【完結】シルヴァリオサーガRPG実況プレイ   作:ライアン

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ギルベルトの両親ってどんな感じだったんでしょうね。
なんとなくですけど自分は親としてギルベルトは愛していたけど、それはそれとして当時のよくいるアドラーの特権階級として腐敗していた感じだったのではないかと思っています。そして賄賂も媚態も通じない公正無私の審判者に親子としての情などが通じることもなくサクッと裁かれたのではないかなと。



ギルベルトの諦観

「こちらこそよろしく頼むぞハーヴェス殿!今回は君に負けてしまったが次は負けん!」

 

 奏家の嫡男、さぞやプライドが高くひょっとしたら何かしらの皮肉でも言われるのではないかとギルベルトは少しばかり身構えていた。しかし、そんなギルベルトの予想に反して返ってきたのは快活な笑みと陰湿さなどまるで感じられない清々しい返答。そこには首席の座を自分から奪った男に対する妬心、恨みそうした負の感情はまるで感じられず、あるのはどこまでも清澄な闘志。自らに打ち勝った者に対して見事だと敬意を払いながらも、次は決して負けないと奮う確かな意気がそこには存在した。

 

 

「ああ、ともに帝国の未来を担う戦友としてこれから4年間互いに切磋琢磨していくとしよう」

 

 気づけばギルベルトは自然と笑みを浮かべながらそんなことを告げていた。ひょっとしたら目前の彼ならば上っ面だけの関係ではない、同じ志を抱く真の友となれるのではないかとそんな希望が胸の中で膨らむのをギルベルトは感じていた。

 

「うむ、頑張ろう共に頑張ろう!愛する祖国の為に民の為に!」

 

 それからの日々は瞬く間に過ぎていった。

 

「ハーヴェス殿、せっかくの休日だというのにすまないが君さえよければ稽古に付き合ってはくれないか!」

 

 最初の休日、多くの者が厳しい訓練でヘトヘトとなり身体を休めるか遊興にふける中で彼はそんなどこまでも()()()()()()()の提案をしてきた。当然断る道理などない、ギルベルトは二つ返事でそれを引き受けた。確かな喜びを感じながら。

 

「すまないギル、月に一回は家に顔を出すという約束なのだ!約束は守らねばならないし、俺自身父と母のことを愛している!故に今回は君と訓練は出来ない!」

 

 だからこそ、4度目となった休養日に於いて当然のように共に訓練するものと考えていたギルベルトはそう言われた時落胆を隠せなかった。家族を愛する事、なるほど確かにそれは世間一般に於いて正しい事なのだろう。だがそれでもギルベルトの心の中にはある種の不満が芽生える。

 

 ---君のような天空へと羽ばたく翼をもった存在は、地を這う凡俗などに気を取られず往くのが社会の為ではないのか

 

 そんな思いが芽生えたが流石に口には出さなかった。何故ならばギルベルト・ハーヴェスは明晰な頭脳と自らの心を律することが出来る自制心、その双方を併せ持つ紛れもない傑物であったが故に。何よりタツヤ・奏・アマツはギルベルトにとっては初めて出来た真に友と呼ぶことのできる存在だった。それ故にこの思いはある種、初めて出来た友人に対する独占心だとか執着心だとか呼ばれるある種の稚気が混じっていることの自覚がギルベルトにはあった。故にギルベルトもまた特に文句を言うことなく、俄かに空いた時間を使い友人に倣い帝都にある生家に一度帰ってみる事にした。

 

 ---これならば効率は落ちるが一人で自習している方がよほど有意義というものだな

 

 実家での両親との会話、それはギルベルトの心に何ら喜びを齎さずあるのはどうしようもない諦観だった。

 

 ---この者達は駄目だな。

 

 気概がない。向上心がない。言い訳を重ねるばかりで間違いを正そうとせず、ただただ現状の特権に胡坐をかいた虚栄心のみが膨れ上がったどうしようもない者達。それがギルベルト・ハーヴェスの両親であった。

 

 ---別段そう珍しい事ではない。親兄弟など所詮はただ幾分か遺伝子が共通しているだけの他人なのだから

 

 そう別段珍しい事ではないのだ。旧暦の頃からの人類の歴史を振り返れば。目指すものの違いから親兄弟で争い合う事も。

 

 ---ただ、しばらくは従順な息子であることを演じておく必要があるのもまた事実か

 

 腐っているとはいえハーヴェス家の当主として積み重ねたものがギルベルトの父にはある。そしてそれにギルベルトが積み上げたものは未だ及んでいない。ならばこそ今子供っぽい反抗心から殊更両親に対して敵対的な態度をとるのは得策とは言えないだろう。ギルベルトの積み上げたものが父のそれを凌駕する時が来るまで従順な息子と思わせておく必要があった。どの道一人での自習では共同稽古で行うそれよりもはるかに効率が落ちるのだ。ならば不本意ではあるが、こうして実家に顔を出して両親からの信頼を得ておくのも自身の理想の成就のためを思えば悪くはない。そうした腹芸が出来ずして為せるほど、自分の理想を甘くはないのだからーーーとそんな風にギルベルトは判断したのであった。

 

「ギル、どうやら今回は俺の勝ちのようだな!」

 

 そうして幼年学校での1年目が終わろうとしていた時ギルベルト・ハーヴェスは人生で初めての経験を味わう事になった。期末に行われた試験、そこで友に負けたのだ。

 

