スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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久々の日刊ランキング入り。皆様には感謝しかありません。
てな訳でどうぞ。


パーティー分断、雷の邂逅

―――第八回イベントの進行状況を確認している運営ルームにて。

 

「どうだ?」

「概ね想定通りに進んでいますね。ボーナスエネミーも、パーティーを悪辣なモンスターハウスに誘導してしっかり役割を果たしてくれてますし」

「予選の時よりHPを高く設定してあるからな。何体かは逃亡を阻止されて狩られているが」

「中にはモンスターハウスに閉じ込められて、全員生還したパーティーもいますけどね」

「全員生還……また【楓の木】か?」

 

その言葉に報告した人物は頭を振る。どうやら違うようである。

 

「生還したパーティーは【thunder storm】の上位プレイヤーですね。主にギルドマスターを含めた三人の奮闘で」

「ああ……スキルコンボが凄いあの三人か」

 

どうやって全員生還に至れたのか、運営二人はその時の映像を確認していく。

 

「うわぁ……【雷公爵の離宮】が最大状態で発動してますね」

「あれ、内包スキルを除いた雷系統スキルの所持数で威力と範囲が上がるんだよな。《導雷の円盤》で所持スキル全部に雷系統が付与されたから、威力と範囲が爆上がりしたんだな」

 

怒涛と言えるスキルの嵐に運営は若干遠い目となりながらも、改めて生存状況を確認していく。

 

「初日の夜の強化モンスターは結構倒してくれているな」

「迎撃態勢を整えたパーティーと、その辺の何もないフィールドで襲われたプレイヤーの差が如実に出てきていますね。ボーナスエネミーを深追いしたパーティーも後者と同じ末路を辿ってます」

「軽減エリアも夜と朝を迎える度に変化するから、油断してると痛い目を見るからな」

「【集う聖剣】と【炎帝ノ国】はほとんど生き残ってますがね。夜でも歩き回って探索を続けているくらいですし」

「だが、幾つかの拠点は隅に近いからな。二日目のあれ以降だと不利になるのは確実だ」

「あれですね。あれが起きれば一気にプレイヤーの数が減りますからね」

 

この先の展開にほくそ笑みながら、【楓の木】の現在の状況を確認していく。

 

「……え?何この殺意が高いダンジョンモドキは」

「元の洞窟の原型がほとんどないぞ、これ」

 

【楓の木】の拠点に侵入した強化モンスターである悪魔達は、断末魔を上げながらトラップの餌食となっていく。歩行タイプは当然として、飛行タイプでさえ叩き落とされてトラップの洗礼を受ける程だ。

 

「吹き飛ばすだけのジョークアイテムに触れて、強化モンスターが凶悪な罠がある方に吹き飛ばされてしまってますね」

「俺達が用意したダンジョンより凶悪すぎる……」

「これでは、毒や即死効果が効きづらいモンスターも無意味じゃないですか……!」

 

滾る溶岩に落とされたり、即死の毒沼に沈められたり、無数の針に貫かれたり、巨大な岩に押し潰されたりと、悪魔達は戦闘すら起こされずに始末される光景に運営達は一斉に遠い目となっていく。

 

「そりゃ初日だからな。そこまで痛手にならないのは分かっていたが……」

「戦闘すら起こらず、トラップだけで撃退されるだなんて予想できるか?【集う聖剣】も【炎帝ノ国】も普通に戦闘しているのに」

「毒と即死に強い悪魔だけでなく、麻痺とスタンに強い悪魔まで……!なぜこうも真正面から破壊していくのですか……!?」

 

新人が悔しそうにノートを叩いているが、どうしようもないので一同は新人を放置する。

 

「メイプル達はボードゲームをしながら、美味そうなお菓子を食べているな……」

「ギルド無所属の生産職プレイヤーが一緒ですね。そのプレイヤーがあの美味しそうなお菓子を作っています」

「クッキー、アップルパイ、饅頭、パンケーキ、クレープ……!ここで飯テロを仕掛けられるとは……!」

「食材アイテムはどこから調達して……やっぱりミキかよ!?」

「俺達もVR飯にしようぜ!腹が減っては戦は出来ぬだ!」

「「「「賛成っ!!」」」」

 

プレイヤーに群がる強化モンスターの悲劇から目を逸らす意味も兼ねて、新人も含めた運営一同は少し休憩を挟むのであった。

 

 

――――――

 

 

交代で休みつつも、即死級の罠によって一戦も強化モンスターと交えることがなかった一同の精神状態は比較的良好であった。

 

「そろそろ皆を起こす時間ね」

「強化モンスター達は全部罠で消えていったな。おかげで楽できたけどな」

 

最後の見張り番であるサリーとコーヒーは作り置きされたコーヒーと紅茶を飲みながら、先に次の予定について話し合っていく。

 

「初日でメダルは四枚も集まったからね。後一枚手に入れれば生き残るだけで十枚に到達するけど……」

「上位ギルドは絶対に可能な限りメダルを集めるだろうな。エリアボスや金のモンスターもいるし」

 

