スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


エリアボス、出現

とある荒野エリアにて。

 

「おい見ろ。あれは例の空飛ぶ魚だぞ」

「第四回イベントで大暴れしたあの魚か……今回は前のようにはいかないぞ」

 

上空にいる空飛ぶ魚―――巨大化したジベェを視界に収めたプレイヤー達の隣には、ピンクのイルカや黒いイカ……七層の海エリアでテイムした相棒がいる。

 

「ドルフィ【波乗り】」

 

ピンク髪の男性プレイヤーが相棒のピンクのイルカ―――ドルフィに指示を出す。

【波乗り】は二分間、水属性による被ダメージを80%もカットしてくれる便利なスキルだ。

ジベェの【津波】に対して準備万端……というタイミングで不意に足下が冷たくなっていることに気がつく。

 

「ん?」

「何で急に水が……」

 

前触れもなく膝の近くまであった水に一同が疑問に思った瞬間、その水が急に荒れ始めた。

 

「な、なんだ急に!?」

「足下の水のせいでバランスが……!」

 

急な水流に多くの者が足を取られ、バランスを崩す前で、ジベェの腹から大量の水が流れ出てくる。

忘れもしない。あれは多くのギルドを流し飛ばした【津波】である。

 

「ドルフィ【巨大化】だ!」

 

それに対し、果敢にも一人のプレイヤーが挑んでいく。全長二メートル程になったドルフィの背中に掴まり、襲いかかる津波に逆らって進んでいく。

 

「海はもうお前のものじゃない!それを今日―――」

 

その決意は、半透明な小判鮫によって遮られる。

 

「な、なんだこの魚の群れは!?」

 

津波の中を泳ぐように進んでいる小判鮫の群れにより、彼らは押し戻される形となっていく。その小判鮫達はモンスターやプレイヤーに襲いかかっているが、大したダメージを与えられていない。

その中で、彼はある物に気がつく。

 

「あれは……機雷?」

 

その機雷はよく見れば津波に紛れる形で幾つもある。彼がそれに気がついた直後、小判鮫の一匹がその機雷に食いつた。

 

「「「「「あぎゃあああああああああああああっ!?!?!?」」」」」

 

途端に炸裂した大量の凄まじい電撃。それによって多くのプレイヤーとモンスターが一斉に消え去るのであった。

 

 

――――――

 

 

「次はこの地点かなー?みんなにメッセージを送らないとねー」

 

大量のモンスターと大勢のプレイヤーをジベェのスキルとアイテムによって消し飛ばしたミキは、次の攻撃地点と移動ルートを【楓の木】の全員に送ってその場所へとジベェと共に向かっていく。

空を飛んで移動している上に巨体な為、周りから相当目立つ。そうなると必然的にプレイヤーによる妨害を受けやすくなる。

 

「ジベェ、【大洪水】ー、【小判鮫】ー」

 

ミキがジベェの新たな範囲攻撃スキル【大洪水】と水属性の攻撃に追加攻撃を付与するスキル【小判鮫】によって、まるで滝の如く大量の水が真下の平地に流れ、半透明の小判鮫の群れが流れる水と共に突撃していく。

 

「次はー、これを使おうかー」

 

ミキはクーラーボックスから【凍結爆弾】という、威力が低い代わりに確実に氷漬けとなる爆弾をポンポンと投げ落としていく。

先に放った【雷電爆弾】は水属性のダメージを受けた直後に喰らうと威力が十倍となる上、麻痺とスタンが入る爆弾である。

 

閑話休題。

ジベェの【大洪水】によって地面に這いつくばっていたプレイヤー達に凍結確定の【凍結爆弾】をまともに受け、見事に凍り付く。そんなカチコチに凍った彼らに、ミキは【樽爆弾】とあの怪鳥に使った【激痛薬】を投げ落とし、最後にイズ印の爆弾で爆破。無慈悲に消し飛ばしていく。

 

「ミキさーん!」

「んー?」

 

そんな中、背中から虹色に光る蝶の羽を生やし、巨大なジベェに近づくプレイヤーの姿がある。その人物は【楓の木】のINT極振りプレイヤーであるシアンだった。

 

「おー。シアンちゃんもー、飛べるようになったんだー」

「はい!モルフォのおかげで飛べるようになりました!」

 

シアンのその言葉に、モルフォも嬉しそうにシアンの周りを飛んでいる。モルフォのスキルである【電子の羽】はAGIが40加算され、コーヒーの【孔雀明王】のように飛べるようになるスキルだ。もっとも、加算されたAGIは装飾品のマイナス補正で無意味になっているが。

 

