スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


激戦。最後は……

「本当に攻防に隙がないな!!」

「同感!」

 

ボスのシンプルな強さに、メイプルに負担を強いているコーヒーとサリーは苦い顔をする。

ボスのHPは盾の防御と高い回避能力もあって全体の二割しか削れておらず、それだけでもボスの厄介さが理解できるだろう。

ここから行動パターンの変化があるのだから、本当に厄介である。

 

「最大強化した【グロリアスセイバー】の二連撃は!?」

「リスクが大き過ぎる!!どんな隠し球を持ってるか分からないしその後の反動を考えたら、それは使うべきじゃない!!」

「だよな!!」

 

失敗した場合、【グロリアスセイバー】は発動後の硬直時間を狙われる可能性が高い上に【ジェネレータ】は使用後のリスクが高すぎる。

 

「なら、《イチイの弓》のスキルで弱体化はどうだ!?」

「採用!!」

 

サリー、即決。

《イチイの弓》のスキルなら毒や麻痺、デバフでの弱体化が狙える上にコーヒーなら例の鎖に捕まることもないことからだ。

 

「なら、【クイックチェンジ】!!【茂みの煙】!!」

 

コーヒーはスキルで武器を変更し、すぐさま《イチイの弓》のスキル【シャーウッドの森】に内包されているスキルを放つ。

麻痺効果のある煙がボスの足下から噴き出し、煙に呑まれたボスはその動きを鈍らせる。

 

「【鈍化の茨】!!迸れ、【リベリオンチェーン】!!」

 

続けてコーヒーは拘束とAGI低下効果のあるスキルを発動し、黒い茨でボスの体を締め上げ、さらに追加で雷の鎖で再び縛り上げる。

 

「朧【影分身】!!【クインタブルスラッシュ】!!」

「【弛緩の棘】!!サンダー!!」

「私も参加するね!【全武装展開】!!【攻撃開始】!!」

 

ここがチャンスとばかりにサリーは分身して攻撃を叩き込み、コーヒーもポーションでMPを回復してからSTR低下の矢と雷の追撃を放つ。HP管理に専念していたメイプルもチャンスと見て攻撃に参加する。

 

その集中攻撃でHPが残り六割となったボスは、何の予備動作もなく足下に魔法陣を展開。そこから赤く燃える溶岩を噴き出させた。

 

「【氷柱】!!」

 

サリーは咄嗟に氷の柱を出現させて溶岩から逃れる。【永久凍土】のおかげで氷の柱は溶けることはないが、今のでサリーの分身はすべて消え、コーヒーが仕掛けた拘束も周りに展開していた【クラスタービット】も破壊されてしまった。

 

しかもボスの足下には煌々と輝く溶岩がその存在感を放っている。

そのボスは剣に手をかざし、その刀身に炎を纏わせていた。

 

「あの炎はどう見る?」

「少なくとも属性が追加されただけじゃないでしょうね」

「だよねー」

 

三人がそう呟く間にも、コーヒーのデバフで移動速度が低下したボスがサリーへと迫っていく。

速度は先ほどまでと比べたら遅いが、ボスの移動した箇所とその周辺が溶岩で埋まって行動範囲を狭めていく。

 

「ちょっ、接近戦は今は勘弁!!」

 

流石に足下が溶岩に変えられる状況でボスと斬り合いしたくないサリーは、氷の柱と筏、透明な足場を駆使して空中戦に持ち込もうとする。

 

ボスが放った炎の刃はかわし、剣はダガーで受け止めたサリーだったが、サリーが受け止めた途端にメイプルの鎧に炎が散ってメイプルのHPを減らした。

 

「う……っ!!」

「固定ダメージか!!サリー!!」

「分かってる!!」

 

攻撃を受け止めるだけでもダメージが入ると分かったことで、サリーはボスの攻撃を受け止めるのを止め、避けるか【氷柱】で遮ってボスの攻撃を凌いでいく。

 

「【発火柳】!!【夢見蓮華】!!【鏃の毒】!!」

 

コーヒーはサリーを援護すべく炎上効果のある柳と睡眠を付与する蓮華をボスの足下に生やし、毒の矢をボスに向かって放つ。

 

睡眠を付与する蓮華はボスの足下の溶岩で一瞬で燃え、柳は燃えこそしなかったがボスには効果がないのか何の変化も起きない。毒の方は肩に命中して入ったので、炎上しなかったのは炎がメインのボスだからだろう。

 

そうコーヒーが考察していると、ボスの足下の溶岩が消え、ボスが盾を正面に構えて剣を腰だめに構える。

 

「ッ!【夢幻鏡】!!」

 

コーヒーは背筋に走った悪寒に、咄嗟にスキルを発動させる。

直後、振り抜かれるボスの剣。距離があるにも関わらず、コーヒーの腹部に衝撃が走った。

 

「う……あ……」

 

コーヒーは鏡となって粉々に砕けたことでダメージはなかったが、サリーの分も受けたメイプルは【身代わり人形】が燃え、【不屈の守護者】によってHPが残り1となる。

 

