四人が情報共有の為にギルドホームに戻ると、ギルドには極振り三人組とカナデの四人がボードゲームで遊んでいた。
「あ、おかえり。どうだった?」
カナデはそう言いながら片手間で次の一手を打ち、対面で対峙していたマイとユイ、シアンの三人は降参して白旗を上げる。相変わらず、この手のゲームには滅法強いカナデである。
「えーとね、実は……」
メイプルが代表して宝石のこととバツ印の付いた七層の地図のことを話していく。極振り三人組は興味深げに耳を傾けるのに対し、カナデは心当たりがあるように頷いていた。
「それなら、町の図書館にそれらしい話があったかな。昔栄えた町がいくつかあって、そこでは今よりもっと上手くモンスターと心を通わせられていたとか」
「その町の場所って、もしかしてここか?」
コーヒーはそう言って、【白の鍵】があった森の泉を指し示す。
「うん。それとこことここかな。後、ここがその鍵を使う場所だと思うよ」
カナデは肯定しつつ、【鍵】がある二ヵ所とその【鍵】を使うであろう場所にマークを付けていく。
「おおー!有力情報だよー!」
「ありがとなカナデ。おかげで手早く進められるよ」
「どういたしまして」
「それにしてもー、何でも知ってるねー」
「ホントにね。図書館ってかなりの本があるからね」
「まあ、全部読んでいるからね」
「「「ぜ、全部ですか!?」」」
マイとユイ、シアンの三人が揃って驚いた声を上げる。コーヒーとサリーも、口にこそ出さなかったが内心で驚いている。
一度町の図書館に顔を出してみたが、彼処にあった本の量はかなりのものだ。それを全部読んで覚えているのだから、素の能力で飛び抜けているのが容易に想像できる。
「結構面白いし、イベントのヒントが書いてある本もあったりするからね。時間はかかるだろうけど、自分でも読んでみるといいよ」
カナデはイタズラっぽく言いながら、次のボードゲームの準備をしていく。そんなカナデの処理能力の高さに、完敗を喫した三人はへなへなと椅子に身体を預ける。
「お姉ちゃん、シアンちゃん……やっぱり勝てる気がしなくなってきたんだけど……」
「う、うん……元々ダメそうだったけどね」
「本当にそう思うよ……」
「じゃあいい報告期待してるよ?で、戻ってきたら遊ばない?」
ボードゲームを進めてくるカナデに、メイプルが元気よく答える。
「いいよ!ばっちり攻略して戻ってきたら今度こそリベンジだね!」
「メイプルも一回も勝ててないでしょ?ついでにCFも」
「しれっと俺に振るなよ……」
サリーに話を振られたコーヒーは、嘆息と共に肩を竦める。カナデとは何度かボードゲームをプレイしたが、その戦績は全敗。しかもカナデは遊び感覚で全然本気を出していないから、カナデの実力の高さは言わずもがなである。
「でも楽しいよー。カナデはゲームみたいにレベル調節してくれるし!」
「おおー。それは凄いねー」
ミキはパチパチと拍手してカナデを称賛する。コーヒーとサリーは視線で本当なのかとカナデに投げ掛けると、カナデはいつも通りの笑みを浮かべて返す。それだけで事実だと二人は納得した。
「ちなみに今対戦してるのはレベル1の僕だよ」
「レベル1……?」
「本当に強すぎですっ!」
「レベル10まであるんですよね……?」
カナデのカミングアウトにより、極振り三人組は畏怖したように言葉を洩らす。完敗を喫した強さが一番低い状態なのだから、カナデのボードゲームの強さに驚愕するのは当然の結果ではあるが。
「あはは、じゃあ行ってくるね。三人も頑張って勝ってね!」
「「「頑張ってみます」」」
また遊びだした四人に見送られ、コーヒー達は確かな情報を持って再度フィールドへと出る。
「まずはどこから行くー?」
「ここから近い場所から行った方がいいわね」
「それならここだな」
「それじゃあ、出ぱーつっ!!」
メイプルの音頭でコーヒー達は召喚した高速船に乗って、鍵となる宝石がある可能性が高い場所へと向かっていく。
しばらくして、目的地である巨木が見え始める。
「あの巨木の周りに、鳥型のモンスターがウジャウジャいるぞ」
「こんままー、天辺に向かうのは―?」
「間違いなく襲ってくるから無理ね。メイプルの【身捧ぐ慈愛】も乗り物は対象外だし」
「それじゃあ、シロップに乗って向かおう!」
メイプルの提案に三人は特に反対することなく頷き、巨木から少し離れた場所に高速船を着陸させる。