他にも消費MP軽減の【夢路】やINT上昇の【約束の光】、モルフォ自身が攻撃する範囲攻撃スキル【輪廻の花】等がある。そんなサポート系のモルフォと共にモンスターを倒しながら進んでいると、空にいるジベェを見つけたので合流しようと誤って落とされないように近づいたのである。

 

「それじゃあー、一緒に動こうかー」

「はい!頑張って一緒に上位に入ります!」

 

こうして合流できたミキとシアンは、共に行動することになるのであった。

ちなみに―――

 

「ジベェ、【津波】ー」

「モルフォ【夢路】!【約束の光】!輝け、【フォトン】!【連続起動】!」

「「「「ぎゃあああああああああっ!?」」」」

 

【空中戦艦】となったことで二人を止められなくなった事は言うまでもないことだろう。

 

「……遠方から狙撃は可能ですか?」

「出来なくはないけど……その前に巻き込まれそうだね」

「では近づかず、放置の方向で行くとしましょう」

 

 

――――――

 

 

とあるジャングルエリアの付近にて。

 

「いやー、上手く合流できて良かったね。特にサ・ク・ヤ・ちゃん・は、ねっ!」

「イエス。私の演奏スキルはパーティーが前提ですので、ソロの予選はヘビーです」

「嫌味が通じない……」

 

あっさりと肯定したサクヤに対し、嫌味があまり通用しなかったフレデリカはガクリと肩を落とす。レイドを含めた彼女達は現在、共に行動してモンスターを狩っていた。理由はサクヤとフレデリカは後衛であり、特にサクヤは支援寄りの後衛であるからだ。

 

サクヤのメインとなっている演奏はパーティーが前提となっているスキルだ。状態異常付与の演奏も、パーティーが組めない以上無差別攻撃となってしまう為、サクヤの強みが封殺される結果になっているのだ。

なので互いの位置情報を確認し、ちょうどレイドとフレデリカがサクヤとの距離が近かったので、早々に合流して撃破数を稼いでいるのである。

 

「まあ、どちらも魔法による後衛がメインだからな。私も二人が居るおかげで、戦闘がかなり楽になっているから助かっている」

 

先頭を歩くレイドが二人にそう返した直後、自身の得物である蛇腹刀を構える。その先には全身金色の飛蝗型のモンスターが数体いた。

 

「おっ!撃破数を稼げるボーナスエネミーじゃん!」

「特徴はオールゴールドですので、間違いないでしょう」

 

運営の通知にあった撃破数を稼げるモンスターの特徴は全身が金色であることが記載されていた。種類は様々ともあったので、ボーナスエネミーの一種であることは間違いなかった。

 

「全部で五体だな。三体はサクヤに譲り、私とフレデリカは一体ずつ狩るぞ。ヴォル、【覚醒】」

「オーケー!ノーツ、【覚醒】!」

「センキュウです。亡、【覚醒】」

 

白虎に黄色い小鳥、可愛いお化けが出てくると、レイドが白虎のヴォルと共に金色飛蝗達へと突撃していく。

 

「ヴォル【雷童子】!焼き焦がせ、【雷鞭刃】!」

 

レイドの指示を受けたヴォルによって、レイドの蛇腹刀に水色の雷が刃となって宿り、リーチが伸びる。それが刀身が分割されたのも合わさり、柔軟かつしなやかな雷刃となって金色飛蝗達を斬り裂く。

 

「ノーツ【輪唱】!連なり守れ、【多重障壁】!」

 

レイドの斬撃でダメージを負った金色飛蝗達が逃げようとするも、小鳥のノーツのスキルによって普段より多く展開されたフレデリカの障壁によって金色飛蝗達は退路を遮られる。

 

「亡【涅槃(ねはん)の炎】」

 

サクヤが亡に指示を出し、亡は掲げるように展開した黒い炎を金色飛蝗達へと飛ばす。黒い炎は金色飛蝗達に命中した途端に全身を包み込み、HPをどんどん削っていく。

 

「吹き飛ばせ、【破雷】!」

「同時に燃えよ、【多重炎弾】!!」

 

レイドとフレデリカは黒い炎がHPを削り切る前に、一体ずつ金色飛蝗を仕留める。二人が仕留めた直後で、残りの三匹もHPが0となって光となって消えていった。

 

「相棒がいるって本当にいいね!ノーツのおかげで手数が増えたし!」

「イエス。私も亡のおかげで、ソロが楽になりました」

「ああ。先に相棒がいたメイプル達を見て―――」

 

相棒によって戦術の幅が広がった事を改めて実感していた三人であったが、鼓膜を破壊するような轟音と殴り付けるような突風、そして遠くに見える盛大な火柱によって遮られる。

