スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


凶悪触手と防御不可光線

コーヒーとメイプルの新しいスキルを確認する為、まずは劇薬に等しいメイプルから先に見ようという事になった。

訓練場に移動した一同は、メイプルのスキルの発動を待つ。

 

「よーし、海域に潜みし海の怪物 その黒き触手を以て住処へと引き摺り込まん―――【水底の誘い】!」

 

メイプルが【口上強化】込みで新スキルを発動させると、大盾を持つ腕が、くねくねと絡んでは伸びる何本もの大きな青黒い触手に変化した。同時に左目の白目部分は黒く、黒目部分は黄色に染まっている。

 

「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」

 

触手を出せると言っていたから、てっきり【捕食者】のように自身の隣から出てくるのだろうと予想していたが、自身の腕が触手になるという予想外な光景にコーヒー達は言葉を失う。極振り三人衆でさえ、五本に分かれたり収束したりする禍々しい触手を前に言葉を失っている。

 

「おおー、磯巾着みたいな触手だねー」

 

そんな中、ミキだけは本当にいつも通りの反応でメイプルの触手を磯巾着と表現する。【捕食者】の時といい【暴虐】の時といい、どうしてあっさりと受け入れられるのか本当に疑問である。

 

「えっと……何で腕が触手になるの?後、何で大盾が消えるのかな?」

 

サリーの困惑混じりの真っ当な疑問に、メイプルは律儀に答えていく。

話を要約すると、メイプルは仲間にできるモンスターを探す為に海が広がるエリアを捜索していた際に巨大なタコがいるダンジョンに拐われ、そのタコを倒したらスキルをゲットできたとのこと。

 

大盾が消える方は困ったように言い淀んでいたので、サリーとコーヒーは【スキルスロット】に付与した結果だと察する。おそらく【水底の誘い】はMP消費スキルであった為、VIT極振りのメイプルのMPでは全然足りなかったのだろう。そこで【悪食】しか付与しておらず、【スキルスロット】の恩恵である五回のMPゼロが全く活かされていなかった《闇夜ノ写シ》に付与したのだろう。

そこでコーヒーは、ある事に気付く。

 

「なあ、メイプル。まさかその触手にはあの大盾のスキルが……」

「う、うん。触手で掴んだお魚さんが急に消えちゃったから、たぶん……」

 

メイプルのその発言で、禍々しい触手が凶悪な触手であると一同は察した。

【悪食】は回数制限があるとはいえ、十分に凶悪なスキルだったのだ。幸い大盾だから範囲が狭かったのが、触手形態を得たことでその範囲が広がってしまったのだ。

しかも触手本来の能力は拘束、または攻撃した対象に麻痺を与えるものだ。それが【悪食】と見た目のインパクトによって完全な初見殺しの凶悪触手へと変貌してしまったのである。

 

「久々に人の域を離脱したな」

「そうね。触手に一度でも捕まると、問答無用で食べられちゃうからね」

「知らないままフィールドで会っていたら、間違いなく刀を抜いていたな」

 

本当に予想の斜め上の進化を常に行くメイプルに、大人組は悟りを覚えたような表情で呟く。メイプルを慕っている三人ですら苦笑いする始末なのだから、今回の件は相当である。

正直、中途半端な変身なので何時もよりインパクトがある。

 

「ま、まあ、メイプルは何時も通りということで。CFも新しいスキルを見せてちょうだい」

「あ、ああ。【遺跡の匣】」

 

サリーの言葉にコーヒーは少し困惑しながらも頷き、スキルを発動させる。

コーヒーの隣に出現した匣を見て、大人組はもちろん、サリー達も安堵したような表情となる。もちろん約二名は数に入っていない。

 

「確かに匣だな。ちなみに効果は?」

「追加攻撃。威力はスキルが噛み合って大差なかった」

 

コーヒーはカスミの質問にそう返し、スキルを手に入れた経緯を説明していく。

 

「砂漠エリアにそのような地下空間が……」

「てかそれ、普通に考えてトラップエリアでしょ。いや、スキルが手に入る辺り、イベントフラグを立てないといけない場所かも」

 

