コーヒー達が拠点に帰還すると、北の探索組以外は全員帰還していた。
「皆も帰ってきていたんだな」
「ああ。メダルは全部で七枚だな。そっちは何枚だ?」
「一枚だけだな。他の組は?」
「私達も一枚ずつだ。つまり……」
「北組が二枚も手に入れたってことだね」
「「「さすがメイプルさん達です!!」」」
情報の擦り合わせでメイプル達がメダルを二枚手に入れた事が判明し、メイプルを慕っている極振り三人衆は目を輝かせて称賛する。
「まさか二日目でメダルが十枚に到達するほど集まるとは思わなかったぜ」
「そうですね。最後まで生き残って十枚に到達できれば良いと思ってましたから」
ドレッドとミザリーが得られたメダルの数に笑みを浮かべる。何せ同盟を組んでから得られたメダルの数は八枚なのだ。最低でも全員が金のメダル一枚得られるのはかなり大きかった。
それから少ししてメイプル達も帰還し、今回の探索で得た情報を共有していく。その中で特記すべき情報はやはり強化モンスターと関わりが深い二つのダンジョンにいたボスであった。
「私達の組とCF達の組が入ったダンジョンにいたボス……明らかに異質ね」
「ああ。どちらも攻撃が通用しなくなるギミックが存在していた。これは普通じゃない」
「もしかしたら前哨戦……のようなダンジョンなのかな。もしそうなら、三日目はそれらの完成形が現れるかも」
マルクスのその言葉に、その場にいた全員があり得ると表情を引き締める。どちらのボスも倒れ方に演出が施されており、次がある雰囲気を発していたからだ。
「もしそうなら……ギミックでHPが残るかも、しれません」
「その可能性は十分にあり得るな」
「無敵になってからの攻撃は本当に殺意が高かったからねー。一方的な攻撃とか本当に反則だよ」
ボス悪魔と実際に戦ったフレデリカはうんざりしたように溜め息を吐く。何せ高威力の防御貫通攻撃を一方的に放ってきたのだ。ミィが奥の手の一つで防いだあの光線も、何かしらのクセが存在している攻撃だと確信できる。そんな理不尽なモンスターの相手は、可能であれば避けたいのが本音であった。
「防御貫通もそうだが、オブジェクトを無視する攻撃も本当に厄介だぞ。対処がダメージカットか無効、回避しかないんだからな」
「ああ。それも盾やプレイヤーでさえも素通りしてダメージを与えるなら尚更だな。メイプルはまだしも、俺や体力盾のリアじゅ……クロムには厳しい相手だ」
難しい表情で発するクロムとカミュラの言葉通り、盾持ちのプレイヤーには厳しいモンスターだ。メイプルの驚異的なVITと【身捧ぐ慈愛】なら守り切れるだろうが、【身捧ぐ慈愛】のような範囲防御スキルのない二人には無理な話である。
「いや、防御貫通よりもその光線の方が遥かに厄介だと俺は思う」
「あたしも同意見だね。オブジェクトを無視できるってことは、洞窟の外からでも攻撃できるってことだからね」
ペインとジェラフその指摘に、一同はその可能性に行き着く。もし今その例の光線が壁の向こうから飛んできたとしたら、メイプルの【身捧ぐ慈愛】やサクヤの【聖域の演奏】以外では対処できない。下手をしたら一方的な
片方は高威力の防御貫通、もう片方はオブジェクト無視のすり抜け攻撃。どちらも殺意の高い、厄介極まりない攻撃である。
「どっちも手強そうだよね……」
「ああ。それが二体同時に現れるなら、逃げ回るだけでは生き残れないだろう」
「そうなると討伐は必須……ですね」
「二分して討伐できるのがベストなんだが……そうも言えない可能性もある。まずはメイプル達が戦ったボスモンスターの情報を詳しく分析すべきか」
ペインの言葉に全員が頷く。幸い、ボスの情報は得られているので色々と考察ができる。その点も含め、危険を承知で探索に赴いたのは正解だった。
「例の結界は化物となったメイプルを小さくしたモンスターが作ってたよ。サイズ以外の違いは、胸に不気味な顔のような赤い模様があるくらいかな」
「玉の方は様々なカラーがありました。カラーによって対応できる攻撃と属性が違うので、通用するアタックを増やすにはそのカラーの玉をオールで破壊しないとアウトです」
「個別の登場は……あり得ないな。やはり同時に現れる可能性が濃厚か」
「メイプルやコーヒーが戦ったボスもそれなりに巨体だったみたいだが、フィールドに出てくるならもっと大きくなるかもな」
「ダンジョンの位置から……たぶん、北と南に現れるかも」
そうしてボス悪魔とボス瓦礫の情報と考察を共有しつつ、対策を考えていくのであった。
