スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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たぶん今年最後の投稿。
てな訳でどうぞ。


三つの鍵と楽園の町

三つ目の宝石があるであろう場所は、何かしらの力でふわふわ浮く足場が存在するエリアだった。

 

「風が凄いねー」

「ここからは徒歩で向かった方がいいわね」

 

ミキは麦わら帽子を押さえながら間延びした声を上げ、サリーも率直な意見を述べる。

あちこちに浮かぶ岩石による足場は死角となる場所も多く、吹き抜ける風も髪が乱れる程かなり強い。その為、四人は高速船から降りて徒歩で目的地へ向かう事にする。

足場があちこち浮かんでいるエリア故か、プレイヤーも半重力となったような浮遊感があり、その感覚に戸惑いを覚える。

 

「やっぱりちょっと回避しにくくなるか……」

「怪鳥のようなボス戦による入手なら、慣れておかないとまずいか。二人も構わないか?」

「いいよー」

「私ももちろんいいよ!」

 

メイプルとミキから許可を貰ったコーヒーとサリーは、動作確認の為に周辺の足場を飛ぶように移動していく。メイプルとミキも飛んでは空から落ちる羽根のように、ふわふわゆらゆらと足場へと落ちていく。

 

「この前のイベントみたいに【星の力】のようなものもないから、浮かんでいる時間は減らしておかないとね」

「俺は念のために【クラスタービット】を使っておくか」

 

コーヒーは不意討ちなどを警戒して【クラスタービット】を発動させる。空を飛ぶだけなら【孔雀明王】があるが、自身も含めた周りへのスキル封印が痛手すぎる為、使うわけにはいかなかった。

 

「それにしても風が強いわね」

「下手したら飛ばされそうだな。着地の時は気をつけないとな」

「あー、岩が飛んできたー」

「「「え!?」」」

 

本当に警告なのかと疑わしい間延びしたミキの声に、コーヒーとサリーは咄嗟に(かわ)し、ミキも飛び出す形で回避するもメイプルは避けきれず直撃。そのまま何度もバウンドして別の岩石にぶつかって地面へと落ちる。

 

「派手に飛んだな」

「メイプルー!大丈夫ー!?」

「うん。派手に飛んじゃったけど大丈夫だよ」

 

メイプルはそう言って何事もなく身体を起こす。その様子から本当に大丈夫であることにコーヒーとサリーは安心する。

 

「けどビックリしたよ……急に岩が飛んでくるとは思わなかったよ」

「そうだねー。あれを全部避けるのはー、ボクには難しいかなー」

「じゃあ、【身捧ぐ慈愛】で守るよ!幸い、防御貫通とか地形ダメージもないし!」

 

メイプルはそう言ってすぐに【身捧ぐ慈愛】を発動する。コーヒーとサリーもメイプルに感謝していると、今度は右の方向から風が吹き、幾つもの石礫(いしつぶて)が飛んでくる。

 

「……よっ、ほっ!」

「危な」

 

サリーはそれを二本のダガーと体捌きで回避し、コーヒーは【クラスタービット】の盾で防ぐ。

サリーは【剣ノ舞】と【刃竜ノ演舞】によって青と黒の二つのオーラを纏い、対象のステータスが上昇する。

 

「相変わらず回避が凄いな」

「それが私の持ち味だからね。CFもどうせなら射撃で撃ち落としてみたら?」

「試しにやってみるか。【身捧ぐ慈愛】の範囲内なら攻撃を受けても大丈夫だし」

 

サリーに軽く煽られたコーヒーは物の試しとばかりに飛んでくる石に矢を放ちながら進んでいく。思いの外よく当たるので、コーヒーはガンマン気分となっていく。

サリーは動きの変化に慣れ、軽々と飛んでくる石や岩を躱す。メイプルは高いVITで石や岩をものともせずに進み、ミキはメイプルに守られる形で共に進んでいく。

そんな一同の前に、白く輝く風が集まってできた狼と鷹のモンスターが現れる。

 