サリーのその言葉に、コーヒーは言われてみれば確かにと思う。

落とし穴からの包囲からの集中砲火。普通に考えれば死に戻り案件だ。それを回避スキルと広範囲攻撃、威力と範囲がおかしい爆弾という普通ではあり得ない方法で突破してしまったのだ。

 

「ダメージを受ける受けないに関わらず、貫通する攻撃かぁ……盾で防げるかな?」

「【クラスタービット】をダメージ0で貫通したからな……だからクロム、実験台よろしく」

「俺が受けるのかよ。いや、別に構わないんだが」

 

【遺跡の匣】の的に指名されたクロムは呆れつつもすんなりと了承する。メイプルは痛いのが嫌だと知っているので論外だ。

そんな訳でスキルの実験台となったクロムに矢を放つ。クロムが構える大盾に向かって放たれた矢は普通に大盾に弾かれるも、匣からの追加攻撃である光線はすり抜けるように大盾とクロムの身体を貫通した。

 

「どうだ?」

「光線に貫かれたとこが地味に痛いな。物理的な防御の無視とか普通に凶悪だぞ」

 

光線を受けた上でのクロムの感想に、サリー達が大きく頷く。何せ障害に関わらず攻撃を通せるのだ。下手したらタンクの役割を無意味にしてしまう。

しかもコーヒーの持つ【無防の撃】によって常にVIT無視の貫通攻撃なのだ。完全防御不可の追加攻撃へと変貌している為、メイプルとは別の意味で凶悪な攻撃である。

 

「しかもそのスキル、レベルまであるのよね?成長次第ではもっと凶悪になりそうね」

「ある意味メイプルキラーなスキルね。常時貫通は想定外だったでしょうけど」

 

サリーの指摘にコーヒーは顔を逸らして誤魔化す。否定できない故に。

取り敢えず、既存のスキルと新スキルを組み合わせて予想以上の効果を発揮するのはゲームの醍醐味だと、一部を除く面々はそれで切り上げるのであった。

 

「あ、そうだ。イズさんに少しお願いが……」

 

メイプルは思い出したように自身のインベントリを操作すると、黒い靄を出す、吸盤付きの禍々しい触手を幾つか取り出した。

 

「……その触手は?」

「例のタコさんの触手。美味しかったから、イズさんに調理してもらおうと」

「……そう」

 

如何にも体に悪そうな見た目と雰囲気の触手を食べる気満々のメイプルに、イズは死んだような表情で返すことしかできなかった。

 

「タコだからたこ焼や酢ダコだねー。ボクが調理するからー、一緒に食べてもいいかなー?」

「もちろんいいよ!」

 

その後、メイプルが持ち帰った触手はミキによってたこ焼に酢ダコ、タコの唐揚げとなり、メイプルとミキの二人で美味しく食べられるのであった。

 

 

――――――

 

 

メイプル触手事件から数日、まだモンスターを仲間にしていない四人はギルドホームにいた。

 

「僕は二人と違って皆の穴を埋める役割が多いからね。一点特化よりは器用な子がいいかな」

 

そう口にするのは【楓の木】の少ない純魔法使いであるカナデだ。

魔法を多用する意味ではコーヒーとシアンも該当するが、コーヒーは雷属性の攻撃魔法に特化しており、本職はクロスボウによる射撃だ。シアンは極振りで高出力の魔法を放つが、カナデのように引き出しが多いわけではない。

どっちの魔法も攻撃面に偏っているのに加え、カナデ自身がかなり器用なのだ。そんなカナデの要望に応えられるモンスターとなれば、レアモンスターでなければ満たせないだろう。

 

「俺の方は回復力が高いと噛み合うな。コーヒーが見つけたモンスターも強そうだが、今のスタイルには合いそうな気がしないな」

 

クロムはコーヒーが渡したモンスターの写真を見ながら、自身の求めるモンスターの性能を語る。

クロムはスキルによる回復と耐え効果で粘るタンクとなっている。回復役ならシアンが十分に果たしてくれるが、基本は極振り戦車の主砲だ。それに毎回同じメンバーで組めるとも限らない。