 

「ちょっ!?何なのこの轟音は!?」

「ワッツ!?」

「グッ!?」

 

驚愕する三人はいきなりだったこともあり、その突風に軽く吹き飛ばされてしまう。少しして突風は止み、三人は生存確認をしていく。

 

「クッ……サクヤ、フレデリカ、無事か?」

「イエス、私は大丈夫です。土まみれでゾンビのようになったゾンビデリカさんと違って」

「ゾンビ言うな!サクヤちゃんは茂みの中に突っ込んでいるくせに!」

 

茂みに突っ込んだり、土まみれで地面に転がっていたりと、少し情けない姿を晒しながらも相棒も含めて全員無事であった事に三人は一安心する。

同時にあの爆発は何だったのかと疑問に思うのであった。

 

 

――――――

 

 

―――ジャングルが大爆発する十分程前。

 

「次の爆破地点は……ここね」

 

水色の髪の生産職プレイヤー―――イズはそう呟くと、インベントリから超巨大な樽を取り出す。その樽は例の凶悪爆弾【樽爆弾ビックバンII】である。

イズはさらにトラップアイテムである【底なし沼】も取り出すと、自身の相棒であるフェイに指示を出す。

 

「フェイ【森の怒り】【アイテム強化】【リサイクル】」

 

イズの指示を受けたフェイは【樽爆弾ビックバンII】と【底なし沼】の効果を強化する。【底なし沼】を棘だらけとなった【樽爆弾ビックバンII】の真下に使うと、【樽爆弾ビックバンII】はズブズブと地面に沈んでいき、綺麗に地面の中へと埋まる。

イズは地面に沈んだ【樽爆弾ビックバンII】に十分後に設定した【時限爆弾】をセットしてカモフラージュを施すと、大急ぎでその場から離脱していく。

 

本来であれば様々な準備を施してから爆破するのだが、今回使ったのは猛威を振るい続けている【樽爆弾ビックバン】の上位版だ。フェイによって強化された【樽爆弾ビックバンII】がどれ程になるのか把握する為にも、イズは敢えて距離を取る方向で舵を切ったのである。

【樽爆弾ビックバンII】の範囲から倍近い距離を取ったイズは【妖精の守り】でアイテムによるダメージを大幅にカットしてくれるフェイのスキルも使い、木の裏に隠れてその時を待つ。

 

「後五秒……四……三……二……一……」

 

イズは両耳を閉じた直後、凄まじい轟音が鳴り響いた。同時に吹き抜ける爆風。周りの木々も煽られるように薙ぎ倒されていく。

 

「ちょっ!?嘘でしょ!?」

 

木々が薙ぎ倒される程の爆風により、イズ自身も吹き飛ばされてしまう。少しして風が止み、軽くダメージを受けたイズが目を向けた先には……更地と化し、クレーターが出来上がっている元ジャングルの姿があった。

 

「…………」

 

まるで巨大隕石が落ちたような現場となった元ジャングルにはプレイヤーもモンスターもいない。元からいなかったのはあり得ないので、答えは一つしかない。

 

「……次からはもっと距離を取らないとね」

 

強力ゆえに運用が難しい超威力の爆弾の運用方法を現実逃避気味に考えながら、イズは次の爆破予定地へと向かうのであった。

 

「今の爆発、ものすごく見覚えがあるんだけど……」

「俺もだ。どうやら俺の見間違いではないようだな」

「本当にあの爆発は何なんだよ……?」

 

 

――――――

 

 

白く深い霧が立ち込める森エリアにて。

 

「次のモンスターは俺が倒すからな」

「何を言っているんですか?こういうのは早い者勝ちです」

「どうでもいいが、ボーナスエネミーは俺がやるからな?お前らのせいで撃破数を稼げていないんだし」

 

剣士、弓使い、槍使いは互いにピリピリしながら視界の悪い森の中を進んでいく。仲が悪いのになぜ徒党を組んでいるのか疑問に思える程だ。

 

「俺は【集う聖剣】や【炎帝ノ国】の奴らより強くなる」

「【楓の木】は?」

「あれは論外だろ。まともに戦えば―――」

 

その瞬間、三人は麻痺したような衝撃が身体を駆け抜け、その場から動けなくなった。

 

「な……!?身体が急に……!?」

 

剣士は突然の麻痺に混乱していると、深い霧の向こう側から赤く光る二つの光に気がつく。

 

「まさか、モンスターか!?」

「僕が撃ち抜きます!麻痺が解けたら―――」

 

弓使いが満足に動かない身体を動かして弓をつがえようとするも、それは背後にいた存在によって阻まれる。

 