そこから徒歩で巨木に近づくと、巨木は皮が少し剥がれていたり、蔓が巻き付いていたりと自力で登れるようになっていた。
本来は巨木にある足場を使って天辺へと登っていくのであろうが、そのセオリーを無視できる存在がいる。
「シロップ【巨大化】!からの~、邪悪を退ける威光 形成すは光の玉座 光王の加護は威厳と共に―――【天王の玉座】!」
メイプルはシロップを巨大化させると、【口上強化】込みでシロップの背中に【天王の玉座】を設置する。そこから《救いの手》で二枚の大盾を追加で装備し、HP強化の白装備に変えて【身捧ぐ慈愛】も発動する。
「さあ、みんな乗って乗って!一気に頂上まで行っくよー!」
力を合わせて浮遊要塞となったシロップに全員が乗り、そのまま用意された足場を完全に無視して高度を上げて上昇していく。
「未知の技術で生まれし太古の遺物 我を盟主として
コーヒーはその間に【口上強化】で威力を底上げした【遺跡の匣】を発動し、いつでも戦えるようにする。
その直後、巨木の周りを飛んでいた怪鳥達が襲いかかるも……
「朧、【拘束結界】!」
「弾けろ、【スパークスフィア】!【砲撃用意】!」
「発射ー」
サリーの指示を受けた朧が怪鳥達の動きを止め、コーヒーが【スパークスフィア】と展開していた大砲からの砲撃、匣の光線と【彗星の加護】による空から降ってくる星で一網打尽にする。ミキも使い捨ての範囲攻撃アイテム【打ち上げ花火】をポンポン使って戦闘に参加する。
「【砲身展開】!【攻撃開始】!」
メイプルも《闇夜ノ写》だけを対価に【機械神】を発動し、砲撃を適当に放って怪鳥達を吹き飛ばしていく。
そんな迎撃能力の高い浮遊要塞に怪鳥達が勝てる道理はなく、四人はあっさりと頂上に辿り着く。頂上の木の中心には大きな鳥の巣が一つだけ鎮座していた。
明らかにボスがいる空間に警戒しつつ、四人は小細工なしでそのまま近づいていく。
「来るよ!」
サリーの警告と同時に、蔦と茨をまとった巨大な怪鳥が羽根を辺りに散らしながら現れる。
「あの鳥さん、第二回イベントで戦ったボスとそっくりだよ!」
「それって、シロップと朧の卵を手に入れた時のか?」
コーヒーのその言葉にメイプルはコクリと頷く。どうやらあの巨大な怪鳥は同系統のモンスターのようである。
「あのお鳥さんの首にー、緑の宝石があるよー」
「そうね。間違いなく目的の宝石ね」
入手法がボスの撃破という、実にシンプルで分かりやすい事にサリーは不敵な笑みを浮かべる。気合いは十分のようである。
「よーし、勝つぞー!初代より受け継ぎし機械の力 我が武具を対価とし 三代目として此処に顕れん―――【機械神】!【全武装展開】!【攻撃開始】!」
ボスの巨大怪鳥が金切り声を上げてすぐ、何時もの漆黒装備に戻していたメイプルは【機械神】の武装を全て展開。砲撃と銃撃、レーザーにミサイルをボスに向かって次々と放ち始めていく。
「迸れ、
コーヒーも続くように二丁のクロスボウから次々と矢を放ち、匣からも命中する度に光線が放たれ星が落ちていく。しかも【雷炎】で雷属性は火属性に変わっているので、火に弱そうな見た目のボスは苦しそうに声を上げている。
「【水の道】!朧【拘束結界】!」
サリーもスキルで太い水の柱を作ると、それに飛び込んでぐんぐんと進んでいき、飛び出すと同時に動きが封じられていたボスの左脇腹を斬り裂く。
「ジベェ、【のしかかり】ー」
ミキの間延びする声と共に、巨大化してボスの頭上にいたジベェが、そのまま押し潰すようにボディプレスをボスの頭に決める。
「シロップ【大自然】【茨の枷】!」
「ジベェ、【水縄】ー」
ボディプレスで木の広場に落とされたボスを前に、メイプルがシロップに指示を出して蔓と茨でボスを拘束する。ミキもジベェに追加で指示を出し、水の縄でさらに動きを封じていく。
「【クインタプルスラッシュ】!【十式・回水】!」
「踊る狂雷 駆けて残すは怒りの雷狼 その荒き舞踏で蹂躙せん―――
サリーは【ドーピングシード】をかじり、STRを限界まで上げて凄まじい勢いで連撃を叩き込む。コーヒーも断続的なダメージを与える足場を作る【雷帝麒麟】の上位魔法で這いつくばっているボスに追撃を与え、匣も光線を断続的に放ち星も落ちていく。
「シロップ【眠りの花弁】!」