なので、自前の回復力がさらに高まれば臨時戦車の装甲の役割を果たせ易くなると考えたのだ。

 

「私は生産職向けのモンスター探しかしら。きっと戦闘系とはまた別のモンスターがいると思うのよね」

 

イズは仲間達の探索用アイテムの生産を引き受けていたので、モンスター探しはこれからである。ただ、方向自体はとっくに決まっているので、情報収集や探索の時間は周りと比べて短くなるだろう。

 

「えっと、この漢字の読み方は……『黎明(れいめい)』という読み方で……」

 

シアンの方は妖精型モンスターから渡された書面の内容を、意外にもあった漢字辞典とにらめっこしながら解読している。INTが高くないと読めない書面なので、もしかしたらシアン自身の望む性能のモンスターである可能性が高い為、イズ同様に引きこもり気味となっている。

早い話、四人ともがそれぞれの強みを活かせるモンスターと巡り会いたいのである。

 

とはいえ、望みに適合するモンスターなどそれぞれ数種類ずついればいい方だ。さらに言えば、【楓の木】がイベントで張り合うのは、ゲーム内の最強ギルドである【集う聖剣】や【炎帝ノ国】だ。ギルドマスターはもちろん、ギルドの主力メンバーも相応のモンスターを仲間にしているであろう事は容易に想像できる。

その為、対抗できるポテンシャルを有している事も視野に入れている為、仲間選びは慎重になるのも当然の既決であった。

 

「やっと読み終えたましたー!」

 

そんな中、シアンはようやく書面の内容を解読し終えたのか書面を両手で頭上に掲げて報告する。

 

「やっと全部読み終えたのね。内容はどうだったかしら?」

「はい。内容は妖精さんに関わる石碑が置かれている場所を示していました。その石碑も順番に訪れないと駄目だそうです」

「石碑か……それらしき情報は上がってないから、隠されているのかもしれないな」

 

イズの質問に対するシアンの返答に、クロムは推測を交えながらそう呟く。

オブジェクトなら相応の大きさとなる筈であり、見つかっていればとっくに上がっている筈だからだ。

 

「ちなみに場所は?」

「場所は火山に雪山、峡谷に砂漠、海の孤島に森ですね。順番は口にした通りです」

 

シアンはそう言って、七層のマップを表示してその石碑がある箇所にマークを付けていく。

 

「全部で六ヵ所か……場所も遠いから苦労しそうだね」

「はい。ですが、此処まで来ましたから、最後まで頑張ります!」

 

カナデの言葉にシアンは力強く返す。今日まで漢字辞典とにらめっこの日々だったのだ。ようやく進められる事で気合いが十分なのだ。

 

「できれば手伝ってやりたいが……俺は今こなしているクエストがあるからな」

「僕もそろそろ探さないといけないからね」

「私も町に出て情報を集めないといけないから、ごめんね」

 

三人は申し訳なさそうにしているが、そもそも求めているものが三人とも違うのだ。それにイベントまでの日数と相棒のレベル上げも考えれば、この三人には他の人を手伝う余裕はないのである。

 

「いえいえ!そのお気遣いだけでも十分です!」

 

シアンもそれが分かっている為、大丈夫だと手を振ってアピールする。

そんなわけで、シアンは一人で町の外に出て最初の目的地である火山エリアへと足を運んでいく。

ウサミミモードでシアンはフィールドを駆ける中、見知ったプレイヤーとばったり出会す。

 

「あ、カミュラさん!」

「ん?お前は……【楓の木】の魔法使いか」

 

シアンの呼び掛けに【炎帝ノ国】所属の大盾使いであるカミュラは気付いたように顔をシアンへと向ける。

 

「カミュラさんはこれから探索ですか?」

「ああ。今日は相棒のルルを鍛える為に適当なエリアに赴くつもりだ。お前の方は?」

 

