スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


無尽蔵の匣

サリーが悲劇(笑)に見舞われている頃、コーヒーも久々のゲームにテンションが上がっていた。

 

「それじゃ、探索していくか」

 

コーヒーは町の外に出ると【クラスタービット】を使い、いつものメタルボードを形成して空へと上がっていく。

コーヒーは既にブリッツという相棒がいるので、相棒探しに奔走する必要はない。

 

「取り敢えず見つけたモンスターは写真に収めるとして……どこから調べるか」

 

この第七層は第二回イベントのような様々な地形と環境が広がり、多数のモンスターが生息している。

雪山や火山、広い海と様々なので、それに因んだモンスターが生息している。

当然、魚型のモンスターもテイム可能な為、もしかしたらミキのジベェのようにフワフワと浮くのかもしれない。

 

「―――よし。今日はこのエリアに向かうか」

 

マップを見ていたコーヒーは行き先を決めると、メタルボードを操作してそこへと向かっていく。せっかくなのでブリッツを呼び出し、肩に乗せた状態で進んでいく。

移動中、下に目を向けると既にテイムしたモンスターと共に戦っているプレイヤーがちらほらと存在している。

 

「もう既にモンスターを仲間にしてるのか。少し懐かしくなるな」

 

コーヒーはそう呟いてブリッツの顎を撫でる。顎を撫でられたブリッツは気持ち良さげな表情だ。

そうしてコーヒーが到着したエリアは砂漠エリア。岩場やサボテンが所々に点在し、如何にも神秘的な雰囲気を醸し出している。

 

「このエリアにもテイム可能なモンスターがいるな」

 

砂地を徘徊している蠍や鷹、コブラに石のゴーレムのHPバーの隣には仲間にできることを示すマークが表示されている。

 

「うーん……モンスターの種類からして微妙か?いや、ゴーレムならクロムにワンチャンあるか?」

 

コーヒーは砂漠に降り立つと、取り敢えず見つけたテイム可能なモンスターを写真に収めていく。モンスターの写真があれば、判断しやすいだろうと考えたからだ。

 

「後、何かダンジョンでもあれば―――うおっ!?」

 

コーヒーは周りを見渡しながら進んでいると、まるで落とし穴を踏み抜いたような感覚と同時に浮遊感に襲われる。

 

「【アンカーアロー】!」

 

自身が落下していることに気付いたコーヒーはすぐさまクロスボウを構えて【アンカーアロー】を目の前に見える壁に向かって放ち、宙ぶらりんの状態となる。

 

「危なかった……落下して死亡とか割とシャレにならないし」

 

底が見えない事に少し戦慄しつつも、コーヒーは安堵の息を吐いて展開していた【クラスタービット】を足場にして安全を確保する。

 

「まさか砂漠に落とし穴があるとか……しかも入口が閉まってるし」

 

コーヒーは頭上を見上げると、そこに存在すべき穴も光もなく、光源は壁に設置された小さな篝火くらいである。

 

「このままゆっくり下に向かうしかないか。何が待ち構えているか分からないけど」

 

後戻りが出来ないこともあり、コーヒーは突然の不意討ちに警戒しながらメタルボードを慎重に降ろしていく。

それなりに深いだろうとコーヒーは予想していたのだが、実際は数十秒足らずで最奥部らしき広い空間に辿り着いた。

 

「この分だと普通に落下していても大丈夫だったか?」

 

コーヒーは警戒しながらその空間を見渡す。そこはゲームに登場するような神秘的な遺跡の内部と呼ぶに相応しい空間だが、モンスターらしき姿がどこにもない。

強いて上げるなら、黒ずんだ金の(はこ)がそこかしこに大量に転がっていることだけだ。

 

「数えるのが億劫になる程の数だな。ひょっとして換金アイテム―――」

 

コーヒーは【ワイルドハント】の使用解放の為の資金目的でその匣を触ろうとするも、それを遮るように機械的な音がこの薄暗い空間に響き渡る。

 

