スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


十階は騎士

九階のボス部屋にて。

 

「本当にこれはヤバイ」

「そうね。確実に修正されるわね」

「あはは……」

 

コーヒーは自身がやらかした結果に顔を引き攣らせ、サリーは遠い目で呟き、メイプルは曖昧に笑っていた。

 

九階はこのエリア限定の効果【星の力】で移動するもので、ボス部屋までの道中はシロップをメインにしてボス部屋まで到達。ボスはコーヒーの【羅雪七星】を除いて最大強化した【グロリアスセイバー】で吹き飛ばそうという考えでボス部屋に突入した。

 

そこで確認の為にも【結晶分身】を発動した状態で最大強化した【グロリアスセイバー】を発動したところ、なんとそれぞれのクロスボウから雷の宝剣が放たれたのだ。それもタイミングがずらせるというオマケ付きで。

 

そんな超威力の雷の宝剣を二つもまともに受けた九階のボスは耐えきれる筈もなく、サリーの足止めで僅かに減っていたとはいえ、ほとんど満タンだったHPはすべて吹き飛び、ボスは光となって消えていった。

 

遠くから放てる攻撃が二回。コーヒーの言葉通り本当にヤバイ結果であり、サリーの言った通り確実に修正対象である。

修正自体は今回のイベントが終わってからだろうが。

 

「十階は……明日以降でいいだろ」

「ええ。十階も相当手強いだろうし、スキルは全部使用可能にしておきたいしね」

「【黄金劇場】から【影ノ女神】の瞬殺コンボは?」

「それで決まればいいんだが……何かしらの対策をしていそうなんだよな」

 

どちらにせよ時間も遅く、十階は万全の状態で挑みたい為今日はここでお開きとするしかないだろう。

最上階である十階へと続く魔法陣を確認した三人は、十階への挑戦は後日にしてそのまま塔の外へと出ていくのであった。

 

「ちなみに【アイアンメイデン】の使用は?」

「……できれば使わない方向でお願いします」

 

……ジェイソンモドキの傷がまだ癒えきっていないサリーであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

日を改めて、スキルが万全となった所で三人は塔の前に立った。

 

「準備は万端。イズさんのアイテムもバッチリだ」

「私も!【黄金劇場】のデメリットも終了して【影ノ女神】も制限が解除されたよ!!」

「それじゃ、九階へ行こうか」

 

三人は九階に戻り、上に続く魔法陣の前で最終確認をする。コーヒーの《信頼の指輪》には【雷帝麒麟の覇気】【氷霜】【ワイルドハント】が、サリーの《信頼の指輪》には【大噴火】【空蝉】【氷柱】が登録されている。

 

サリーの【剣ノ舞】も【刃竜ノ演舞】のバフも最高まで高まり、【ドーピングシード】も【樽爆弾ビックバンII】もイズからもらっている。コーヒーも【クラスタービット】をメタルアーマー状態にし、【結晶分身】で二丁クロスボウと万全の態勢だ。

 

強力なスキルには回数制限があるので、できれば一発でクリアしたいところである。

メイプルの【身捧ぐ慈愛】は相手の出方次第。【黄金劇場】は開始早々で発動することは先日の話し合いで既に決まっている。

 

すべての準備を終えた三人が十階へと足を踏み入れる。

三人の目に入った景色は今までのようなダンジョンではなく、光が差し込む石造りの広間だった。ドーム状の天井を持つ円形のフィールド以外に、どこかへ続く道はなく、中央には光を受けて輝く銀の重鎧を身につけた者がいる。

その鎧は無骨で装飾はほとんどなく、持っている剣と盾も特別な見た目をしているわけでもない。

 

「何か、普通そう……?」

「見た目は確かにそうだが……」

「てっきり如何にもな見た目かなと思ってただけに、少しだけ拍子が抜けたわね」

 

てっきり最後に相応しい凶悪な見た目と想像していただけに、見た目は本当に普通のボスに、三人はそう呟く。

そのボスはフルフェイスのヘルムによりその表情は読み取れないものの、目の隙間が一瞬光ったかと思うと、地面に刺していた鉄の剣を引き抜いた。

 

「来るぞ!」

「ええ。メイプル!」

「うん!【黄金―――」

 

メイプルが【黄金劇場】を発動しようとした瞬間、ボスが剣を持つ反対の、腕に盾が括り付けられた手をメイプルに向ける。途端、メイプルの足下から黒い鎖が生え、一瞬でメイプルを縛り上げた。

 

「メイプル!?」

 

いきなりメイプルが拘束されたことにサリーが驚きつつも、すぐにメイプルを縛る黒い鎖を破壊しようと動く。しかし、黒い鎖はまるで役目を終えたようにすぐに地面へと消えてしまった。

 

「えっと、今のは……?」

「メイプル!急いでスキルを確認してくれ!!舞え、【雷旋華】!!」

 

コーヒーは疑問の声を上げるメイプルにそう言うや否や、雷のドームを展開する。

その雷のドームに、盾を構えて迫って来ていたボスが激突。雷のドームを突き破ってメタルアーマーを纏った状態のコーヒーをそのまま盾で吹き飛ばした。

 

