【完結】シルヴァリオサーガRPG実況プレイ   作:ライアン

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長らくお待たせいたしました。神祖とかいう悪魔共からの「一緒にリベラ―ティ平らげようぜ。そっちの方が楽でお得だぜ?」というささやきをねじ伏せて神祖滅殺の算段が一応整いましたので再開させて頂きます。


統治の要諦

 

 自国の勝利による終戦、指導者として国民から支持を獲得する最も手取り早く有無を言わせぬ効果を発揮する実績を手にした第38代総統タツヤ・奏・アマツはアドラーの戦時体制からの転換を図り出した。

 

「この勝利は諸君ら全兵士の献身あってのものだ。諸君らはこの8年間力の限り戦い続けた。そして守り抜いた。我らの偉大なる祖国を。私、第38代総統タツヤ・奏・アマツは諸君らの祖国に対する忠節に敬意を表すと共に、諸君らの代表者であれた事を心より誇らしく思う。どうか胸を張って帰り、家族に向かってこう告げて欲しい。「俺たちがこの国を守り抜いたんだ、タツヤの奴を勝たせてやったんだ」とな。諸君らは皆英雄だ!本当に、本当にありがとう!」

 

 そうして兵士達を激賞。8年間の戦争を戦い抜いた将兵に昇進、勲章といった恩賞の()()()()()()()を行った。幸いな事に帝国は戦勝国、軍人からの不満を産む最大の原因、散々苦労して命がけで戦ったにも拘わらず与えられた恩賞がない等という事態は避けられた。

 また併合したばかりの地域はいざ知らず、本国に於ける民の()()()()に向ける視線は至って好意的。祖国に栄光と勝利を齎すために献身した英雄達を人々は歓呼の声で以て迎え入れ、命を懸けて戦ってきた者達への労いの役割を果たした。

 これもまた“勝利”が齎した恩恵と言えよう。どれほど精力的かつ献身的に働いたとしても、敗者に与えられるのはいつだとて冷たい視線であり、そしてそれは往々にして国に致命的な分断を招くのだから。あらゆる指導者が“勝利”という栄光で以て戦争を終わらせようとする理由をその光景は何よりも雄弁に語っていた。

 

「統治の要諦とはつまるところ、大多数に如何にして不満を抱かせないかだ。私は軍の規模そのものを縮小する気は現状ない」

 

 大多数の者、そして家族には決して見せない顔を覗かせながら軍部における運命共同体ともいうべき四人の腹心へとそう告げて、宣言通りに軍の大多数へと不満を抱かせない事にタツヤは腐心した。

 元より軍事帝国アドラーは先代総統ヴァルゼライドの治世に於いて急激な拡大と膨張を遂げた国であり、そしてそれを成した最大の要因はエスペラントという新兵種にこそあった。

 故に拡大した領土に対してアドラーの持つ軍の規模は決して過大というわけではない。増して周辺諸国と併合した地から買っている恨みを思えば、軍縮に踏み切るのは余りにも時期尚早というもの。

 財政も黄金時代の加速度的な上昇に比べれば勢いこそ衰えたものの、いたって好調な状態。ここまで好条件が揃っているのであれば恩賞を出し惜しむ理由はなかった。

 兎にも角にも軍に所属する多くの者から、現総統もまた故大総統と同様に兵士(自分)の味方であると認識して貰う必要がタツヤにはあったのだ。

 ケチなトップに下の者は付いてこない。ヴァルゼライドにしても自らはまさしく滅私奉公の体現というべき在り様だったが、そんな自らの在り様が常人から大きく外れている自覚があった彼は兵士の待遇には血統派の将校達とは比較するのがおこがましい程に気を遣った。*1

 名門奏家の人間として順風満帆なエリート人生を送ったタツヤはどうしたとてスラム出身のヴァルゼライドに比すれば兵士達からお高くとまった貴族と認識される以上、この件に関しては気を遣い過ぎる位がちょうど良かった。

 

「変えるべきは軍の規模ではない、システムにこそある。これまで我々が取っていた体制は戦時のもの。平時のものへと移行する必要がある」

 

 これまでのアドラーに於いては軍集団は治安維持を主とする駐屯部隊と外征を主とする征圧部隊とに分かれていた。二つの部隊は基本的には対等と言って良かったが、進軍制覇の国是故か征圧部隊の側が駐屯部隊の制止を振り切り先行する事例がしばしば発生した。*2