「【一閃】」

 

その瞬間、背後から三人はスパッと斬られる。同時に虚空から現れた刀に三人は胸を貫かれ、光となって消えていくのであった。

 

 

――――――

 

 

三人のプレイヤーを葬った上半身がサラシを巻いただけの刺激的な格好をした女性―――カスミは刀を鞘に納めて普段の姿に戻ると、霧の向こうから顔を出した巨大な白蛇―――相棒のハクに近寄っていく。

そう、この深い霧はエリア特有の現象ではなくハクのスキル。ハクが巨大なのも【巨大化】の上位スキルであろう【超巨大化】によるものである。

 

その二つのスキルによってカスミは縄張りを構築し、モンスターとプレイヤーを手当たり次第に狩っていたのである。

そのカスミはというと、鞘を掲げて感慨深げに眺めている。その鞘は《身喰らいの妖刀・紫》の紫の鞘ではなく、黒と銀の二色で構成され、桜の花弁の意匠が施された鞘だ。

 

「ああ、この補助装備の鞘もすごく良い……見た目はもちろん、スキルの方も悪くない」

 

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《御前の鞘》

STR+2

【三明の剣】【破壊不可】

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この《御前の鞘》は第六回イベントで手に入れた《折れた脇差し》を【解体】して得たユニーク素材、【暁の玉鋼】から作った補助装備枠のユニーク装備である。脇差しとどちらにするか悩んだが、若干のステータス補正と【紫幻刀】の存在等から鞘にしたのである。

 

《御前の鞘》のスキル【三明の剣】は三つのスキルを内包した【妖刀】と同じ複合スキルだ。だが、スキルの発動は抜刀の時点で自動的に一つ発動し、任意では選べない。それを加味しても、十分に強力なスキルであるが。

カスミは気を引き締め直すとハクに乗り、再び森の中を移動していく。しばらく進んでいると、鹿型のモンスターを狩っている大鎌を携えたプレイヤーと、付き従うように浮遊している数体の幽霊の姿を発見する。

 

「よし……」

 

カスミはそれを確認すると、刀を鞘から引き抜く。当然姿は変わり、同時に刀に一つの光が追従する。

 

「光が一つ……【小通連】が発動したのか」

 

どのスキルが発動したのかは鍔の周りを回るように追従する光の数によって把握できる。今回発動したスキルは【小通連】である。

【小通連】がもたらす効果は刀身の延長とオブジェクトの無視。簡単にいえば、木や壁などの障害物をすり抜けて敵を斬ることができるのである。プレイヤーの武器や盾はすり抜けられないが、強力であることには違いない。

刀の切っ先から陽炎のように揺らめく透明なオーラを確認したカスミは、ハクと共に彼らへと迫っていく。

 

「【武者の腕】」

 

ハクが鹿の胴に噛みつくと同時に、【妖刀】のスキルを発動させる。

カスミの両脇に出現した武者の腕が握る刀によって、暗緑色の幽霊達は斬り裂かれていく。その幽霊達は木々に紛れているが、【小通連】の恩恵で武者の刀もすり抜けられるので木々を無視して幽霊達を斬り飛ばしていく。

 

「ウホォ!?サラシだけのチャンネーとかマジ眼福―――」

「【一ノ太刀・陽炎】!!」

 

クワッと目を見開いた大鎌使いの鼻息荒いコメントをぶった斬るように、カスミは少し声を荒げたようにスキル名を告げて一太刀で仕留める。

 

「ハク【麻痺毒】!【四ノ太刀・旋風】!」

 

カスミはそのままハクによって麻痺した鹿に連撃を叩き込み、鹿のHPを0にする。

 

「うう……やはりこの姿を指摘されると恥ずかしくなる。慣れたくはないが、慣れないと……」

 

カスミは羞恥心を煽る今の姿に悩まされながらも、上位に入る為にマップに表示されているプレイヤーアイコンがある場所へと向かうのであった。

 

「この先、随分と霧が濃いですね。どうしますか?」

「この先は虎尾春氷(こびしゅんぴょう)だと私の勘が告げている」

「分かりました。このまま立ち入らずに離れましょう」

 

 

 




「蒼い雷が見えるっすね……行ってきていいっすか?」
「駄目……私だけじゃモンスターを倒すの、厳しくなる」
「後生のお願いっす!ほんのちょっと!ほんのちょっと見に行くだけっすから!」
「絶対戦うから……却下」
「うう~~!……そうだ!ジェラにお願いすれば……!」

己の願望の為にメッセージを送る者の図。
数十秒後……

『無理だよベル。ちょうどサリーを見つけたから』
「ガーン!!」
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