スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


スキル修正と第二回イベント

【疾風迅雷】を取得してからおよそ二週間。

その間にサリーが無事に地底湖のダンジョンをソロ攻略してユニーク装備を入手し、メイプルと共に二層入りを果たしていた。

 

サリーの手に入れた装備は全体的に海を連想させる青色で、ショップで購入した黒いブーツとも色の相性は抜群。武器も短剣二本とサリーの戦闘スタイルに合うものであった。

 

最も、ユニークシリーズ自体が攻略者に合わせた装備となるから、基本外れとなることはないだろうが。

まあ、そんな事よりも今日のメンテナンスの内容が重要だ。

 

「……来たな」

「……来ちゃったよ」

「……来たわね」

 

メンテナンス内容にコーヒー、メイプル、サリーは若干遠い目で呟く。

メンテナンスの内容は一部スキルの弱体化とフィールドモンスターのAI強化。そして、防御貫通スキルの増加とそれに伴った痛みの軽減である。

 

一部のスキル弱体化についてはゲームの仕様上所持している本人にしか分からないが、コーヒーとメイプルのスキルは弱体化の対象になってしまっていた。

 

対象となったコーヒーのスキルは【チェイントリガー】。これは相手との距離が近いほど被ダメージが増加するというデメリットが追加された。

 

「間違いなくあのコンボが問題になっただろうな」

「【チェイントリガー】からの零距離での【連射】ね。あれは確かに凶悪なコンボよ。コンボが出来ないようにする修正まではしてこなかったけど、零距離で被ダメが凡そ3倍は辛いわね」

 

そして【名乗り】の消費MP30%軽減効果が20%へと減少。同時に取得条件の追加。

消費MP軽減の減少は【詠唱】を実装したことによるバランス調整だろう。取得条件追加の方は、【口上強化】だけでなく【詠唱】を使い続けても取得できるようになるというものだ。

 

「運営の悪意が滲み出る」

「……うん。絶対、悪ふざけよね」

 

コーヒーの呟きに、()()()()()()サリーが頷いて同意する。

メイプルの方は、大盾に付与したスキル【悪食】に一日10回の回数制限が追加。代わりに吸収できるMPが二倍となったが、常時発動のため乱用が出来ない制限がついた。

 

「10回全部使ったら唯の大盾ね」

「唯の大盾……うぅ……」

 

次の修正であるAI強化はモンスターが周り込んで攻撃したり、場合によっては逃走するようになるというもの。

完全に第二、第三のメイプル発生防止の措置だ。

 

「メイプルの【絶対防御】を白兎で取れなくするためでしょうね。メイプルは白兎と戯れていた結果だけど、タンク型の他のプレイヤーがそれを真似して手に入れたら、ゲームバランスが一気に崩壊してしまうもの」

「AIが強化された以上、あのリンゴウサギが一時間も攻撃が効かない相手に突進してこないだろうし……まさか運営も予想外だっただろうな。ザコモンスターと一時間も戦闘?を続けるなんてな。普通は経験値欲しさに速攻で倒すはずだからな」

「うさぎさぁ~ん……」

 

メイプルはログイン初日を思い出してか、泣き言を洩らす。本人曰く、可愛いから倒す気はなかったそうだ。

 

「まあ、流石にスキルそのものを消すという修正はないだろうな。【絶対防御】は本来、厳しい条件での取得だった筈だからな」

「そうね。そんなことをしたらゲーマーのブーイングの嵐よ。CFのスキルは二つも弱体化されてるし、他の上位プレイヤーも少なからずスキルの弱体化は受けている筈だから。呪いのスキルは……本当に悪意しか感じないわ」

 

サリーがジト目で睨むは自身のスキル画面。その中に【詠唱I】がばっちりと入っている。

【詠唱I】は一層のスキルショップでも購入できる。そこで初めて知ったのだが、スキルの詳細は取得してからでないと分からないというものだったのだ。

 

