スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


ボスは針鼠→狼でした

ハリネズミや雪男、雪女に何度も遭遇しながらも三人は洞窟を下り崖の半ばより下の辺りに出た。

吹雪は随分と収まっており、見えなかった地面の景色も見えている。

 

「……飛び降りなくて良かったな」

「うん……飛び降りてたら串刺しになってたよ」

 

見るからに防御を貫きそうな、空に向かって伸びている鋭い氷が敷き詰められた大地に、コーヒーとメイプルはそう呟く。

 

コーヒーは試しに【遠見】を使ってその地面を確認していくと、氷の棘と棘の僅かな間に細い道があることに気付いた。

 

「彼処に飛び降りればショートカットになるだろうが……」

 

コーヒーはそう言いながら【ワイルドハント】の筏を召喚するも、数秒も待たずに氷の棘が上空から降り注ぎ、筏を速攻で光へと変えてしまう。

 

「……やっぱり駄目か」

「うーん、ここで一気に降りれたら良かったんだけど……」

 

メイプルはそう言ってコーヒーに背負われているサリーに視線を向ける。サリーはコーヒーに背負われたまま魔法を放って援護していたのでハリネズミに対しては戦えていたが、雪女が現れる度にサリーは震えて戦力外となっていた。

 

「うう……ごめん……本当にごめん……」

 

サリーは申し訳なさそうに謝るが、サリーのお化け嫌いは二人も理解しているので仕方ないと思っていた。

 

「……そうだ!【口寄せの術】!!」

 

メイプルは思い付いたように四階で手に入れたスキルを発動させる。

ボンッ!という音と共に白い煙が立ち込め、煙が晴れると黒色の大きな蛙が現れた。

 

「……何で黒い蛙?」

「……さあ?」

「この蛙に乗って飛び降りれば大丈夫だよね!!コーヒーくん、その細い道の場所を詳しく教えて!!」

「というか、蛙のステータスは?」

「ちょっと待ってね……え?」

 

コーヒーのもっともな疑問にメイプルが蛙のステータスを確認した途端、抜けた声を洩らした。

 

「……メイプル?」

「……VITが五桁で他は一桁、HPは三桁前半で、MPは二桁前半です」

「「駄目じゃん!?」」

 

まさかのメイプル蛙にコーヒーとサリーは揃って声を上げる。

実は【口寄せの術】の蛙のステータスは、スキル所有者のステータスが高確率で反映される仕様だったのだ。加えて、基本攻撃は丸呑みにし、十秒以内にHPを削りきれなかったら口から吐き出すという、ある意味メイプルと同じ攻撃方法である。

 

その為、運営は疑似メイプルが生まれてしまったと頭を抱えることとなったが……一日1回と十分という制限があるからまだマシだと考えて現実逃避することとなった。

 

「とりあえず……どうする?」

「せっかくだから蛙に乗って移動しよ?このまま帰すのももったいないし」

「……そうね。念のために糸で体を繋いでおくね」

 

サリーの【糸使い】でメイプル蛙の背中と自分達の体を繋げ、途中で落ちないように固定する。

そうして三人はメイプル蛙に乗って移動を始めたのだが……

 

「……最初から蛙に乗って移動したら良かったわね」

「こうもピョンピョン跳ねて崖下に向かわれるとなぁ……」

「飛ばなければ大丈夫ってことだね!!」

 

メイプル蛙は意外にも跳躍力があり、崖の出っ張りと崖の氷の棘を足場にしてピョンピョン跳ねて崖下に向かう姿にコーヒーとサリーは何とも言えない表情となっていたが、メイプルはドヤ顔していた。

 

そんな訳で思いがけなく二分足らずで崖下まで辿り着き、そのまま森のような氷の棘にある細い道を進んでいく。

移動?ピョンピョンと短く跳ねて移動してますが?

 

「う……こうも連続で揺れると酔いそう……」

「じゃあ、歩かせるよ。蛙さーん!跳ぶのは止めて歩いてー!」

 

メイプルの指示を受けてメイプル蛙は跳ぶのを止め、のしのしと細い道を歩いていくのだが……その移動速度はメイプル並みに本当に遅い。

 

「……このままだと途中で帰りそうだな」

「別にいんじゃない?一番の目的はちゃんと果たしてくれたんだし」

 

しかし、最初にピョンピョン移動していたのが良かったのか、メイプル蛙が帰還する前に三人は雪に覆われた円形の広場へと辿り着いた。

 

「ボス?」

「道はここで止まってるからその可能性は高そうだが……」

「そう言っている内に来たわね」

 

