ちなみにお兄様の能力で図抜けているのは「敵の3倍の兵力を用意して補給を完璧にしてトップの指令を過たず伝達しその上でみんなでボコる」というそれが出来たら苦労はしねぇ!な必勝の戦略を実際にやってのけるところにあります。
イメージとしては信長の野望とかのプレイヤー視点みてぇなチート使っているようなヤベェ奴です。ギルベルトもそういう奴をイメージしたと原作者が言っていたのでこれは親友ですね。
「ヒィィ、ヤッハァァァアア!」
狂える竜が歓喜と共に哄笑する。その身に既に数多の裂傷と火傷を負いながらもそんなものは総じて些事だと言わんばかりに。
「久しぶりだなぁ
久しぶりとは言ったものの無論ダインスレイフとタツヤに直接の面識などない。だがダインスレイフはかつて散々に味わった。どこまでも手堅く隙など欠片も見せない容赦のなさでゆっくりとだが着実に敵をすり潰していく太陽神と謳われる男の本気ぶりを。
そして今こうして念願叶い戦場で見えている敵手の容赦のなさはまごう事なきかつてと同じーーー否、多くの経験を積んだ事でかつてよりもはるかに洗練されたものだった。軍事帝国アドラー総統としてこちらが不利を承知で乾坤一擲を賭けるしかない状況を作り上げた敵手の手腕、まずはそれをダインスレイフは懐かしさと共に賞賛していた。
「そしてそっちに居るのが噂の
襲い来る猛火、嵐、爆熱火球、雨あられと襲い掛かるそれらを培った戦闘勘で以て捌き続ける。その身に少なくない傷が刻まれてその度に痛みという警報を響かせるがーーーそんなものは当然光に狂った竜の進撃を一切掣肘する事は無い。
そして勿論の事耐え続ける事で活路を見出す等と言う消極的な戦法をこの男が取り続けるはずもない。どうすれば今の劣勢を跳ね除けられるかを考えてーーー
「それに比べててめぇは物足りねぇなぁ!裁剣女神の腹心を気取るというのなら主を越える位の気概を持たずにどうするよ!そんな様だからこの土壇場で敬愛するご主君様に守られるなんて無様を晒す事になるんだぜ!!」
強欲竜が狙いを定めた存在、それはこの場にいる中で最も弱い存在、すなわちサヤ・キリガクレに他ならない。無論、サヤ・キリガクレが足手まといかと言えば当然そんな事は無い。サヤ・キリガクレは裁剣天秤隊長足るチトセの信認厚い副隊長であり、帝国でもまず間違いなく上位に食い込む実力を持つエスペラントだ。彼女と戦場で見える事は他国の兵士にとっては絶望以外の何物でもないし、集束性・操縦性・維持性に優れた彼女の星光はこの
「ッ!」
だがそれでも哀しいかな。チトセ・朧・アマツとタツヤ・奏・アマツというアマツの最高傑作と称すべき二人の傑物、そしてファヴニル・ダインスレイフという精神力で以てそんな両名と伍するだけの力を得た怪物がしのぎを削るこの戦場に於いてはどうしてもその実力は一枚劣ると言わざるを得ない。無論これは比較対象が余りにも悪すぎると言うしかないが、それでも戦場に於いてそんなものは言い訳にしかならない。
そしてそんな
「乗るなサヤ!確かにお前は私と総統閣下には及ばん。だがもしもお前が足手まといだと思っているのならば私はお前を副官にしていないし、閣下もまたこの戦場にお前を連れて来てはいない。安い挑発になど乗らず己が為すべき事を為せ」
「お姉様……はい!」
ダインスレイフの嘲り、そして現実として上官であるチトセに援護して貰わねば自分がやられていたという事実に歯噛みしていたのもほんの一瞬。敬愛する主君の言葉にサヤはすぐさま冷静さを取り戻す。
「お優しいこったねぇ。自分の本気に真の意味では付いてこれない従者を庇うだなんて。俺にはとても真似出来んよ」