おそらくゴーレムに分類されるであろう、ルルと呼ばれた赤色の丸い球体を隣に従えているカミュラの質問に、シアンはこれから火山エリアへと向かう事を伝える。それを聞いたカミュラは少し考え込んだ後、徐に口を開いた。

 

「お前さえ良ければ、そこまで同行してやろうか?」

「え?いいんですか!?」

「ああ。この程度なら大して問題にならないだろうしな」

「それならお願いします!」

 

下心が見え隠れしている気がしないカミュラの申し出を、シアンは快く了承する。そんな純粋な姿がカミュラの良心に突き刺さったのは本人だけの秘密である。

そんな臨時で組んだシアンとカミュラは火山エリアを目指して進んでいく。

 

「【挑発】」

「飲み込め、【シャドウボール】!」

「ルル、【コピーマジック】」

 

当然、道中はモンスターに襲いかかられるも、カミュラがヘイトを向けている間にシアンは闇の球体であっさりモンスターを呑み込むように倒し、カミュラもルルにスキル使用の指示を出し、シアンと同じ魔法を放たせて倒してしまう。

 

「カミュラさんの相棒は真似が上手なんですね」

「ああ。かなりトリッキーな相棒だが、とても気に入っている」

 

どこか笑っているようにも見えるカミュラの返しに、シアンも早く自分の相棒を見つけようと気持ちを新たにする。

そうしてカミュラに護衛してもらいながらシアンは目的地である火山エリアへと到着する。

 

「ここが目的の場所か?石碑らしきものは建っているようには見えないが……」

「紙には“燃え盛り、煮え滾る、二重となりし溶岩の河の中に道はある”と書かれてましたが……」

「二重となりし溶岩の河……あれのことか?」

 

カミュラがそう言って指差す先には、丁度枝分かれして二つに別れている大きな溶岩の河がある。あれがシアンの持つ紙に書かれた“二重となりし溶岩の河”の可能性が高い。

 

「しかし、溶岩の河の中となると道はあの溶岩の河の中に……」

「輝け、【フォトン】!」

 

カミュラが思案する横で、シアンは迷わず光球をその溶岩に向けて発射。威力がおかしい光球は溶岩の河を吹き飛ばし、溶岩の中に隠れていた地下通路を露にする。周りの地面も衝撃で抉れたように盛り上がっており、溶岩の流れを塞き止めている。

 

「カミュラさん!溶岩の中に道がありましたよ!」

「……ああ、そうだな」

 

魔法使いらしくない脳筋とも取れるシアンの笑顔の報告に、カミュラは特に指摘することなく言葉を返す。

カミュラは紳士。女性プレイヤーに対しては優しいのである。非リア充は哀しみを共にする同胞。逆にリア充は不倶戴天、極悪非道の敵である。

そんな感じで二人は地下通路を降りていき、少し広い部屋へと辿り着く。部屋の中央には年季が入っていそうな見た目の石碑が鎮座していた。

 

「これが例の石碑か?記号らしきものがびっしりと刻まれているが」

「私には全部、漢字と平仮名で読めますけどね」

 

やはりINTが高くないと奇妙な文字となっている仕様の石碑の前で、INT極振りのシアンは祈るようにその場に屈んで手を組む。

すると、石碑は少し振動したかと思うと、まるで承認したかのように文字を光らせた。

 

「これで終わりか?」

「はい。これを順番通りにこなせば、クリアとなるようです」

 

意外とハードルが高そうな石碑巡りであるが、まだ見ぬ相棒に出会う為にシアンは奔走するのであった。

 

 

 




『ちなみにコーヒーは攻撃する匣を手に入れたぞ』
『匣?』
『攻撃する匣って……』
『どんな攻撃をするんだ?』
『光線。それも盾をすり抜ける』
『大盾使い終了のお知らせ』
『メイプルちゃんにも痛手な匣の存在』
『でもメイプルちゃんならいずれ何とかしそう』
『だよな』
『メイプルちゃんは常に予想外な方向に進化するからな。今回の触手みたいに』

一部スレ抜擢。
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