 それは決して推奨される事ではなかったが、ヴァルゼライドに見込まれた勇将達がエスペラント技術を独占していた事による圧倒的な軍事的優位を誇る部隊を率いて負ける事などほぼ皆無。齎された勝利という結果、そして駐屯部隊と征圧部隊の関係性が対等であるがため意見が割れた際に征圧部隊の側が独自行動を起こす事は必ずしもその裁量を逸脱するものであるとは言えない事によって黙認、あるいは軽い口頭での叱責で済まされる事が常であった。

 それはアドラーが圧倒的なまでの軍事的優位を誇っていた時代に於いては領土の拡大に寄与したのも事実。しかしこれからの大陸に訪れるのは勢力の均衡による平和(牽制)の時代。実戦部隊の統制をより強固かつ厳格にする必要があった。

 

「駐屯部隊と征圧部隊は維持したままに統合。これを総軍とする。総軍の最高司令官には駐屯部隊の隊長を務めていた者達を大将へと昇進の上宛てる。クリンガー*3とリサルディ*4は大将へと昇進の上ハーヴェス大将と同様に中央の然るべき要職へと就いて貰う。そして空いた各部隊長の座には副司令官を務めていた者達を中将へと昇進の上宛てるものとする」

 

 表向きは両名に対する信認に思える中央への栄転、しかし実態はその真逆と言って良い。何故ならばエルンスト・クリンガーとフリッツ・リサルディ、帝国の勇将と名高きこの両名こそが反奏総統派閥の筆頭と言うべき者達なのだから。

 彼ら二人は同じ征圧部隊隊長であったギルベルト・ハーヴェス、そして今は亡きクロード・ケレルマンと同様にゾディアック隊長の中でも一際深く故ヴァルゼライド大総統を敬愛すると同時に、血統(アマツ)による支配への反発が一際強い者達であった。

 優秀ながらも平民出であった彼らは自身よりも能力に於いて劣っている者が実家の威光によって自分より早く出世する様を見る事などざらであったし、無能な上官が実家の威光によって処罰を免れて平民出の朋友が無実の罪を着せられる事も嫌という程に見ていた。

 無論だからといって彼らはタツヤがアマツであるから等と言う理由でタツヤに反発しているわけではない。タツヤ・奏・アマツが国家の要職の座に相応しいまぎれもない傑物である事は彼らとて百も承知。それがわからぬほどに彼らは愚鈍でも蒙昧でもない。

 彼らが反奏を掲げるのは偏に危機感である。軍事帝国アドラーは北部征圧部隊の敗戦とプロイシアへの親征の失敗を境にカンタベリー聖教国と手を組む道を選んだ。それはその後の結果を見れば紛れもない正解であったのだろう、アドラーは見事アンタルヤとの戦争に勝利して戦勝国と成ったのだから。

 だが聖教国との和平を結んだ帝国の聖教国への態度は当然の如く急激に軟化する事となった。そう第二太陽とアマツをこそ至上と崇め、かつてアドラーが否、この新西暦が血統主義によって覆われて閉塞した一因とも言える極東黄金教を奉じる聖教国とである。そしてそれは、奏という血統派の重鎮として知られていた一族の当主が総統の座に就いている事も併せて両名が疑心を抱く理由としては余りにも十分過ぎた。

 無論対立の理由はそれだけではない。彼ら両名は祖国を愛している。軍を愛している。民を愛している。命を懸けて戦ってきた自分達軍人にこそ国を導く資格があるのだと強く信じている。命を懸けて国の為に戦った事がないような者が一体どうして国を導けるのかとさえ思っている。故に政治主導、文官主導の国にしよう等というタツヤの方針は受け入れ難い。無論彼らとして武だけで国が治まらぬことなど百も承知、しかしその上で勉学にばかり励み命を懸けて戦った事もなく、汗のにおいを知らず、涙の苦さを知らず、危険を味わわず、恐怖に打ち克たず、苦しみを乗り越えず、理論と計算のみを知っている軽薄な才子気取り共が治めていた結果がかつてのこの国だったではないかと反発しているのだ。そしてそれは両名の名声と実績そして人格も併せて多くの兵士の心を捉えて然るべきものだ。

 ならばこそタツヤは彼らをあえて中央へと栄転させる手を用いた。帝国でも名高い勇将二人が猜疑心を拗らせた結果実戦部隊を掌握したままに暴発する等となっては目も充てられない。それ位ならば最初から国策へと関与しうる然るべき立場に就いて貰い、堂々とそれを主張して貰った方が国にとってははるかに健全というもの。

