スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


採掘場の飛蝗様

「うーん……メダルが見つからないなぁ。そりゃあ、簡単に見つかる場所に配置はしないだろうけど」

 

コーヒーはそう呟きながら、上空から襲いかかろうとしていた翼が水晶となっている鴉をヘッドショット数発で仕留める。

あれから一時間ほど歩いたが、メダルは見つかっておらず、時折襲撃してくるモンスターの迎撃しかやっていない。

 

他のプレイヤーとの接触は今のところはない。おそらく、かなり広く設定されたフィールドなのだろう。探索用のフィールドなので当然かもしれないが。

もう少しで頂上に辿り着くが、何もなければ下山するつもりである。

 

道中の体のあちこちに水晶や鉱物がくっついたモンスターをキルしつつ頂上へ辿り着くと、入口を七色の光を放つ巨大な水晶で塞がれている洞穴を発見した。

試しにクロスボウでその水晶を撃ってみるも、何の変化も起きない。

 

「うーん……やっぱりピッケルじゃないと無理か?」

 

コーヒーは画面を操作して、クロスボウからピッケルに持ち代える。

そのままピッケルで水晶を叩くと、少しだけ砕くことが出来た。

 

「やっぱりピッケルじゃないとこの水晶は破壊できないのか。こんな面倒な場所なら、メダルが一枚くらいはあるかもな」

 

コーヒーはそのまま水晶にピッケルを振り下ろし続け、水晶を少しずつ砕いていく。

そして一時間後。

 

「やっと中に入れる……これで何もなかったら最悪だな」

 

ようやく入口を塞いでいた巨大な水晶を取り除き、コーヒーは下へと続く洞穴へと入っていく。

洞窟内は通路のあちこちに様々な色の水晶や金属の結晶が顔を覗かせており、生産職プレイヤーが見たら口元が緩みそうな場所である。

 

「採掘できる鉱物系の素材も見たことないものばかりだし……まさか、これがメダルの代わりじゃないだろうな?」

 

コーヒーは疑惑の目をしながら、ピッケルを紅い水晶に向けて振るう。入ってから30分、コーヒーはモンスターに会うことなく採掘を続けられている。

まさかのボーナスエリアかと抱き始めていたが、そうは問屋が卸さなかった。

 

「ギチチチチチッ!!」

 

そんな不快な鳴き声が突然響いたかと思うと、天井に生えていた茶色の水晶が突然落下し、グルンと回転して着地する。

その正体は、背中に水晶を背負った体長1メートルの蟋蟀(コオロギ)だった。

 

「擬態系のモンスターかよ……迸れ!蒼き雷霆(アームドブルー)!」

 

コーヒーは呆れたように呟きながらも、【名乗り】で強化しつつ素早くピッケルからクロスボウに装備し直し、その蟋蟀の頭部を直ぐ様射抜く。

 

「ギチィ……」

 

水晶を背負った蟋蟀が力なく鳴くと、蟋蟀は光の粒子となって消失した。【一撃必殺】が炸裂した証である。

 

「採掘は終わりだな。感知スキルに全然引っ掛からないし、此処からは慎重に進んでいくか」

 

コーヒーはクロスボウを構え直し、感知スキルを使いながら慎重に進んでいく。

しかしやはりと言うべきか、襲撃してくるモンスターは感知に一切引っ掛からず、辺りの鉱物に擬態して不意討ちで襲ってくるのだ。

 

コーヒーはその不意討ちをかわしながら撃退するも、このエリアのモンスターのHPが高く設定されているのか、ヘッドショット抜きでは20回以上攻撃しないと倒せないものだった。

水晶や金属が付属しているから、もしかしたらVITも高いのかもしれない。

 

「というかさ……出てくるモンスター、全部昆虫ってどうなってんだよ」

 

コーヒーは一人呟きながら、黒い鉱石に覆われたGをヘッドショット三発で仕留める。

これまで出てきたモンスターは蟋蟀、甲虫、鍬形(クワガタ)虫、雀蜂、G、芋虫、蝶、蟷螂(カマキリ)、亀虫、蜘蛛……

 

とにかく、身体に鉱物が付属、または鉱物そのもので構成されている昆虫型モンスターしか出てこないのだ。

中でも一番遭遇率が高いのは。

 

「また銀飛蝗か……」

 

2、3メートル先で水晶にかじっているように引っ付いている体長1メートル前後の身体が銀一色の、紅い眼をした飛蝗である。

この銀飛蝗という名称のモンスターは他のモンスターと違ってHPがそこまで高くないのか、矢を二、三回当てただけで簡単に倒せる。だが、この銀飛蝗はヘッドショットを食らわせても、その全てが一撃では倒れなかった。

 

しかも銀飛蝗は単体ではなく、最低でも10匹は一緒にいるのだ。

現に、水晶に群がっていたり、他の鉱石にくっついていた銀飛蝗がコーヒーに気づき、銀色の羽を羽ばたかせて此方に迫ってきているのだから。

 

「今回の数は……18匹か」

 

此方に向かって来る銀飛蝗の群れに、コーヒーは溜め息を吐きながらクロスボウを構え、距離が近い銀飛蝗から撃ち落としていく。

 

ヘッドショットを食らった銀飛蝗は衝撃でその場に倒れこむが、スタンと麻痺が一切効いていないのか、すぐに起き上がって普通に飛んでくる。正直、この洞窟内で一番キツいモンスターだ。

即死しない上に状態異常にならないのだ。その上、数も多い。

 

「孔雀よ その優雅な翼を以て撃ち払え―――【扇雛】!」

 

【口上強化】で放たれる矢が10本となった【扇雛】で迫ってくる銀飛蝗を4、5匹撃ち抜く。

 