「そんな様だから今この局面で貴様は独りなのだろう。この天王山で命運を共にする腹心の一人すらいないとはな、反帝国のカリスマとやらが笑わせる」
ダインスレイフは先のプラーガからの撤退で多くの手勢を失った。その中には強欲竜団の中核を担っていた人材も相応に含まれていた。単純な数についてはその扇動と
更にトドメとばかりにダインスレイフのお眼鏡に適い相応に目をかけていた貴重な
「オイオイ、そう仕向けたのはお前ら帝国ーーーいいやそこに居られる麗しの総統閣下様だろうがよ!本当に容赦のない本気ぶりで俺は嬉しいぜ!全くうちの国の
そう、今のこの絵面を引いたのは総てヴァルゼライドの後継者であるタツヤ・奏・アマツその人だ。プラーガという餌を用いて聖教国と組むと決めたその時からタツヤ・奏・アマツは、否、軍事帝国アドラーは帝国の怨敵であるファヴニル・ダインスレイフを討つ為に動き出していたのだからーーー商国の持つ連合国家故の意志統一と決定の遅さ、それを徹底的に突く形で。
そしてそれこそがチトセ・朧・アマツをして自らがタツヤ・奏・アマツに及ばないと思わせる最大の理由、この時代を代表する戦略家としての実力に他ならなかった。
「だがまあ良いさ!祖国の危機を前にしてもなお足を引っ張り合う国の上層部!そのせいで劣勢を承知で戦いを挑まざるを得ない悲劇の名将!英雄譚ってのは往々にしてそういうもんだからなぁ!俺の本気で以てこの劣勢をひっくり返せば良い、要はそれだけの事なんだからよぉ!!」
そんな不利をダインスレイフは百も承知。その上でそれをひっくり返して見せるぞと意気込みこうして決戦を挑んだのだから。
そしてそんなダインスレイフの本気に呼応するかの如くつい先日行った37度目の大改造で胸へと埋め込んだ物体が唸りを挙げる。
ダインスレイフの雄叫びと共に呼応して増大する出力、そんな
「閣下」
「ああ、わかっているとも朧大将。この男を相手に長期戦は危険だ。勝利の道筋は定まった以上、早めにケリをつけるとしよう」
窮地、劣勢、そうしたものを前にして不屈の意志で以て進み続けて勝利をもぎ取り続けて来た男。そんな男を良く知っているが故に自らの側が圧倒的に優勢な状況に於いてもタツヤ・奏・アマツに慢心も油断もない。
このまま一気に押し切らねば最終的にはひっくり返される事となる、そんな危機感を抱いたからこそ一切の躊躇なく伏せていた切り札を投入する事を決断した。
「往けオーバードライブ大佐!道は俺達が切り拓く。そこの暴虐なる竜に貴官が真の英雄の何たるかを叩き込んでやれ!」
「
敬愛する己が祖国の指導者からの命令を受けて帝国軍第九北部征圧部隊改め総統直属特務部隊
「鏃から半人半馬を蝕む告死。永劫終わらぬ
ジェイス・ザ・オーバードライブは帝国に於いても有数のエスペラント。瞬間的な戦闘力であれば帝国最強と謳われる
しかし、エスペラントとしてのその性能は余りにも歪だった。基準値と発動値の大きな落差はその身を内側から破壊し、極端なまでに集束性に特化したその星光は敵のみならず彼自身の肉体を外から砕く。
「蹄を鳴らせ、弦を引け、矜持を胸に地平を駆けろ。苦悶と嘆きにこの強弓が朽ち果てるなど有りはしない。
なぜならば、耳を澄ませば聞こえてくるのだ───天に轟く雷霆が」
しかしそうした痛みに対する恐怖、そこまでする理由があるのかと囁く弱気を比べる事すらもおこがましい強固な意志力でねじ伏せて彼は駆け抜ける。
「おお、遥かに煌めく天頂神よ。星座となるには早すぎる、まだ戦えと言ってくれるのか。
ならば我が身は全身全霊、すべてを懸けて応えるのみ」
何故ならばその目に映るはかつて仰いだ雄々しき英雄の背中。そして自分を人間にしてくれた小さな笑顔。
それは真実己が命を懸けるに値するものだと心の底から信じるが故に彼は怯まない。
