スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


瓦礫のダンジョン

南西に向かったのはコーヒー、アロック、サクヤ、テンジア、ジェラフの五人である。こちらの組はコーヒーが【ワイルドハント】で召喚した舟が移動手段となっている。五人は怪しいと睨んだ場所を調べていたが、今のところは空振りだった。

 

「四枚目の通知が来たな。こっちもそろそろメダルを手に入れないと」

戒驕戒躁(かいきょうかいそう)の精神で進むべきだ。焦っては失敗の元だぞ」

「確か、焦らず堅実に行うという意味だったか?」

「そうだね。驕らず騒がず、慎んでが抜けてるけど」

「ベリーハードな四字熟語ですね。意味が分からないとクエスチョンですよ」

 

五人はそのままコーヒーが召喚した舟に乗ると、次の怪しいポイントへと向かっていく。

 

「空を自由に飛べる乗り物は本当に便利だな」

「イエス。第四回イベントの時にも痛感しましたが、スカイエリアを支配されると一方的になりますからね」

「空飛ぶ魚による爆弾の投下のことだね。当時は空への対抗手段が少なかったから、ほとんど一方的だったからね」

「空からの津波も合わさればまさに一網打尽。相対した者にとっては悪夢だっただろう」

 

空を飛べる乗り物の利便性に対しての四人の評価に、コーヒーは顔を明後日の方向に向けて誤魔化そうとする。遠距離攻撃なら魔法と弓等があるが、どれも飛距離は決まっているのに対し投擲物はただ投げ落とすだけ。安全圏から攻撃性の高いアイテムを落とすだけで十分な脅威となるのだ。

そんな微妙な空気になりつつも情報を擦り合わせた怪しいポイントをすべて回ったが、残念なことにすべて空振りで終わってしまった。

 

「全滅だったな」

「ああ。怪しい場所はすべて外れだった」

「一つくらい当たりがあっても良かったけど、仕方ないね」

「意気消沈しそうではあるが、落ち込んでいる場合ではないからな」

「イエス。ここからは怪しいポイントを見つけて調べる方向にシフトしましょう」

 

サクヤの提案に全員が頷くと、瓦礫を継ぎ接ぎで繋げて作り上げた強化モンスターが何体も姿を現す。

 

「【痺れる調律】」

「クローネ、【金属音】」

 

サクヤがすぐさまスキルを発動して演奏を始めると、瓦礫の強化モンスターは痺れたように動きが緩慢となっていく。アロックもクローネに指示を出し、クローネから発せられた甲高い音によって強化モンスター達の防御力を落としていく。

 

「弾けろ、【スパークスフィア】!」

「【旋空剣】!」

「【二ノ風・熱風波】」

 

そんな動きが鈍ったモンスター達きコーヒーは雷球を放ち、テンジアは二振りの長剣を横薙ぎに振るい、ジェラフは刀から紅い風を放ってすぐに撃破していく。

 

「……少し妙じゃない?」

「妙?」

 

瓦礫の強化モンスターを駆逐し終えたジェラフの呟きにコーヒーは首を傾げると、ジェラフは自身が感じたことを話し始めていく。

 

「例の瓦礫のモンスターに襲われる回数が少し多いと思ってね。フィールドには四足一つ目の悪魔もいる筈なのに、そいつらとかち合っていないからさ」

「言われてみれば……確かに」

「エンカウントの回数で見れば、確かに瓦礫のモンスターの方が多いですね」

「枝葉末節かもしれないが、偶然で片付けるわけにはいかないな」

「少し調べる必要がある……か」

 

マップの端に近づいているとはいえ、強化モンスターの偏った遭遇率に違和感を感じた一同は先程現れた方向に向かって進んでいく。当然、瓦礫の強化モンスターが道中で襲ってくるも、基本はコーヒーが先制で削りサクヤのバフで強化された三人が仕留めることで問題なく進んでいた。

 

「やっぱり瓦礫のモンスターの数が多いね。間違いなく何かあるよ」

「イエス。ここまで瓦礫の強化モンスターしか見ないと気づきますよ」

 

五人は瓦礫モンスターが多く襲ってくる方向に従って進んでいると、木々に混じって不自然に瓦礫の山が幾つも並んでいる場所へと辿り着いた。

 

「あんな瓦礫の山、予選の時にはなかったよ」

「私達もこの辺りは探索したが、あのような瓦礫の山はなかったな。まさに前人未到の領域だ」

「ということは、二日目限定の光景ってことか?」

 

明らかに普通ではない場所に五人は警戒しながら足を踏み入れる。瓦礫の山からは這い出るように例の強化モンスターが出てきており、ここが強化モンスターの発生源の一つと確信できるものであった。

 

「彼処に魔法陣があるね。地面を削って作られたものだけど」

「一目瞭然。あれは足を踏み入れた瞬間に発動するな」

「私もそう思います。高確率でダンジョンのゲートですよ」

「じゃあ、入るぞ」

 

