てな訳でどうぞ。
コーヒー達が七層入りを果たしてから数分、残りの【楓の木】のメンバーも無事に七層入りを果たした。
「待たせたか?」
「いや、そんなに経ってないぞ」
「それじゃあ、みんな揃ったので行こー!!」
メイプルの元気いっぱいの宣言に全員が頷き、十人は遠くに見える町を目指して進んでいく。
ホラーエリアの六層とは違い、心地よい風が吹く草原が広がっている。さらに火山や雪山、浮遊する島など、今見えている範囲だけでも多様な地形が存在している。
「おおー!!ここでモンスターを仲間にできるんだね!!」
「らしいね。運営からのメッセージを見ると、早めに仲間にしておいた方がいいみたい」
「次のイベントまでにテイムモンスターのレベルも上げないといけないようだし、動くなら早い方がいいだろ」
第七層実装と同時に運営から第八回イベント開催の通知が届いており、詳しい内容は書かれていないがモンスターを仲間にしておくと有利になると書かれていた。
コーヒーとサリー、メイプルとミキはそれぞれの相棒を呼び出して共に進んでいた。
「っと、どうやら友好的なモンスターばかりじゃないみたいだな」
「ええ、こっちに向かってきてるわ!!」
「「「迎え撃ちますっ!!」」」
鋭い角を持った数体の牛にマイとユイ、シアンの三人がその手の得物を構え、残りのメンバーも戦闘態勢をとる中、真っ先に動いたのは既にモンスターを仲間にしていた四人だった。
「シロップ!【大自然】!!」
「朧!【影分身】!!」
「ブリッツ!【磁場領域】!!」
「ジベェ、【水縄】ー」
突出してきた牛達を、足元から伸びた太い蔓と水の糸が締め上げ拘束する。そうして動きが止まったところで、黄色い雷光を靡かせた五人のサリーが一気に斬り刻む。牛も抵抗して暴れるも、二重の拘束から抜け出せず、素早く動く分身も捉えられずに一方的に斬られていく。
結果、好戦的なだけで通常のモンスターでしかない牛達は容易くHPを削りきられて光となって消えていくのであった。
ドロップしたアイテムを拾い上げると、四人はそれぞれの相棒をねぎらう。
「よしっ!お疲れ様シロップ!」
「朧もありがとう」
「ブリッツもお疲れ」
「ジベェもありがとねー」
メイプルとサリー、コーヒーとミキはプレイヤー四人だけではできない連携攻撃で、あっさりとモンスターを撃破する。
【楓の木】の面々にとっては既に当たり前の光景となっていたが、誰でもこんな風にモンスターを仲間にできるとなるとテンションも自然と上がっていくものである。
「やっぱりこういうのを見ると僕達もテイムモンスターが欲しくなるよね」
「そうだな。まあ、条件があるんだろうけどな」
「そうですね。今のお牛さん達は仲間になりたそではなかったですし……」
「町に行きましょう!行けばきっと分かります!!」
「もしかしたらアイテムとか必要かもしれませんから」
「そうね、行きましょう」
ここでずっと話をしていても仕方がないと、【楓の木】の面々はワクワクした様子で遠くに見える町へと足早に向かっていった。
――――――
町に到着したコーヒー達はギルドホームのアクティベートを済ませると、手分けして町の様子を確かめに出た。
町の中央には天をつくような大樹があり、町中を流れる水路と、入り組んだ石造りの道が続き、上を見れば町に点在する樹々を結ぶ木製の橋が複雑に樹上のツリーハウスを繋いでいる。
そして、今までの町とは違い、七層の町に配置されたNPCは皆、何かしらのモンスターを連れていた。
「この階層も独特だな」
コーヒーはNPCに話しかけたり、店に入ったりと情報を集めていく。一通り情報を集めると、一旦ギルドホームへと戻る。
「おかえりCF。どうだった?」
