―――西エリア。
「巨大モンスターの撃破にちょっと協力してメダルが三枚……」
「個別ではなくパーティー報酬とは、運営もイキなことをするな!」
「いやいやししょー!?これはさすがに後ろめたいよ!」
「ならば、ここから多大に貢献すればいいだけのこと!もう一体いる巨大モンスターの撃破という形でな!では、行くぞ!皆のもの、俺の筋肉に続け!!」
「一人で先に行かないでよ!ししょー!」
―――東エリア。
「あれが危険な攻撃を放ってきたから、何とか隙を作ってウィルバードに攻撃してもらったけど……」
「あれでメダルが三枚も入るとは、本当に予想外でしたよ」
「巨大モンスターは残り一体……彼らも討伐に動くみたいですし、私達も本格的に加勢しましょう」
――――――
巨大悪魔の撃破に成功したコーヒー達は、ジベェの背に乗って大暴れしている瓦礫の巨竜へと接近していく。
「【攻撃開始】!」
「爆ぜろ、【炎帝】!」
「弾けろ、【スパークスフィア】!」
「【多重石弾】!」
「吸い込め、【ダークホール】!」
「巻き込め、【トルネード】」
その道中で空を飛べるモンスターから襲撃を受けるが、遠距離攻撃と範囲攻撃を放てる面々が率先してモンスター達を撃ち落としていく。
瓦礫の巨竜の身体のあちこちからすり抜ける白い光線が飛んでくるが、【天王の玉座】に座ったメイプルの【身捧ぐ慈愛】によっていくら受けてもノーダメージだ。いくら物理的な防御や壁を無視できても、メイプルの圧倒的なVITの前には無力である。
「光線の方はメイプルのおかげで心配いらないが……」
ペインがそう呟いていると、瓦礫の巨竜は自身の周囲に展開した魔法陣から、如何にも凶悪そうな見た目の巨大な槍を幾つも出現させていく。
「あれ、絶対に痛いやつだよ!」
「【射程延長】【クリアマジック】!」
事前情報から武器攻撃は防御貫通の可能性が高い故にメイプルは焦った声を上げるも、カナデが二枚の紫のカードを掲げて巨大な槍たちを魔法陣ごと消し去ることで事なきを得る。
「マジで何でもありだな」
「できることが増えたからね」
半分の確率とはいえ、魔法系だけでなく技能系もストック可能となったことで出来ることが更に増えたカナデはドラグの呟きに肩を竦めながら返す。
「そろそろ射程圏だな」
コーヒーは光線を放ち続ける瓦礫の巨竜を見据えながら、昨晩の事を思い出すのであった。
――――――
―――昨晩。
「私達が戦った真偽メイプルの結界もやばかったけど、瓦礫の竜の無敵オーラの方が厄介かもねー」
「特定の攻撃を無効にするオーラを放つ玉の破壊も手間がかかりそうだし、相当苦労しそうだな」
真偽メイプルと戦ったフレデリカと瓦礫の竜と戦ったコーヒーの言葉に多くの者がコクリと頷く。
真偽メイプルの結界の方は配下のモンスターをすべて倒せば解けるのに対し、瓦礫の竜の玉の方は対応する攻撃をぶつけなければ破壊できないのだ。手間と面倒さは瓦礫の竜の方が圧倒的に上である。
そんな一同に、ジェラフが光明となる言葉を上げた。
「それについてなんだけど、案外簡単に行くかもしれないよ」
一同はどういう意味かと一斉に問いかける視線をジェラフへと向ける。その視線を一斉に受けたジェラフは態度を崩すことなくその根拠の説明を始めた。
「黒い玉と金の玉を全部破壊した後、試しに他の玉も攻撃してみたんだよね。そしたら別の色の玉は簡単に壊せたんだよ」
「本当に抜け目がないな」
どこまでも強かで抜け目がないジェラフにコーヒーは思わず苦笑いしてしまう。敵に回ると本当に面倒になりそうだが、味方である今の状況では頼もしい限りである。
そんな先手を打って検証していたジェラフは、ミィの方へと顔を向ける。
