スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


銀飛蝗の親玉は移動要塞

デカイ銀飛蝗が雄叫びを上げる。

それに応えるように、地面から銀飛蝗が這い出てくる。

それも10や20じゃない。数えるのが億劫になる数だ。

 

「ちょっ、流石にこれは洒落にならないだろ!?」

 

コーヒーは植物の如く地面から出てくる銀飛蝗の大群に猛烈に嫌な予感を覚え、【跳躍IX】で頭上の壁と壁を繋ぐ足場の一つに向かって飛び上がる。

足場に辿り着いた途端、地面から出てきた体長50センチの銀飛蝗の大群が一斉に銀羽を羽ばたかせて、コーヒーに一直線に向かってきた。

 

「こ、此方に来んな!!舞え!【雷旋華】!!」

 

視界を埋め尽くすんじゃないかという位の銀飛蝗の大群に、コーヒーは詠唱込みで【雷旋華】を放つ。

雷のドームに突撃した銀飛蝗達は、触れた途端に身体を光の粒子に変えていく。どうやらこの銀飛蝗は一撃で倒すことが出来るようだ。

 

だが、その数は尋常ではなく、【雷旋華】が終われば間違いなく銀飛蝗の津波に呑み込まれてしまう。

そのコーヒーの考えを裏付けるように、【雷旋華】が時間切れで消えた途端、突撃し続けていた銀飛蝗の大群がそのままコーヒーに迫り―――呑み込んだ。

 

「クソッ!!」

 

まるで喰われるかの如く、HPバーがガリガリと削られていくのを確認したコーヒーは、直ぐ様足場から飛び降りて銀飛蝗の津波から逃れる。

数秒呑まれただけでHPが半分、装備は装飾品以外はボロボロだ。

 

《疾風のゴーグル》以外は直ぐに【破壊成長】によって修復されていくが、銀飛蝗の大群はお構い無しとばかりにコーヒーに迫ってくる。

 

「【アンカーアロー】!弾けろ!【スパークスフィア】!弾けろ!【スパークスフィア】!弾けろ!【スパークスフィア】ァアッ!!」

 

コーヒーは修復されたクロスボウから【アンカーアロー】を放ち、足場の一つに着弾。続いて【スパークスフィア】の連発。

流石に【口上強化】を施す暇がない為、MP消費を抑える為の【詠唱II】だけで放ち、3つの雷球で銀飛蝗の津波を吹き飛ばした。

 

その結果を確認することなく、コーヒーはさっきとは別の足場に着地。ポーションを使ってすぐにHPを回復。

回復が済んだコーヒーは直ぐ様クロスボウを眼下のデカイ銀飛蝗に向けた。

 

「【閃雷】!!」

 

コーヒーは【閃雷】を使用。デカイ銀飛蝗の背中に向かって弾速に迫る矢を放つ。

その場から動かなかったデカイ銀飛蝗は避ける動作もしなかった為、背中に矢が突き刺さった。HPバーの減少は全体の10分の1だ。

 

「よし!このまま―――」

 

HPは少ないと分かったコーヒーは、直ぐ様次の矢を放とうとした瞬間、デカイ銀飛蝗が行動を起こした。

 

「ピリュオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

デカイ銀飛蝗が雄叫びを上げたかと思うと、その銀色の身体が光を放ち始め、より一層銀色に輝き出す。同時に例の銀飛蝗達が地面から先程よりも倍近い数が這い出てくる。

 

「迸れ!蒼き雷霆(アームドブルー)!!放つは猛虎 その剛健で吹き飛ばせ―――【パワーブラスト】!!」

 

これ以上不利となる前に、【名乗り】でステータスを強化し直し、【口上強化】で強化した高威力の一撃【パワーブラスト】を放つ。

黄色いエフェクトに包まれた矢は寸分違わずデカイ銀飛蝗に迫り―――

 

カン!

 

「…………え?」

 

弾かれた。

見間違えることなく、弾かれた。HPバーもそれを裏付けるように1ミリも減少していない。

 

「まさか……防御貫通無効能力持ちか?」

 

コーヒーの攻撃は【無防の撃】で本来は防御を無視してダメージを与えられる。

その攻撃が通らないという事は……防御貫通攻撃を無効にする能力を持っているとしか考えられない。

しかもダメージ0。これはあの時の麒麟以上に厄介である。

 

そんなコーヒーの眼下で、デカイ銀飛蝗の周りから這い出てきていた銀飛蝗の何体かが光の粒子となって、デカイ銀飛蝗の口に吸い込まれていく。

デカイ銀飛蝗が光の粒子を吸い込み終え、咀嚼するように顎を動かすと、HPが回復し始めた。

 

「…………へ?」

 

目が点となるコーヒーを他所に、デカイ銀飛蝗のHPバーが回復し―――満タンになった。

 

「……フッ」

 

コーヒーは口元に笑みを浮かべて一言。

 

「―――メイプルゥウウウウウウウウウウウウウッ!!!」

 

コーヒーはここにいない、天然移動要塞に向かって絶叫する。

このデカイ銀飛蝗、どう見てもメイプルを参考にして作っている。

低いHP、防御無視が無効になった時の頑丈さ、配下のモンスターを食べることによるHP回復。

 