「うおっ!?」

「CF!」

 

サリーが吹き飛ばされて壁に激突したコーヒーに視線を向けるも、ボスはその隙をつくかのように鉄の剣をサリーに向かって振り下ろす。

 

「っ……ふっ!」

 

サリーはギリギリでそれに気づいて紙一重で避け、斬り返す。

しかし、ボスも盾で弾いて防ぎ、再び斬りかかる。

サリーがボスの攻撃を避け、弾いていると、メイプルの驚いた声が辺りに響き渡った。

 

「嘘!?【黄金劇場】が取られちゃってる!?」

「ええ!?」

 

二階のボスと同じスキル強奪能力に、サリーは驚きの声を上げる。

そのボスは、鉄の剣に雷を纏わせ、地面に叩き付けようとしていた。

 

「【連射】!!」

 

コーヒーが壁に埋まったまま、二丁のクロスボウから連続で矢を放つも、ボスは避けようとも防ごうともせずにそのまま剣を振り下ろそうとする。

 

「【八式・静水】!!」

 

サリーはその場から飛び退くと同時にスキルを発動する。

ボスが地面に振り下ろした剣は、叩き付けた場所を中心に雷の爆発を起こし、サリーを呑み込みつつメイプルを吹き飛ばした。

 

「うわっ!?」

 

雷の爆発で吹き飛ばされたメイプルのHPは変動なし。サリーも【八式・静水】のおかげで攻撃を受けずにノーダメージだ。

 

「【ダブルスラッシュ】!!」

 

その状態でサリーはダガーを振るい、ボスを攻撃する。ボスは盾を構えてサリーの斬撃の半分を防ぐも、もう半分は防ぎ切れずに足と肩に斬撃を受ける。

 

コーヒーも矢だけでなく雷の槍も放ってサリーを援護していくも、ボスは剣と盾を駆使してほとんどの攻撃を防いでいく。

 

「【カバームーブ】!!【カバー】!!」

 

そんな攻防にメイプルが【カバームーブ】で瞬時にサリーの下へと移動し、《闇夜ノ写》でボスの攻撃を受け止め、【悪食】で剣と右腕を呑み込んでいく。

 

「メイプルナイス!!」

 

サリーはメイプルにお礼を言うと、右腕と剣を失ったボスに斬り掛かっていく。

脇腹を斬られたボスはすぐに腕が元通りとなり、地面から生えた新たな剣を引き抜くとサリーに構わずにメイプルに襲いかかった。

 

「蹂躙せよ、終焉城塞(ラストキャメロット)!!【全武装展開】!!【攻撃開始】!!」

「迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)!!弾けろ、【スパークスフィア】!!」

 

メイプルは即座にステータスを強化しつつ、速度重視で武装を展開。コーヒーもステータス強化して範囲攻撃の雷球をボスに向かって放ち、メイプルも攻撃していく。

 

ボスはメイプルの銃弾を剣と盾を駆使して弾きながら、対処しきれずにダメージを負うのもお構い無しにメイプルに接近。コーヒーが放った雷球が炸裂する直前で一瞬だけ鎧から炎を噴き出させ、その姿をかき消した。

 

「えっ!」

「何っ!?」

「メイプル!後ろ!!」

 

サリーの言葉通り、後ろに現れたボスがメイプルに向かって大上段から剣が振り下ろされる。

メイプルは咄嗟に《闇夜ノ写》を振り下ろされた剣に向かって突き出すも、《闇夜ノ写》は衝撃波と共に真っ二つに斬られてしまう。

そのまま高速の斬撃をメイプルに叩き込み、メイプルの兵器を破壊した上でHPをガクンと減少させた。

 

「ヤバい!サリー!!」

「分かってる!!」

 

その減少量から剣そのものに防御貫通能力がある上に、すべてを喰らえばメイプルがやられていたと察したコーヒーはメタルアーマーを解除して蒼銀の津波としてボスに向かって放つ。サリーも糸を放ってメイプルを自身の下へと引き寄せ、ボスの攻撃から強引に逃れさせた。

 

「癒せ、【ヒール】!」

「うう、ありがとう、サリー……ダメージ受けちゃった」

「それは流石に仕方ないだろ。けど、一発でクリアするぞ!!」

「うん!頑張るよ!!」

「私が一旦ボスの速度を落とさせるから、CFは援護。メイプルは攻撃を受けないようにしてて!」

 

サリーはそう言ってボスへと突撃していく。コーヒーはサリーを援護すべく矢をボスに向かって連続で放ちつつ、【クラスタービット】でも攻撃を仕掛けていく。

 

「朧、【覚醒】【幽炎】!!【大海】!!【古代ノ海】!!」

 

朧から青白い炎が放たれ、サリーからは水が溢れ出す。どのスキルも受けた相手のAGIを低下させる効果を持っている。

それに対し、ボスは足下に迫っていた水に自らの盾を叩き付けた。その途端、サリーの速度が減少し、【古代ノ海】で生まれた魚達もサリーに向かって水を撒き散らし始めた。

 

