【完結】シルヴァリオサーガRPG実況プレイ   作:ライアン

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今回は糞眼鏡がどういう流れと判断によって援軍に駆けつけたかの説明回です。
本気おじさん戦決着はまた次回。


正義の味方

「……お前、今なんて言った?」

 

 本気か?否、()()()?と言いた気にヴァネッサ・ヴィクトリアは不本意ながらも相応の付き合いとなる同僚の発言を問い質す。

 

血染処女(バルゴ)の指揮権を一時的にではあるが副司令官であるパウエル少将へと委譲して私はダインスレイフとの決戦の地へと赴く。ヴィクトリア殿には苦労をかける事になると思うがそのフォローを頼みたいと言ったのだよ」

 

 さらりと告げられたそのとんでもない爆弾発言は目前の男のとんでもなさに慣れてきたヴァネッサをして額に青筋を浮かべざるを得ないものだった。

 

「……お前さんがわかっていないって事は無いと思うが念の為に確認しておくぞ。良いか、今回の作戦は私達二人で決めたものじゃない。私達の上官でありこの国の最高指導者、奏総統閣下が総指揮を取られている文字通り国の総力を挙げた作戦だ。

 そして私達二人に命じられたのはそれぞれの部隊で以て強欲竜団の本隊を釘付けにしてダインスレイフの奴を完全に孤立させておく事にある。その間に総統閣下自ら率いた帝国の最精鋭を以て奴を討つ。後は頭を失った強欲竜団の本隊をすり潰すなり、投降させるなりするーーーこれが今回の作戦だ。此処までは当然理解しているよな?」

 

 目前の男がこの程度の事をわかっていないはずがないと思いながらも、中将という高位にある人物としてヴァネッサ・ヴィクトリアは勘違いやすれ違いというのは往々にしてそういう()()()()の履き違えや食い違いによって起こる事をよくよく理解していた。故にまずは互いの間でその前提が共有されているかの確認を行う。

 

「無論だとも。プラーガと言う要衝に固執する事無く今のこの状況を作り上げた構想力、アンタルヤ商業連合という国が構造上孕む意志統一の遅さを徹底的に突いたその戦略眼、そして自らをも囮にするその胆力、どれもこれも全く以て流石は総統閣下だと感嘆を禁じ得ぬよ」

 

 語っている言葉には上位者たる現総統への敬意が満ち満ちている。それは決して目前の男が己が上官を侮っているわけでも軽んじているわけでもない事をヴァネッサにも否応なしに理解させるものであった。

 

「じゃあなんだって今更そんな事を言い出した。作戦内容に不備があるのであればそれは当然事前に言っておくべき事だ。この土壇場になって自分の役目を放り投げて独断行動に出るだなんて軍法会議にかけられても文句は言えないという事を当然理解しているよな?ーーーそもそもお前の子飼いであるパウエルはともかくお前の()()()()()でもある私がそれを見過ごすとでも思ってんのか?」

「君の語る事は全く以て正論だともヴィクトリア殿。軍隊に於いて指揮系統とは遵守されなければならない。さもなくば軍という組織は容易く規律を失い烏合の衆へと堕する。そして部下達に範を示さねばならぬ立場にある私が自らそれを破ろうとしているともなれば貴官とすれば制止するのは当然の事だともーーーだが、その上でそうしなければ我ら帝国は()()()()()を失う可能性があると私は判断した」

 

 糾弾を正論として真摯に受け止めながらも審判者は常にない沈痛な表情を浮かべながら、ヴァネッサ・ヴィクトリアをして看過しえない懸念を発した。

 

「……あの人がダインスレイフの奴にやられるとお前は言いたいのか?確かにダインスレイフの奴は特級の怪物だ。エスペラントになる前から散々に手を焼かされてきた上に、ついこの前も私のミスで仕留めそこなったしな。

 だがその事を重々承知の上であの人は今回文字通り必勝の布陣を整えた。戦場に絶対はないが、それでもこれで後れを取る事があるとすればそれこそ万一の可能性だとーーーお前も納得していたはずだ」

「ああ、確かにこの作戦を決行する段階では私もそう判断した。この布陣を相手に勝てる者がいるとすればそれこそ今は亡き大総統閣下位だろうとね。だが此処に来て私は無視し得ぬ情報を掴んでしまったのだよーーーかのダインスレイフが神星鉄(オリハルコン)を入手したかもしれないというね」

 

 告げられたその事実を前にヴァネッサ・ヴィクトリアは今度こそ正真正銘苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。既にかつて帝都を襲った魔星の正体についてはヴァネッサ達も知るところ。目前の男が何を危惧しているのかを理解したのだ。

 

「ダインスレイフの奴がエスペラントの上位存在である魔星か魔星そのものではなくともそれに準ずる存在に成ったかもしれない……つまるところお前の懸念はそれか。確かにそれが事実なら()()()が起こり得るな」