まんまメイプルである。

違いがあるとしたら、攻撃手段が毒ではなく配下である小さめの銀飛蝗。それも数えるのが億劫な程の大群。

しかも、HPより装備品にダメージを与える攻撃だ。

 

普通のプレイヤーであれば、装備品を失って敗北である。

そんな頭を抱えたいコーヒーに群がるように、再び地面から出てきた銀飛蝗達は光を放ちながら銀羽を羽ばたかせて迫ってくる。

 

「舞え!【雷旋華】!放つは轟雷 形作るは天の宝玉 仇なす者に雷球を落とさん―――弾けろ!【スパークスフィア】!!」

 

【雷旋華】による防御からの【口上強化】と【詠唱】による【スパークスフィア】で群がる銀飛蝗の津波を何とか凌ごうとする。

だが、今度の銀飛蝗の群れは雷撃を突き破って迫ってきていた。

 

「嘘だろオイ!?」

 

防御と攻撃を突き破ってきた銀飛蝗の群れに、コーヒーは本気で焦りの声を上げる。

直ぐ様【雷旋華】を解除し、【壁走り】、【跳躍】、【アンカーアロー】を駆使して銀飛蝗の群れから逃れようとする。

 

壁を走り、壁を蹴り、アンカーでターザン―――

あの手この手で銀飛蝗の群れの追跡を逃れようとするも、銀飛蝗の群れは執拗にコーヒーの後を追いかけてくる。

 

「チクショウ!!本当にキツすぎる!!迸れ!蒼き雷霆(アームドブルー)!!」

 

コーヒーは吐き捨てながらも、ステータスを強化し直しつつ必死に銀飛蝗の群れから逃れようと壁と足場を駆使して走り続ける。

幸い、銀飛蝗の群れは賢くないのか、周りこんだり進路を塞ぐように動かないから何とか逃げ切れている。

 

だが、銀光に輝く銀飛蝗達にはこちらの攻撃がまったく効かないのだ。打開策も浮かんでこない。

もういっそのこと、負けてリスポーンすべきか……

そんな思考が過った直後、銀飛蝗の群れから光が消えていった。

 

「!?まさか……弾けろ!【スパークスフィア】!!」

 

銀飛蝗の群れから銀光が消えたことで、コーヒーはもしやと思い、【スパークスフィア】を放つ。

着弾。放電。

炸裂した【スパークスフィア】は銀飛蝗の群れを瞬く間に光の粒子へと変えていく。

 

「どうやら貫通無効は身体が光っている時だけのようだな……舞え!【雷旋華】!!」

 

今なら攻撃が通じると判断したコーヒーは【雷旋華】で銀飛蝗の群れの進行を防いでいく。

 

「放つは轟雷 形作るは天の宝玉 仇なす者に雷球を落とさん―――弾けろ!【スパークスフィア】!!」

 

【口上強化】で強化し、【詠唱】でMPを抑えた【スパークスフィア】で銀飛蝗の群れを一気に吹き飛ばす。

 

そこでコーヒーは見てしまった。

あのデカイ銀飛蝗が、光こそ失っているが、コーヒーが倒した銀飛蝗の光の粒子を口に吸い込んでいる光景を。

そして、新たな銀飛蝗達が地中から顔を覗かせている光景を。

 

「長期戦は圧倒的に不利……なら、ここで勝負を仕掛けるしかない!!」

 

コーヒーはここで切り札を切って勝負すべきと判断し、飛び降りながらMPポーションを使ってMPを回復していく。

 

「連なるは魔弓の演舞 その繋がりを以て射抜き続けん―――【チェイントリガー】!!」

 

零距離だと被ダメージが三倍、同じ箇所に当て続けると与ダメージが最大300%増加するスキル【チェイントリガー】を発動する。

 

「我が技量で矢を放ち続けん―――【連射】!!」

 

デカイ銀飛蝗の背中に飛びついたコーヒーはクロスボウの先端を突き付け、【連射VI】でデカイ銀飛蝗に矢を次々と撃ち込んでいく。

 

「ピリュオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

当然、デカイ銀飛蝗は雄叫びを上げ、自身の身体から銀色の光を放ち、3分の1となったHPバーの減少はそこで止まる。

 

「唸るは雷鳴 昂るは信念の灯火 雷鐘響かせ威厳を示さん―――瞬け!【ヴォルテックチャージ】!!」

 

コーヒーはお構い無しとばかりに、【ヴォルテックチャージ】を使う。

これで、次の同系統の魔法は凡そ3倍。【チェイントリガー】で与ダメージは300%増加。

コーヒーはさらに、高価なポーションを使ってMPを完全回復。

次の一撃で、全てを賭ける。

 

「掲げるは森羅万象を貫く威信―――」

 

コーヒーは口上を告げる。地中から出てきた銀飛蝗は身体を光らせ、羽を羽ばたかせてコーヒーに迫っていく。

 

「我が得物に宿るは天に座す鳴神の宝剣―――」

 