「へぇ?勝手にあたしの情報をバラしたんだ?」
「で、でも、サリーとミィもジェラと同じスキルを……」
「それとこれとは別問題だよ、ベル」
ちなみにベルベットはジェラフからアイアンクロー付きのお叱りを受ける羽目となった。
――――――
―――運営ルームにて。
「メダル、大量に持っていかれたなぁ」
「そうですね。でも、あの面々を前提にしてモンスターを組むと倒せる人が数える程度になりますし……」
「徒党を組む前提で調整したけど、四ギルドのトップの同盟は想定外だったな」
【楓の木】【集う聖剣】【炎帝ノ国】【thunder storm】に入ったメダルの量を見て運営の面々は眉間を押さえる。特に三つは大規模ギルドでメンバーの実力もそこそこ高い。なので同盟チーム以外でもメダルを手に入れていた。
「ギルド共有でなく、パーティーのリンク共有で正解でしたね」
「ギルド共有にしたら、人数の多い大規模ギルドが有利になるからな。誰もが可能性のある楽しいゲームが、このNWOのモットーだからな」
「そしたら小規模ギルドや中規模ギルドとの差がますます広がるからな。利点も残しつつちゃんと調整しないと」
大規模ギルドやトッププレイヤーが圧倒的優位にならず、どのプレイヤーにも可能性を与える。口にするのは簡単だが実際にそれを実行に移すのは難しいものだ。
「その結果が四ギルドの同盟ですけどね」
「「「「うぐっ」」」」
新人のその言葉に、一同は胸を押さえる。今回のリンク機能と二日目の強制転移による分断によって最強同盟が出来上がってしまったのだから、ある意味当然である。
「強制転移はある程度ランダムにしてたんだけどな……」
「そこはもう諦めようぜ。もうどうしようもないからな」
「そうだな……エリアボスはどうなっている?」
その言葉を受け、運営の一人がモニターを操作してエリアボスの生存状況を確認する。
「エリアボスはまだ生き残ってますね。それでも何体かは倒されましたが」
「やっぱり倒されたかぁ……徒党を組めば単体では勝てない相手じゃないからな」
「ですが、想定の範囲内です。これなら、三日目の生存戦は厳しいものとなるでしょう」
新人はそう呟くと、二体のモンスターのデータを表示する。その二体の外見データは悪魔のボスと瓦礫のボスが完全体となったような姿である。
「どれだけ頑張ってくれますかね?どっちも全体攻撃持ちだけど」
「どちらも一撃KOは不可能にしたからな。仮に片方を倒せても、もう片方が更に大暴れするからプレイヤー達は逃げ回ること間違いなしだ」
何せ高威力の防御貫通攻撃とオブジェクト無視の攻撃持ちなのだ。それに加えてダメージを通さない無敵状態がある。HPが存在しても減らせないのであれば、立ち向かおうという気概は起きにくい筈だ。
その結果、プレイヤー達は巨大モンスターの殺意の高い攻撃が飛び交う中で逃げ回ることになるだろうと予想していた。
「プレイヤー達が立ち向かう可能性は?」
「そうなったら……諦めよう。まあ、出現は残り一時間になった時だから、二体も倒すのは実質不可能だし」
「理論上は可能だけどね。特別ボーナスも条件は厳しく設定したし」
「事前情報がある前提だけどな。どっちも事前に情報がないとダメージすら与えられないし」
「メイプル組とCF組で事前情報は得てしまいましたがね」
どちらにせよ色々と微調整しつつ結果を待つだけだと、運営一同は各難易度の進行を確認するのであった。
――――――
交代で警戒しつつ全員がゆっくり休むこともでき、状態も良好なまま三日目の朝を迎える。コーヒーは目を覚ますと共有スペースに赴き、マルクスが設置したスクリーンを確認していく。
マルクスのスクリーンの映像は、昨日の夜で拠点外にも幾つか設置されたので、確認できる範囲が広くなっていた。
「監視できるスキルって便利だな。視界が増えればできる事も増えるし……うーむ……」
マルクス曰く、設置には時間がかかるようだがそれを加えても便利なスキルだ。こうして敵の存在を事前に察知し、迎え撃てる態勢を整えられるのだから。
コーヒーはスキルについて考えつつ、自身のメニュー画面を開く。メッセージ機能は使えないままだが、マップには青い点と赤い点、紫の点が表示されるようになっている。
説明文には青い点がプレイヤーで、赤い点が特殊モンスターを表示していると書かれてあり、紫の点はエリアボスだそうだ。三日目は他のプレイヤーと合流しつつ、モンスター達から逃げるのがメインとなりそうだ。
