スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


八階は力技。九階はお約束

七階のボスを倒したコーヒー達は八階へと来ていた。

 

「まるで前回のイベントエリアのような場所だな」

 

コーヒーの言う通り、八階は第六回イベントを彷彿とさせる密林であり明確な道はなく、前も後ろも同じような密林が広がるだけである。あちこちに深い茂みがあり、太い木の幹を這うようにして蔓が伸びている。

高い木の上には色とりどりの木の実が生えているだけで、進むべき方向を示すようなものではなかった。

 

「えっと……どっちに行けばいいんだろう?」

「転移した時に向いてた方向……かな?」

「じゃあ、あっちに向かって進んでみるか」

 

三人はこのまま立ち止まっていても何も進まないと、取り敢えず正面へと歩き出す。その瞬間。

 

「わっ!?」

 

メイプルが背後から何かに突き飛ばされるように、地面に凹みをつくりながら前に倒れ込んだ。

 

「「メイプル!?」」

 

それを見たコーヒーとサリーは互いの得物を構え、鋭い目付きで周囲を凝視していく。サリーに至っては【魔力感知】を発動した状態でだ。

そのサリーの紫に光る左目には、遠くへと消えていく赤い靄を二つ捉えていた。

 

「……遠ざかる赤い靄が二つ。完全にモンスターの攻撃ね」

「どうする?追いかけるか?」

「それはちょっと厳しいわね。あの色とりどりの木の実の幾つかに赤い靄が見えるから」

「そうなると、一人で突っ込むのは危険か……メイプル、【身捧ぐ慈愛】を頼む」

「う、うん!!」

 

突然の不意討ちから起き上がったメイプルは素直に頷いて、すぐに【身捧ぐ慈愛】を発動させる。

 

「しかし、そのモンスターは厄介だな。全然気配を捉えならなかった」

「そうとう隠密が上手いモンスターね。【魔力感知】で見つけられるだけマシだけど」

「そうだね、二人が攻撃されなくて良かったよ」

「とりあえず、《信頼の指輪》に【魔力感知】を登録しておくわね」

「頼んだ」

 

《信頼の指輪》で【魔力感知】が使えるようになったコーヒーは【結晶分身】でクロスボウを増やし、メイプルも【機械神】の武装を展開して慎重に密林の中を進んでいく。

 

そうして進む中で、猿のモンスターが爆発する木の実を投げてきたり、地面からボコボコと根が伸びてきたりしたが、メイプルのおかげでノーダメージ。さらにサリーの【魔力感知】で事前に察知できるので警戒も容易だった。

 

「あの猿のモンスターは……違うよな」

「そうね。勘でしかないけど、最初にメイプルに攻撃してきたやつとは違う気がするのよね」

 

そんな会話をしながらも、コーヒーは右手に持つクロスボウ矢を放つ。放たれた矢は木の茂みから顔を出した猿のモンスターの額に命中。一撃で光へと変えていく。

 

「にしても、本来は一つしか持てないクロスボウが疑似的に二つも持てるなんてね」

「一応、ステータス状は一つの武器として扱われている状態だな」

「それで【グロリアスセイバー】を放ったらどうなるのかな?」

「「…………」」

 

メイプルの何気無い一言にコーヒーとサリーは黙る。六階で分身状態のクロスボウの威力を検証したところ、威力そのものは分身前と何も変わらなかった。

本来は装填の手間があるが、自動装填スキルによってそれも解決状態。しかも個別扱い。つまり……

 

「……あれが二撃も来たら引くんだけど」

 

もし【結晶分身】のクロスボウからも【グロリアスセイバー】が放てたら、ある意味最悪の二連撃となる。

唯でさえ複数のスキルの相乗効果で、威力が一撃だけという縛りを除けば【楓の木】の攻撃担当の破壊力を上回るというのに、それが一つ増えた可能性が浮上したことでサリーは遠い目となる。

 

コーヒー?サリーと同じ表情ですが?

コーヒーが積極的にモンスターを倒していきながら、ボス部屋らしき場所を探して進んでいくと三人の目の前に草木に侵食された古い石碑が見えてきた。

 

「あ、何かあるよ」

「魔法陣もないし、ボス部屋って訳じゃなさそうだけど……」

「とりあえず石碑の内容を確認するか」

 

三人がその石碑に近づいていくと、そこには文字が書かれていた。

 

「狡猾な森の主とその伴侶を倒した者の前に道は現れる、か」

「ボスのことかな?」

「だろうな」

「じゃあ倒さないと、ぉっ!?」

 

話している途中で唐突にメイプルが前につんのめって石碑に顔を強打する。

コーヒーとサリーがとっさにその方向を見ると巨大なカメレオンが木に引っ付いており、透明となって消えていくところだった。

 