「確か【炎帝ノ国】のギルドマスターさんには相手を閉じ込めつつ、ダメージを与えるスキルがあるよね?それを使えば無敵を構成する玉全部を破壊できる筈だよ」
「確かに……【火炎牢】なら全体にダメージを与えられる可能性は高いな」
第四回イベント時の見所映像からの推察だと察しつつ、確かに有効打に成りうるとミィは頷く。
「だが、【火炎牢】は継続ダメージだ。耐久値次第では時間が掛かる可能性もある」
「なら、僕達の出番だね。炎系統の強化スキルの魔導書もあるしね」
「アイテムもあるよー」
こうして【火炎牢】による無敵解除案は採用されるのであった。
――――――
「けどどうするー?アイツも絶対に無敵モードが二回あるよ。確か、連発できないんだよね?」
「問題ない。俺も【火炎牢】が使えるからな」
フレデリカの最もな意見に、カミュラが大盾を構えながらそう答える。第四回イベント時のメイプルとの戦いで使った【火炎牢】は、今もコピーしたままであるからだ。
ちなみに連発できないという情報は、嘘ではないが本当でもない。基本はライバル同士なので正直に話すわけにはいかないからだ。無論、その辺りは周りも理解しており、どちらにせよ連続で使えないのは変わらないが。
「それじゃあ予定を少し変更ね」
イズはそう言って、ミキと共にバフがかかるアイテムをカミュラへと渡す。カミュラもそれらを受け取り、すぐに使用して自身を強化する。二回の無敵モードがあり、ダメージを叩き出せる量に違いがあるのなら、後の為にミィの方を温存するのは当然の流れである。
「カミュラ、頼むぞ」
「ああ。ルル、【フレイムドライブ】!【魔力増強】!【
「強化するよ、【暴君の権威】【聖火の薪】」
「ノーツ、【増幅】!」
「凱旋せよ、【勝利の演奏】!」
ミィの言葉に頷いたカミュラはルルに指示を出し、魔法と火属性の強化スキルを発動させる。カナデも紫のカードと魔導書を使って強化を施し、フレデリカもノーツの力で強化を施していく。サクヤも得意の演奏スキルを使い、パーティーメンバー全員のスキルの威力と効果を上げていく。
「【火炎牢】!」
アイテムとスキルによるバフによって強化されたカミュラが大盾を掲げてスキルを発動させると、巨大な炎の檻が出来上がり瓦礫の巨竜をその中へと閉じ込める。無敵状態ゆえに本体にダメージは入っていないが、身体のあちこちにある赤い玉の光が弱まっていっている。
「玉の光が消えるだけか」
「確実にまた無敵状態に入るな。分かりきっていたことだが」
シンとレイドはそう呟きながら、ミキがポンポンと取り出してくるMPポーションをキャッチしてカミュラへとぶっかけていく。
少しして赤い玉の光が消えると同時に瓦礫の巨竜の赤いオーラも消え、それに合わせて他の玉の光も徐々に弱まっていく。
すべての玉の光が消えたタイミングで、カミュラは発動していた【火炎牢】を解除する。すべての玉の光が消えるまでの間、【火炎牢】による瓦礫の巨竜へのダメージは本当に微細だったからだ。時間いっぱいまで発動しても大したダメージを与えられない上にポーションの無駄使いになるからである。
どちらにせよ、本来の目的は果たせたのでここからが本番である。
「ジベェ、【波と共に】ー」
ミキの指示を受け、ジベェは水を纏った体当たりを瓦礫の巨竜へとぶちかます。
ジベェの体当たりで瓦礫の巨竜がよろめく中、メイプル、マイ、ユイ、ミキ、イズ、アロック、サクヤ、マルクス、ヒナタはジベェの背に残り、ペインとフレデリカはレイの背に、ミィとミザリーはイグニスの背に、コーヒーとカナデは空飛ぶ舟に、サリー、ドレッド、レイド、テンジア、ジェラフは瓦礫の巨竜に乗り込む。