「やっぱり何か潜んでいたのか!?」

 

その音にコーヒーは警戒心を露にしてその場から飛び下がり、クロスボウを構えて襲撃に備える。

そんなコーヒーの目の前で、その匣達が表面に蒼い光の線を浮かばせながら宙に浮き始める。

 

「へ?」

 

その光景にコーヒーは目が点になっていると、その匣達から蒼い光線が放たれた。

 

「ッ!ブリッツ、【電磁結界】!!」

 

自身に向かって放たれた無数の光線を前に、コーヒーは咄嗟にブリッツに指示を出して【電磁結界】を発動させる。

その直後、四方八方から放たれた光線がコーヒーの身体を貫き、何重にも身体をブレさせた。

 

「全方位から攻撃されるとか嘘だろ!?【結晶分身】!」

 

いきなり理不尽極まりない攻撃に文句を言いつつも、コーヒーはメタルボードから降り、すぐさま【結晶分身】でクロスボウをもう一つ造り出す。

スキルによってクロスボウを二つ持ったコーヒーは、【ミラートリガー】による自動装填も相まって二丁拳銃のような動作で宙に浮く近くの匣二つを射ち抜く。

コーヒーが放った矢はその匣に突き刺さり、そのままポリゴンとなって消える。

 

「ボスモンスターはどこに……!?」

 

コーヒーは絶え間なく飛んでくる光線を体捌き、操作を放棄した【クラスタービット】のオートガードや【電磁結界】によるすり抜けでかわしつつ、クロスボウで反撃しながら部屋の主であろうボスモンスターの存在を探していく。

しかし、いくら探してもボスモンスターどころかモンスターらしき存在は影すら見えない。

 

「これ、ギミック系かよ!」

 

どこにもHPバーが見えず、モンスターの姿もないことからコーヒーはギミックをクリアしなければならないエリアだと当たりを付ける。

クリア条件は不明だが、このまま避け続けるより攻撃して潰した方が早い。

そう判断したコーヒーは、すぐに行動に移す。

 

「群れなすは光の結晶 暁を照らす光は我が従者 此処に顕現し我が守手となれ―――【クラスタービット】!」

 

コーヒーは【口上強化】込みで【クラスタービット】を発動させ、自身を守る盾を増やす。幸い、匣が放つ光線は【クラスタービット】の防御力を超えていないので、盾としては十分に果たせる。

 

「迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)!!放つは轟雷 形作るは天の宝玉 仇なす者に雷球を落とさん―――弾けろ、【スパークスフィア】!!」

 

コーヒーは【名乗り】で自身のステータスを底上げしつつ、威力を強化した【スパークスフィア】を右手のクロスボウの先端から放つ。

普段は空いている左手から魔法を放つことがほとんどだが、今はクロスボウを二丁構えているので今回は武器から放ったのである。

そうして放たれた【スパークスフィア】は光線を放とうとしていた匣に直撃。周りに浮いていた幾つもの匣も拡張した雷球に呑まれてポリゴンへと還っていく。

その間も取り囲むように浮遊している匣達から光線が放たれていくが、二つの【クラスタービット】の自動防御によって防がれていく。

 

「本当に休む暇がないな!!」

 

本当に質の悪い包囲攻撃に一人毒づきながらも、コーヒーはガンマンのような動作で次々と矢を匣に向かって射ち放っていく。

浮いている匣は回避行動を取ることなく、ただ光線を放ってくるだけで破壊そのものは容易ではある。

だが、その数が視界を遮れる程に多い為、結構面倒となっている。しかも手に収まる程小さい為、当てるのも一苦労なのだ。余裕があれば映画やドラマ、レトロなゲームに登場するキャラのようなガンアクションを楽しめたかもしれないが、今のコーヒーにはその余裕がない。

 

「放つは轟雷 形作るは天の宝玉 仇なす者に雷球を落とさん―――弾けろ、【スパークスフィア】!!」

 

