スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


猛る紫炎

二度目の結界が解除されてすぐ、攻撃を仕掛けたのはメイプルであった。

 

「赤鬼さん、お願い!」

 

メイプルの指示を受けた赤鬼は金棒を振りかぶり、そのままゴルフの要領でメイプルを巨大悪魔目掛けて打ち飛ばす。飛ばされたメイプルはいつもの大盾を正面に構え、いつぞやの悪食キャノンと化してそのまま巨大悪魔の脚の膝を喰い飛ばして抜けていく。

【悪食】によって膝から下を失った巨大悪魔はそのままバランスを崩し、がくりとその場に崩れ落ちる。

 

「【水の道】!【氷結領域】!」

 

巨大悪魔が倒れてすぐにサリーは水の道を作り出すと、それをすぐさま氷結させて誰でも通れる氷の道へと形を変える。

 

「「【超加速】!」」

「「【疾風迅雷】!」」

「同時に速めよ、【多重加速】!」

「ルル、【コピーマジック】!」

 

その氷を道を妖刀を抜いたカスミとテンジア、レイドとドレッドの四人がスキルで加速しながら走り出し、フレデリカもバフをかけてさらに速度を上昇させ、カミュラもルルに指示を出して同じ魔法を使わせる。

 

「シャドウ、【覚醒】【影壁】」

「【氷壁】【重力操作】」

 

巨大悪魔は紫の魔法陣を展開して無数の火の球を四人に放つも、シャドウが生み出した影の壁とヒナタが作り出した氷の壁で襲いかかる火の球を一時的に受け止めて防ぎ、そのままヒナタのスキルで四人を上へと飛ばして火の球から逃していく。

 

「好きにはさせないっすよ!【極光】!」

「【感電符】!」

 

膝から下が傷だらけの状態になって巨大悪魔はようやく立ち上がるも、ベルベットが放った雷光の柱と降り続ける落雷、ジェラフが投げ飛ばした何枚もの札によって巨大悪魔は痺れたように再び崩れ落ちる。

 

「迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)!唸るは雷鳴 昂るは信念の灯火 雷鐘響かせ威厳を示さん!瞬け、【ヴォルテックチャージ】!輝くは不屈の雷光 残響する雷吼は反逆の証 汝を縛る雷鎖は因果を砕く理 迅る雷撃は軛となりて駆け巡る 絡み捕らえる雷電は暗雲をも吹き飛ばす 閃き煌めく天雷よ 雷呀の鎖と為りて一切合切を打ち砕け!―――蒼き雷霆の限界を超えて迸れ、【リベリオンチェーン】!」

 

そこにコーヒーが大幅に強化した雷の鎖を放って巨大悪魔の身体と手足を縛り上げ、物理的にも動きを封じ込める。巨大悪魔は鎖から逃れようと暴れるも、千切れる様子は微塵もない。

 

「【武者の腕】!」

「ヴォル、【雷鳴の加護】!」

「【氷凍剣】!」

「シャドウ、【影の群れ】!」

 

カスミは武者の腕を呼び出し、レイドは目を水色に光らせる。ドレッドもシャドウに指示を出して何体もの影の狼を呼び寄せる。

 

「同時に力を増せ、【多重増力】!【戦いの歌】!」

「亡、【胡蝶】!【虚脱の人魂】!【病魔の呪音】!」

「【凍てつく大地】【災厄伝播】【脆き氷像】【死の足音】」

 

四人が走りながら攻撃準備を整える中、フレデリカはバフを放ってカスミ達を強化し、サクヤとヒナタはデバフを放って巨大悪魔を弱体化させていく。

 

「あれはマスコット、あれはマスコット、あれはマスコット……」

 

……サリーが顔を俯けてぶつぶつ呟いていたのは軽く恐怖であったが。

 

「フェイ、【アイテム強化】!」

「うぉらぁ!!」

「そら!」

「「えーいっ!!」」

 

ドラグとクロムはもちろん、ユイとマイも何もせずにいられるわけもなく、イズがその場で作った爆弾を全力で投げ飛ばして攻撃に参加していく。ちなみに今度用意した爆弾は投擲距離が倍となる、製作費五桁の特殊爆弾だ。