 

 一体どうやって目前の男がジェミニさえも掴んでいなかった情報を掴んだのかは気になるところではあったが、そこは余り追求しても仕方がない。

 何せ目前のギルベルトという男は総合値の怪物とでもいうべき目も眩むばかりに優秀な男であり、長年東部でダインスレイフとやり合っていた彼には本国に居るアルバートでは持たない独自の伝手というものが存在する。

 もしも事前にその情報を掴んでおきながらこの土壇場まで総統閣下の窮地を自らが救ったという功績を得る為に伏せていたというならばそれは許されざる背任というものだが、自らの栄達の為にそうしたつまらない()()()を目前の男はしないだろうと思う程度にはヴァネッサはギルベルトの事を()()していた。

 頭の中のブレーキを司る部分がはじけ飛んでしまっているとしか思えない男ではあるが、それでも彼の祖国への愛国心、そして故大総統と現総統への敬意はまごう事なき本物なのだから。

 故にその情報は文字通り真実ギリギリのタイミングで入手したものなのだろう。

 

「だがわかっているんだろうなギルベルト、どう言い繕ったとしてもお前が不確かな情報を下に本来の命令を無視して独断で行動するって事には変わりがない。お前の掴んだその情報がガセでお前のやった事がただの現場放棄で終われば、まず間違いなくお前には相応の処罰が降る事になるぞ」

 

 目前の男の優秀さとこれまでの功績、そして最高指導者からの信認を思えば流石に銃殺刑に処されるという事はないだろうがそれでもお咎めなしとは当然いかないだろう。

 何せギルベルト・ハーヴェスは極めて優秀な軍人なのだから。パウエル少将も無論ギルベルトに副司令官を任される以上相応に優秀な男ではあるが、それでもギルベルトと比較すれば1枚も2枚も劣ると言わざるを得ない。

 故にギルベルトを欠いた状態で強欲竜団の本隊と交戦する事となる血染処女(バルゴ)は必然本来よりも多くの血が流れる事を覚悟しなければならないという事だ。

 そして当然その責任が誰に帰する事になるかと言えばそれは独断を以て持ち場を離れる事を選んだギルベルト・ハーヴェスに他ならない。

 

「無論承知の上だとも。私如き愚者の首一つで総統閣下の万が一を防ぐ事が出来るというのならば、それは比較する事さえおこがましいというものだろう。何、私が更迭されたところで問題あるまい。何せダインスレイフを討ちとってしまえさえすれば遠からず商国との和平もなる。そうなってしまえばどの道ヴィクトリア殿が率いる猟追地蠍(スコルピオ)はともかくとして我が第六東部征圧部隊血染処女(バルゴ)は再編と縮小を行う必要が出てくる。司令官であった私が失態を犯したというのはむしろそれの良い口実になるだろうさ」

 

 語られたのはどこまでも保身とは無縁の現総統の国家構想を齟齬なく理解し、その実現の為とあらば自らが泥を被る事をまるで厭わぬ内容。軍の高官としては敬意を払って然るべきものであったが、余りにも度が過ぎたその献身ぶりにヴァネッサは近寄り難い想いを抱き閉口する。

 

「故に私の判断が間違っていた場合はそれで良いのだが、私が総統閣下の窮地を救ってしまった場合こそがむしろ問題でね」

「……総統閣下の命令を無視しての独断行動によって日頃から現総統批判を行っているお前が総統閣下の窮地を救ってしまう。ま、確かに諸々の面倒が起きそうではあるな」

 

 そうその場合結果としてギルベルトの判断こそが正しかった事になる。だが組織、それも軍隊という形式と手順が特に重視される場所に於いては結果さえ出せば総てまかり通るというわけにはいかない。そんな事をしてしまえば独自の判断で勝手な行動に出る者が続出してしまい、軍の統制は滅茶苦茶になるのだから。

 かといって窮地を救われた側であるタツヤがそれを問題にしてギルベルトを罰すれば当然角が立つ。ギルベルトが現状タツヤからの命令で以てタツヤに批判的な態度を演じているのも相まってより事態は拗れかねない。

 とはいえそれでもタツヤ・奏・アマツがその命を落とす、あまつさえファヴニル・ダインスレイフを前に軍事帝国アドラーがその総力をあげながら敗退した等という最悪の事態に比べればはるかにマシな問題ではあるだろう。

 

「故にヴィクトリア殿にはこうして事前に話をさせて貰ったのだよ。もしも結果として私が総統閣下の窮地を救う事と成った場合、それは最初から総統閣下からの御指示によるものだったとする為にね」 

「ーーーお前、自分が何言っているのかわかっているのか?失敗した時の責任は全部自分が取る。成功したらその功績は全部総統閣下のものにするって事だぞ」

 

