スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


北の悪魔

強化時間に入った瞬間、北エリアからは紫の炎が、南エリアからは白い光が空に向かって噴き上がる。その地点の数は数十に及び、特殊モンスターが存在している。

炎と光はそれぞれ一点に集中していき、巨大なゲートを作り出す。そこから、巨大なモンスターが悠然と姿を現した。

 

「やはり出てきたか」

「明らかに完成形っすね。サイズも段違いですし、明らかにヤバそうっす」

 

ベルベットのその言葉通り、巨大なゲートから現れた巨大モンスターはどちらも全長が百メートルあるのではないかというくらい大きい。悪魔の方は不揃いだった手足がしっかり統一され、瓦礫の竜は大砲などの砲身が身体のあちこちから覗かせている。

 

巨大モンスター達は巨大ゲートから完全に抜け出ると、互いに威嚇するように甲高い咆哮を上げる。悪魔の方はモンスターが新たに召喚されるとほぼ同時に自身を覆うように紫の結界を作り出し、瓦礫の竜は何処から飛来した無数の玉が身体に張り付くと七色と表現すべきオーラを全身から放っていく。

 

「ちょっ!?最初から無敵状態!?一番当たって欲しくない予想が大当たりなんですけど!?」

「予想は出来ていたが、最初から完全無欠は凶悪だな」

 

出現早々で無敵状態となった二体の巨大モンスターは、自身の口を開くとそれぞれ炎と光を充填するように溜めていく。数秒足らずで充填が終わったらしい炎と光は、巨大なブレスとして互いに向かって放たれた。

 

「メイプル!」

「う、うんっ!」

 

そのブレスに嫌な予感を覚えたサリーの意図を瞬時に察したメイプルは頷くと、装備をHP重視の大天使装備へと変更する。炎のブレスと光のブレスは正面から激突して弾け飛ぶと、まるでプレイヤーを狙い撃ちするかのように紫の火球と白い光の柱が大量に降り注いでいく。

 

「癒せ、【ヒール】!」

 

シアンが大天使装備となったメイプルのHPを全快させると、メイプルは迫り来る火球と光の柱を見据える。

 

「【イージス】!」

 

火球と光の柱が直撃する直前で光のドームが形成され、凶悪な火球と光の柱のダメージを完全に無効化して守りきる。

 

「アース!【大地制御】!」

 

ダメージを無効化しても燃え続ける大地に、ドラグが相棒のアースに指示を出して燃え盛る地形を元に戻していく。地形ダメージが貫通ダメージかは不明だが、放置していれば確実にメイプルにダメージを与えてしまうからだ。

 

「センキューです、メイプルさん」

「どういたしまして!でも……」

 

お礼を告げたサクヤにメイプルは快く返事を返すもすぐに表情を曇らせる。【イージス】は連発できないスキルなので、クールタイムが終わる前に同じ攻撃が来たらメイプルでは防ぐことはできない。サクヤの【聖域の演奏】なら守れるが、メイプルの【イージス】より範囲は狭い上に回数に制限がある。

 

「特殊モンスターからの炎と光が、巨大モンスターに吸い込まれるように充填されていってるね」

「それに加え、攻撃を放ちながら移動しているな」

 

レイドがそう呟く通り、巨大な悪魔は紫の魔法陣から炎の塊を放ち自身も口からブレスを放っている。瓦礫の巨竜も移動しながら全身から白い光線を薙ぎ払うように放っており、どちらも殺意が高いのは一目瞭然だ。

 

「やはり討伐しなければならないか」

「ああ。このままでは間違いなく生き残れない。生き残るには、あの二体の討伐は必須だ」

「巨大モンスターの通常らしき攻撃も凶悪っすから、逃げるだけじゃ限界が来るっす」

 

ペイン、ミィ、ベルベットは意を決した表情で告げる。防御貫通とオブジェクト無視のコンボの前には、闇雲に逃げ回るだけでは疲弊して討たれてしまう。それを改めて痛感したからだ。

 

「だが、そう簡単にはいかねぇぞ。あっちの配下の数、飛んでる奴もいるしかなりの数になるぞ」

「ああ。この分だと向こうの玉の数も、シュガーパウダーなみだろうな」

「下手に分散できない以上、集中的に倒すしかない……か」

 

遠目で確認できる範囲であるが、巨大な悪魔の周りには、昆虫の羽を背に生やした暴虐メイプルモドキが飛んでいる。その暴虐メイプルモドキの胸に例の模様が描かれており、結界構築の特殊モンスターであることは確実だ。

瓦礫の巨竜もあの巨体からして、相当な玉の数があると見ていい。今この場にいるメンバーを分けて挑むのは、無謀となる可能性が高かった。

 

「メイプル。【黄金劇場】でどっちか片方を転移させられる?」

「う~ん……説明欄を見た限り、【黄金劇場】は今回のようなイベントフィールドの時は特殊仕様に変わるみたい」

「どんな感じに?」

「フィールドそのものが構築される感じかな?専用フィールドへの転移ができないだけで、効果はそのまま通用する感じ」

 