「メイプル!!【身捧ぐ慈愛】と【天王の玉座】を解除して!!」

「う、うん!!」

 

サリーの指示にメイプルは苦痛に顔を歪めながらも頷き、【身捧ぐ慈愛】と【天王の玉座】を解除する。

目的は条件を満たした【影ノ女神】の発動である。

 

「CF!何としてもメイプル抜きで一分耐えるわよ!!」

「分かった!!【聖刻の継承者】!!【鋼鉄の聖域】!!」

 

ここが勝負どころだと判断したコーヒーはスキルを発動して鋼鉄の剣を作り出し、次々とボスとその周辺に向かって飛ばしていく。

対してボスは炎の斬撃を飛ばし、自身に迫る鋼鉄の剣を悉く叩き落としていく。

 

「迸れ、【リベリオンチェーン】!!【鈍化の茨】!!」

 

コーヒーは再びボスを拘束しようとするも、ボスは地面に剣を突き立て、巨大な赤い魔法陣を展開する。

 

「【水神陣羽織】!!【水神結界】!!」

 

ボスの近くにいたサリーがそう叫んだ直後、地面から巨大な火柱が噴き上がる魔法陣の外だったコーヒーとメイプルは無事だが、火柱に呑み込まれたサリーの安否は不明だ。

 

「ギ、ギリギリ間に合った……」

 

火柱が収まった先には、冷や汗を浮かべながらも無傷であった水神モードのサリーがいた。

 

「迸れ!【リベリオンチェーン】!!墜ちろ!【リベリオンチェーンメテオ】!!」

 

サリーの無事を確認したコーヒーはMPポーションを飲んですぐに【リベリオンチェーン】を再発動。技後硬直で動けなかったボスを雷の鎖で縛り上げ、すぐに条件を満たした【リベリオンチェーンメテオ】を発動。ボスの頭上に大量の鎖の破片で構成された巨大な雷鎖の塊を形成し、そのままボスを押し潰そうとする。

 

そのボスはというと、フルフェイスに覆われた顔を上空に向けて目の部分にあたる隙間から紫色の光線を放っていた。

すると、着弾した箇所から雷鎖の塊が青紫の結晶に覆われていく。そして、完全に青紫の結晶に覆われた巨大な塊を盾で受け止めた途端、その塊は粉々に砕け散った。

 

「嘘だろおい!?」

 

予想だにしなかった対処法にコーヒーは驚愕を露に叫ぶ。さらにボスは鎧の隙間から炎を噴き出させ、地面からも炎の柱を何本も立ち上がらせる。

さらに背後から空中に浮かぶ炎の剣が五本現れ、自身を縛っていた鎖を容易く斬り裂いていく。

 

「どう見てもヤバイよな……」

「……そうね。でも……」

 

サリーがそう呟いてメイプルに視線を向けた直後、メイプルの《女神の冠》が黒い光を放つ。

そう、待ちに待った無敵モードの時間だ。

 

「―――」

 

死神モードとなったメイプルは一直線にボスに向かおうとする。対するボスは剣を地面に突き刺し、無数の炎の棘を地面からあちこちに伸ばしてくる。

 

「【氷柱】!!」

「【召喚:筏】!!」

 

コーヒーとサリーはそれぞれ足場を作って難を逃れ、無敵モードのメイプルはダメージを受けないが、炎の棘が障害物となったことですぐにボスの近くに行けなくなる。

 

それだけでなく、空中に浮かぶ炎の剣が高速でメイプルに飛来し、その軌道上に燃え盛る炎を糸のように続けて残して攻撃して進行を妨害していく。

 

「何とかメイプルをボスにっ!?」

 

どうやってボスとメイプルの距離を詰めさせるか考えていたコーヒーだったが、自身に迫る二本の炎の糸を見た瞬間に筏から飛び上がり、炎の糸から逃れる。

その炎の糸は、メイプルを攻撃している炎の剣と同じ軌道で再びコーヒーに迫ってくる。

 

「【クラスタービット】!!」

 

コーヒーは本日二度目の【クラスタービット】を展開。正面に壁として広げると、甲高い音が響く。

 

「まさか不可視の剣かよ!?」

 

炎の糸が【クラスタービット】の盾にぶつからずに曲がったことから、今メイプルを攻撃している剣の透明バージョンだと察してコーヒーは声を上げる。幸い、動きは単純で炎の糸があることから避けられないことはないが間合いの把握が著しく困難である。

 

チラリとサリーの方に視線を向ければ、サリーも同様に三つの炎の糸に襲われている。氷の柱と筏、透明な足場を駆使して不可視の剣を避けているが、サリーの表情は険しい。

 

「こういう時は手数だ!【クイックチェンジ】!!【結晶分身】!!」

 

コーヒーは直ぐ様武器を元に戻し、二丁クロスボウにして見えない剣の迎撃態勢に入る。迫る炎の糸を目印にして矢を次々と放ち、見えない剣の攻撃を妨害していく。

 

