神祖滅殺へと動き出したアドラーはまずリベラーティへと了承の意を伝えた。色好い返事を貰えたリベラーティの当主ブリアックはその場で大げさな程に喜び、感涙にむせび泣きながらタツヤの手を取り、何度も何度も感謝の意を伝えて「この恩には必ずや一族を挙げて応える、決して損だけはさせない」ーーーと伝えてアドラーを後にするのであった。
そして次に行われたのはアドラー内部で泳がせていたカンタベリーの間諜に対する
「出世も栄光も命あっての物種ですからね。スパイである事を見抜かれていた
と堂々と言ってのける様に上官であるアルバートは苦笑。今後もこの油断ならず信用も信頼も出来ない部下をこき使う事にするのであった。人格の是非を置いておけばシン・ランスローという男には
そうして情報流出の恐れを潰すと軍上層部は秘密裏に神祖滅殺の任を帯びた特務部隊
そうフルメタルギガースへと志願した者の多くは傷痍兵、もう二度と戦えないと判断されて軍務から退いた者達ーーー身も蓋もない露悪的な言い方をすれば既に軍人としては使い物にならないと判断された者達ばかりなのだ。ラウディッツ民政大臣が告げたように本来であればそうした者達が社会に復帰できるよう尽力するのが国の役割であり責務というもの。それを
「だがそれでも為さねばならぬ事だ」
自らが君臨するこの第38代総統という玉座が敵と味方双方のおびただしい屍を礎にしている血塗られたものである事などタツヤ・奏・アマツは百も承知。その上でそれこそが
「というわけだオーバードライブ大佐。貴官にその意志があるのであれば貴官には第二世代型魔星となって貰い、本極秘作戦の指揮を執って貰いたい。これに対して貴官は明確な拒否権を有している。もしも拒否したとしても貴官の進退には一切影響しない事を総統として誓約しよう」
第二世代型
迦具土神壱型の消滅によって帝国はもはや特殊な素養を持った死体によって生み出される第一世代型魔星を新たに作り出す術を失った。素体と成り得る存在を割り出すための術がもはや新西暦では作りようがない最高性能のバイオコンピューターの演算なしには覚束ない以上、流石のネジが外れた研究者達もたった一体の魔星を作り出すためにどれだけの試行回数が現実的に必要となるかを考えた末に断念せざるを得なかったのだ。
しかしそこで研究者たちの中にまさしく雷の如き閃きが舞い降りる。そう何もアドラーが産みだした魔星は死者をもとにしたものばかりではなかったではないかーーークリストファー・ヴァルゼライド、あの今以てなお最強と謳われる伝説の英雄もまた歪で不完全な存在ながらも魔星と呼べる力を持った存在であったではないかーーーと。
かくして第二世代型魔星の開発は秘密裏に進められて来たのだが、その歩みは牛歩と言わざるを得なかった。何せ死体をサンプルにしていた第一世代型魔星と違って、第二世代型魔星は帝国軍に所属するエスペラントをそのまま次のステージに押し上げる事を目的としたものなのだ。エスペラントと呼ばれる存在の国家と軍にとっての価値と稀少性は今更語るまでもなく、当然失敗して被験者は死んでしまいました等という事に成っては目も当てられないし、成功例であるヴァルゼライドのように強化はされたが寿命が大幅に削れて軍人として働ける期間は数年程度となるのも当然論外。それらの条件を満足なデータ取りも出来ないままにクリアしなければならない以上、当然のように計画は暗礁へと乗り始める。
しかし、そんな最中に舞い降りた一筋の光明それこそがファヴニル・ダインスレイフの遺した改造データそのものであった。全身に及ぼした改造は何と37回、極め付きとばかりに行われた心臓部へのオリハルコンの埋め込み。それらのデータは暗礁へと乗りかけていた第二世代型魔星の開発に飛躍的な発展を齎した。後は実際にそれらを下にした改造施術を本計画の志願者である傷痍兵達に行い、本作戦を率いる指揮官にして保有する
だがそれには当然本作戦の中核を担うオーバードライブ大佐の同意が必要となる。オーバードライブ大佐の同意が得られなければアドラーとしては申し訳が立つ程度の戦力をリベラーティへと貸し与えて後の事は完全な出たとこ勝負となるだろう。神祖の持つ不死性の突破に必要と考えられるのはより高位次元との感応性が高いオリハルコンと高位次元との接続そのものに干渉する