どうやら【黄金劇場】は今回のイベントでは隔離はできないようである。それでも無駄に終わらないだけマシだろうが。

 

「それなら昨日の取り決め通り、悪魔の方から先に倒そう。結界を消せれば、メイプルの奥の手が使えるから」

「なら、僕とミキが最初に仕掛けるよ。とっておきを使ってね」

 

カナデはそう言って一冊の魔導書を取り出す。ミキも加わるのなら、間違いなくジベェの【津波】が関わっているだろう。どちらにせよ時間に猶予がない為、カナデの奥の手に期待して全員が巨大化したジベェの背中に乗って巨大悪魔の下へと向かっていく。

 

近づくにつれ、そのサイズの凄まじさに徐々に圧倒されていく。地上から近づけば、踏まれるだけで倒されてしまいそうな程だ。それも結界によって潰れるより先に弾かれるだろうが。

 

「それじゃ、【鉄鋼液】を使うねー」

「ダメージカットのバフも、念のためにかけておきますね」

「この場の生命線はメイプルにかかってるからねー」

「ありがとう!」

 

巨大悪魔の攻撃範囲に入ってすぐ、メイプルに【鉄鋼液】を使って防御貫通を無効化する。ミザリーとフレデリカも念には念を入れ、メイプルにバフをかけて万が一に備える。

そうして巨大悪魔の攻撃が効かなくなって近づいていく一同。空を飛ぶ配下のモンスターの姿がはっきり捉えられるようになったところで、カナデが魔導書を開く。

 

「それじゃ、いくよ―――【ミラージュロイド】。ソウも【ミラージュロイド】からの【パンデミック】」

「「「【パンデミック】!」」」

 

カナデは自身に擬態したソウにも同じスキルを使わせ、自身も含めた八人のカナデの身体から不気味な粒子が空気を侵食するかのように放たれる。

 

凶悪なデバフを広範囲にばら蒔く、本来は1日一回のみの魔法【パンデミック】。【ミラーデバイス】によって十冊ほど保存できており【ミラージュロイド】とソウのおかげで比較的使えやすくなっているにも関わらずなぜ今まで使わなかったのか。それは代償で自身も同様のデバフにかかるからである。それも特殊な強化分も含めて。

 

その自身も弱体化する凶悪なデバフの粒子に触れたモンスター達は一斉に弱体化する。なにせ八重のデバフを叩き込まれたのだ。結界によって守られている巨大ボス以外は無事で済むわけがない。

 

「これで周りのモンスターは倒しやすくなったよ。それじゃミキ、頼むよ」

「了解ー。ジベェ、【大津波】ー」

 

マップ情報で周囲にプレイヤーがいないことを確認していたミキは、ジベェに指示を出して特大の津波を放つ。まるで空を覆うかのような今までの【津波】よりも巨大な津波。その特大の津波によって巨大悪魔の周りにいた配下のモンスター達は一斉に波に呑み込まれ、流されながら光となって消えていく。

 

「結界が消えたよ!」

「それじゃ、すぐにアイツのところに行くよ―――【瞬転符】!」

 

結界が溶けるように消え去ってすぐ、ジェラフが一枚の護符を巨大悪魔に向かって投げ飛ばす。護符は巨大悪魔の頭部に張り付いたのを確認したジェラフは、メイプルの腰に手を回すと共にその場から消え去る。二人が次に現れたのは、巨大悪魔の頭の上であった。

 

「おおー!本当に一瞬で移動したよ!」

「感心するのは分かるけど、今は早く例の奥の手を使ってほしいかな」

「あ、ゴメンね!」

 

メイプルはジェラフに謝ってすぐ、装備をいつもの漆黒の装備に戻して奥の手の一つであるスキルを発動させる。

 

「我が才と情熱を見よ 我を讃える万雷の喝采を聞け 我が摩天は至上の美 輝き照らすは至高の光 舞い散る華は愛の薔薇 降り注ぐは遥か彼方で煌めくステラ 公演は舞台の幕が降りるまで終わらず 観客は退席も許されぬ 燃え上がる情熱と唯一無二の才に()り 咲き誇る華と共に此処に開演せよ―――すべてを蹂躙する終焉城塞の命で開け!【黄金劇場】!」

 

【口上詠唱】込みで【黄金劇場】を発動すると、巨大悪魔を囲うように半透明な黄金の劇場が展開される。薔薇の花弁は舞い、【黄金劇場】の効果で巨大悪魔のSTRとINTが半減する。

 

「【皇帝権限】!【影ノ女神】!」

 

メイプルは直ぐ様【皇帝権限】を使い、無敵モードである【影ノ女神】を発動させる。漆黒の花嫁姿となった死神メイプルはそのまま巨大悪魔に影の剣を突き立てる。

即死が発動して一気に減る巨大悪魔のHP。しかし、それは半分となったところで停止する。

 

「!?」

「まずっ、【空御力】!」

 

死神メイプルは驚きの雰囲気を発する中、ジェラフはギミックによる耐えと見抜いてすぐに空中を駆けて離れていく。今のメイプルならどんな攻撃が来ても大丈夫だが、ジェラフはそうではないからだ。