 

「ジベェ、【渦潮】ー」

「クローネ、【龍砲展開】!」

 

ミキとアロックも自身の相棒に指示を出して巨大悪魔を攻撃しており、全員が巨大悪魔との戦いに参加していた。

 

「もっと……【星の鎖】【重力の軋み】【鎧の亀裂】【剥げる表皮】」

「丹念に研ぎ澄ませ、【多重研鑽】!【高揚】!」

 

サクヤが演奏する中、フレデリカとヒナタは持ちうるスキルを使って強化と弱体化を施していく。弱体化を施され、爆弾攻撃も受けている巨大悪魔に、カスミ達がついに到着する。

 

「【終ワリノ太刀・朧月】!」

「【獄雷煉呀】!」

「【セプタプルスラッシュ】!」

「【大切断】!」

 

カスミは虚空から飛び出てくる刀と共に必殺の連撃を巨大悪魔の頭部に叩き込み、レイドは高火力の雷撃を右腕に叩き込んでダメージを与える。

ドレッドも怒涛の連撃を影の狼達が食らいついている巨大悪魔の右翼に叩き込み、テンジアも二つの唐竹割りで巨大悪魔の左翼を深々と切り裂く。巨大悪魔は抵抗するように全身から紫の炎を放つも、弱体化の影響で威力も出せず技の出も遅い為に易々と躱す、もしくは耐えられてしまう。

 

「【轟雷】!」

「降り注げ!【ディバインレイン】!」

「【剣乱舞踏】!【抜刀・飛燕】!」

 

そこにコーヒーとベルベットも雷撃を放ち、ジェラフも連続で飛ぶ斬撃を放つ。巨大悪魔は痛みを覚えたように叫んで暴れるも、度重なるデバフと鎖によって無駄に終わる。

 

「―――【光輝ノ聖剣】!」

「―――【豪炎】!」

 

そこにペインとミィが左右から光の奔流と業火を放ち、巨大悪魔に更なるダメージを与えていく。シンも無数の飛来する剣を巧みに操ってダメージを加速させていく。

 

高威力の攻撃をいくつも叩き込まれ、HPが全体の二割まで減った巨大悪魔は再び天に向かって雄叫びを上げる。雄叫びによってすべての拘束が弾け飛び、雄叫びに呼応するように身体中の紫の炎が背中と傷ついた翼へと移動するように集まっていく。

集まった紫の炎はそのまま覆うように広がっていき、六つの炎の翼と九つの蛇の頭へと形を変える。

 

「ここに来て形態変化か!」

 

コーヒーは嫌な予感を覚えながら、【百鬼夜行】と【口寄せの術】が時間切れとなって【機械神】で攻撃していたメイプルの下へと急ぐ。

 

「メイプル!」

「うん!【カバームーブ】!」

 

メイプルは直ぐ様【カバームーブ】を利用した瞬間移動ですぐにコーヒーの操る舟の上へと移動する。兵器を展開したメイプルの体積はそれなりにあり、余裕があった舟の上が一気にぎゅうぎゅうとなる。

 

「い、一気に狭くなったっす……」

「ご、ゴメンね!」

 

地味にキツそうな声を上げるベルベットにメイプルは申し訳なさそうに謝るも、他に方法がないのでコーヒーも窮屈に感じながらも舟を操作してジベェの下へと向かっていく。

 

カスミ達もレイとイグニスに乗っていたペイン達に回収されて離れる中、巨大悪魔は頭上に形成した紫炎の塊を空に向かって放つ。放たれた紫炎の塊は空へと消えると、薄暗い空に巨大な紫の魔法陣が展開される。その魔法陣から巨大な紫炎の球が現れ、まるで死刑宣告のようにゆっくりと真下へと落ち始めていく。

 

「あれ、絶対にヤバいやつだよ!。あの炎の蛇にもHPバーが表示されてるし!」

「タイミングからして、即死級の攻撃と見ていい。フィールドに着弾したら、全体を覆う程の爆発を起こすだろうな」

「私もそう思い、ます」

 