「あいつか!!」

 

コーヒーはそのカメレオンであろう赤い靄に向かって連続で矢を放っていく。透明となって肉眼では見えないカメレオンは俊敏な動作で木々を伝い、矢から逃れようとする。

それでもクロスボウの二丁ゆえの手数の多さで二、三射は赤い靄に突き刺さる。

 

「うわっ!?」

 

そのタイミングでサリーの悲鳴が上がる。コーヒーがそちらに顔を向けると、サリーが空中後方に引っ張り上げられているところだった。その先には巨大なカメレオンと、赤い靄がかかった木の実がある。

 

「流石にまずいぞ!?【疾風迅雷】!!【ライトニングアクセル】!!」

 

コーヒーは状況のヤバさから有無を言わせずにメイプルを肩に担いでスキルと魔法を使って加速する。

 

「【糸使い】!!【右手:糸】!!」

 

カメレオンに引っ張られているサリーは右手から蜘蛛の糸を近くの幹に放つ。

そのタイミングで頭上の赤い靄がかかった幾つもの木の実がサリーに落ちてきて爆発を放つが、ギリギリ【身捧ぐ慈愛】の範囲内に戻ったことでダメージは受けずに済んだ。

 

「まさかカメレオンが二体いるなんて……」

「“狡猾な森の主とその伴侶”……確かにその通りだったな」

「とにかくまずは命綱ね……流石に二体同時攻撃は厄介だからね。メイプルもそれで……」

「……すぅ」

「「メイプル!?」」

 

まさかの睡眠にコーヒーとサリーはまた声をハモらせる。しかし、すぐに原因に気付いた。

 

「まさか、最初のカメレオンのあの攻撃……」

「時間差で睡眠の状態異常攻撃なの!?これは本当にまずい!!」

 

サリーは慌てて両手から蜘蛛の糸を出し、自身を繋ぎとしてコーヒーと寝ているメイプルの体を繋ぐ。

睡眠は二十秒の間行動不能となる状態異常。それが時間差で与えるだけでも厄介なのに、敵は連携が上手い二体のカメレオンなのだ。先程のように分断されたら堪ったものではない。

 

「今のところ、防御貫通がないのが救いね……」

「まったくだ。取り敢えず、次見つけたら速攻で【スパークスフィア】を叩きこんでやる」

「んむぅ……?……あれ?」

 

そうこう話している内に二十秒きっかり経過してメイプルが目を覚ました。

 

「……あ!!」

 

メイプルは思い出したように慌てて周囲を確認する姿に、コーヒーとサリーは思わず笑みを溢してしまう。

 

「大丈夫だよ、メイプル。寝ている間に襲撃はなかったから。流石に命綱はさせてもらったけどね」

「そっか。【身捧ぐ慈愛】も消えてないし……よかったあ」

「それじゃあ、カメレオン夫婦を探しに行くか。幸い、【魔力感知】で探すことは出来るからな」

 

メイプルを先頭にし、サリーがメイプルの“目”、コーヒーは後ろを警戒しながら慎重に密林の中を進んでいく。

 

「サリー?ボスらしい存在はまだ見えないのー?」

「うん。今のところは此方に近づいてくる赤い靄はないわね。CFは?」

「此方も同じくだ」

 

サリーは【糸使い】で両手が使えない状態のため、攻撃はコーヒーとメイプルに頼らなければならない。もっとも、近づけるかすら怪しいが。

 

「あ、彼処の木の幹に大きな赤い靄があるわ。肉眼で見えないし、形からしてあれがボスかも」

 

サリーがそう言って指差す先には、何もない一本の木が佇んでいる。コーヒーの紫に輝く左目には、サリーの言うような赤い靄が確かに存在している。

 

「それじゃあ、【攻撃開始】!!」

 

メイプルが銃弾とミサイル、レーザーをその木を吹き飛ばさんと言わんばかりに容赦なく放ち始めていく。

 

メイプルは【魔力感知】といった対象を感知するスキルがないので、透明となっている上に音も気配もないカメレオンの正確な場所が分からない。なので、周りごと吹き飛ばせば良いよねという考えに至るのはある意味当然である。

 

そんなある意味不意討ちと言える攻撃を受けた赤い靄は木の幹から吹き飛び、ゴロゴロと地面を転がっていく。

 

「!!メイプル、しゃがんで!!」

「へ?―――うわぁっ!?」

 

サリーの警告にメイプルが間抜けな声を洩らした直後、右から衝撃を受けたように地面へと倒れ込む。

 

「【ヴォルッテックチャージ】!!【スパークスフィア】!!」

 

コーヒーは強化した【スパークスフィア】を、メイプルの右側の方向にある木の枝の上の大きな赤い靄に向かって放つ。

 