コーヒーは再度【スパークスフィア】を放ち、無数の匣を再び吹き飛ばす。

吹き飛ばせば穴が開いたように隙間が出来るが、それも新しい匣によってすぐに隠れてしまって意味があるのか分からなくなる。

 

「本当にめんどくせぇ!【聖刻の継承者】!【聖槍ファギネウス】!降り注げ、【ディバインレイン】!!」

 

無尽蔵に近い匣の量にうんざりしたコーヒーは強化状態となって無数の槍と雷を降り注がせる。

蒼い雷に射たれ、白い槍の衝撃に吹き飛ばされ、匣は次々とポリゴンへと還っていく。

二つの広範囲、高威力のスキルを二連続で発動したにも関わらず、匣はまだ半分くらい残っている。

 

「本当に匣が多すぎだろ!?」

 

さすがの数の多さにコーヒーは内心で頭を抱えたくなるも、匣から再び光線が放たれる。【クラスタービット】が光線を防ごうと間に割って入ったが、光線は【クラスタービット】をすり抜けるように貫通していた。

 

「嘘だろ!?」

 

貫通攻撃が効かない筈の【クラスタービット】を貫通した事にコーヒーは驚愕し、思わず動きが止まってしまう。それが原因で光線がコーヒーの身体を貫くも、【電磁結界】で事なきを得る。

 

「【クラスタービット】のHPは減ってない……ダメージの有無に関わらず貫通するのか?」

 

【クラスタービット】が傷一つ付いていないことから、何かしらの特殊攻撃だとコーヒーは察する。

他にどんな引き出しがあるか分からない為、早期決着すべきと判断し、最終手段を使う為にコーヒーは自身のインベントリを操作する。

そうして操作して取り出したのは……範囲が広く威力が高過ぎてマトモには使えないあの爆弾―――【樽爆弾ビックバンII】を目の前に出現させた。

 

「【夢幻鏡】!!」

 

コーヒーが間髪入れずに回避スキルを発動させた直後、匣の光線を受けた【樽爆弾ビックバンII】が盛大な大爆発を起こす。

製作者のイズでさえ使い道が限られているその超強力な爆弾は、残っていた匣と二つの【クラスタービット】を木っ端微塵に吹き飛ばしてしまう。

爆発による土煙が晴れると……例の匣の大群は一つ残らず消し飛んでいた。

 

「本当にしんどかった……」

 

【夢幻鏡】で爆発から逃れていたコーヒーは何も起こらない事を確認してから【聖刻の継承者】を解除し、疲れたようにその場で寝転がる。

 

「あ、見覚えのないスキルが追加されてる」

 

帰還用の魔法陣しか現れなかったので、コーヒーは自身のスキル覧を確認すると初めて見るスキルが追加されていた。

 

============

【遺跡の匣I】

ダメージを与えると、ダメージを与えた対象に追加攻撃を与える。攻撃方法や効果は変更可能。

I~Xレベル。レベルが上がるごとに攻撃方法と効果が解禁される。

匣の攻撃力は自身の基礎【STR】の1.5倍の(あたい)が反映される。

口上:未知の技術で生まれし太古の遺物 我を盟主として(かつ)ての栄誉を示せ

============

 

「これはまた癖が強そうなスキルだな……【遺跡の匣】」

 

相変わらず表示される口上を無視し、効果の確認の為に新しいスキルを発動させる。すると、コーヒーを攻撃していた匣がフワフワと宙を漂って現れる。まるで戦闘を支援する小型機のようだ。

 

「攻撃方法は射程の長い一条の光線。固定効果はダメージの有無に関わらず貫通するのか。追加できる効果は今のところ無し……と」

 

何とも育てがいのあるスキルに、コーヒーは苦労に見あっていると表情がにやけてくる。

 

「有益なスキルだけど、取得するのが苦労しそうだよな……最後は爆弾で吹き飛ばしたし」

 

どっちにせよ情報は共有しなければならないので、スキル検証も兼ねて魔法陣に乗って外へと出る。

 

「それじゃ早速……」

 