「爛れた血肉は切除した、鋼の四肢を取り付ける。
穢れた血潮は総じて無用、燃える油と入れ替えようぞ」
そこにかつての荒んでいたスラムの荒くれだった男はいない。
鋼の意志で進撃しながらも人としての大事な感情、他者を大切に想う優しさも捨てず共存させた理想的な軍人。
それこそが英雄の意志を真に受け継いだ光の殉教者ジェイス・ザ・オーバードライブ。
「御許へ召され星座に列するその時まで。さあ戦友よ、轡を並べていざ往かん。
約束された誓いを掲げ、邪悪を穿つ矢を放て」
ならばこそジェイス・ザ・オーバードライブは目前の敵を認める事が出来ない。
敬愛した英雄が一体何のために命を懸けていたのかを理解せず、ただただその
「
故にさあいざ教えてやろう、男が真に無敵に成れるのは
「やっぱりそう来たか!容赦はないが
突如現れた伏兵にしてタツヤ・奏・アマツが隠し持っていた切り札、それを前にしてもダインスレイフに一切の動揺はない。
何故ならば彼もまたそれを予期していたから。目前の周到で卒がなく容赦がない男ならば必ずや切り札の一つや二つ隠し持っているはずだと。
何せタツヤ・奏・アマツは軍事帝国アドラーの全軍を動かす事の出来る総統なのだから。この
だからこそ自らへと肉薄する恐れを知らぬ勇者を前にしても邪竜は一切恐れない。輝ける英雄の背中に突き立てる為に磨き続けた魔剣を以て迎撃する。
磨き上げられた武技、それがほんの一瞬に両者の間でいくつも交錯しーーー
「良い線行っていたが残念だったなぁ。どうやらお前さんの本気よりも俺の本気の方が上だったようだ」
深々とダインスレイフの爪がジェイスの腹を貫く。
磨き上げた武技、それは間違いなく互角だった。
勝敗を別けたのはどこまでも無情かつ単純なもの。
それは両者の持つエスペラントとしての性能だった。
文字通りその命と引き換えに得たダインスレイフの持つエスペラントとしての性能、それが未だただのエスペラントでしかないジェイス・ザ・オーバードライブを上回っていたというただそれだけの話だった。
とっさのところで致命傷をこそ避けたものの、エスペラントと言えどもまず戦闘の続行は不可能と言えるだけの重傷だ。
ーーーそう、ジェイス・ザ・オーバードライブがただの優れたエスペラント程度の男であったのならば。
「は、舐めてんじゃねぇぞ強欲竜!内臓ぐちゃられた程度で俺が止まるかよ!常識学んで出直せや!!」
そこに居たのは腹を貫かれて内臓を損傷した程度では一切動きを止めない不死身の勇者の姿。
ジェイス・ザ・オーバードライブはプロの軍人だ。ならばこそ目前の敵手の性能が自分を上回っている事など百も承知。そして格上を相手に無傷で勝とうなどという驕りはジェイスにはない。
それが帝国の為であるというのならば、民の笑顔を守るためならばその命さえ捧ぐ覚悟があるが故に最初から
「ーーーーーーーー」
そしてそんなジェイスの姿にダインスレイフは戦場に於いて
「あばよダインスレイフ!あの人が一体何故あんなにも本気だったのかそれをあの世でよく考えてみるんだな!!」
生じた致命的な隙、それを見逃すはずもなく。
ジェイス・ザ・オーバードライブの渾身の一矢がファヴニル・ダインスレイフの命を穿つのであった。
お兄様「勝った!第二部完!」
本気おじさんの評定
サヤさん:つまらん本気。主を絶対と仰いで自分の器を決めつけているつまらん女
お兄様とチトセネキ:なかなかの本気ぶり。我が麗しの英雄には及ばないが後継者としてはまあ及第点
ジェイスさん:見つけた。見つけた。見つけた見つけた見つけた見つけた見ツケタ見ツケタァァ——ああ……そうか、おまえ。おまえなんだ(歓喜)