 ()としての両名は傑出している。真正面から軍を率いて激突した場合タツヤとギルベルトをして必ず勝つ等と豪語出来る相手ではなく、恐らくその力量は五分と言って良い。アオイ等は明確に後塵を拝す事となるだろう。

 しかし()()()としての力を競い合った時ギルベルトとアオイは確実にこの両者へと勝利する。それは才覚と適性の差もあるが、中央に於けるコネクションと経験の差が大きい。前線で武勲を挙げて駆け上がったクリンガーとリサルディはそうしたコネや経験をほとんど持ち合わせていないからだ。そして()()()としての力量を競い合った場合タツヤにはこの両名に完勝する自信があった。無論それらをねじ伏せて覆したクリストファー・ヴァルゼライドという特級の例外が居た事をタツヤはこの上なく良く知っているが……

 

「だからこそ()()()に不満を持たせない必要がある」

 

 クリストファー・ヴァルゼライドは何も独りで頂点にまで昇りつめたわけではない。かつてのアドラーが腐敗し、その在り様に疑問と不満を抱く多くの者がいればこそヴァルゼライドはその“()()この国を変えてくれ”という祈りを束ねてその担い手として頂点に立ったのだ。

 光は多くの者の希望の担い手足り得る光であればこそ勇壮で凄まじい力を発揮する。他者から求められぬ光などただの迷惑で眩しくて鬱陶しいだけの存在へと成り下がるのだから。

 

「何、仲良くやろうじゃないかクリンガー、リサルディ。私たちは共にこの国の為に戦ってきた戦友なのだから」

 

 おそらくクリンガーとリサルディの両名は中央に於いて相応の派閥を形成するだろう。だがそれはそれで全く以て結構な事。ヴァルゼライドが総統の座に就いていた時とてヴァルゼライドの余りに性急な拡大方針に疑念を抱き反対する者は相応に居たのだ。指導者に反対する者がいる事、それはその国家が健全である証なのだから。

 

「アルの奴ならうまくやってくれるだろう」

 

 そしてその手の調整と調停能力に関してアルバート・ロデオンの持つ能力は傑出している。ギルベルトとアオイのキレ過ぎる部分を上手く補い、軍を取り仕切ってくれる事だろう。

 

「そう何時までも軍ばかりを優先させるわけにはいかない。新たな国の基礎を固めるためにやらなければいけない事は無数にあるのだから」

 

 国という家が長続きするかどうかの多くは初代の跡を継いだ二代目の力量に依るところが大きい。タツヤ・奏・アマツは肩書こそ第38代総統だが、アドラーという国が第37代総統クリストファー・ヴァルゼライドによって事実上生まれ変わった事を思えば新生アドラーの二代目と言って良い。

 

「千年の繁栄は無理でも、せめて数百年は存続できるだけの土台を作りたいものだな」

 

 でなければ自分が必要な犠牲だと割り切り、国の礎へと変えてきた者達が余りにも浮かばれないのだからーーーと第38代総統は心のどこかに過ぎる“退屈”の二文字を押し込めるかのように気を引き締めるのであった。

*1
無論普通から大きく外れた彼の兵士に対する気遣いはある種のズレがしばしば生じたが、そうしたズレを補ったのが竹馬の友であるアルバート・ロデオンであった。

*2
その代表例と言って良いのが東部の両雄ギルベルト・ハーヴェスとヴァネッサ・ヴィクトリアであった。余談となるがギルベルトが中央へと栄転を果たした後のヴァネッサの酒量はギルベルトが居た頃の半分にまでなったという

*3
第五南部征圧部隊・灼焔獅子の隊長

*4
第十二西部征圧部隊・潜咬双魚の隊長




有能で清廉な人物同士ならば必ず仲良くなって手を取り合えるというわけではないのが世の中の難しいところですよね。むしろ有能な人こそ自信があればこそ早々譲れないなんて事がざらにある。
ゾディアック隊長の間にも当然のように方針の違いやらはあるのだと思います。それでも隊長たちによる合議制が機能不全を起こしてない辺りゾディアック隊長はヴァルゼライド総統に見込まれた傑物ばかりなのでしょう(ランスローとかいうスパイから目を逸らしつつ)

ちなみに今回のお兄様のやっている事に関して作者は当然のように神祖を参考にしています(光の封殺方法は光が勇壮な光足り得る多数からの支持を奪い、ただの傍迷惑な頑固者に貶めてしまうのが有効。戦場で最強を誇る勇者なら政治というこちらが得意なステージに引きずり込んでしまえばいい)
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