メダルを一枚でも多く手に入れる為、五人は危険を承知の上で六芒星で描かれた魔法陣に足を踏み入れる。踏み入れてから少しして魔法陣から白い光が放たれ、五人の身体を包み込む。

そうして光が収まると、五人が立っていた場所は木々と瓦礫の山が入り乱った先程の場所ではなく、辺り一面に折れた木や砕けた岩、錆び付いた剣に鎧といった様々な廃棄物がそこかしこに積もって散乱している広い空間であった。

 

「まるでごみ捨て場のような場所だね」

「もしくはゴミ屋敷だな。衛生面でも良くない光景だな」

「イエス。ここは別の意味でアウトですよ」

 

どこかうんざりしたようにジェラフとアロック、サクヤが呟く。悪臭はないにしても、不快になる光景には違いないのだ。女性二人とパティシエには度し難い光景であった事は想像に難くない。

 

蛟竜毒蛇(こうりょうどくだ)。確かに不快ではあるが、調べないわけにもいかないだろう」

「そうだな。取り敢えず、瓦礫に埋まっていない道に沿って―――」

 

コーヒーが方針を伝えようとした矢先、周りのごみ溜めのような瓦礫の中からサッカーボール程はある白い玉が浮かび上がる。それも一つではない。十個以上は浮かんでいる。そんな宙に浮かぶ玉にコーヒー達はすぐさま警戒度を上げると、周りの瓦礫がその白い玉に吸い寄せられるように集っていき、特撮に出てくるような怪獣の姿形となった。

 

「さっそくお出迎えだね。モンスターと呼ぶべきか微妙だけど」

「本当にジャンクから生まれたモンスターでしたか」

「少なくとも一筋縄でいく相手ではないだろう―――【クイックチェンジ】!【機械の演舞】!」

 

アロックはHPとVIT重視の重騎士のような装備に変更すると、大盾と短刀を握った機械人形を召喚する。

 

「まずは俺が攻撃を受け止め―――」

 

アロックは機械人形を前に出させて大盾を構えさせると、二足歩行の怪獣の姿をした瓦礫モンスターが口にあたる部位から白い光線を放つ。白い光線はそのまま機械人形の構えた大盾にぶつかる―――ことはなく素通りし、運悪く射線上にいたコーヒーの身体を貫いた。

 

「……え?」

「なにっ!?」

 

光線に貫かれたコーヒーは呆けた表情となり、防げずにダメージも負ったアロックは驚愕に顔を歪める。アロックは装備をHPとVIT重視にしていたことで致命的なダメージとならずに済んだが、VITが低いコーヒーは一気にHPを半分以上持っていかれる。

しかし、それも一瞬。事態に気づいたコーヒーは焦燥を露に叫んだ。

 

「嘘だろ!?あの光線、オブジェクト無視の貫通攻撃かよ!」

「ワッツ!?」

 

オブジェクト無視の攻撃の利便性を知っているコーヒーは一番の動揺を見せ、物理的な防御は不可能と知ったサクヤも驚いたように声を上げる。

何せ、障害や壁となったプレイヤーの有無に関係なく攻撃が素通りするのだ。タンクの存在を真っ向から否定する凶悪攻撃は回避以外に避ける手立てがないのだから。

 

「その貫通は防御無視とは別の貫通ってこと!?」

「ああ!」

「それなら、ダメージカットや無効はノープロブレムですね!?」

「少なくともな!」

 

これは《信頼の指輪》でサリーに匣の正確な検証をしてもらった事で得られた事実である。例を上げれば【無防の撃】の影響がない匣の場合、VITが五桁のメイプルには一切ダメージが入らなかったのだから。

 

「では、ダメージカットと麻痺で対処します!亡、【覚醒】【守護霊】【黄泉の守り】!【痺れる調律】!」

 

サクヤは亡を召喚すると、防御力上昇とダメージカットスキルを使わせ自身も麻痺効果のある音楽を奏でていく。

 

「クローネ、【汚れた油】!」

 

アロックは【機械の演舞】の機械人形を消し去ると、クローネに指示を出して黒く濁った液体をばら蒔かせてモンスターの動きを更に鈍らせる。

 

「迸れ!蒼き雷霆(アームドブルー)!【遺跡の匣】!【結晶分身】!【扇雛】!弾けろ、【スパークスフィア】!」

「リース、【覚醒】【氷依一体】【氷の翼】!」

 

動きが鈍った瓦礫のモンスターにコーヒーは二丁ボウガンと匣の光線、雷球を放ってダメージを与えていく。

テンジアもリースを召喚して一体化すると、背中に氷で構成された蝙蝠の翼を生やす。その氷の翼をはためかせると空へと飛び上がり、ワイバーンの姿形をした瓦礫のモンスターへと突撃して切り捨てていく。