この攻撃のお約束は直撃前に撃破することで回避すること。つまり、巨大な紫炎の隕石が地面に着弾する前にあの巨大悪魔を倒さなければならないということだ。

巨大悪魔がそんなゲームオーバー確定の攻撃を放った中、瓦礫の巨竜はチャージが完了したように白いブレスを上空へと放つ。

 

「あっちから全体攻撃が来るぞ!」

「任せて!【皇帝権限】!【イージス】!」

 

ドラグの警告に応えるように、メイプルがスキルによって強引にダメージ無効スキルを発動させる。空から白い光の柱が何条も降り注ぐも、メイプルが展開した光のドームによって受け止められていく。

 

「ナイスメイプル!」

 

サリーがメイプルを誉める中、巨大悪魔は九つの炎の蛇共にメイプル達に向かって炎のブレスを盛大に放つ。メイプルの【イージス】によって防がれるも、津波のような炎のブレスが弱まる気配は微塵もない。このままいけば、時間切れでダメージを受けるのは確定だ。

 

「マルクス!」

「了解、ミィ!一夜にて築かれる知将の城 我が目前にてせり上がり 相対する敵陣を震え上がらさん!【設置・一夜城】!」

 

ミィの呼び掛けにマルクスは頷くと、スキルによって巨大悪魔とジベェの間に大きな砦を作り上げる。その砦によって巨大悪魔が放った炎のブレスは遮られ、正面から受け止める。それとほぼ同時に【黄金劇場】の効果が切れ、同時に【イージス】の効果が消えていく。

 

「これ、すごい威力だよ……このままじゃ、数秒ともたないよ……」

「ヒナタ!」

「はい!氷天の下に築かれる白銀の城塞 凝固せし堅牢なる壁を用い 彼の進軍を遮らん!【氷の城】!」

 

マルクスの【一夜城】が壊される寸前でヒナタが氷で構成された砦を作り上げ、【一夜城】を破壊した炎のブレスを今度は【氷の城】が受け止める。

炎のブレスを受け止めた氷の城は溶けることなく、衝撃によってヒビが入っていくだけに留まっている。だが、これも破壊されるのは時間の問題だ。

 

「ようやくデバフが切れたよ―――【イージス】!」

 

そこに【パンデミック】のデバフがようやく切れたカナデが、イズに作ってもらったHP重視の装備に変更して紫のカードを使い、【氷の城】が破壊される直前でメイプルと同じダメージ無効スキルを発動させる。

ヒナタの【氷の城】が耐久限界を迎えて破壊されるも、カナデが展開した光のドームによって炎のブレスから守られていく。

 

「【浄土天雷】!」

 

炎のブレスが止んですぐ、ベルベットはすべての落雷を消して紫の落雷を落としていく。紫の落雷は巨大悪魔だけでなく、紫炎の蛇にも落ちていっている。

 

「兄上、マルクス、ミザリー、シン、カミュラ。これから“太陽”を使う。異論はないな?」

 

意を決したミィの言葉に、【炎帝ノ国】のメンバーは反対することなく無言で頷く。皆から了承を得たミィは瞑想して詠唱を始めていく。

 

「源初の炎 世界を照す太陽 その輝きを以て全てを焼き尽くす球となれ 彼方の空より来たりし猛火よ 敵を滅却する烈火よ 有象無象を焦がす天の焔よ 顕現するは太陽の化身 顕現するは炎天の豪雨 滾る火炎は黄泉へ導き 煉獄をも焼き尽くす焔の彗星となれ!―――真紅の炎帝の名の下に焦げ散らせ!【太陽ノ礫】!!」

 

長い詠唱によってミィの遥か頭上に形成された太陽のごとき炎の塊は、無数の雨霰のごとく火の球を巨大悪魔に向かって放ち続けていく。着弾する度に爆炎が上がり、巨大悪魔にダメージを刻み付けていく。

 

「【凍てつく焔】!」

 

テンジアが【太陽ノ礫】に対してスキルを発動すると、無数の火の球と炎の塊は瞬く間に凍り、大きな雹となって降り注いでいく。大きな雹は巨大悪魔の紫の炎にぶつかると倍の爆炎を放ち、炎の蛇にもダメージを刻み込んでいく。