「【重力半減】」
「【エアフォース】」
「これで落下によるダメージは問題ないな」
「それじゃ、行ってくるっす!」
ヒナタとカナデによって落下ダメージがほとんど無効となったクロム、カスミ、シアン、ドラグ、シン、カミュラ、ベルベットは大地へと降り立つ。
「太郎丸、【追従の双葉】【刻葉】【紅葉刃】」
「朧、【妖炎】【火童子】【影分身】」
瓦礫の巨竜の背に乗り込んだジェラフとサリーは互いの相棒にスキルを使わせ、自身を強化していく。その間に瓦礫の巨竜の背中からせり上がるように瓦礫が顔を出し、小さな砲口を二人に向ける。
その砲口から黒光りする鉄球が発射されるが、ジェラフとサリーは難なく躱して反撃に出る。
「【剣乱舞踏】!【颪刃】!【連なる風】!【抜刀・十六夜】!」
「【トリプルスラッシュ】!【十式・回水】!【六式・圧水】!」
ジェラフは風と葉を舞わせながら抜刀による連続攻撃を叩き込み、サリーもスキルによる連撃を与えた後、水によって刀身が更に延長して炎と水の幻想的な剣として更にダガーを振るっていく。
「連撃で切り刻め、【トリプルスラッシュ】!シャドウ、【影の群れ】!」
「ヴォル、【雷鳴の加護】!切り裂け、【紫電一閃】!」
「リース、【雹音波】!【砕氷刃】!」
ドレッド達もスキルを使って瓦礫の巨竜にダメージを刻み込み、二人に負けじと攻撃を仕掛けていく。当然、瓦礫の巨竜も黙ってやられるわけもなく、砲撃だけでなく身体から前触れもなく剣や棘を放って反撃してくるが、サリー達は紙一重でそれらを避けていく。
「ブリッツ、【界雷】!【遺跡の匣】!降り注げ、【ディバインレイン】!【砲撃用意】!」
「【正義の鉄拳】!【
舟に乗っていたコーヒーも匣と大砲、降り注ぐ雷雨で瓦礫の巨竜にダメージを与えていく。匣も四つの音波攻撃で瓦礫の巨竜に四重のデバフを与え、他の者達のダメージも加速させていく。
一緒に舟に乗っているカナデも空から白いオーラを放つ巨大な鋼鉄の拳と、手に当たる部分が鋭い四つの棘となっている腕を放ち、ソウに混乱効果があるデバフスキルを使わせて攻撃に参加していく。
「同時に燃えよ、【多重炎弾】!」
「光の斬撃は万里を切り裂く!【残光ノ聖剣】!」
「猛ろ、【豪炎】!【連続起動】!」
「貫け、【ホーリージャベリン】!」
レイに乗っているフレデリカとペインも無数の炎弾と光線のごとき斬撃で瓦礫の巨竜の右腹を攻撃し、イグニスに乗ったミィとミザリーは幾つもの炎と光の槍を左腹に叩き込んでいく。
瓦礫の巨竜も反撃とばかりに白い光線と瓦礫の塊を飛ばしていくも、ソウによって付与されたデバフで狙いが定まらないこともありレイとイグニスの高い機動力によって躱されてしまう。
「【遠隔設置・泥沼】!」
「クローネ、【金属音】!」
そこにマルクスが瓦礫の巨竜の足下にトラップスキルを発動させ、右前足をぬかるみに沈ませて動きを阻害する。そこにアロックもクローネに指示を出して防御力を更に落としていく。
「シロップ、【精霊砲】!」
「ジベェ、【水鉄砲】ー」
「【災厄伝播】【脆き氷像】【星の鎖】【重力の軋み】」
メイプルとミキの指示を受けたシロップとジベェも光砲と水砲を放って瓦礫の巨竜の頭部を攻撃し、デバフの使い手であるヒナタがデバフコンボを叩き込んでいく。
「大放出よ!」
「「行きます!」」
イズは工房を展開して【樽爆弾グレード】を次々と作っていき、それをマイとユイが次々と投げ飛ばしていく。幾つかは光線と瓦礫によって途中で爆発するも、大半は瓦礫の巨竜に命中してダメージを刻み込んでいく。
「【稲妻の雨】!【嵐の中心】!【殲撃】!」