 

「太郎丸、【覚醒】【紅葉刃】!【颪刃(おろしやいば)】【連なる風】【三ノ風・九十九飄(つくもはやて)】!」

 

ジェラフも太郎丸を呼び出すと何枚もの紅葉を自身の周りへと踊らせ、駆け抜けるように地上にいる瓦礫のモンスターを切り捨てていく。

サクヤとアロックによって動きが鈍らされた瓦礫のモンスター達は、三人の攻撃によって光となって消えるのであった。

 

「瓦礫の中からモンスターはまだしも、素通りする光線は予想外だったよ」

「ああ。これでは下手に【機械の演舞】を使えん。的を増やすだけでしかないからな」

 

【機械の演舞】はアロックのHPと繋がっている。機械人形の破壊はそのままアロックの脱落に繋がるので、位置取り次第では複数攻撃可能な光線はまさに天敵と言える攻撃だ。

 

「イエス。魔法使いやバフデバフメインの私にも厳しいモンスターです」

 

そしてそれはサクヤにも当てはまる。魔法を使う際は基本的に足が止まる。それを攻撃の厚さやタンク役が引き付けることで対処していたが、あの光線はその前提を崩しかねないものだ。

 

「ブリッツ、【覚醒】【砂金外装】」

 

コーヒーは仕方ないとばかりにブリッツを呼び出すと、金の装甲を纏わせて巨大化させる。

 

「サクヤはブリッツの背中に乗ってくれ。足があれば移動しながら演奏できるだろ?」

「センキュー。助かります」

 

サクヤはコーヒーにお礼を言ってブリッツの背中に跨がると、一同は瓦礫に埋まっていない通路に沿って移動を始めていく。

しばらく進んでいると、黄色の玉と緑の玉が瓦礫の中から現れる。その二つの玉も周囲の瓦礫を吸い寄せていき、それぞれが猿やカマキリのような姿形を取っていった。

 

「また来ましたね」

「閃け、【雷輪十字剣】!」

 

コーヒーは直ぐ様雷の手裏剣を瓦礫のモンスター達に放つ。雷の手裏剣は射程上にいたモンスター達を切り飛ばしたが、その内の猿の姿形をした瓦礫のモンスターはノーダメージであった。

 

「今度はノーダメージかよ!?」

「もしかしたら……【颪刃】」

 

ジェラフは確かめようとするかのようにスキルを発動させると、風を纏わせた刀でカマキリの姿形を持った瓦礫のモンスターへと斬りかかる。ジェラフの刀で斬られたカマキリの瓦礫モンスターのHPは、ほんの僅かにしか減らなかった。

 

「やっぱりね。こいつら、特定の攻撃を軽減もしくは無効化するタイプだよ」

「無効化の方は確率と見ていいだろう。CFの攻撃が普通に通ったモンスターもいるからな」

「玉のカラーからして……黄色が雷、緑が風でしょう」

「多種多様な可能性も考慮すべきだな。こういった手合いは、様々なタイプがいるからな」

 

そうこう議論していると、モンスター達は口から白い光線を放つ。間違いなくオブジェクト無視のすり抜け光線だろうと察した一同は一斉にその光線を躱す。

 

「【痛感の旋律】!」

「【凍牙絶衝】!」

「荒め、【レイジングボルト】!」

「【抜刀・飛燕】!」

 

サクヤが演奏で全員にバフを与えると、テンジアは二振りの長剣を地面に叩きつけてモンスター達を氷塊に閉じ込める。そこにコーヒーが地面で迸る雷撃を放ち、ジェラフが飛ぶ斬撃を放って氷に閉じ込められたモンスター達を纏めて撃破した。

 

「ガード無視に加えて軽減効果……本当に面倒だな」

「まだ序盤でこれだからな。奥に進むごとに厄介となるのは一目瞭然だ」

「イエス。雑魚モンスターでこれですから、ボスモンスターは相当面倒ですよ」

 

本当にダンジョンのモンスターは厄介極まりないと改めて実感した五人は、気を引き締め直して進むのであった。

 

 

 




唐突なキャラ紹介。

ジェラフ/楠木(くすのき) (りん)

ギルド【thunder storm】所属の刀使い。戦闘スタイルは抜刀と護符、風によるテクニカル型。
実力はギルドのトップ3に入る実力であり、ギルドマスターのベルベットからは『ジェラ』という愛称で呼ばれており、本人も彼女のことを『ベル』と呼んでいる。
ゲームに対しては本人の好きなようにやらせるというスタンスであり、自身も結構好きにやっている。そのスタンスから本人の意思に沿わない行動の強要に対しては厳しく、ギルドメンバーのベルベットへの露骨すぎる隠蔽強要に対しては正論を叩き付けて黙らせた程である。

モチーフとなったキャラはGV鎖環(ギプス)のきりん。

※リアルネームを追加しました。
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