加えて、値段も500Gと安いため、結果、新スキルを取得して呪いのスキルと判明して崩れ落ちる魔法使いのプレイヤーを中心とした犠牲者が大量発生する事態となった。

 

幸いと言っていいのか、詠唱自体は一言で済ませられる程短いため、ほとんどのプレイヤーは直ぐにあっさりと割り切ったそうだが。

 

だが、魔法の消費MP5%軽減スキルがショップで安く売られているという情報に釣られ、まんまと取得したサリーはその場で崩れ落ちることとなった。理由は封印した過去の黒歴史がひょこっと顔を出したから。

 

「防御貫通スキルの増加は……本当にCFの予想通りだったね」

「うん……今後はHPを上げるスキルや装備、後は回復系も必須だね……」

「普通に手に入る大盾向きのスキルもな。メイプル、パーティー向けの防御スキル、全く取ってないだろ?」

「あう~……」

 

コーヒーの指摘にメイプルはガックリと肩を落とす。

コーヒーの指摘通り、メイプルはそういったスキルを身につけていない。殆どがパーティーを組まずに一人でやっていたのが原因だ。

だが、今後はサリーとパーティーを組む以上、パーティー向けの大盾スキルは必須である。

 

「まあ、その辺りは追々考えるとして……CF」

「なんだよ、サリー?」

「スキルを買うお金を奢って上げるから、一緒にスキルショップに行きましょ?」

「お断りします」

 

悪どい笑みを浮かべるサリーのお誘いをコーヒーは間髪入れずに断った。

 

「えー?釣れないなー?せーっかく女の子がデートのお誘いをしているのにー?」

「そうだな。その奢るスキルが【詠唱I】でなければ、ドキッとはしたかもな」

「厨二病患者のCFじゃ今さらじゃない?もう諦めて素直に取得しちゃいなよー?」

 

サリーは悪どい笑みを浮かべたまま、コーヒーの腕を肘で小突く。ちなみにメイプルは普通に購入済みである。

 

「嫌に決まっているだろ。これ以上、重症患者扱いされてたまるか!」

「じゃあ、このまま一緒に居ようかな~?可愛い女の子とこんな風に一緒に居続けたら、掲示板は一体どうなるのかしらね~?」

「おまっ……!」

 

ある意味死刑宣告であるサリーの言葉に、コーヒーは相当苦い顔になる。

地味に外堀を埋めてきている事実に、コーヒーは強引に脱出しようかと思案するも……

 

「それとも、CFに関する掲示板に可愛い女の子からデートに誘われていたって書いちゃおうかな~?」

「卑怯すぎんだろ!?」

 

その後もあの手この手で脅して追い詰めてくるサリーの前に、コーヒーは脅しに屈する形で【詠唱I】を取得することになるのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

イベント当日。

第二層の町の広場にて。

 

『ガオ~!今回のイベントは探索ドラ!目玉は転移先のフィールドに散らばる300枚の銀のメダルドラ!これを10枚集めると金のメダルに、金のメダルはイベント終了後にスキルや装備品に交換できるドラ!!』

 

ヘンテコドラゴンのアナウンスが流れ、勝手にステータス画面が開き、金と銀のメダルが表示される。

その金のメダルは、前回のイベントで送られたあの記念メダルだった。

 

「持っていたら良いことがあるって言ったのはこの事だったのか……」

 

少なくとも上位入賞者はこのままだとメダルの景品が一つ手に入る。代わりに、他のプレイヤーから狙われる頻度が高くなったが。

 

『前回イベント10位以内の方は既に金のメダルを一枚持っているドラよ。さらに~、前回のイベント11位から20位の方には特別に銀のメダルが転移した後で五枚渡されるドラ!!倒して奪い取るもよし、我関せずと探索に励むもよしドラ!』

 

どうやらフィールドには幾つかの豪華な指輪や腕輪などの装備品やスキルの巻物、大剣や弓などの武器が眠っているようだ。

 