コーヒーの持つクロスボウが蒼い輝きを放ち始める。同時にクロスボウにヒビが走っていく。

 

「神雷極致の栄光を現世へ―――!」

 

コーヒーの身体が銀飛蝗の群れに呑まれる。HPが削られ、装備品がボロボロになっていくが、コーヒーは構わずに最後の言葉を声高に発する。

 

「集え!【グロリアスセイバー】!!!」

 

コーヒーがスキル名を告げた途端、デカイ銀飛蝗の身体が見るものを魅了せるほど美しい形状をした雷の剣に貫かれる。

 

「ピリュオオオオオオオオオオオオオオ―――ッ!?」

 

咆哮。絶叫。

そして―――爆発。

 

その爆発でコーヒーはデカイ銀飛蝗の背中から吹き飛ばされる。

同時に、コーヒーに群がっていた銀飛蝗達もその衝撃によって吹き飛ばされる。

コーヒーはその衝撃でろくに受け身も取れず、そのまま地面を滑っていく。

 

壁に打ち付けられる直前で止まったコーヒーの状態は、HPは一桁、装備品は装飾品以外はボロボロだ。

特に《疾風のゴーグル》は耐久値が0になったのか、光の粒子となって消えていく。

コーヒーは身体をふらつかせながらも立ち上がり、デカイ銀飛蝗がいる筈の土煙が上がっている場所を見つめる。

 

これで無事なら……素直に負けを認めるしかない。

そして、土煙が晴れた結果は―――光の粒子となって消えていっているデカイ銀飛蝗だった。

それに呼応するように、周りの銀飛蝗も光の粒子となって消えていっている。

 

「……勝った、のか?」

 

目の前の光景にコーヒーは呟き、やがて勝利したと確信すると崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。

 

「勝てたかぁ~………切り札が通用して、本当に良かった~……」

 

コーヒーは安堵の息を吐いて、修復されていくクロスボウを見つめる。

【グロリアスセイバー】。

【雷帝麒麟】が内包している魔法の中で、自身の武器を犠牲として発動する最強と呼べる魔法だ。

 

その威力、効果、攻撃範囲は消費したMPの量、装備している武器に依存する。

犠牲となった武器は破壊されてしまうのだが、【破壊成長】のお陰でそのリスクは0で使うことが出来る。だが、使えるのは一日1回。そう安易には使えない魔法だ。

 

だが、今回のデカイ銀飛蝗はまともな方法ではダメージを与えられない為、最大威力が発揮できる状態でコーヒーはこの魔法を使ったのである。

普通ならオーバーキルだろうが、あのデカイ銀飛蝗のVITがどれだけ高いか分からない為、加減などする訳にはいかなかった。

 

そんなコーヒーの目の前で、地面の一部がスライドし、そこから地下へ続く階段が顔を覗かせていく。

地下への階段が完全に顔を覗かせると、コーヒーはフラフラとした足取りで地下へ続く階段を降りていく。

階段を歩いて五分後、コーヒーは宝箱が鎮座している比較的小さな部屋へと辿り着いた。

 

「これでメダルがなかったら……泣く」

 

コーヒーはそう呟いて宝箱を開けると、中には銀のメダル4枚と巻物1つが入っていた。

 

「メダルはともかく……巻物はスキル……だよな?」

 

メダル4枚と巻物を回収したコーヒーは、宝箱の後ろに展開されている魔法陣に目を向ける。

この魔法陣はほぼ間違いなく、外へと繋がっているだろうが……

 

「……できれば、戦闘は勘弁してほしいなぁ……」

 

コーヒーはそう呟きながら、魔法陣の中に入り、その場から消えるのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

―――運営の管理部屋では。

 

「銀群飛蝗が倒されたぁああああああああああああああ―――ッ!!」

「え!?あの銀群飛蝗が!?」

「嘘だろ!?VITがくそ高く、初期装備でさえボロボロにしちゃうほど、装備破壊能力を重視した配下の小銀飛蝗のポップ数を異常なまでに高く設定した、あの銀群飛蝗が!?」

「銀翼と海皇に続く、俺達の悪意の結晶のアイツが!?」

「ぶっちゃけ、メイプルを参考にして作ったアイツが!?」

「そもそも、ゲーム内時間はまだ一日目の筈だろ!?」

「一体誰が銀群飛蝗を倒したんだ!?」

「CFだ!!」

「CF……コーヒーの事かよ!?前回イベント二位の!」

「確かにCFの持つスキルなら、銀群飛蝗を倒すことは不可能ではないが……!?」

「俺……このところ、コーヒーを見ると胃が痛くなるんだ」

「俺なんて、毎朝飲んでいたコーヒーが飲めなくなってきたんだ……」

「はっ!やべぇぞ!?例のレアスキルの巻物をCFに持っていかれたんじゃないのか!?」

「あのスキルは使い方が難しいが、使いこなせれば相当強力なんだぞ!?」

「待て!こう考えるんだ!あのレアスキルがメイプルに渡らずに済んだと!」

「そうだな!メイプルがあのスキルを手に入れていたら、本当に最悪だったな!!」

「そうだ!そう考えよう!!」

 

 

 




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