「【砲撃用意】!!」

 

コーヒーが妨害したことで余裕ができたサリーが展開していた砲身から水の塊を地面に向かって発射。炎の棘を消し去り、ボスとメイプルの間に道を作り出す。

 

「メイプル!!」

 

サリーの叫びにメイプルは頷き、一気にボスとの距離を詰めていく。

それを確認したボスは横に黒い穴を作り出す。同時に、炎の棘で覆われた別の場所に同様の穴が現れる。

 

「そこへは行かせねぇ!!集え、【グロリアスセイバー】!!」

 

ボスが彼処へ逃げるのだと気づいたコーヒーはそこに向かって二本の【グロリアスセイバー】を放つ。

爆音。衝撃。

必殺の二連撃の衝撃でボスは穴に飛び込めずに吹き飛ばされ、そのまま地面を転がっていく。

 

ボスは転がりながらも体勢を整えて立ち上がるも、死神メイプルの強制AGI0領域に捕らえられて足が影の手に掴まれている。

ボスを領域内に捕らえた死神メイプルはそのまま接近し―――ボスを剣で両断した。

 

「よし!!これで―――」

 

死神メイプルの攻撃がボスに決まった瞬間にコーヒーは勝利を確信する。だが、ボスはHPが0になったにも関わらず、光となって消えずにその場に未だ佇んでいる。

そのボスは、雄叫びと共に全身から赤い光を放った。

 

「な―――」

 

コーヒーは咄嗟に目を被った瞬間、突如、浮遊感に襲われる。

 

「うべっ!?」

 

何とも奇妙な声を上げて地面に落とされたコーヒーはすぐに立ち上がる。

最初に目に入った光景は、炎のドームと、全身が炎に包まれた人型の何か。そして、元の姿に戻ったメイプルだった。

 

「メイプル!【カバームーブ】だ!!」

「う、うん!【カバームーブ】!!」

 

すぐに離れるべきと判断したコーヒーの言葉に、メイプルは頷きながらスキルを発動する。

しかし、何も起こらない。

しかも、いつの間にかコーヒーが使っていたスキルもすべて解除されている。ブリッツの姿もない。

 

「まさか、さっきの光は……」

 

コーヒーがそう呟く間にも、その炎の人型は右手にある鋼鉄の剣を振りかぶる。その振り下ろされる先は、当然メイプルである。

 

「クソッ!!」

 

コーヒーは急いで手動でクロスボウに矢を装填するも、それよりも早く剣が振り下ろされる。サリーも急いで駆けつけようとするが、距離があって間に合いそうにない。

そして、無情にもメイプルに剣が振り下ろされ―――

 

カンッ!

 

固い音を響かせた。

 

「「……は?」」

 

その光景にコーヒーとサリーは動きを止めて抜けた声を洩らす間にも、ボスらしき炎の人型はメイプルに何度も剣を振り下ろしていくも固い音が響くだけでダメージは一切入らない。

というか、ボスの速度も大幅に落ちている。

 

「まさか……あの光は無差別に全てのスキルを封印するのか……?」

「メイプルのVITはスキル無しだと2000くらいだから……」

 

仮にボスの攻撃力が1000だとしてもダメージは欠片も入らない。

一気にメイプルの安全が確保された為、ボスがメイプルを攻撃している間にコーヒーとサリーは作戦会議を始めていく。

 

「とりあえずアイテムの方は?」

「アイテムのバフ、デバフは消えてないから有効でしょうね」

「爆弾で攻撃するか?」

「【樽爆弾】を転がしてCFが爆破で」

「了解」

 

そうしてサリーは自身のインベントリから【樽爆弾】を取り出すと、横倒しにしてボスとメイプルに向かって転がし、爆破範囲に入ったところでコーヒーが【樽爆弾】に向かって矢を発射。

 

命中。轟音。爆発。ダメージ0で吹き飛ぶメイプル。

対してボスはあっさりとHPが0となり、今度こそ光となって消えるのであった。

 

「……最後が何か釈然としない」

「うん……本来は自身のステータスとプレイヤースキルで挑む感じだったのでしょうね……」

 

あれだけ苦戦を強いられたにも関わらず、最後が本当に呆気なかった為に不完全燃焼気味となるコーヒーとサリーであった。

 

「うにゅ~……最近の私の扱いが雑な気がする……」

 

ちなみにメイプルは目を回した状態でそんなことを呟くのであった。

 

 

 




「すべてのスキルが封じられたか……」
「向こうの浮遊剣も消えてるし、此処からは純粋な力比べといったところか……」
「まじでめんどくせぇな、おい」
「だが、これが最後の筈だ。みんな行くぞ!!」
「ペイーン!!私とサクヤちゃんは出来ることがないんですけどー!?」
「イエス!!杖を持っているサボデリカさんはともかく、楽器の私は完全な戦力外です!!」
「サボり言うな!!」

ボスとの最終戦で役立たずとなる後衛二人の図。

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