「やっぱり七層はテイムモンスターを手に入れられるようだ。それに合わせて《絆の架け橋》の効果も一人一つだけとなっていたしな」
「つまり、第四回イベントでやったテイムモンスターを預けることはできないってわけか」
それだけではなく、先にテイムモンスターを手に入れていた四人はこれ以上モンスターを仲間にできないということでもある。
「ま、愛着もあるし特に問題はないかな。それに二体以上仲間にできると、ますます手がつけられなくなりそうだしな」
誰が、とは言わなくとも分かるだろう。現に、その場にいるメンバーは全員苦笑いしているのだから。
ついでにその発言に該当する人物は防御特化だけでなく、雷霆とPS特化の二人も含まれているのだが、当人達はそれに気づいていない。
「そうね。他の情報は?」
「倒して仲間にする場合やアイテムを与える場合とか、モンスターによって違うみたいだな」
ちなみにコーヒーが集めた情報ではゴーストタイプのテイムモンスターの情報もあったが、今は黙っておくことにした。これが後の悲劇(笑)に繋がることとは知らずに。
「後、NPCのショップに補助装備が並んでいたな。飾り程度の」
「俺も見たぞ。扇子やポーチ……見栄えを良くする程度のしか並んでいなかったな」
「イズが作れるようなスキル付きのはなかったね」
テイムモンスター以外にも、イズが作れる補助装備がNPCの店で買えるようになっていた。もちろん、イズの作る装備の方が性能は断然良いが。
「いやいや。スキル付きはユニーク素材のお陰でしょ」
サリーがもっともなツッコミを入れた。
「あ、それともう一つ。補助装備の作製はクエストをこなしてスキルを手に入れれば、他の生産プレイヤーも作れるようになるみたいね」
どうやら【職人のレシピ】はテイムモンスターに次ぐ先行要素だったようだ。
「そっか……イズ以外にも作れるようになるのか」
クロムが沁々といった感じで呟くが、イズ本人は特に気にしたようには見えない。
実際、今回のスキルの普遍化にイズは特に不満を感じておらず、むしろ他のプレイヤーの補助装備が見れるのが少し楽しみだったからだ。
その後、残りのメンバーもギルドホームへと戻り、最後にメイプルが戻ってきたことで改めて集めてきた情報を共有した。
「―――という訳で、俺やメイプル、サリーとミキは他の皆の手助けになるだろうな」
「さんせーい!!」
「それなら、皆モンスターを仲間にして第八回イベントに参加するのをギルドの目標でどう?」
「それもさんせーい!!」
残りのメンバーも異議なしといった様子で、ギルドの目標が第八回イベントに向けた準備に全力を注ぐ方向で決まる。
すでに相棒のいるモンスターがいる四人は、残りのメンバーの手助けである。
「それは助かるな。強力なモンスターのテイム条件が『倒すこと』とかだと、大盾の俺一人だとキッツイしな」
「とか言いつつ、一人で倒しそうだけどな」
コーヒーの指摘に対してクロムは苦笑いとなる。HP回復スキルに耐えスキル。異常な回復力に運が良ければ耐えスキルで何度でも生き残れるのだからソロ攻略も決して不可能ではない。
「とりあえずは広く浅く探索だな。色々なモンスターを見てみたいからな」
町から遠くのフィールドを眺めてみても、町に来る前にも見たように、雪山や火山などの様々な環境が存在することが見て取れる。情報収集の結果、砂漠や海、森などもあることが分かっている。今までの層のような一貫性がないことから、それに応じた生態のモンスターが生息しているのであろう。
「先に仲間にしたいモンスターに目星をつけてから探すのもアリかもね。僕は……図書館にでも行ってみようかな」
「生産系統をサポートしてくれるモンスターもいるのかしら……」
「何が釣れるかなー?」
「私達も頑張ろうね!お姉ちゃん!!」
「そうだね、ユイ!!」