「大地の牙よ 咆哮と共に刺し砕け―――【地顎槍】!」

 

コーヒーは口上込みでスキル名を告げ、矢を放って地面に撃ち込む。直後、その矢を中心に地面が隆起して残りの銀飛蝗を刺し貫く。

 

「弾けろ!【スパークスフィア】!!」

 

止めに発動速度重視で【詠唱I】での【スパークスフィア】を叩き込み、18匹の銀飛蝗を光の粒子へと変えた。

 

ピロリン♪

『スキル【詠唱I】が【詠唱II】に進化しました』

 

スキル進化の知らせに、コーヒーは嫌そうな顔で確認していく。

【詠唱II】では消費MPが7%減少……と。

 

「……プラス効果なだけに腹立つ」

 

コーヒーは運営の悪意にうんざりしながら、銀飛蝗が消えた場所に近づく。

 

「……やっぱりまた落としたのか」

 

地面に落ちていた銀色の虫の羽を拾い、コーヒーは慣れた動作でインベントリにしまう。

銀飛蝗を倒すと、毎回と言っていいほどこの銀羽が落ちている。

 

画面の説明欄には《銀飛蝗の羽》というアイテム名で銀飛蝗が落とす羽以外の情報がなく、何の意味があるのかさっぱりなままなのだ。あのモンスターが銀飛蝗という名称だと知ったのも、このドロップアイテムがあったからである。

だが、こうしてドロップしている以上、何かしらの意味があると踏んで、こうして律儀に回収しているのである。

 

「これで128枚……本当に何の意味があるのやら……」

 

《銀飛蝗の羽》を全部回収したコーヒーは本当に疑問に感じながらも、奥を目指して進んでいく。

奥に進めば進む程、銀飛蝗との遭遇率が上昇し、一度に35匹同時に戦う羽目にもなった。

その銀飛蝗をクロスボウや馴染みとなった麒麟の魔法で撃退しつつ、《銀飛蝗の羽》を回収していく。

そうして、ついに《銀飛蝗の羽》は400枚に達した。

 

「これ以上は回収できない……つまり、これが上限ということか?」

 

《銀飛蝗の羽》の取得上限表示に、コーヒーは疑問に感じながら再び奥を目指して進んでいく。

やがて、突き当たりらしき部屋に到達する。

 

「なんか……如何にもって場所だよな……」

 

部屋は決して広くはないが、部屋の中央には祭壇が存在感を放っている。その祭壇を囲うように火が薄く着いている4つの灯籠が鎮座しており、祭壇の中心には奇妙な魔法陣が描かれている。

 

「これの定番は祭壇を調べることだよな……」

 

コーヒーはそう呟いて、祭壇へと近づく。

 

「ビンゴ。祭壇の台座に何か書いてあるな。何々……『灯籠に銀の虫の羽を捧げよ。さすれば道は拓かれん』……これって《銀飛蝗の羽》のことだよな?」

 

コーヒーは結論を導くと、祭壇から離れて灯籠の一つに向かう。

そのまま灯籠に触れると、コーヒーの前に青い画面が現れた。

 

『《銀飛蝗の羽》を100枚捧げますか?《Yes》/《No》』

 

どうやらコーヒーの推測は当たりのようである。

コーヒーは画面のYesのボタンを押し、《銀飛蝗の羽》100枚を灯籠に使用する。途端、弱々しかった灯籠の火が強い光を放ち始めた。

 

「ファンタジー感満載だな。何かこう……すっごいドキドキするな、うん」

 

如何にもゲームらしい展開にコーヒーは胸を踊らせ、口元を緩ませながら、残りの3つの灯籠にも《銀飛蝗の羽》を捧げていく。

 

「これで最後……っと!」

 

最後の灯籠に《銀飛蝗の羽》を捧げると、祭壇の魔法陣が銀色に輝き始め、無事に起動したことを知らせてくる。

 

「どう見ても転送陣だよな……向こうには何があるのか……念のために万全の体勢で突入するか」

 

コーヒーはMPポーションを使ってMPを全快にし、どのスキルも使用可能状態であることも確認していく。

 

「さて、行こうか……迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)

 

【名乗り】でステータスを強化しつつ、コーヒーは魔法陣に足を踏み入れ、その場から姿を消した。

 

「ここは……」

 

転送された場所はとにかく広い空間だった。

壁や地面のあちこちには水晶が顔を覗かせて、上を見上げれば壁と壁を繋ぐ足場が幾つもある。

 

「どう見てもボス部屋だ……」

 

部屋の作りからして、飛行系のモンスターではないか。そんな考えが頭を過った直後。

 

「ピリュオオオオオオオオオオッ!!」

 

そんな鳴き声が聞こえたかと思うと、上空から何かが飛び降りてくる。

飛び降りた衝撃で土煙が舞い、コーヒーは咄嗟に顔を覆う。

やがて、土煙が晴れるとそこにいたのは……

 

「……銀飛蝗、だな」

 

そう、道中散々見てきたあの銀飛蝗だった。

見た目はあの銀飛蝗だが問題はそこではない。

 

「……どこからどう見てもデカイ……よな」

 

そう、とにかくデカイのだ。

具体的には体長20メートルはあるんじゃないかという位、コーヒーを丸呑みに出来るのではないかという位、デカイのだ。

 

「もしかしてしなくても、銀飛蝗の親玉?」

「ピリュオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

冷や汗を流しながら顔が引き攣るコーヒーの言葉に、デカイ銀飛蝗は肯定するように雄叫びを上げるのだった。

 

 

 




銀飛蝗のモデルは分かる人には分かります
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