【完結】シルヴァリオサーガRPG実況プレイ   作:ライアン

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なんとか完結までたどり着きたい


上から目線の寿ぎ

 その日カンタベリー聖教皇国は沸き立っていた。帝国軍を撃退して、祖国に勝利と栄光を齎した“英雄”が帰還したからだ。威風堂々足るその歩みに宿るは覇者の風格。しかして自らへと歓声を浴びせる民へと向けたその微笑に宿るは慈愛の念。

 そうしてひとしきり民への愛想を振りまき終えた男が向かうはこの国の最高指導者にして極東黄金教の頂点に立つ人物ーーーすなわち自らが仕える()()に他ならなかった。

 

「ヴェラチュール卿、此度の働き、誠に見事である。貴殿の働きは神国大和の威光をしかと知らしめるものであり、まさしく戦禍に喘ぐ同胞を救う騎士の鑑であったと言えよう」

「これも総ては猊下の威光の賜物。友邦であるプロイシアを救わんとする猊下の深き慈愛とご聖断があればこそです」

 

 臣下の功を讃え労う少年教皇とそんな教皇を主君と仰ぎ教皇の決断をこそ讃える総代騎士の姿、それは両者の間にある盤石の信頼関係を示すものであった。

 

「これからもどうかその力を貸して欲しい。我がカンタベリーが誇る護国の剣にして民と教義を守護する偉大なる騎士よ」

「我が力の総てを以て必ずや護りぬきます。慈しむべき民草を、誇るべき我らが祖国を。この命尽き果てるその時まで信仰と教義へと殉じましょう。我ら大和の遺せし御心がままに」

 

 そうしてグレンファルトは立ち上がり、労いの言葉と共に授けられた勲章をその場に居合わせた者達へと見せつける。羨望、賞賛、嫉妬、畏敬、列席者達の中に渦巻く心は各々異なれど割れんばかりの拍手が式場を包み込むのであった。

 

・・・

 

 

「さてそれじゃあ報告を聞かせて貰おうか、バカリーダー」

 

 式典の時に纏っていた表向きの仮面を外して、神祖スメラギは()()()()()()独断専行に及んだリーダーへと問いかける。その舌鋒は鋭いものの同時にある種の諦観の念が多分に込められていた。

 

「勝手をやった事については今更とやかく言う気はないよ。()()()()()だし、結果として見事そのチャレンジには成功したわけだしね」

 

 教皇である自分の意向を無視して総代騎士が独断で動いたという大問題、それをスメラギは不問とした。それらは彼ら神祖にとってはそれらがあくまで表向きの立場に過ぎず、そんなものに拘って対立するだけ無駄だという事をこの千年の間によくよく理解しているが故だ。

 そしてリーダーであるグレンファルトの博打を打ちたがる悪癖はこの千年どれだけ言おうが治る事は無く、リーダーがそうした博打を打った時は自分達3人がそのフォローに回るのが結局()()()()()だという事もまた骨身に染みているが故に。

 

「どうせお前は私たちが何を言おうが聞きはしないのだからな。今回やった事も上手く行ったから良かったもののリスクを挙げ出せばキリがない類だったが、見事その博打に成功して相応のリターンを齎した以上は青臭いガキや器の小さな老害のようにいつまでもとやかく言いはすまいさ」

 

 身も蓋もない話だが世の中結局のところ結果を出している者が強いのだ。どれほど高邁な理想を並べ立てようとそれを発言している者が机上の学問を修めただけの者と、旧弊を改めてより公正な世の中を築き上げた“英雄”とでは同じ事を言っても言葉に宿る重み、“説得力”は雲泥の差というものだろう。そしてグレンファルトは今回その博打を成功させて結果を出した。

 無論いくら結果を出したと言ってもそれがリスクを考慮していない軽挙であれば当然神祖はそれを嗜める。だが性質が悪い事にグレンファルト・フォン・ヴェラチュールという男はそうしたリスクを総て()()()()()()()()()()のだ。

 

「いやはや持つべきものは千年共に歩み続けた同志だな。理解ある仲間を持って俺は幸せ者だよ」

「心の籠ったお世辞をどうもありがとう。僕らは毎度毎度DVを受けているのに別れる踏ん切りがつけられない配偶者の気分だよ」

「それでどんな感じだったの?アドラーの新総統殿は?」

 

 それこそが目下最大の関心事なのだというオウカからの問いかけに対してグレンファルトは微笑を零して

 

「結論から言うとかの総統殿は至って真っ当な傑物だな。才覚に恵まれ、家族や友人にも恵まれ、その才に驕る事なく自らを磨く向上心を持ち、恵まれた者にありがちな打たれ弱さとも無縁、実現させたい高貴な理想を持ち、トドメとばかりにそんな理想を共有する仲間にも恵まれた。故に当然のように頂点にまで昇りつめた。ベルグシュラインの奴とはまた別の形での「あればあるほど良い」の体現者と言えるだろう。

 30半ばで感嘆を禁じ得ない完成度だったが、反面光狂い共が持つ森羅を砕くが如き圧倒的な爆発力のようなものは終始感じる事は無かった」

「プロイシア攻めを続行する事無く停戦に切り替えた辺りで十中八九そうだとは思ったがやはりそうか」

「油断は禁物だけど何よりね。真っ当な思考をした傑物ならいくらでも折り合いをつけられるもの」

「ああ、全く以てその通りだよ。戦争は何時の時代もコストパフォーマンスが最悪だからね。その大前提を共有出来て理と利に基づいた交渉が出来る相手はとても有難い」

 

 グレンファルトの報告にこぞって神祖の面々は安堵と共に笑みを浮かべる。それは大上段から後進を見下すものであると同時にそのまま彼らの抱く人間と言う存在への()()を示すものであった。