今回のイベントの仕様上、編成次第では多くの人物がメダルを手に入れられるようになっている。【楓の木】がこれからも上位に食らいつく為には、多くのメダルを手に入れるという発想は至極当然の流れだった。

 

「エリアボスや金のモンスターは、強化モンスターが蔓延っているから、難易度は初日と比べて……」

 

コーヒーは話の流れで自分のマップを開こうとパネルを操作するも、マップに現在の位置情報がないことに顔を顰めていく。

 

「?CF?そんな顔をしてどうしたのよ?」

「いや、マップに現在地が表示されなくて……」

 

コーヒーのその言葉に、サリーも目を細めて自身のメニューパネルを確認していく。

 

「こっちもマップに現在地が表示されなくなってる……しかも、メッセージ機能も使えなくなってる」

 

サリーの報告にコーヒーもメッセージ機能を確認すると、サリーの言葉通り使えなくなっている。

 

「バグ……というわけじゃないよな」

「そうね。間違いなく今回のイベントの特殊仕様ね。急いで皆を起こしましょ」

 

予定より少し早くなるが、予断を許さない状況もあって二人は少し急いで寝ているメンバーを起こしていく。

全員を起こしたところで、現在マップとメッセージ機能が使えなくなっていることを伝え、それぞれのマップとメッセージ機能も同様なのかを確認していく。

 

「全員マップとメッセージ機能が使えなくなっているのか……明らかにキナ臭いな」

「とりあえず皆で一緒に動こうよ!ばらばらになったら大変だし!」

「ばらばら……RPG系のゲームだと、パーティーメンバーが分断されて個別に進む展開だよな」

「さらっと不穏なことを言わないでよ」

 

コーヒーの呟きにサリーが脇腹をつねって非難するも、可能性としては十分にあり得るのかそうなった場合の対策を求めてミキに顔を向ける。

 

「ミキ。釣り上げたアイテムの中で、居場所が分かるようなアイテムはない?」

「んー……残念だけどないよー。あってもー、結果として分かるものだけだしー」

「そこまで都合の良いアイテムはないか……じゃあ、目印を決めて身代わりアイテムの複数所持で行くしかないわね」

 

相談の結果、ばらばらになった際はメイプルが目印となり、【藁人形】やデバフ付きの身代わりアイテムを幾つか所持してメイプルの下に集まる事を決めた一同は、必要な物を回収してから洞窟の外へと出る。

外は朝の時間帯にも関わらず、周りは薄暗く空も星一つすら見えない程の闇が広がっていた。

 

「うぅ、なんだか嫌な感じだね……」

「気をつけて……っ!CF!」

 

サリーの警告と同時に十二人の足下に漆黒の魔法陣が展開される。その効果範囲らしきサイズは、今メイプルが発動している【身捧ぐ慈愛】に匹敵する程だ。

 

「【孔雀明王】!」

 

サリーの意図を察したコーヒーはすぐさま雷系統以外を【封印】状況にするスキルを発動させる。【孔雀明王】によってメイプルの【身捧ぐ慈愛】は解除されるが、本命である足下の漆黒の魔法陣は解除されなかった。

 

「マジかよ!?」

「無効できないって事は……イベント仕掛けね!」

「つう事は、一番最悪のパターンか!」

 

コーヒーの【孔雀明王】が通用しなかった時点で最悪の展開が現実味となったことで、一同の顔に緊張が走る。

 

「みんな、生き残る事を第一に!生きてメイプルの下に集まるわよ!」

 

サリーのその言葉を最後に、全員が漆黒の光に包まれる。漆黒の光が消えたコーヒーの視界には……先ほどまでいたメンバーが誰一人いなくなっていた。

 

「強制転移による分断……パーティーそのものは解除されていないが、安否確認できないのは痛いな」

 

居場所が分からない以上、闇雲に探すのは得策ではない。【孔雀明王】を解除したコーヒーはそう考えていると、目の前に黒い魔法陣が展開され、如何にも悪魔という見た目のモンスターが現れる。

 

「迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)!ブリッツ、【界雷】!【磁場領域】!【結晶分身】!」

 

コーヒーはすぐさま【名乗り】を使いつつブリッツに指示を出しながらスキルを発動させると、悪魔が振り下ろした腕を躱しつつ二丁クロスボウで悪魔の脇腹に矢を次々と叩き込んでいく。

 

「未知の技術で生まれし太古の遺物 我を盟主として(かつ)ての栄誉を示せ―――【遺跡の匣】!」

 

コーヒーは追加攻撃スキルである【遺跡の匣】を発動し、追加で落ちてくる星と共に追加の光線で悪魔の身体を攻撃していく。

 

「砕け、【崩雷】!」

 

最後に雷の杭を叩き落とし、悪魔に止めを差す。悪魔は光となって消えると、再び静寂が訪れる。

 