氷の棘をバキバキと大きな音を立ててへし折りながら、三人の正面から棘だらけの巨大な球体が勢い良く転がってくる。

その巨大な球体は、舌を伸ばしたメイプル蛙に丸呑みにされてしまった。

 

「「「…………」」」

 

多分、ボスであったであろう巨大な球体を丸呑みにした頬を大きくしたメイプル蛙に三人は言葉を失う中、メイプル蛙は丸呑みにしたそれを眼下へとぬにゅりと吐き出す。

 

吐き出されたそれは、棘をすべて無くした巨大ネズミだった。おそらくハリネズミであったであろうボスは、涎まみれで仰向けとなってわたわたと暴れている。

 

「……取り敢えず攻撃すっか」

「……そうね」

「……うん」

 

時間切れで煙と共に消えるメイプル蛙をバックに、三人はボスに攻撃を仕掛けていく。

 

「迸れ!蒼き雷霆(アームドブルー)!!【召喚:大砲】!【召喚:爆撃砲】!【雷炎】!【砲撃用意】!!」

「【ファイアボール】!【ウィンドカッター】!」

「【百鬼夜行】!!」

 

コーヒーは大砲を召喚して砲撃、サリーは火球と風の刃で、メイプルは二体の鬼を召喚してわたわたもがくボスをリンチしていく。

 

「え、絵面が……」

「気にしたら負けだ」

「あんまりダメージ出ないなぁ……」

「CFの攻撃は火属性以外の私やメイプルより多くダメージを与えていたから、火属性の攻撃以外にはダメージ軽減能力があるのかもね」

 

サリーのその予測は当たっており、例え【雷炎】が時間切れとなっても【無防の撃】の軽減無視効果があるのでコーヒーは他の二人と比べてボスにダメージを与えられる。

 

HPが八割となったタイミングでリンチを受けていたボスがようやく体勢を整え、ボスは鬼の攻撃を受けながらもガサゴソと雪の中へと潜っていく。

 

「あっ!逃げちゃったよ!!」

「いや、これは多分……CF!!」

「ああ!」

 

サリーの呼び掛けにコーヒーは頷き、いつでもスキルが発動できるように待ち構える。

少しして、ボスは青白い氷の棘を無数に生やした状態で地面から現れた。

 

「深淵に潜む光 輝きは次代に継がれ 此処に顕現す―――【聖刻の継承者】!!煌めく刻印にて浄化されし血潮の刃 形為すは鋼の聖地 その聖なる刃で群れを成せ―――【鋼鉄の聖域】!!」

 

ボスが顔を出したタイミングで【聖刻の継承者】と【アイアンメイデン】が限定進化したスキル【鋼鉄の聖域】を発動させたコーヒーは、そのまま展開していた大砲と合わせてボスを速攻で攻撃していく。

 

決められたダメージを与える無数の刃と火属性となった砲撃によりハリネズミの氷の棘はあっという間に折れ、爆風で吹き飛ばされたせいで再び仰向けでわたわたと暴れていく。

 

「【チェイントリガー】!!【連射】!!【フレアショット】!!【パワーブラスト】!!【地顎槍】!!」

「【ダブルスラッシュ】!!【パワーアタック】!!【ファイアボール】!!【トリプルスラッシュ】!!【疾風斬り】!!」

 

コーヒーはボスの腹にクロスボウを突き立てた状態でクロスボウによる攻撃スキルを零距離で喰らわせていき、サリーもイズのアイテムで武器に火属性を追加した状態でボスに攻撃を仕掛けていく。

 

メイプル?鬼の召喚中で自前のスキルが封印状態なので、攻撃アイテムの札をペタペタと張ってますが?

コーヒーとサリーが積極的に猛攻を仕掛けてHPが半分となったボスは、先程と同じようにガサゴソと雪の中へと潜っていき、その姿を隠してしまう。

 

「また!?」

「二人とも!パターンが変わるかもしれないから、一旦離れて様子を見るよ!!」

「了解!」

 

サリーが【氷柱】を発動させると、コーヒーは【跳躍】を使って氷の柱の上へと登り、メイプルは糸でサリーに引っ張られて地面から離れる。

直後、地面から氷の棘が不規則に伸び、地面にいた二体の鬼は全身を貫れて消えてしまった。

 

「あ、危なかった……」

「次からは地面にも注意しないと駄目だな」

「ボスは下にいるから当然でしょ」

 

そうこうしている内に地面の氷の棘は収まり、代わりに氷で出来た強靭な右前足が地面から出てくる。

 

「……なあ、ボスの前足ってあんなだったか?」

「そんな訳ないでしょ」

 