蔓と茨、水の拘束と広場で踊る火花から逃れようと暴れていたボスは、甘い香りを放ちながら舞い散るピンクの花弁を前に深い眠りについていく。
眠りについたボスを前にコーヒーとサリーは攻撃を止め、ミキと一緒に爆弾を取り出していく。
「シロップの拘束力が強くなったわね。ジベェも相変わらず攻撃範囲が広いし」
「同感。どっちも強力だよな」
眠りや麻痺といった相手の動きを阻害するスキルを得たシロップに、面攻撃が強力であるスキルを持っているジベェ。どちらも正面からはあまりやりたくない相手である。
「よーし!海域に潜みし海の怪物 その黒き触手を以て住処へと引き摺り込まん―――【水底の誘い】!影より出でるは混沌の遣い その昏き顎で近づく物を噛み千切れ―――【捕食者】!」
そんな中、玉座から立ち上がって攻勢に転じたメイプルが左腕を触手に変え、三体の化物を従える。
「「うわっ」」
背中に天使の羽、全身に強力な兵器、左腕に五本の黒い触手、三体の化物を前後に従えたメイプルの姿に、コーヒーとサリーは揃って引いてしまう。
見た目が混沌となり、不気味すぎる姿となったメイプルはそんな二人に気づくことなく更にスキルを発動させる。
「溢れる混沌よ 我が意に従い 我に仇なす者を喰らい尽くせ―――【滲み出る混沌】!
そこにさらに三首の毒竜と黒い巨大蛙も加わり、メイプルは一気に攻撃を仕掛けていく。
「ピギャアアアアアアッ!!?」
【悪食】持ちの触手に毒竜のブレス、全兵器による遠距離攻撃に化物三体と巨大蛙の噛みつき。更に乱雑に設置された爆弾による爆撃と次々と落ちてくる星を一身に受けたボスは目を覚まして悲鳴の如く鳴き声を上げる。ダメージからバタバタと暴れているが、拘束のせいで思うように動けていない。
「やっば……」
「本当にな……」
「おおー。海蛇にウツボ、磯巾着のオンパレードだー」
味方でさえドン引きする蹂躙劇を前に素直な感想を呟くサリーとコーヒーに対し、ミキは平然と海の生物に例えながら、援護のように液体入りの瓶をポンポン投げ飛ばしている。
「今投げているそれは?」
「浴びるとー、敵味方問わずにー、ダメージが二倍になるやつだよー」
「エグいわね……」
酷い追い討ちするミキにサリーはもちろん、質問したコーヒーもドン引きしてしまう。メイプルは異常に高いVITでダメージそのものを受けないから心配はないが、それを浴びた絶賛被リンチ中のボスにはたまったものではない。
「ピギィ!ピギィ!!」
ボスもダメージが二倍となったメイプルの猛攻から逃れようと暴れているが、蔓と茨に水の拘束に加え、触手の麻痺とスタン効果が合わさって全く逃れられていない。むしろ鳴き声が泣き声に感じられるほどだ。
ボスはそのまま触手に顔を喰われ、派手に爆散して消え去るのであった。
「よーしっ!まだまだ全部当てれば勝てるっ!」
「ははっ、頼もしいね」
「それじゃ、例の宝石を回収しようか」
ガッツポーズをしていたメイプルは二人にそう言われ、毒まみれとなった広場を横切るようにボスの撃破跡にある首輪の下へ急いでいく。
フラフープほどの大きさのある首輪をメイプルが拾うと、それは砕けて一つの小さな緑色の宝石となった。
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【緑の鍵】
とある扉を開けるための三つの鍵のうちの一つ。
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「二つ目の鍵だよ!」
「ビンゴだったな」
「これで後一つだねー。次の場所は此処だねー」
カナデから得た情報で必要な鍵を手に入れたことで、残りの一ヵ所も同様の鍵がある可能性が高まったことからミキがカナデが印を付けた遺跡ではない方の場所を指す。
「【悪食】はもう使えないけど……行ってみる?」
「問題なしだ。攻撃は十分できるしな」
「本来は私やCFの役目だからね。戦闘になっても大丈夫大丈夫」
「じゃあー、決まりだねー」
ボスの巨大怪鳥をあっさりと下した四人は、満場一致でそのまま次の目的地へと向かうのであった。
「うう~~……!」
「そんなに唸ってどうしたの?」
「私もCFさんみたいな相棒が欲しいっす!でも、装備枠がぁ……」
「ヒナタもそうだけど、強力なスキル持ちの装飾品で埋めてるからね。第一、目星もつけてないのに悩むのもどうかと思うよ」
「辛辣っすぅ!」
とあるギルドの一幕。