「朧【影分身】【幻影】!」

 

サリーは朧に指示を出して五人に分身し、さらに分身の数を倍に増やす。分身達は目が赤く光っている狼と鷹に迫るも、二体は風の刃を飛ばして分身達を切り裂く。

 

「気が逸れてるぞ」

 

サリーの分身が囮になっている間に、コーヒーがクロスボウで二体を射ち抜く。すると、二体の体は糸が解けるように霧散していく。

 

「一撃で倒れた?」

「CFの攻撃一回だけで倒れたってことは、数で来る敵ね!」

 

サリーがそれに気づくと同時に、あちこちで風が渦巻いて狼と鷹の群れが現れる。

 

「メイプル!CFも一対多は任せた!」

「オッケー!【全武装展開】!【攻撃開始】!」

「ブリッツ【乱れ稲妻】!」

 

メイプルは【機械神】による全身武装で襲いかかる風の刃と石礫を撃ち落とし、コーヒーの指示を受けたブリッツは背中の針から無数の稲妻を放ち、鷹達を撃ち抜いていく。

 

(ほとばし)れ、蒼き雷霆(アームドブルー)!輝くは不屈の雷光 残響する雷吼は反逆の証 雷呀の鎖と為りて一切合切を打ち砕け―――迸れ、【リベリオンチェーン】!サンダー!」

 

コーヒーはステータスを強化しつつ、雷の鎖で狼達を縛り上げ、追加の電撃で一気に葬っていく。

その間にも撃ち漏らした風の刃がメイプルに命中する。

 

「いたっ!?あっ、貫通!」

「【鉄鋼液】をかけるねー。防御力が少し落ちるけどー、三十秒間は貫通攻撃が効かなくなるよー」

「ありがとう!蹂躙せよ、終焉城塞(ラストキャメロット)!」

 

風の刃が貫通攻撃であったことに焦るメイプルであったが、ミキがVITが10%低下する代わりに貫通が無効になるアイテム【鉄鋼液】をかけてあっさりと解決する。

VITが10%の低下しても、メイプルのVITは五桁なのであまり問題にはならない。その上、【名乗り】でVITを1.3倍にしたから、むしろスキルの貫通無効よりも使い易いのかもしれない。

 

「メイプルの方は心配ないかな。朧【渡火】!」

「ブリッツ【砂金外装】!【電磁砲】!」

 

朧が放った炎は鷹に当たると弾け、近くにいたモンスター達に燃え移って散らしていく。ブリッツも体を大きくさせると雷の砲撃を放って狼達を吹き飛ばしていく。

この面子を前に数で攻めるのは、愚策と言える結果にしかならなかった。

 

「ふぃー……ちょっとビックリしたけど、そんなに強くなかったね」

「そうだねー。コーヒーとサリーがいたからー、簡単に倒せたねー」

「それにしても、朧は分身の数を増やせるようになったんだな」

「ブリッツも電撃攻撃が増えてるでしょ」

 

モンスターの群れをあっさり下した四人は、疲れた様子もなくそう語り合う。

今回朧が使った【幻影】はサリーの【蜃気楼】に近く、実体を持たない囮にしか使えない。ブリッツの【乱れ稲妻】は範囲こそ広いが、雷撃がランダムに放たれるので命中率はそこまで高くないのだ。

 

「それじゃ早く行きましょ。囲まれたらCFが全部処理してね」

「しれっと人を顎で使おうとするな」

「別にいいでしょ。新スキルで火力が上がってるんだし」

「地味にヒデェ……」

 

そんな二人のやり取りを約二名がニコニコ顔で見守りつつ、一同は奥地を目指して進んでいく。

時折メイプルが大岩に吹き飛ばされたりもしたが、四人はすんなりと最奥へと辿り着く。

いくつもの岩が浮かんだ平地には、渦を巻くように風が吹き荒れており、その中心には風で全身を形作っている巨人が待ち構えていた。

 