「というのもだな、貴官が志願しないならば志願しないでこちらとしては構わんのだよ。貴官は優秀だ。軍全体を統括する将官とするにはいささか不安もあるが、前線指揮官として見た場合の貴官は傑出している。その力量も精神性も何から何まで帝国軍人の鑑と称するに値するものだ。そして保有するその
そう神祖滅殺のためにリベラーティへと協力する事は決定しても、送る人員の選抜の段階でもまた当然のように意見の対立は発生する。これが第二世代型魔星へと至った者総てが神祖滅殺をなし得るのであれば問題なかっただろう。しかし神祖滅殺をなし得るのはオリハルコンの出力に加えて高位次元との接続を破断し得る特殊な
その虎の子を果たして初手から投入すべきかどうかは当然のように帝国の上層部でも意見が真っ二つに割れた。当作戦が投入する人員の
故に軍上層部としては極めて異例な事に当人の判断に委ねる事にしたのだ。何せ一国の首都にもぐりこんでその国の中枢を担う四人の要人を纏めて暗殺しようという余りにも無茶で無謀な計画なのだ。その要人4人が非力な文官であるのならまだしもアドラー最高戦力であるチトセ・朧・アマツをも越えると予想される怪物どもなのだからどれだけそれが困難なものかも容易に想像出来るというもの。この作戦の遂行に己が命を使い切る覚悟がなければ成功など到底覚束ない事は明らかであった。
「故に重ねて言うが、これを断ったとしても貴官にとっての不利益は一切存在しない。貴官がいざという時に祖国のためにその命を惜しまぬ勇者である事は私も含めてみな重々承知しているのだからな」
一体誰がこの作戦への参加を拒否したという一事で以てジェイス・ザ・オーバードライブが勇者である事を疑うだろうか。彼のその祖国に対する愛国心と献身はこれまでの戦歴と胸に輝くいくつもの勲章が証明している。何よりタツヤにとってはダインスレイフ討伐に際して肩を並べて大いに頼らせてもらった戦友でもある。多くの子どもを持つ
「その任、喜んで引き受けさせて頂きますとも総統閣下。俺は貴方やハーヴェス大将程に大局を考える事が出来るわけじゃない。そんな俺でもこれが千載一遇の好機だって事はわかるつもりです。此処を逃せば次にそいつらを滅殺するチャンスが巡ってくるのは何十年どころか何百年先になるのかもわからない、そしてその次のチャンスが巡ってくるまでの間に奴らの計画が実現しない保証はどこにもない。だったら此処が命の燃やし時ってもんでしょうよ!」
問いかけに対する返答はそんなどこまでも半ば予期していた通りの力強く雄々しいものであったが故に、タツヤもその胸に抱いた葛藤を飲み干すように一瞬だけ目を閉じて
「総統として貴官の祖国への尽力と献身に心からの感謝を捧げる、オーバードライブ大佐。故に私は改めてここに誓約しよう。貴官のその献身を決して私は忘れない。歴史に記す事は出来ないが貴官たちの献身をこの胸の奥底にまで深く焼き付けよう。そして祖国に輝く明日を齎す事で以て報いてみせよう。当然遺族に対しては一生困らぬだけの支援を行う」
「その言葉が聞ければ俺としては一切の憂いなしってものですよ。うちの
上官と部下としてではなく一人の対等な人間として、戦友として、そして男として。拳をこつんとぶつけ合い決して違えるわけにはいかない誓約を新たにタツヤ・奏・アマツは行うのであった。
スメラギ「やるやるー僕達も命を賭して任務を果たして来いって部下達を送り出すときはそういうのめっちゃやるわー」
イザナ「その上で当然遺族への補償も怠らないし、国家の功労者として語り継ぐ。当然の事だな、それが上に立つ最低限の義務というものだ」
グレンファルト「ああ、大切な部下を犠牲にするのはいつだとて心が痛むものだ。だからこそその犠牲を無駄にしないためにも必ずやより良き未来を作らねばな」
当作で帝国の開発しようとしている第二世代型魔星は大体スフィアへの接続能力を持っていない版第三世代型魔星と一緒です。気合と根性で以て出力が戦闘中も増大していくという摩訶不思議な事が起こる事を前提にしてボディの耐久性とか頑丈性に重きが置かれているって奴ですね。本気おじさんが37回もの改造を要したのに対して帝国は数度の施術でしかも全身アダマンタイトだった本気おじさんに対して全身セイファートという完全上位互換状態になれるのだーーー!!!アドラーの技術は新西暦一ーーーー!!!