それぞれにまだ見ぬ相棒に想いを馳せて、エリアごとやモンスター系統ごとなどの細かい情報収集に移っていくのでだった。
――――――
とは言え、七層はまだ実装されたばかりで情報もそんなに出回っていない。その為、自分達で情報を集めるのは必然だった。
「NPCの聞き込みも粗方終わったな……後は実際にフィールドに出て探すしかないか。その前に―――」
再び町で情報を集めていたコーヒーは実際にフィールドに出て情報を集めようと考え、時間を確認しようとしたところで相棒探しの為に動いていたシアンとばったりと会った。
「あ、コーヒーさん!!」
「シアンか。テイムするモンスターが決まったのか?」
「いえ、まだですけど……少し気になる情報を手に入れたので……」
シアンはそのままその情報について話していく。
簡潔に話をまとめると、町を出て南西方向にある花畑に知力の高い人物の前に現れる妖精がいるということだそうだ。
「つまり、その妖精を探したいということか」
「はい。それでもし良かったら、手伝ってくれませんか?」
シアンのお願いに、コーヒーは答える前にパネルを開いて時間を確認する。時間を確認したコーヒーは申し訳なさそうな顔となった。
「悪いシアン。近々テストがあるから、その勉強の為にもう上がらないと駄目なんだ」
「いえ気にしないで下さい。それだとメイプルさんとサリーさんも駄目ですね」
しれっとリアルの情報を知っているシアンに、コーヒーはここにいないラスボス様の呑気な笑顔を思い浮かべて静かに溜め息を吐く。
「一先ず、一度ギルドホームに戻ったらどうだ?イズさんとミキはギルドホームに籠っているから、この階層に役立つアイテムを用意していそうだからな」
「そうですね。一度戻ってみます」
そうしてコーヒーと分かれたシアンはギルドホームへと戻っていく。AGI0なのでその歩みはメイプルと同じだが。
ギルドホームの広間では、相変わらずミキは釣糸を垂らしてアイテムを釣り上げていた。隣に出来上がったアイテムの山を、これも相変わらずイズが物色していた。
「あら、シアンちゃんおかえり」
「おかえりー。どうだったー?」
アイテムを物色していたイズがシアンに気付き、ミキも気付いて成果を聞く。
「はい。ちょっと会ってみたいモンスターの情報を手に入れて……ミキさんとイズさんはどうですか?」
「んー、希少なモンスターの出現率を上げるベルにー、近づき易くなるお香とかが釣れたよー。シアンにもー、幾つか上げるねー」
ミキはそう言ってこの階層で役立つアイテムをシアンに渡す。ベルにお香、モンスター用のお菓子等、本当に様々である。
「私は完成待ちね。七層に入ってからかなりの量の装備やアイテムのレシピが追加されたからね。後、お金も沢山あるし♪」
もう少ししたら七層で役立つアイテムが出来上がるとイズは伝え、シアンはその完成を待ってからフィールドに赴くことを決める。
「じゃあー、ボクはここで落ちるねー」
少ししてミキもリアルの都合からログアウトし、完成待ちだったイズ製のアイテムも出来上がった。
「必要なら装備もアイテムも作るから遠慮なく言ってねー」
「はい。必要になったら、その時はお願いします」
出来上がったアイテムを一通り貰ったシアンはそう言って、ギルドホームを後にする。そして予定通りにフィールドへと出る。
リスやハト、豚の姿をしたモンスター達が時折シアンへと襲ってくるが、距離もありどのモンスターも光球一つで吹っ飛ばされるので問題はない。
そして今回は、イズ印の装飾品でAGIを上げている為移動も普段より速い。
そうやってウサギの耳と尻尾を生やしたシアンはフィールドを進んでいき、目的の花畑が広がるエリアへと到着する。
「えっと、ここでお香にお菓子、ベルを使って……」