「さすがに一撃とはいかないだろうし、気合い入れていくよ」

「了解ー」

「任せて!」

「もちろんだ」

 

一同が戦闘態勢となると、巨人も戦闘態勢となる。すると巨人を中心に渦巻いていた風が強まり、浮かんでいた岩が動き始める。

 

「ちょっ!?私それ避けられな―――」

「それー」

 

迫りくる岩にメイプルが焦りの声を上げるが、それを遮るようにミキがメイプルの足下に【粘着玉】を投げつける。【粘着玉】で地面と足がくっついたメイプルは、金属が硬いものにぶつかった音を鳴らしながらもその場に留まれていた。

 

「おおー!これなら飛ばされずに済むよ!」

「代わりに動けなくなるけどねー。ボクもくっつくからー、二人とも頑張ってねー」

 

メイプルとミキはそのまま、全身兵器と爆弾で巨人に対して攻撃を仕掛けていく。レーザーや爆撃を受けた巨人は、風で岩を飛ばしてメイプルとミキに反撃していく。

 

「岩がどんどん破壊されていくな……」

「そうね……朧【妖炎】!【火童子】!」

 

朧に指示した途端、サリーの体から青い炎が舞い散り、ダガーからは炎の刃が伸びていく。朧のスキルでダメージとリーチを強化したサリーは、そのまま巨人の風の腕を切り裂く。

 

「ブリッツ【磁場領域】!【渦雷】!」

 

コーヒーもブリッツに指示を出し、パーティーメンバー全員に青い雷光を靡かせ、自身も青い雷光と渦のように靡く電撃を纏う。

コーヒーは更に【結晶分身】と【遺跡の匣】も発動し、巨人に向けて怒涛の勢いで矢を放っていく。矢が当たる度に星が落ち、匣から光線が放たれ、更に渦巻く電撃が炸裂していく。

 

「一気に叩くわよ!【遺跡の匣】!【水神陣羽織】!【天ノ恵ミシ雫】!【クインタプルスラッシュ】!【十式・回水】!【パワーアタック】!【七式・爆水】!」

 

サリーは《信頼の指輪》に登録された【遺跡の匣】を発動。更に【水神陣羽織】と【天ノ恵ミシ雫】を使うと、ここぞとばかりに連撃を叩き込む。

【妖炎】による追加ダメージと【追刃】と【遺跡の匣】による追撃。さらに【水神陣羽織】と【剣ノ舞】、【刃竜ノ演舞】に加えアイテムによるバフ。止めに【天ノ恵ミシ雫】のデバフで手数が武器である短剣ではあり得ないダメージを巨人に叩き込んだ。

ダメージエフェクトを派手に散らした巨人は、最後のノックバック攻撃を受けてその場に仰向けに倒れていく。

 

「CF!」

「ああ!【雷神陣羽織】!【九頭龍雷閃】!瞬け、【ヴォルテックチャージ】!迸れ、【リベリオンチェーン】!サンダー!」

 

コーヒーも【雷神陣羽織】を使い、【九頭龍雷閃】と効果と威力が二倍となった【リベリオンチェーン】で縛り上げ、追撃の雷撃で巨人にダメージを与えていく。

 

「【雷神月華】!」

「【水神蒸発】!」

 

そこに止めと言わんばかりに雷と水の爆発が上がり、強い風が最後に吹くと共に飛んでいた岩も動きを止めた。

 

「二人ともお疲れ様!朧の炎もブリッツの電気もできる事が増えたんだね!」

「朧が炎と幻術担当で、私が水と氷で綺麗に分かれているからね。CFは雷一色みたいだけど」

「系統が同じなら、強化が噛み合い易いからいいだろ」

「そうだねー。あー、あそこに赤い宝石があるよー」

 

ミキがそう言って指差す先には、目的の赤い宝石が落ちている。場所は巨人の目に位置していた部分だ。

その宝石をサリーが近寄って回収する。

 