大きな赤い靄は木の陰に隠れようとしたが、【スパークスフィア】の攻撃範囲から逃れられずに攻撃を受け、そのまま地面へと落ちる。

 

コーヒーの攻撃を受けた赤い靄は透明化が解除され、その姿が露となる。

姿を現したカメレオンはHPが半分以下となっており、麻痺とスタンが入ってその場から動けずにいた。

 

「【連射】!!」

 

すぐさまコーヒーはスキルによって二丁のクロスボウから矢を連続で放つ。【結晶分身】からも本体と同等の数の矢が放たれ、カメレオンに容赦なく刺さっていく。

コーヒーの攻撃で麻痺とスタンを受けて動けなかったカメレオンはそのまま、光となって消えるのであった。

 

「よし!一体撃破だ!!」

「ナイスCF!!このままもう一体も―――」

 

サリーはそう言ってメイプルが攻撃した赤い靄がいた場所に目を向けるも、その赤い靄は既にいない。

代わりに、木の上に登っていたカメレオンが何体もいる姿が見えた。

 

「数が増えちゃったよ!?」

「全部に赤い靄……どれも同じ濃さだから此方でも見抜くことができないな」

「流石に何か策を考えないと厳しいわね」

「【アシッドレイン】はどうかな?毒の雨で一気に……」

「密林でなければな」

 

こうも木々が生い茂っては、それが傘代わりとなって逃れることが出来てしまうので現実的ではない。

 

「強化した【ディバインレイン】ならどうだ?範囲と威力が高いから妥当だと思うが?」

「それしかないかな?私には範囲攻撃スキルはないし、メイプルは……いや、九階はCFのあれで吹き飛ばせば……」

 

そうしてサリーの提案で決まった作戦は……

 

「―――【ディバインレイン】!!」

「―――【毒竜(ヒドラ)】!!」

 

力技によるごり押しであった。

【ヴォルッテックチャージ】と【口上詠唱】で超強化した雷の雨が広範囲に降り注ぎ、三つ首の紫の竜は容赦なく毒のブレスを吐いていく。

そんなごり押しにカメレオンは分身もろとも巻き込まれ、三人にその最後を見られずに消えていくのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

―――翌日の運営ルームにて。

 

「そろそろイベントも佳境ですね」

「ああ。にしても最高難易度をクリアしたのは現時点では【集う聖剣】のみか……」

「【炎帝ノ国】や【thunder storm】、【ラピッドファイア】のトップパーティーも十階に到達してますがまだ攻略できてはいませんね」

「……【楓の木】は?」

「……どっちも十階への挑戦権を得ています」

「……九階のあの三人の戦闘シーンを確認してくれ」

「……分かりました」

 

男は若干震える手付きでキーボードを操作して録画映像をモニターに映し出す。

その映像は……

 

「CFが【名乗り】からいきなり【聖刻の継承者】を発動したな」

「ええ。そこから【結晶分身】、【雷神陣羽織】、【ジェネレータ】、【ヴォルッテックチャージ】を【口上強化】して発動してますね」

「メイプルはCFの護衛、サリーはボスの足止めだな」

「あ、CFが【グロリアスセイバー】の長い詠唱を始めましたね」

「……一撃で倒されないよな?」

「……大丈夫の筈です。最低でも一割は残―――」

 

その言葉は、二つの宝剣がボスに直撃し、ボスが光となって消えたことで遮られることとなった。

 

「「…………」」

「……あかん」

「これは……あかん!!」

「なんで【グロリアスセイバー】が二撃も放たれるんだよ!?」

「た、たぶん、【結晶分身】が原因かと……」

「だよなぁ!?システム上は同じ武器扱いだし!!」

「ど、どうします!?」

「次の階層の実装に合わせて修正するに決まってるだろ!?あれが遠距離からの二撃となると流石にまずいし!!」

「ですよねぇ!?どっちを修正します!?」

「【グロリアスセイバー】の方に決まっているだろ!?」

「ですよねぇ!?」

 

こうして、またしても仕事が増えたことに、運営は涙を浮かべながらも休日返上を覚悟して仕事をするのであった。

 

 

 




『本当に最高難易度は鬼畜』
『ボスも道中のギミックも本当に厄介』
『ガチで上級者向け』
『【集う聖剣】の最高戦力のパーティーはクリアできたようだが』
『やっぱり一発?』
『いや。どうやら二回目で倒せたみたいだ』
『ラスボス三人衆は?』
『……一発でクリアしそうだなぁ。四層のあれに勝ったくらいだし』
『メイプルちゃんは三連勝だし……あり得る』
『CFのあれは威力がまだまだ上がるみたいだし』
『サリーちゃんのPSも本当に人外だし』
『まさに組ませるな危険!!だな』

一部スレ抜擢。

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