「……さて、そろそろか?」

 

コーヒーはそう呟いて上空を見上げると、遠い場所から上がったであろう光が空を照らした。

そう、あれがメイプルによる目印。爆弾等の光を放つアイテムを利用して自身の位置を知らせて合流地点を伝えているのである。

光があれば当然目立ち、モンスターも寄ってくるがメイプルの圧倒的なVITによって倒される心配は皆無に近い。なので、コーヒーは【クラスタービット】を使いメタルボードを形成すると、迷わずそこへと向かっていく。

 

「うわー……やっぱり道中も襲われるか。弾けろ、【スパークスフィア】。舞え、【雷旋華】」

 

飛びかかってくる悪魔達にコーヒーは少々うんざりしつつも、お得意の雷魔法と二丁クロスボウと光線、たまに落ちる星で容易く撃退していく。

そんな中で、誰かが戦っている音が聞こえてくる。

 

「向こうで誰か戦っているな。出来ればあの三人の内の誰かだと良いんだが……」

 

攻撃担当の極振り三人衆の誰かであればいいなと思いつつ、コーヒーはその現場へと向かっていく。

そこにいたのは、両手にガントレットを装備したお嬢様のような見た目の服装をした金髪の女性プレイヤーだった。

 

「まだ来るっすか!?さすがに多すぎるっすよ!!」

 

金髪の女性は悪態を付きながら少々体格が小さい悪魔を殴り飛ばす。パッと周りを見た限り、彼女を取り囲む悪魔達は地面にある紫色に輝く魔法陣から現れているようである。

マイ達ではなかったことにコーヒーは少し落胆したが、無視するわけにもいかないので加勢に入る。

 

「迸れ、【リベリオンチェーン】!!」

 

コーヒーは加勢と同時に【リベリオンチェーン】を発動させ、金髪の女性に群がっていた悪魔達を一体残らず縛り上げる。突然の加勢に目を見開いている金髪の女性の隣にコーヒーは降り立った。

 

「あなたは……」

「説明は後!今はこいつらを殲滅するぞ!」

「っ!了解っす!」

 

コーヒーの言葉に金髪の女性は素直に頷くと、気合いを入れ直すように両手のガントレットを打ち合わせる。

 

「そのまま縛っておいて下さいっす!【雷公爵の離宮】!」

 

金髪の女性がスキルを発動させると、彼女自身を包み込むように半透明な緑の小さな宮殿が形成されていく。少しして半透明の緑の宮殿が完成すると、周囲に無数の緑の稲妻を落として雷の鎖に縛られたモンスターを次々と撃ち抜いていく。

 

「雷ならこっちも負けてないぞ!昇るは助力を願う晃雷 降り注ぐは裁きの雷雨 咎ある者達に神罰を―――降り注げ、【ディバインレイン】!」

 

少々張り合いの意味も込めて、コーヒーは【ディバインレイン】を発動させて共に落雷で悪魔達を撃ち抜いていく。緑と蒼の落雷、さらに落ちてくる星と匣から放たれる光線によって悪魔達は駆逐されるのだった。

 

「ふぅ……」

 

危機的状況から脱したことで安心したのか、金髪の女性は一息つくとコーヒーに向き直る。

 

「CFさん……ですね。加勢して頂いてありがとうっ……ございました」

「?ん、ああ。さすがに誰かは分かるか。色々な意味で目立っているからな」

 

金髪の女性の妙な間の感謝の言葉にコーヒーは首を傾げつつも、相手が自身を知っている理由は察して微妙な表情となる。

 

「ええ。お噂は常々……こうして会えて光栄っす……です。私はベルベットと言います」

 

金髪の女性―――ベルベットは自己紹介するも、コーヒーはどこか探るような目付きでベルベットを見つめている。

 

「あの……どうかしっんん、どうかされたのですか?」

「そういうキャラ作りなのか?」

 

コーヒーのその指摘にベルベットの目が泳いだ。

 

「バレてるっす……のですか?」

「口癖が『~っす』だと分かる程度には」

 

何となくベルベットはお嬢様ロープレをしていると察したコーヒーは、無理に演技しなくてもいいと告げる。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて……会えて光栄っすよ、CFさん!同じ雷属性のスキルを使うプレイヤーのライバルとして、ぜひお会いしたかったっす!!」

「おおう……」

 

お淑やかな態度から一変、元気いっぱいで話しかけてきたベルベットにコーヒーは思わず少し引いてしまうのであった。

 

 

 




原作より早い邂逅となりましたが、後悔はありません。情報もある程度出てますから。(キリッ)
ちなみに彼女が原作よりパワーアップしている理由は、ライバル意識からです。(ニッコリ)

スキル紹介
【雷公爵の離宮】
発動まで十秒かかる。発動中は緑の稲妻を周囲に落とす。スキル発動中はその場から移動できない。
威力と範囲は内包スキルを除いた【系統:雷】のスキルの数だけ上昇する。
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