【完結】シルヴァリオサーガRPG実況プレイ   作:ライアン

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絆の力が主人公陣営だけの専売特許だとでも思ったか?してくる仲良し神祖好き。


布石

 その日カンタベリー聖教皇国は沸き立っていた。

 総代聖騎士グレンファルト・フォン・ヴェラチュールと第一騎士団団長ウィリアム・ベルグシュラインの出陣。邪悪なる侵略者達の野望を聖教皇国が誇る聖騎士達が見事挫いたとの報ーーーそれは国民の多くを安堵させた。何せ此処5年の軍事帝国アドラーの勢いは凄まじく、政に疎い民の耳にも各地で大和の加護を受けたはずの栄光在る皇国騎士団が敗退を重ねているという報が届き続けていた。神聖なるカンタベリーの大地を邪悪なる帝国が侵さんと試みたとしても精強なる聖教皇国海軍がその野望を必ずや打ち砕くーーーと教皇と総代聖騎士が如何に豪語していてもそれだけで不安を拭い去れきれるわけではない。故にカンタベリーの誰もがその勝利に酔いしれた。

 

「神国大和の加護ぞ在り!もはや帝国など恐れるに足らず!---なんて単純な話だったら楽で良かったんだけどね」

 

 しみじみとした様子で呟くその姿はどこか年寄り臭さを感じさせるものであり、その外見とは不釣り合いも良いところだった。聖教皇国の頂点に立つ若き少年教皇ーーー否、不滅の神祖スメラギは事情を知らぬ余所行き用の仮面を取り払い素の己をさらけ出す。何せ今目の前にいるのは千年も共に歩み続けた仲間なのだから。

 

「いつの時代も上に立つ人間は考えなければいけない事が山積みだ。はてさて帝国の若き新総統閣下君はどう対応してくるかな」

 

 それこそが目下一番の関心事なのだと告げるスメラギへと嘆息しながらオウカは応じる。

 

「正直なんとも言い難いわね。何せ前任者のような光狂いの可能性も十二分にあるもの。それこそ傷つけられた威信を回復するためにカンタベリー本土攻略を目論むーーーなんて事もあり得そうなものだけど」

「いいねぇ。そんな短絡的な行動に出てくれるようだったらこっちとしても対処が楽でいい。旧暦のトラファルガーよろしく上陸する前に海の藻屑と化して貰うだけだ。陸で最強なのはアドラーかもしれないが、海での最強は僕たちカンタベリーなんだから。加えてベルグシュライン(歴代最強の使徒)というエースを気がねなく使えるようになったわけだしね」

「そうね。それへの対策に関してはこちらとしても徹底的にやっているもの。あの特級の怪物が出現した後は特に入念にね」

 

 外敵による本土侵攻ーーーそれは国の内側を固めて盤石と言って良い支配体制を固めた神祖にとって最も警戒してきたものだ。だからこそ宗教国家という他国にとっても侵略し辛い立ち位置になることを目指して時には婚姻による結びつきという古来からの常套手段も用いて各国の権力者層と綿密な交流を深めて来た。()()()で人間は可能性の怪物であるが故にいずれ現在の秩序を打ち砕かんとする英雄(かいぶつ)が出現してくるだろうという事も予期していた。何せ他ならぬ自分達の国でもそうした手合いはいくらでも出現してきたのだから。神祖という絶対者が手綱を握っておらず上流階級の専横が続いているアドラーか、あるいはアンタルヤ辺りにそうした手合いがその内出現するだろうと。そしてそうした存在が政権を奪取した場合往々にして外征(侵略)という形で国内の矛盾を解消し、国民からの支持を固めようとするという事も。歴史から学ぶ賢者にして千年にも及ぶ経験から学ぶ愚者でもある神祖達からすれば予想出来た事だった。

 そしてならばこそそれへの備えは十全に重ねて来た。旧暦に於いてナポレオンの野望を打ち砕いたイギリスに倣うべくカンタベリー聖教皇国という国は新西暦に於いて最強の海軍を所有している。如何に陸に於いて常勝を誇ろうが、上陸前の海上戦で勝たない事にはカンタベリー本土を侵す事など出来はしない。アドラーの誇る超人兵士(エスペラント)とて空中を飛ぶことは出来ない以上海上戦では拡散性と干渉性に優れた者が砲台役になる程度しか出来ない。そしてそれは超人兵士(エスペラント)という虎の子の戦力をみすみす兵種として持つ最大の強みである機動力を封殺された戦場に投入するという事である。アドラーの常勝がエスペラントによって支えられているものである以上優秀なエスペラントをそうそう他の戦線から動かす事は出来ないし、よしんば動かしたとして海戦に於いてはただの優秀な砲台役程度に成り下がる。とてもではないが費用対効果(コストパフォーマンス)が釣り合わないのだ。

 更にもしもそうした()()に及んできたとしても“アドラーが独占していたエスペラント技術は流出し、カンタベリーはその実用化に真っ先に成功した”という()()が出来た今、カンタベリー側はウィリアム・ベルグシュラインというカードを気兼ねなく使用できるようになった。逃げ場が限られる海上で斬空真剣(ティルフィング)から逃れる術などない。皆尽く神剣の錆と化すだろう。