 そう四柱の神祖は総合力に於いて自分達をはるかに下回る人間を見下しはすれど決して侮ってはいない。何故ならばこの千年幾度となくその可能性によって苦杯を舐めさせられて来たが故に。

 

「さて、そうなるとアドラーから持ち掛けられた和睦の提案には応じるという事で良いかな?かの新総統君がそうした真っ当な傑物だというのならば、おそらくだがこの提案に裏はない。今の自国がどれだけ()()()状態かわからないわけではないだろうからね」

 

 軍事帝国アドラーは新西暦最強と言って良い軍事力を誇っている。それはエスペラント技術の独占という圧倒的優位が崩れ去った今でも変わらない。何せ帝国にはこの5年の間に培った各種のノウハウが存在するのだから。だが最強の軍隊等と言うのはある種の劇薬なのだ。

 

「かの英雄が玉座に就いてからこの5年、帝国はまさしく破竹の勢いだった。旧弊は一掃され、領土は急速に拡大し、経済も好調そのもの。まさしく黄金時代と呼ぶに相応しい繁栄だったとも。だけど急速に拡大したという事はそれだけ内側が固まり切っていないという事でもある。帝国の繁栄の為にすり潰された事で帝国を恨む者を外だけではなく内側にわんさかと抱えているわけだ。他国を()()()()()()()()ってのは要はそういう事だからね」

 

 当然命を懸けてでも帝国に一矢報いてやろうなどと思う気合の入った人間は少数派だろう、だがそれでもすり潰された事による嘆きも恨みも確かに存在するのだ。

 

「加えてかの英雄が玉座に就いていた期間は()()()()5()()。ようやく新体制の基礎が固まり始めたという段階で帝国は指導者を失ったわけだ。こうした場合後継者の取るべき道は凡そ二つだ。

 一つは前任者の拡大路線をそのまま継承する事ーーーこれは国内の支持を獲得出来る一番手っ取り早いやり方だが同時に侵略国家が孕む根本的な問題点をそのまま残すやり方でもある。永遠に勝ち続ける国なんてものは存在しないからね。

 もう一つは思い切って路線を変更して国内を固める事ーーー国が長く続くか、それとも閃光のように弾けて消えるかは、これを出来るかどうかに依る部分が大だ。哀しい事にこれをやる人間は往々にして国内の人間からの受けは余り良くないんだけどね」

 

 これからそれらを味わう事になるであろう帝国の新総統へと敵ではなく先達としての同情を滲ませながら神祖スメラギは続けていく

 

「かの新総統君が一体どちらの人種なのか、これまではこれが判別できていなかった。だからこそ向こうから持ち掛けられた提案も受けるか否かを保留にしていた」

 

 聖地プラーガのカンタベリーの領有を帝国が認めるという提案、それは聖教皇国にとっては僥倖という他ないものだ。それが本当であれば神祖達にとっても断る理由はない。

 

「プラーガはアドラーが拡大を続けるのであれば押さえておかねばならない要衝だからね。その領有を帝国側が本当に断念するというのであればそれは国家方針を先代の頃から転換する事を意味する。

 だからこそこちらとしては俄かには信じ難い提案だった。何せ新総統君の就任してからの行動と来たら見事なまでに先代の方針を継承しているとしか思えないものだったんだから」

 

 後ろを振り向く事無くただひたすらに前進を続ける光狂いと神祖達が呼ぶ存在。そんな存在であれば聖教国にとっても益ある提案を呑むかどうかを神祖は躊躇した。何せ()()()()()()()()()()()()()が為に。

 自分達のあずかり知らぬところで危うく千年の積み重ねが台無しになるところであった“聖戦”の真実、それは神祖達にとって最新の教訓(トラウマ)として刻まれている。

 

「だけど我らがリーダーの毎度の博打の結果、かの新総統君はとても素晴らしい事に至って真っ当な傑物だという事が判明した。ならばこそ齎された提案に裏はない。真っ当な傑物として真っ当に国の基礎を固めにかかっているものだ。そんな真っ当な相手ならば手を結ぶのも吝かではないーーーと思うんだけどみんなの意見はどうかな?」

「異論はないわ。余り追い詰めすぎて窮鼠となられても逆に困った事になりかねないしね」

「右に同じく。警戒を怠るわけにはいかないがそれでも目下最大の脅威と停戦に至れればそれだけこちらも本来の目的の方にリソースを割けるようになるしな」

「俺も同感だ。プラーガに存在する次元式核融合炉を抑える事も出来るしな。これで我らのあずかり知らぬところでまた世界が吹き飛ぶ等という懸念も一つ消える」

 

 目下最大の懸念が消えた事に微笑を浮かべながら四柱の神祖は結論を降す。

 

「それじゃあ意見もめでたく満場一致した事だしそういう方針で動くとしよう。

 ーーーしかし、アドラー国民は幸せ者だね。稀代の英雄が築いた繁栄が続くのか、それとも泡沫の夢で終わるかは跡を継いだ者の器に依る部分が大だ。そんなタイミングで数百年に一人出るか出ないかの傑物がちょうどいるだなんて早々ある事じゃない」

 

 交渉によって折り合いがつけられる真っ当な傑物、それが敵国の指導者となった事を喜び、どこまでも()()()()()()()寿()()を教皇スメラギは軍事帝国アドラーへと送るのであった。




感情を律して理と利で行動する事が出来る人間は神祖にとって基本行動が読みやすいのでやりやすい相手だよというお話。ただし指導者とかそういう多くの人間の命を預かっている立場の人間が理と利ではなく感情によって軍だとかを動かしたらそれは指導者失格ですわなというお話。

このままじゃ神祖滅殺がされずに神天地が開闢してしまうんではないかって?その辺りについては追々。
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