「これで全部揃ったね!」

「最後はこの遺跡に行くだけだな」

「一体何があるかなー?ジベェ達の強化アイテムかなー?」

「気が早いわよ、ミキ。でも、カナデの話からありがち間違いじゃないかも……」

 

こうして目的の宝石をすべて揃えた四人は、高速船で遺跡へと向かうのであった。

 

 

――――――

 

 

目的の遺跡は石畳や家の残骸はあるものの、ほとんどが自然に呑み込まれてしまっていた。

 

「これじゃ森だな」

「年月を感じるねー」

「とりあえず手当たり次第に探してみましょ」

「早く見つかるといいなぁ」

 

四人が手分けして人工物が残っているエリアを歩き回る。すると探し物は案外早く見つかった。

 

「みんなー!こっち来てー!」

 

こういった探し物には運が味方しているメイプルが指差す先には、三つの窪みがある台座がある。それだけで、この台座が三つの宝石を使う場所だと察せられる。

その台座にメイプルが代表として三つの宝石を嵌めると、台座が宝石の光で覆われる。同時にそれぞれの相棒が勝手に指輪から飛び出てくる。

 

「シロップ?」

「朧?」

「ブリッツもどうしたんだ?」

「ジベェ?」

 

相棒達の登場に首を傾げていると、足元で宝石と同じ光が放たれ、転移の感覚に襲われる。

転移した場所は……動物が溢れる町であった。

転移させられた四人はその町の光景を眺めていると、相棒達は勝手に歩き始めていく。

 

「ど、どうしたんだろ?」

「とりあえずー、ついていくー?」

 

特に反対する理由もなく、次の行動も分からない為、ミキの提案にコーヒー達は頷いて相棒達の後を追っていく。

相棒達が向かった場所は、町から少し離れた場所にある、輝く水が溜まった石造りの水場だった。

 

「なんというか、大事な場所っぽい?」

「みたいだねー。ジベェ達もー、この水に入りたそーにしてるしー」

「じゃあ、入れてみるか?」

「そうね」

 

四人はそれぞれの相棒を優しく抱え、その水の中へと入れる。手を放すと、四匹の体は水の光に包まれていく。

 

「わー!?やっぱりダメだった!?」

 

メイプルのその言葉で、コーヒーとサリーは慌ててメイプルと共に自身の相棒を持ち上げる。ミキもつられるようにジベェを持ち上げる。

光が中々消えずに少し焦りを覚えるも、一瞬強い光が放たれると共に相棒達は元に戻る。

 

「よかったー……ん?」

 

安堵するメイプルの目に写るシロップは、見た目が少し変化していた。甲羅の柄が少し変わり、甲羅の縁を覆うように一輪の花を咲かせている。

もちろん、見た目が少し変化しているのはシロップだけではない。朧は装飾品が少し豪華となり、ゆらゆらと動く尻尾が二つとなっている。

ブリッツも背中の針が片刃のような形状となり、その中の一つの針が刃を背負っているかのように大きく生えている。最後にジベェは身体に水飛沫のような模様が描かれ、胸ビレが一回り大きくなっていた。

 

「「「……えっ?」」」

「んー?」

 

相棒達の姿が少し変わっていることに、四人は頭が回らず互いに顔を見合せるのであった。

 

 

 




『憎きCFとは別の雷プレイヤーを見た』
『kwsk』
『稲妻が降り注いでいる現場に近づいたら、金髪お嬢様風の女性プレイヤーがいた』
『死刑』
『雷に打たれて消えろ』
『流れ稲妻に当たって会話すらできなかったけどな』
『ちなみに装備は?』
『遠かったからよくわからなかった』
『もし雷同士でCFとその女性が出会ったら……』
『言葉の闇討ち祭りだ』
『俺も参加しよう』
『俺も』
『俺も』

スレの一部抜擢。

「相変わらずCF憎しのスレだねぇ。見てる分には面白いけど」
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