。

 故に語るべきは現実問題としてそれが実現できるかどうかという点ではない。実現した果てに何があるのか、その未来を本当に善しとするのかどうかだ。

 

「ああ、どうしてわかってくれぬのだ我が友よ。切り捨てるのではない、私はただ誰もが胸を張り正道を歩める極楽浄土(エリュシオン)を作り上げようとしているだけだというのに」

 

 悲哀と共に剣を弾き、再び両者の間に無数の剣閃が交差し火花を散らす。

 

「確かに私が作り上げる世界に於いて脱落する者が()()()出る事は認めよう。だがそれを問題とするならば今の世界も同じではないか。誰も犠牲にする事無く国や世界が回らぬという事を理解していない君ではあるまい?」

 

 ギルベルトの語る言葉、それをタツヤは否定する事が出来ない。タツヤ・奏・アマツの地位は、そして軍事帝国アドラーという国の繁栄は無数の屍によって成立しているものであるが故に。

 

「ならば論ずるべきは犠牲となる人間の数か?否、ただより多くが助かる決断こそが正しいと断ずる事こそ甚だしい思考停止であり指導者としては愚の骨頂というものだろう。禊を果たさず恥知らずにもその生を謳歌している穢れた罪人10人と他者の為に献身的に尽くしてきた貴き善人1人、どちらかしか助けられないというのなら助けるべきはどちらだ?議論の余地なく後者だろう」

 

 少なくともギルベルト・ハーヴェスにとって前者の側を優先させる道理など欠片もありはしない。彼が真実救いたいと願うのは輝かしき勝者であるが故に。

 

「ならばこそ君の作ろうとしている社会(セカイ)は少々弱者に甘すぎる。人間は自らの能力と足跡によってこそ評価が、権利が、自由が変わるという事を思い知りながらもう少し生きるべきだと思わんかね?---際限なく弱者を甘やかし付け上がらせ続けた結果がかつての大破壊(カタストロフ)だ。人類の未来を拓く為に新エネルギーを発見したというその偉業、どれほどの恩賞を以てしても足らぬ功績だろう。だというのにその功績を蔑ろにして、衆愚がこぞって自らの安寧の為だけにその功績をかすめ取らんとした結果があの惨事。これほどに度し難い悲劇はあるまい。そんな悲劇をまた繰り返すようでは余りにも救いがないというものだろう?」

 

 ギルベルトの語る言葉に込められているのはどこまでも痛切で清廉な祈りだ。ギルベルト・ハーヴェスはタツヤ・奏・アマツが己が理想に賛同し協力してくれることを今この瞬間も信じている。

 何故ならば、クリストファー・ヴァルゼライド亡き今、タツヤ・奏・アマツこそギルベルト・ハーヴェスが心の底より救われて欲しい、救いたいと願う輝かしき光の使徒、その筆頭なのだから。

 

「故に世界は変わらなければならない。正しき者が報われぬという余りにも度し難い理不尽を根絶するためにも!」

 

 咆哮と共に今度はギルベルトの側が渾身の一撃を叩き込む。

 甘美に響く親友の言葉に屈してはならぬという使命感を以て、臆する事無くタツヤはそれを受け止め、再び両者の間で鍔迫り合いが発生する。

 

「ああ、理解できるよギル。理解出来るとも。だけどな、やっぱり()()()()を肯定するのは指導者としては()()だよ」

 

 何故ならば、嫌いな人間を合法的に破滅させることが()()()()()()()()()()()()事、それこそが権力というものが持つ一番の魔力であるが故に。

 今もこの瞬間親友の言葉に心惹かれる部分が己の中に存在する事の自覚があるが故に。多くの命をその身に背負う責任を持つ指導者は何が最善かを、本当にその犠牲が已むを得ない犠牲であるかを己に()()()()()事を忘れてはいけないのだ。

 

「いいや違う。中途で妥協してしまう事、それこそが()()に他ならない。そう、あの方が私に教えてくれた。ならばこそ君にもその事に気づいて欲しいと切に願うのだよ!」

 

 鍔迫り合いが終わり、タツヤの身体が大きく後方へと飛ぶ。

 それはギルベルトの持つ信念に気圧されたが故か?

 否、ただ単に単純な剣技の競い合いという()()調()()が終わったというだけだ。

 

「これも我が身の不徳かな。閣下と言い君と言い、私が真に手を携えたいと願う者とはいつもこうなってしまう」

 

 賛同してもらえぬ己が不甲斐なさ、それを()()()()恥じながらギルベルトもまたタツヤがそうした意図を瞬時に理解して己が星を高め始める。

 

「まあ仕方がないさ。言葉を尽くす事は大事だが、譲れぬ願いがあるのならば戦いは必然として発生するものだからな。それを飲み干せぬ者に国を担う資格などないだろうさ」

 

 

 そして当然の事だが指導者とは問い続けた上で()()()()()()()()()()()。時に()()()()()()()()。私利私欲の為ではなく、誰か()の明日を守るが為に。それが出来ぬ者に人の上に立つ資格などありはしないのだから。

 目前の親友はもはや言葉だけでは止まらない、そう理解したからこそ己が全霊を振り絞る事にタツヤもまた躊躇いはない。

 

「「創生せよ、天に描いた星辰を───我らは煌めく流れ星」」

 

 気配が変わる。空気が変わる。これまでの戦いはかつて幾度も行った稽古の延長線に過ぎなかったのだと告げるかの如く。

 太陽神と審判者、英雄と縁深き両者はどちらも譲れぬ思いを抱きながら激突する。

 歴史に於いて語られる事なき死闘が真に幕を開けようとしていた……

 

 




過去最長になるだろうとは思っていたけどまさか星辰光の解放までで1万字弱になるとは思わなんだ……
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