 アドラーによる本土侵攻、それはクリストファー・ヴァルゼライドという英雄が台頭した後神祖が最も警戒してきた事だ。ならばこそ抜かりはない。それへの対策は徹底的なまでに行っている。

 

「その上で油断は禁物だけどね。何せ人間は可能性の怪物であり、その体現者こそがかの英雄君だ。その英雄君の後継者もまた同等の怪物でない保証なんてどこにもない。あるいは今までは常識的な範囲の傑物だった存在がかの英雄君の死を契機に毎度の如く覚醒してきたなんて事だって考えられる」

 

 この千年間でいやという程に味わってきた苦渋の味を思い出しながらスメラギは辟易とした様子を見せ、オウカもまたそれに同調して心底うんざりした様子を見せる。

 

「“人の想いこそが真に永遠。例えこの肉体が滅んだとして俺の意志を受け継ぐ者が必ず現れる。それこそが真の不滅なんだ”こぞってみんな同じような事を言って来て、実際それを証明するかのような事例も散々見せられて来たものね。だからこそ私としては今回の一件は反対だったんだけどね。得られるメリットはわかるけど、それにしたってリスクの面が大きすぎるように思えるもの」

「君の言いたい事はわかるよオウカ。今回の勝利で僕たちカンタベリーは一躍世界から注目を浴びる事になった。アドラーの常勝神話に土をつけた者としてね。余りにも早すぎる実用化の速度に疑念を抱く者も出るだろうし、君が語ったようにムキになったアドラーが総力を挙げてこちらを攻めてくる危険性だってある。無論それへの対策は徹底的に固めてあるけど、それでもご都合主義としか言えないようなとんでもない奇跡を連発してくるのが人間(かれら)だからね。避けられるリスクならば避けておくに越した事はないという君の意見もよくわかる。だけどその上でどこかしらでリスク覚悟の手を打たなければいけない事もわかるだろう?」

「ええ、今回の手が必要だという事は私も理解しているわ。あの怪物を警戒して慎重策で当たり続けた結果が半年前の一件だもの」

 

 英雄の落日と謳われる帝国人が嘆き、それ以外の国の人間が歓喜した事件の詳細を知った時正直神祖はこの千年の間でも一番肝を冷やしたと言って良い。星辰体研究の第一人者である彼らは英雄と神星の目的が実現した場合に待つものが何であったのかを理解出来てしまったが故に。危うく知らないところで積み重ねた千年が水泡に帰しかねなかったのだ。

 

「そう、だからこそかの英雄君の後釜である新総統閣下を我々は見定めておく必要がある。総統に就任するや否や大攻勢をかけて来た彼の器がどのくらいなのか、どこまでを目的としているのか、その辺りを把握する事だってどう対応すれば良いのかが変わって来るからね。そしてその辺りを見定める為にはこちらも計画の方は一旦脇に置いて、聖教皇国の()()()として全力を出してみるのが一番だ」

 

 かの英雄のように第二太陽の掌握を目指しているのかーーー

 それともかの英雄が死んだ際の一件で極晃の存在へと気づきそれの獲得を目指しているのかーーー

 はたまた単に指導者として祖国に相応の繁栄を齎す事で善しとしているのかーーー

 その辺りがわかる事でどう対処すれば良いのかも決まる。逆に言えばその辺りがわからない事にはどうにもならないのだ。正しい判断とは正しい情報に基づいて行われるのだから。そしてその情報を引き出す為にはこちらから仕掛けて相手の対応を見てみるに限る。

 無論、目的はそれだけではない。今回の一件によってカンタベリーが、否神祖が得られる利益は無数に存在する。そのメリットがリスクを上回ると判断すればこそ総代聖騎士と第一軍団の団長の出陣という手に出たのだから。

 

「僕としては願望混じりだけど彼は稀に出てくる()()()()()の類じゃないかって思っているんだけどね」

「そうであってくれるといいわね。そういう理性的で良識的な話が通じるタイプだったら一番対処がしやすいもの」

 

 理性的で良識的な傑物というのは神祖にとって最も対処がしやすい。理性的であるが故に総合的に益が大きいと思えば私情を抑える事が出来る。良識的であるが故に暴挙に及ぶ事もない。カンタベリーという大国の長にいる神祖にとってみれば交渉によって折り合いをつける事がとても容易な存在なのだ。

 

「残念だがどうにもそれどころではなくなったぞ」

 

 和やかな空気を破るかのように現れたのは両者と同じく千年を歩み続けた仲間神祖イザナ。辟易とした様子を隠そうともしない様に両者は既に何となくだが何が起こったか、否、()()()()()()()()の察しが付いた。

 

「ベルグシュラインの奴と二人だけで行動をさせたのは失敗だったな。()()()()がまたバカをしでかし始めたぞ」

 

 告げられた言葉は予想した通りのもので。怒りよりもどこか諦めに近い感情を抱きながら両者はため息をつくのであった。




頭の良いバカが今度は何をやらかしたかは次回判明予定。
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