「ーーー見事だ、我が友。だが私とてこのままでは終わらない。次はまた私が勝つ」

 

 ---ああ、なるほどこれは初めての感情だ。敗北したことへの悔しさと自分を上回った者への敬意が入り混じっている。なんとも形容しづらい感情だが、なかなかどうして悪くない。

 

「うむ、俺とてたった一度の勝利で君を上回ったなどとは思ってはいない!何よりも未だ我らは未熟な士官候補生。一角の人物へとなる為には驕る事無くお互いにただひたすら精進あるのみだな!」

 

 返ってきたのはどこまでも清廉に前へと進もうとする熱き気概の言葉。それがギルベルトにとってはとても心地よく、自然と笑みが浮かぶ。そして胸に抱いた期待は強固な理性を持つギルベルトをして既に抑えきれぬ程に膨れ上がっていた。

 

「我が友よ、君は今のアドラーについてどう思う?」

 

 故にギルベルトはそう尋ねていた。無論周囲に自分たち以外誰もいないことを確認しながら。

 

「このままではいけないだろうな!家族を大事にすることは私人としては何一つとして非難される事ではない!だが今のアドラーの上流階級の多くはそれを公にまで持ち込んでしまっている!かくいう俺の父と母もそうしたところがある!特に顕著な例がこの幼年学校だろう、貴族にしか門戸が開かれておらず平民では入ることが出来ない。それにより更なる階級の固定化が進んでしまっている。これではとてもではないが、公正な社会とは言えない!生まれによって人生の多くが定まってしまう社会はとても健全とは言えない!」

 

 返ってきたのは期待通りの言葉。玉虫色の回答で誤魔化す事もなく目前の友ははっきりと今のアドラーの体制を批判していた。しかも自身の両親がその批判の対象に含まれていることを承知の上で。

 

「君ならばそう言ってくれると思っていたよ。社会とは、世界とは、いいや人とはもっと正しくあらねばならない」

 

 ならばこそきっと目前の友ならば今まで明かすことのなかった自らのこの理想にも必ずや共感し、賛同してくれるに違いないーーーそんな期待からギルベルトは自分の口が普段よりも饒舌に回り出すのを実感していた。

 

「そうだろう、なぜ彼らは言い訳して努力をしようとしない。100の努力を上回るならば101の努力が必要だろう。我らを羨望する言葉を述べている彼らは果たして私たちの10分の1でも努力を重ねているか?我らを否定する事が出来るのは、我らを上回った者だけだーーーそうは思わないかね」

 

 そう何も間違ったことを自分は言っていないはずだ。この当たり前の道理を目前の親友ならば、必ずや理解し常と変わらずそのどこまでも熱く真っすぐな言葉で肯定してくれるはずだとーーー

 

「ギル、それは違うと俺は思う」

 

 抱いた期待は呆気なく打ち砕かれる。常ならざる静謐な口調でタツヤ・奏・アマツはギルベルト・ハーヴェスの言葉を否定していた。

 

「相手を否定する事が出来るのは相手より努力を重ねたもの、上回った者だけだというのならばそれはつまり強い者こそが正しいという弱肉強食の肯定となってしまう。それではいけないと俺は思う」

 

 真摯な瞳がギルベルトを射抜く。それは理性で自らにも必死に言い聞かせているような類の言葉ではない、紛れもなく本心から告げている者だけが持つ覚悟が宿っている。

 

「なぁギル、こういう言い方は口幅ったいが俺は恵まれた存在なのだと思う。両親からは愛されて育った。欲しいものはなんでも与えられた。優れた教師が色んなことを教えてくれた。頭は教えられたことをすぐ理解する。体は思い描いた通りの動きを完璧にこなす。そんな俺が、俺を否定したかったら俺を上回ってから言え!などと言ったらそれは余りにも傲慢な事なのだと思う。

 努力が必ずしも結果に結びつくわけではない。正しく生きたいと思いながらもそう出来ない者とて居る。生まれつき親を持たず捨てられてしまった者、あるいは重病や障害を患って生まれた者もいる。正しく生きていたのに理不尽な現実を前に心が折れてしまうものとて居るかもしれない。だがそれらすべてが断罪されるべき悪か?そうではないはずだ」

 

 そこでタツヤ・奏・アマツをいつものように快活な笑みを浮かべて

 

「だからこそ俺はそんな者たちを照らし導く光でありたいと思う!それこそが人より強く生まれた者の責務だと!そうして上に立つものが他者の規範となるべき姿を示すことがそれを見る者達の心に火を灯すとそう、信じているのだ!」

 

 確固たる意志を以て告げる友の姿は間違いなくギルベルトにとって尊敬に値するものだった。理性は告げている、友の語った内容は正しいと。万人が自分や目前のこの素晴らしい友のようには在れないのだと理解もしている。だがそれでもある種の落胆は隠せなかった。目前の友ならば、今まで出会ってきた凡愚とは違う彼ならばこそ賛同してくれるはずだという期待は裏切られたのだから。

 

「そうかね……いや、確かに君の言うことが正しいのだろうな……」

 

 そうしてギルベルト・ハーヴェスは己が心に秘めていた理想を再び封印し現実と折り合いをつけることを選んだ。4年後東部戦線に於いて現実には存在しないはずの己が理想を体現する御伽噺のごとき存在との運命的な邂逅を果たすまでは……




※親に見切りをつけた頃のギルベルト君は大体粛清された時のアシュナギと同じ位の年です。
こんな12歳の子供は嫌だ!
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