「スキルを乗っ取られた!?」

 

【大海】と【古代ノ海】が自身に返されたことにサリーは驚きの声を上げる。朧が放った【幽炎】はそのままボスに向かって当たったので、おそらく水属性のスキル限定なのだろう。

 

サリーは魚達が撒き散らす水を紙一重で避けていると、接近していたボスが横薙ぎに剣を振るってサリーを斬ろうとする。

 

「くっ!!」

 

サリーは咄嗟にしゃがんで避けるも、無理な回避だった為に体勢が崩れてしまう。そこにボスが攻撃を叩き込もうとする。

 

「やば……ッ!」

 

サリーが何とか回避しようとした瞬間、サリーとボスの間に蒼銀の盾が割って入り、ボスの連撃を防いでいく。そして、その間にサリーの体が引っ張られ、コーヒーとメイプルの元へと引き戻された。

 

「ごめん、CF!助かった!!」

「気にすんな!!それよりどうする!?」

 

【アンカーアロー】で引っ張ったことで後ろから抱き止められる形となりつつもサリーはコーヒーにお礼を言い、対するコーヒーはボスとの戦いをどうするのかと訊く。

 

ボスの攻撃を受け止めている【クラスタービット】のHPは少しずつ減少しており、あまり長くは受け止められそうにない。

 

「迸れ!【リベリオンチェーン】!!」

 

なので、コーヒーは【クラスタービット】でボスの動きを制限した状態で【リベリオンチェーン】を発動。雷の鎖でその体を縛り上げる。

縛り上げられたボスは鎖を解こうとガチャガチャと暴れている。その間に三人は作戦を立てようとする。

 

「それで、本当にどうする?あんまり長くは持たないぞ?」

「そうね。防御貫通が効かない【クラスタービット】でさえ削られる程の攻撃力だから、私とCFはまともに受けたら終わりだし……」

「……えっと、【身捧ぐ慈愛】で守るよ!」

「でもそれだと」

「いいよ!本当はダメージを受けたくないけど……こういう時こそ守らないとっ!!それに、勝ちたいし!!」

「ヤバそうなら解除していいからね?」

「りょーかい!!」

 

メイプルは【口上強化】込みで【身捧ぐ慈愛】と【天王の玉座】を発動し、【鼓舞】も使ってサリーとコーヒーのステータスをさらに上げる。

そのタイミングで、ボスは雷の鎖を粉々に砕き、その戒めから逃れた。

 

「頑張ってサリー!コーヒーくん!」

「あいよ!つっても、後方から矢と魔法を放つだけだけどな」

「任せて!―――踊れ、流水の舞踏(マリンダンサー)!!」

 

サリーは少しでも多くのダメージを与えると同時にメイプルの負担を少しでも減らす為に、恥ずかしさを捨てて【名乗り】でステータスを底上げしてボスに突撃する。

 

「【扇雛】!!弾けろ、【スパークスフィア】!!砕け、【崩雷】!!ブリッツ、【覚醒】【散雷弾】!!」

 

コーヒーは扇状に矢を放ち、雷球と雷槌を追加で放ち、さらにブリッツ呼び出して無数の雷弾を放たさせる。

ボスは剣と盾を巧みに使ってコーヒーの攻撃を捌く、もしくは体捌きで避けていくも、回避を捨てて接近したサリーの攻撃もあってすべてを捌いて避け切れずに攻撃を受け、ダメージを追っていく。

 

当然、ボスの攻撃も回避を捨てたサリーに当たっていくが、そのダメージは全てメイプルが肩代わりする。

そのメイプルは【瞑想】とHPポーションを使ってHPを保っており、漸くまともに戦え始める。

 

「鎖も爆雷も、一回使ってから使ってこないな?一度切りか?」

「それは分かんないけど!仮にそうでも他のボスの特徴を持った攻撃はまだ残ってる筈!!」

 

コーヒーの考察に、サリーは攻撃を続けながらそう返す。

ボスはシンプルな動きにも関わらず、その素早い動きと立ち回りで確実にこちらを追い詰めようとしてくる。そこにいつ来るか分からない搦め手にも警戒しなければならず、精神的な負担はそれなりに大きい。

 

「やっぱり何度も挑みたくないな!迸れ、【リベリオンチェーン】!!」

「そうね!!絶対に一発で倒そう!!【十式・回水】!!」

 

コーヒーとサリーはそう言って、ボスへの攻撃の手を緩めずに叩き込んでいくのであった。

 

 

 




「ついに十階に到達したな……」
「ああ。十階のボスを倒して……俺達は更なる強さを手に入れる!!」
「すべては……憎きリア充たるCFを打倒する為に!!」
「サリーさんとメイプルさんと一緒に攻略しているCFを、将来血祭りに上げる為に!!」
「行くぞ、野郎共!!リア充への憎悪は十分か!?」
「「「「ああ、勿論だ!!」」」」

憎悪パワーで十階に到達した非リア充パーティーの図。
※この数分後、ボスに敗北しました。

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