そうしていると【楓の木】の居住スペースからメイプルとサリーが出てくる。二人も起きて状況を確認しに来たようだ。
「あ、コーヒーくんおはよー!」
「おはよ、CF。外の状況はどう?」
「今のところ変わりなし。おかしなもんも映ってない」
コーヒーは二人にそう報告する。スクリーンに映る外の映像は相変わらず薄暗いままで、悪魔型モンスターと瓦礫を纏ったモンスターが徘徊を続けている。拠点を襲撃する気配はないが、油断はならない状況だ。
「三日目は一日目、二日目と比べて時間が短いのよね。CFの見解は?」
「普通に考えれば、それだけ生存が厳しくなるというメッセージじゃないか?このまま何もなしは絶対にないし」
「大丈夫だよ。皆と一緒に戦えば勝てるよ!」
そんな談話を続けていると、他のメンバーも起きてくる。そのまま最後の準備を始めていき、アロックが用意した朝食を各自が取っていく。
そうやって過ごしていると、スクリーンに興味深いものが映った。
「あ、サリー!あれっ!」
「ん?あれは……」
外の様子が分かるスクリーンの内の二つ。その一つには紫の靄が突如として発生し、もう一つには瓦礫の塊が地面から盛り上がっていく。どちらもしばらくすると、ゲートのような紫の光と瓦礫で作り上げられた塔が出来上がる。
そのゲートと塔から、次々と悪魔のモンスターと瓦礫のモンスターが這い出るように現れると、まるで獲物を探すかのように進み始めた。
「あれは昨日言っていたやつか?場所を移動してきたのかよ」
「短慮軽率。すぐに結論を出すべきではない。あれは移動したというより、新たに生み出されたような感じだ。つまり、出現地点が増えた可能性もある」
ドラグの考察に対して異を唱えたテンジアの言う通り、場所を移動してきたより増えたと考える方が自然だ。難易度を簡単に引き上げる方法は敵のHPなどのステータスを高くするか、敵の数を増やすかのどちらかだから。
「それもそうか。でも、その四字熟語は逆じゃないのか?」
「軽率短慮のことだな。両方とも同じ意味で、どちらで呼んでも大丈夫だ」
「そっちはともかく、あれが後者の方だったら……早いめに外に出た方がいいかもしれないね。一度に対処できる数にはどうしても限りがあるから」
コーヒー達がモンスターを複数体を相手取るにはスキルや魔法が必要になってくる。それもそれなりの質がある攻撃でなければ一撃で倒しきれず二度手間三度手間になってしまう。
【
「確かにそうね。この洞窟がモンスターでいっぱいになったら倒しきれなくて困るけど、外なら逃げ―――」
頷こうとした瞬間、ぞわっとした悪寒が背中に走ったサリーは咄嗟に後ろを振り向く。その直後、洞窟の壁から一条の白い光線が飛んできた。
「なっ!?」
サリーは驚きつつも紙一重で躱す。その光線は真っ直ぐ進み、射線上にいたメイプルとミキを撃ち抜いた。
「え?」
「あうっ!?」
メイプルはその光線に目を白黒させるも、ミキは痛みを覚えたような声を上げる。同時に【身代わり人形】が発動して致死ダメージが無効にされる。
「今のはまさか、CF達が言っていた光線か!?」
「メイプル!」
「う、うん!―――慈しむ聖光 献身と親愛と共に この身より放つ慈愛の光を捧げん―――【身捧ぐ慈愛】!」
サリーの呼び掛けにメイプルはすぐさま【口上強化】込みで【身捧ぐ慈愛】を発動させる。範囲が広がった【身捧ぐ慈愛】の中にいる限り、他のメンバーが例の光線を食らってもダメージを受ける心配はなくなったが、安心はできない。
「例の光線が洞窟の外から撃たれた以上、洞窟内に留まるのは逆に危険だ」
「ああ。メイプルがいる限り大丈夫だが、不意討ち同然の光線は精神的な疲労が大きくなる」
「モンスターの襲撃が本格的になる前に、外に出て昨日決めた場所に向かうべき……ですね」
ギルドマスター三名の言葉にその場にいる全員が頷く。こうして一同は洞窟の拠点を放棄して、昨日の内に決めたマップ中央付近の山頂に向かう事が決まるのであった。
オリキャラ紹介。
カミュラ/
【炎帝ノ国】所属の大盾使い。
性格は路上のカップルに憎悪の念を抱くほどに捻くれた性格。本人はモテたいと常日頃思っているが、鋭い目付きと近寄り難い雰囲気によって叶わぬ願いとなっている。
大盾を選んだ理由も、女性を守ればリア充の仲間入りが叶うという不純なもの。最初は一般的な大盾使いであったが、第二回イベントで手に入れたスキルをコピーできる大盾を手に入れたことでトッププレイヤーの仲間入りとなった。(但し、本命は叶っていない)
モチーフとなったキャラはGVのアキュラ。