 

「刻むは絶望 無明の闇へ誘うは千の槍 我が血潮で祈る間もなく消えるがいい!【魔槍シン】!」

「注ぐ聖光 光の雨となりて射ち穿て!【ホーリーレイ】!」

 

コーヒーもHPを半分ほど消費して黒き槍の雨を放ち、ペインも聖剣から放たれた光の雨で巨大悪魔を穿ち続けていく。

そこに何処から飛来した赤い矢と青い光線が巨大悪魔に突き刺さり、更にダメージを刻み込んでいく。

 

「止めだ!切り裂け、【炎刃】!【連続起動】!!」

 

雹が降り終わり、背中の炎の蛇が全て消えたタイミングでミィが炎の刃を何度も巨大悪魔の足下へと放つ。炎の刃は巨大悪魔の足下に転がっていた雹に命中すると、そこから連鎖反応の如く雹から赤い光が放たれ、怒涛の爆炎となって巨大悪魔を呑み込んでいく。

 

爆炎に呑まれた巨大悪魔はそれが止めとなってHPを全損させ、フィールド中で燃えていた紫の炎を徐々に消していきながら光となって消えていく。同時に空から落ちてきていた巨大な紫炎の隕石も小さくなって消滅していき、悪魔型の特殊モンスターもその存在を消していく。

 

「あ!メダルが手に入ったよ!それも三枚!!」

「三枚か……ちょっとわりに合わない気がするけどね」

 

まさかのメダル獲得にメイプルは喜び、サリーは労力と微妙に釣り合わないことから微妙な表情となる。

だが、まだ終わりではない。

 

「残り時間はおよそ半分……奴の攻撃力次第では無視できるかもしれないが……」

「いや。そう上手くはいかないようだ」

 

ペインがそう呟く視線の先には、雄叫びを上げる瓦礫の巨竜の姿がある。外敵がいなくなったことによるものなのか、瓦礫の塔が次々と立ち上っていく。そこから瓦礫のモンスターが群がるように這い出てくる。

 

「うわぁ……これじゃあ難易度は変わらないね」

「どちらかを倒したら、補う形でもう片方が暴れるみたいだな」

 

本当に三日目の生存戦はハードだと、何名かは深い溜め息を吐く。

 

「けど、今更だよな」

「そうね。やるなら全力で、ね」

 

コーヒーとサリーは互いに肩を竦めると、依然暴れている瓦礫の巨竜を見据える。他のメンバーも同じように瓦礫の巨竜を見据えていく。

 

「アイツも倒せばおそらく三枚……つまり、全部で六枚手に入るってことだ」

「金のメダルが二つも手に入ると考えれば、かなり有利になるよな」

 

ドラグとシンの言葉通り、六枚も手に入れれば最終的に銀のメダルは二十枚を超える。つまり、メダルの大量入手の大チャンスであるということだ。【楓の木】がすでに最終的に二十枚を超える以上、三ギルドもここで頑張らなければ遅れを取ってしまうことになる。

なりより……このまま逃げ回るより戦って勝利したい気持ちの方が強かった。

 

「よーし!それじゃあ、この勢いでもう一体も倒すぞー!」

『『『『おおー!!』』』』

 

メイプルの宣言に一同は力強く返すと、瓦礫の巨竜を討伐すべく向かうのであった。

 

 

 




キャラ紹介。

ミキ/南雲 桜

【楓の木】所属の釣りプレイヤー。のんびりとした性格で、言葉遣いも間延びしている。
リアルでも釣りを趣味としているが、近くに釣り場がないこともあり、VRゲームで存分に釣りをすることにした。そこで釣り関連のユニークシリーズを手に入れ、第二回イベントで先行配信であったテイムモンスターの卵を釣り上げたことで【異常】プレイヤーの仲間入りを果たした。
そんな彼女の釣りは魚だけでなく、様々なアイテムも釣り上げることができる。使えるアイテムやジョークアイテムなど様々で、それがイズのインスピレーションの刺激に一役買っている。その最たるイズ印のアイテムが【樽爆弾ビックバン】である。

モチーフとなったキャラはGV爪のオウカ。
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