当然、地上組も攻撃しており、既に【雷神再臨】を発動したベルベットはお得意の雷の雨を降らせつつ黒いオーラを纏った拳撃を前足へと叩き込む。
「【パワーアックス】!」
「ネクロ、【死の炎】!」
ベルベットの攻撃に続くようにドラグも斧を前足へと叩き込み、ネクロを纏ったクロムも炎を噴き出して追撃をかましていく。
「輝け、【フォトン】!【連続起動】!」
シアンが連続で光球を叩き込んだタイミングでぬかるみから脱出した瓦礫の巨竜はそのまま右前足を上げ、固い方の地面へと叩きつける。すると、衝撃波と共に地面が隆起する。
「【マルチカバー】!」
「アース、【大地制御】!」
「ルル、【神の息吹】!」
クロムが咄嗟にカバーに入ってベルベットとドラグを守り、ドラグはすぐにアースに指示を出して地面の隆起を消し去る。そこにカミュラが回復を施して追撃に備える。
その判断は間違いではなく、今度は無数の砲弾が彼らへと降り注いでいく。
「ウェン、【風神】!」
「【幽鎧・堅牢】!」
その無数の砲弾をシンがお得意の【崩剣】と合わせて空中で爆発させ、残りは防御重視の形態となったクロムが【カバームーブ】も使って受け止めていく。
「【四ノ太刀・旋風】!」
その隙をつくように両脇に武者の腕を携えたカスミが連撃を刻み込む。集中的に攻撃した介もあってか、右前足から幾つかの瓦礫が崩れ落ちると同時に瓦礫の巨竜はバランスを崩したようにその場で崩れ落ちる。
「ダウンしたっす!」
「よし!このまま追撃す―――」
ドラグが威勢よくそう告げようとした直後、螺旋を描くオーラを纏った羽を生やしたライオンが周りの木々を食い破るようにクロム達へと突撃して来た。
「ここでエリアボスかよ!?【カバームーブ】!【ヘビーボディ】!」
「【カバームーブ】!【ヘビーボディ】!」
まるでスフィンクスのようなライオンにクロムは驚きながらもそのライオンの前に立ち、カミュラも同様に前に立ってノックバックを無効にした状態でその体当たりを受け止めようとする。
そのスフィンクスモドキの体当たりをクロムとカミュラは最初こそ受け止められたが、掬い上げるように顔を突き出すと威力負けしたように二人は押し飛ばされた。
「「ぐあっ!」」
螺旋を描くオーラと共に押し飛ばされたクロムとカミュラのHPが一気にレッドゾーンへと突入する。そのままHPが尽きるというタイミングでクロムは【デッド・オア・アライブ】が発動、カミュラは【不屈の守護者】が発動して事なきを得る。だが、一時的とはいえタンク役が不在となるこの状況は好ましくなかった。
「こいつはマズイぜ!【土波】!」
「私もやるっす!【スタンスパーク】!」
ドラグとベルベットがすぐにノックバックやスタン効果のあるスキルを放つも、スフィンクスモドキはダメージを負いながらもその螺旋の描くオーラで受け流すようにノックバックとスタンを無効にしてしまう。
「げっ、嘘だろ!?」
「まさか攻防一体っすか!?」
ドラグとベルベットがまたしても厄介なエリアボスだと確信したタイミングで、そのスフィンクスモドキは二人に向かって体当たりをかまそうとする。二人は身構えるも―――
「【不退転】!【気功術】!【ダイアキャノン】!」
そのタイミングで胴着を着た筋骨隆々のプレイヤーがそのスフィンクスモドキに体当たりして、互いに激突した。
「あ、悪魔が倒されちまった……」
「時間もまだあるから、あっちの討伐も可能……」
「やばいぞ!特別ボーナスが発生してしまうぞ!」
「ご安心ください。特別ボーナスは貢献度で上下するようにしておきました」
「「「「おお~っ!!」」」」
「ただ、メイプル達は最高ランクのボーナスになりますが」
「「「「ああ……」」」」
喜ぶもすぐに落胆する運営の図。