砂漠地帯へと帰還したコーヒーは、近くにいた角が生えたマングースに向かって矢を放つ。矢が角付きマングースに刺さると、匣から蒼い光線が放たれて角付きマングースを撃ち抜く。

 

「……うん?あんまり大差なくね?」

 

クロスボウで攻撃した時のダメージとあまり差がなかった事にコーヒーは一瞬疑問に思うも、すぐにその原因に気付いた。

 

「あ、そうか。【無防の撃】はあくまで合計値の半分だから、基礎値に影響はないのか」

 

コーヒーの常時貫通攻撃スキルである【無防の撃】は装備品を含めたSTRとINTの0.5倍だ。対して今回得た【遺跡の匣】は()()STRの1.5倍が【匣】の攻撃力だ。

コーヒーの現在の装備込みのSTRが実質八十あたりで、【遺跡の匣】に反映される基礎値の1.5倍のSTRは七十程度。しかもスキルの常時貫通攻撃効果は反映されているのは間違いない。

しかも匣とは別の追加攻撃である星が二つも落ちてきたから、火力も上がっているのである。

 

「地味にヤバくね……?」

 

スキルが見事に噛み合って凶悪なスキルに化けた事にコーヒーは少し戦慄したが、この程度なら可愛いものだろうと勝手に結論を出す。

そんな感じで報告も兼ねてギルドホームに赴くと、マイとユイ、カスミの三人はテイムした自身の相棒を紹介していたところだった。

 

「もうモンスターを仲間にしたのか」

「はい!ユイとお揃いです!」

「お姉ちゃんはツキミで私のはユキミです!」

「私のモンスターの名前はハクだ。四層にイベントフラグがあった」

 

マイとユイは自分達と同じ色の毛の子熊を、カスミは白蛇を自身の相棒にしたようだ。ちなみにメイプルはまだ来ていないのでこの場にはいない。

 

「CFの方はどう?何か有益な情報はあったかしら?」

「情報というか……新しいスキルを手に入れてしまったな」

「「「「「「「「え?」」」」」」」」

 

コーヒーの報告にサリーはもちろん、他のギルドメンバーも抜けた声を洩らす。

 

「そうなんだー。ちなみにー、どんなスキルー?」

「一言で言い表すなら……匣、だな」

 

まったくブレないミキの質問に、コーヒーは匣と答える。実際に匣なのは間違いないが。

 

「いやいや。何でモンスターを仲間にするのが目的の層で、モンスターとは無関係そうなスキルを手に入れるのよ」

 

サリーの最もな指摘に、ミキ以外がウンウンと頷く。

コーヒー自身も狙ったわけではなく、本当に偶然そうなってしまっただけなのだ。

コーヒーは取り敢えず、スキルを手に入れた経緯をみんなに話そうとする。そのタイミングで我らがギルドマスター、メイプルが扉を開けて中へと入ってくる。

 

「あ!マイとユイ、カスミはもう仲間を見つけたんだ!かわいいーっ!!」

 

メイプルは三人のテイムモンスターに気付いてすぐ、目を輝かせて愛でていく。

メイプルが三人のテイムモンスターを愛で終えたタイミングで、サリーは先程の話へと戻す。

 

「それでCF。どうやって新しいスキルを手に入れたのよ?」

「え?コーヒー君も新しいスキルを手に入れたの?」

 

メイプルのその言葉に、ミキ以外は瞬時に察した。メイプルがまたおかしなスキルを手に入れたということを。

 

「えっと……メイプル?今度はどんなスキルを手に入れたの?」

「言いにくいんだけど……触手が出せるようになったよ!」

「そっかぁ……メイプルは触手かぁ……」

 

またしてもメイプルがド肝を抜くスキルを得たことに、ミキと極振り三人衆以外は遠い目となるのであった。

 

 

 




「そういえば、海エリアにはたくさんの人達がいたよ」
「ああー……」
「間違いなく第四回イベントが原因ね……」
「あれは本当に凄かったからな」
「んー?」

全員から一斉に視線を向けられ、首を傾げるミキの図。
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