シアンは早速、テイムモンスターを呼び寄せるアイテムを使って呼び寄せようとする。
少しして小鳥やウサギ、蝶や蜻蛉と様々なモンスターがアイテムに釣られて近づいて来る。
「わあ……!」
可愛らしいモンスター達が集まってきたことで、目を輝かせたシアンはそのモンスター達に向かって一歩踏み出す。すると、モンスター達は怯えたように一斉に逃げ出してしまった。
「ああ!?待ってぇ!」
シアンは慌ててモンスターを追いかけようとするも、躓いてその場で転んでしまう。その間に集まっていたモンスター達はいなくなってしまった。
「うう……みんな逃げちゃった……」
モンスターが逃げた事にシアンが悄気ていると、蝶の羽を背中に生やした妖精型のモンスターがシアンに近づく。
「妖精さん……?」
その妖精にシアンは例の妖精かと思っていると、その妖精は右手を指揮棒のように振るうとキラキラと光る数枚の紙をシアンの前へと落とす。
「これは……?」
シアンはその紙を拾い、まじまじと見つめていく。
「漢字が読めません……」
その紙には文字が書かれているが、まだシアンには読めない漢字があったので内容が分からないのだ。
いつの間にかその妖精も消えていたので、シアンはその紙を自身のインベントリに仕舞い、一度町へと戻る。
「あら、おかえり。何か手応えがあったかしら?」
「はい。実は……」
ギルドホームに帰ってきたシアンはイズに先程のことを報告しながら、手に入れた紙の一枚をイズに見せる。
その紙を見たイズは目を瞬かせると、神妙な面持ちで告げた。
「シアンちゃん。この紙の文字……半分以上が意味不明なものばかりよ?」
「え?」
イズのその言葉にシアンは目を丸くしながらも、改めてその紙を見つめる。
「全部、平仮名と漢字ですけど……」
「うーん、もしかすると……」
イズが何かに気付いたような顔をしたタイミングで、クロムが帰ってきた。
「あら、クロム。おかえりー。さっそくだけどこれを見てちょうだい」
丁度いいタイミングと言わんばかりに例の紙をクロムに見せるイズ。帰っていきなりの要求にクロムは疑問に顔を顰めながらもその紙をまじまじと見つめる。
「なんだこれ?何かの模様か?」
「はい。ありがとねー」
イズはもう十分と言わんばかりに背を向けてシアンに向き合う。対してクロムはぞんざいな扱いに苦笑いするしかない。
「この紙にある文字はINTが高くないと読めない仕様になってるわね。それなりにINTがある私でも半分以上が分からないから、これはシアンちゃんが頑張って読むしかないわね」
「そ、そうなんですね……送り仮名もないですし、読むのに苦労しそうです」
「アイテムに辞書はあったかしら?」
しばらくは漢字辞典とにらめっこになりそうだと、シアンとイズは思うのであった。
「補助装備か……両手持ちの武器や戦闘スタイルから片手しか装備しない者からだと嬉しい要素だな」
「そうだねー。NPCの店で売っている小さなポーチとか可愛いしねー」
「俺は短剣の二刀流だから、その補助装備とは無縁だな」
「本当に小さな盾とか、無いよりマシ程度だけどな」
「それでも装備すれば僅かでもステータスが上がるから、見栄えが良くなる意味でも今回のテイムモンスター同様、歓迎されるだろうな」
「では、さっそくモンスターをテイムしに行きましょう。早くゴースト系のモンスターを見つけなくては……!」
新要素の実装で意気込みを新たにする【集う聖剣】一行の図。
そして―――
「テイムモンスターかぁ……可愛いのをテイムしたいけど、ギルドマスター的にはどうなのかな……?」
「そんなに気にしなくて大丈夫ですよ、ミィ」
「至極同意だ。彼らなら、ミィがどんな相棒を携えても褒め称えるだろう」
炎帝様の不安を、素を知っている二人が和らげている図。