 告げられた内容、それが保身の為ではない事がわかるからこそヴァネッサは思わず問い質してしまった。

 

「?それのどこに問題が?奏総統閣下こそ今のアドラーに於いて指標とするべき光に他ならない。このつまらぬ男がその盾と成れるというのならばそれこそ本望というものさ。無論失敗の暁には先ほど述べた通り喜んで全責任を取るとも。ヴィクトリア殿は私と違い今後もこの地を治める為に必要な人間だ」

 

 ギルベルト・ハーヴェスは既にタツヤ・奏・アマツへと敗北をして彼こそがクリストファー・ヴァルゼライドの後継者に相応しい事を認めた。故に彼は一切の躊躇なくタツヤが歩む王道の礎に成らんとする。勝者の総取りこそギルベルトの信じる正しき世の理である以上そこに異論は一切ない。

 それによってタツヤの声望ばかりが高まりギルベルトの名声に陰りが差す事などそれこそ本望というもの。何故ならばギルベルト・ハーヴェスの望み、それは光を尊ぶ守護の盾───“正義の味方”に成る事なのだから。クリストファー・ヴァルゼライド亡き後の帝国に於いてタツヤ・奏・アマツこそ衆生を導く光であると信じるが故にその光を衆愚の的外れな弾劾から守る為の盾に成れるというのならばそれこそこれ以上の喜びはないというものだった。

 

「そういう事じゃなくてだな……いや、もう良い。お前はそういう奴だったな」

 

 ヴァネッサ・ヴィクトリアは高潔で優秀な軍人だ。故にギルベルト・ハーヴェスの語っている事が軍事帝国アドラーの国益へと沿うものである事は理解出来るし、それが賞賛されて然るべきことである事もわかる。だが余りにも自らを省みない潔癖や誠実を通り越した在り様にどうしても常識人として近寄り難い想いを感じてしまうのだ。

 

「もう良い。好きにやれ。お前のやろうとしている事自体はおそらく間違っていないしな」

 

 だが私情(それ)判断(これ)は別の話。

 タツヤ・奏・アマツは稀代の傑物にして指導者だ。クリストファー・ヴァルゼライドという破格の男の死からようやく立ち直りつつあり、なんとか帝国を軟着陸させる術が見えて来たこの情勢でまたそれを失うわけにはいかないというギルベルトの判断は何も間違っていない。例えそれが万一のリスクであろうとそれを下げる為の手段があるというのならばその為の手を打つという事も。

 そしてその結果起こる弊害はギルベルトがその多くを引き受ける以上、後はギルベルト・ハーヴェスという男を欠いた状態で強欲竜団の本隊と激突する事となる血染処女(バルゴ)の補助をヴァネッサが行えば問題らしい問題は凡そ消えてなくなる。

 帝国の高官として道理や正しさで以て判断すれば本当に呆れる程にギルベルトの判断にはケチの付け所がない。ただその極限なまでに濾過された水のような在り方に勝手にヴァネッサがなんとも言えない複雑な想いを抱いているだけだ。そしてその辺りの私情を切り離して軍人として正しい判断が出来ればこそヴァネッサ・ヴィクトリアは今の地位にまで登り詰めた以上、もはやギルベルトのやる事に反対する理由はなかった。

 

「感謝するよ。苦労をかける事になるが、どうか私の部下達をよろしく頼む」

 

 そして彼らのこの判断と決断によって誰が割を喰らう事になるかと言えばそれはギルベルトの部下達に他ならなかった。

 タツヤ・奏・アマツというこの国の最高指導者には万が一さえあってはならない、そのリスクを回避するためにギルベルトが指揮を取っていれば死なずに済んだはずの兵士達が数百名単位で死ぬ事になったとしてもそれは()()()()だと判断したのだ。

 軍事帝国アドラーにとっての国益という観点からどこまでも冷徹に。だがそれでもギルベルトは部下達の奮起と生存を祈っている。傲慢との誹りを受けるかもしれないが、それこそ全員に生きて欲しいとさえ心から願っていた。

 

「それでは私は往くとするよ。ヴィクトリア殿を筆頭に多くの者に労苦を押しつける選択をしておきながら、これで間に合わなかった等となってはそれこそ目も当てられぬからな」

 

 そうして審判者は自らの肉体への反動などまるで省みる事無く発動値へと移行。

 もはや一刻さえも惜しいとばかりに自らの居室から飛び出して全力を以て戦場へと赴くのであった。

 

「……全く本当に心底厄介で疲れる男だよ」

 

 残されたヴァネッサはめんどくさそうにそう呟くと、自身もまた軍人としての責務を果たす為動き出すのであった。




糞眼鏡、こいつ本当に絶対服従にさせる難易度はクソ高い代わりに絶対服従にさせた時のリターンがガチで悪魔的。総統みたいな綺麗事では済まない大業を為したい人にとってビックリするレベルで都合が良い。
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