『死亡して落とすのはメダルだけドラ!装備品は幾ら死んでも落ちないから安心するドラよ。メダルもプレイヤーに倒された時だけドラだから、安心して探索に励んで欲しいドラ!死んだら、それぞれの転移時初期地点にリスポーンされるドラ!』

 

落とすのがメダルだけなら、プレイヤー達は安心して探索に励めるのだろう。むしろ、レア装備を手に入れる為に積極的に動く筈だ。

 

『今回の期間はゲーム内期間で一週間、時間を加速させているドラから、ゲーム外での時間経過は二時間ドラよ!フィールド内にはモンスターの来ないポイントが幾つもあるからそれを活用するドラ!』

 

つまり、今回のイベントは休息も重要となってくる。モンスターを凌いでも、他のプレイヤーと鉢合わせする可能性が十分にあるからだ。

こうなると、パーティーで活動するプレイヤーが比較的有利となるが、コーヒーはメイプルとサリーとは別行動となる可能性が高い。理由は二位と三位が一緒にいると狙われやすくなるのと……

 

「…………」

 

サリーがムスーっと超絶不機嫌になっているからである。

サリーが超絶不機嫌になっている理由。それは【走駆のお使い】で手に入るスキルでコーヒーがちょっとした仕返しに【疾風迅雷】のことをサリーが【超加速】を手に入れた後で教えたからである。

ちなみにその時のやり取りがこちら。

 

『サリーは【走駆のお使い】はクリアしたか?』

『したわよ。ばっちり【超加速】を手に入れてやったわ。CFも【超加速】を手に入れたの?』

『俺は【超加速】の上位、【疾風迅雷】を取得したぞ。条件は【魔力水】を汲んでから30分以内で帰ることだ』

『……は?』

『なあ、今どんな気持ちだ?自分が取ったスキルより上位互換のスキルがあって、もう手に入らないと知った、厨二病に片足を突っ込んだサリーさんの気持ちは、今、どんな気持ちですか?』

『…………』

『悔しい?腹立つ?それとも泣きそう?もしくは―――』

『うざい!!』

『ごはぁっ!?』

 

―――である。

早い話、コーヒーがちょっとした仕返しでおちょくって煽ったのがサリーの不機嫌の理由である。

ちなみにコーヒーは【疾風迅雷】を《迅雷のブーツ》のスキルスロットに付与してある。理由は名称の語呂が良かったから。

 

「サリー。そろそろ機嫌を直してもいいんじゃないかな?」

「…………」

 

メイプルの言葉にサリーはそっぽを向くだけ。相当ご立腹のようである。

まあ、時間が経てば元に戻るだろうが。

 

『それでは、イベントスタートドラッ!!』

 

ヘンテコドラゴンの合図で、コーヒーを含めたその場に居たプレイヤーは、第二層の町から消えていった。

 

「……ここが俺のスタート地点か」

 

コーヒーがいたのはゴツゴツとした岩場に包まれた山岳地帯らしき場所だ。

空には重力の影響を受けることなく浮遊する島々。

下に視界を向ければ、広々とした草原や森林。

 

再び上空に視界を向けると、竜が優雅に飛んでいる。

今回のフィールドは、自然豊かなモンスター達の理想郷である幻想的な世界観のようだ。

 

「この距離だと……撃ち落とすことは出来ないな。【閃雷】無しだと届かないし」

 

空を飛ぶ竜を仕留められないか本気で考えていたコーヒーは、距離的な問題から即諦める。

 

「さてと……メダルを探しに行くとするか」

 

コーヒーはクロスボウを肩に担ぎ、足場の悪い岩場を歩いていくのであった。

 

 

 




今回の11位から20位の銀メダル五枚追加は帳尻合わせです。原作では10位の人の順位が下がったので、メダルを増やして矛盾が出ないようにしました。
……ダメ、ですかね?
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