そんな意味のないやり取りをしている内に、それは地面から姿を現す。

青白い氷で構成された体のあちこちに同じ氷で作られた鋭い棘を生やし、その姿はまるで狼。だが、その顔は先程まで戦っていたボスのハリネズミだ。

どうやら、あのボスは背中の棘と同じように氷で狼の体を作ったようである。

 

「……見るからに凶悪そうなんだが」

「そうね。どの攻撃も貫通攻撃を持ってそう」

「一気に可愛げがなくなっちゃった……」

 

三人がそう呟いていると、巨大な氷狼となったボスは飛び上がって体を丸めると、猛烈に回転しながら三人に向かって落下してきた。

 

コーヒーはそのまま飛び退き、サリーは糸を繋げたまま飛び退いてメイプルを引っ張りボスの体当たりをかわす。

サリーが生み出した氷の柱は破壊されることはなかったが地面へと押し込まれ、ボスは回転しながら地面を駆け、途中で制動をかけて静止した。

 

「【砲撃用意】!!」

 

その瞬間をコーヒーは周囲に展開されている大砲を放って攻撃を仕掛けるも、ボスのHPは変わらずに氷の体が少し削れるだけだった。

 

「うげぇ……あの体を壊してからじゃないとダメージを与えられないのかよ……」

「このボスもあんまり長引かせると面倒ね」

 

コーヒーとサリーは早々に決着を着けなければならないと考えていると、ボスはその前足で地面を叩き、直線上に無数の氷の棘を地面から瞬く間に伸ばし、三人を貫かんと迫って来る。

 

「!!【身捧ぐ慈愛】!!【ピアースガード】!!」

 

氷の棘の出現速度と範囲から、メイプルは咄嗟に二つのスキルを発動させる。そのおかげでコーヒーとサリーはダメージを負うことなく無傷で済ませられた。

 

「悪いメイプル!助かった!!」

「ナイス判断!!【ピアースガード】の効果が切れない今の内に!!」

 

メイプルにお礼を言いながら、サリーは自身のインベントリを操作して【樽爆弾ビックバン】を再び回転して迫るボスの進行上へと急いで設置する。

 

「【ヘビーボディ】!!」

 

メイプルがSTRがVIT以下だと動けなくなる一分間ノックバック無効化スキル【ヘビーボディ】を発動した直後にボスはドデカイ樽に激突。盛大な爆発を上げる。

 

「やっぱりこの爆弾は強力過ぎるだろ……」

「そうね。お陰で助かってるけどね」

 

【身捧ぐ慈愛】のお陰でダメージを受けずに済んだコーヒーとサリーがそう呟く中、今の爆発で氷の体を全て粉砕されたハリネズミは今までと同じように仰向けでわたわたと暴れている。

 

「迸れ!蒼き雷霆(アームドブルー)!!【雷神陣羽織】!!雷撃宿し結晶よ 我が手より放たれ その怒りを以て咆哮せよ―――【爆雷結晶】!!」

 

コーヒーは【名乗り】でステータスを強化し直しつつ雷神モードとなり、【鋼鉄の聖域】を解除して【爆雷結晶】を発動させて結晶を次々とハリネズミに向かって放っていく。

 

「そろそろ起き上がるタイミングよ!!」

「ああ!【九頭龍雷閃】!!」

 

サリーの指示にコーヒーは砲撃で応え、ハリネズミの周りに貯めに貯めた結晶ごとハリネズミを攻撃した。

爆雷。轟音。

その二つによってハリネズミは盛大に上空へと吹き飛ばされ、HPが残り一割を切る。

 

「【クインタプルスラッシュ】!!」

 

そこを【氷柱】と【跳躍】を使って高く飛んだサリーがSTR強化の【ドーピングシード】を限界まで使用した状態で、スキル【追刃】の追加効果を合わせた計20連撃の攻撃を叩き込み、ボスの残りのHPを刈り取るのであった。

 

「久々に陣羽織の内包スキルを使ったな……」

「そういえばそっちにもあったわね。CFはあの威力が壊れている魔法を放つことにしか使わなかったから忘れてたわ」

「私も蛙さんと鬼さんが活躍してくれたよ!」

 

これで残り三階となった三人は、そのまま八階へ続く魔法陣へと足を踏み入れるのであった。

 

 

 




「【カバー】!!」
「【武者の腕】!!」
「輝け!【フォトン】!!」
「【ボルケイノボマー】を投げるねー」
「氷の棘が全部無くなると転倒するんだな」
「わたわた暴れる姿が可愛いわねー」
「動けないなら……【鏡ノ結界】」
「それじゃあー、二人ともよろしくねー」
「「はい!任されました!!」」

鏡の中に閉じ込められ、四つの大槌で鏡ごと粉砕されたボスの図。

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