 

その判断は間違いではなく、巨大悪魔は咆哮と共に紫の炎を解放するように周りに放って死神メイプルを自身の頭の上から吹き飛ばす。同時に紫のゲートが周囲に展開され、そのゲートから先ほどの結界を構築する配下の悪魔達が這い出るように現れていく。

 

「また無敵モードに入るつもりだね!太郎丸、【覚醒】!【幻葉】!」

 

全部は倒せないまでもバラける前に削るべきだと判断したジェラフは太郎丸を呼び出すと、道中に半透明な自身の分身を残しながら後ろの方へと向かいつつ、鞘に納まった刀を腰だめに構えていく。

 

「太郎丸、【刻葉】!【追従の双葉】!【颪刃(おろしやいば)】!【連なる風】!【範囲拡大】!【抜刀奥義・天津風(あまつかぜ)】!!」

 

確認できるゲートの位置の中央に近い場所でジェラフはスキルを連続で発動し、抜刀と同時に円状の斬撃を幾つも飛ばす。半透明なジェラフ達も同様の斬撃を飛ばし、配下の悪魔達を斬り飛ばしていく。

 

「【七ノ風・飄風(ひょうふう)】!」

 

刀を納刀してさらに追加ダメージを与えるも、配下の悪魔達はジェラフの猛攻を耐えて生き残っており、そのまま新たな結界を構築してしまう。

 

「やっぱり削り切れなかったか。けど……」

 

猛攻を耐えられたにも関わらず、ジェラフの顔はそこまで深刻ではない。なぜなら、この場にいるのは一人ではないからだ。

 

「レイ、【流星】!【範囲拡大】!【日輪ノ聖剣】!」

「【稲妻の雨】!【嵐の中心】!【落雷の原野】!【雷公爵の離宮】!」

「舞え、【雷旋華】!揺らめけ、【遊雷星】!」

「【崩剣】!ウェン、【風神】!」

「呑み込め、【焔波(ほむらなみ)】!」

 

光を纏って突進するレイの背中に乗ったペインが周りの炎を吸い上げたような烈火の斬撃を放ち、コーヒーが操る舟に乗ったベルベットが大量の落雷を降り注がせ、コーヒーもドーム状の雷撃と周囲を漂う雷球で援護する。ミィのイグニスに乗ったシンが無数の剣と風の刃で斬り刻み、ミィも炎の波を放って新たに出現した悪魔達を殲滅していく。

 

「「【ピアースガード】!【マルチカバー】!」」

 

当然悪魔達も黙ってやられるわけもなく、紫の火球を放って反撃してくる。コーヒー達は火球を(かわ)して逃れ、ジベェに向かった火球はクロムとカミュラが防御貫通を無効にして受け止めていく。

 

「輝け、【シャイニング】!」

「「彼方の敵を攻撃せん―――【飛撃】!」」

「数多で穿て、【多重水槍】!ノーツ、【輪唱】!」

 

ジベェの背中にいる極振り三人衆とフレデリカも攻撃を放って配下の殲滅に加わり、死神メイプルも走り回りながら影の剣を振るって地上の配下を倒していく。

 

「あ!?」

 

しかし、結界を構築していた配下の数が多かった為、一分以内では殲滅しきれずに【影ノ女神】は解除されてしまう。

 

「我は妖と鬼の頭領 我が呼び掛けに応えて此処に集え―――【百鬼夜行】!【皇帝権限】!【口寄せの術】!」

 

メイプルはすぐさま通常の方法で二体の鬼を召喚し、【皇帝権限】も使って本来は召喚できなくなっている黒の巨大蛙も召喚する。

 

「お願い!」

 

メイプルの指示を受けた二体の鬼はその金棒を振るって配下の悪魔達を吹き飛ばし、黒の巨大蛙が吹き飛ばされた悪魔達を次々と頬張るように補食して倒していく。

 

「本当にメイプルは何でもありだね……【疾風迅雷】!【三ノ風・九十九飄(つくもはやて)】!」

 

ジェラフはメイプルに苦笑しつつも、スキルを発動して駆け抜けながら配下の悪魔達を切り裂いていく。

 

「滲む混沌 出でるは猛毒の化身 三首の顎ですべてを穢さん―――【毒竜(ヒドラ)】!」

 

さらにメイプルがだめ押しとばかりに【毒竜(ヒドラ)】を放ち、ボロボロだった配下の悪魔達を毒に沈めていく。毒に沈められた配下達が光となって消えた瞬間、巨大悪魔を再度囲っていた結界は再び溶けるように消えていくのであった。

 

 

 




「【黄金劇場】等の別フィールド転移スキルの特殊仕様の調整は終わったか?」
「おう。終わったぞー」
「これで隔離や避難で利用される心配はないな。PvPイベントならまだしも、今回のようなイベントでは不平等になるからな」
「そのおかげでデスマーチでしたけどね」
「別にいいではありませんか」

一部のスキルの特別調整を終えた運営の図。
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