スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


印籠なのに七つ道具

コーヒーは裏絡繰屋敷に挑んで早々、早速絡繰の洗礼を受けていた。

 

「いきなり水攻めかー……【潜水】はあるけど早く対処しないとマズイよな」

 

挑戦してすぐに密室からの水攻めは殺意が高いと感じながらも、コーヒーは怪しい箇所がないか手探りで探していく。カナデであれば魔導書とカードに保管したスキルを使ってすぐに解けただろうが、そういったスキルは欠片も持っていないコーヒーは手当たり次第に探すしか方法はない。

 

水が部屋の八割まで浸水したところで、コーヒーは漸く壁に隠されてあったレバーのような取手を発見する。

コーヒーはその取手を握りしめ、力いっぱいに引くと、床の隅の一ヵ所が沈み、そこから水が排水口に流されるかのように消えていった。

 

「この先も大体こんな感じなのか……?だとしたら、スキルの使いどころも考えないとな」

 

無事に水攻めから逃れたコーヒーは、水が排出しきってから出現した扉を潜っていく。次の部屋に入ると、最初の水攻め同様に入口の扉が問答無用と云わんばかりに閉鎖される。

 

「今度は何の仕掛けが……」

 

コーヒーのその呟きを遮るように、ガコンッ!という音が長い通路に響き渡る。そして、鈍い音と共に左右の壁が徐々に狭まり始めた。

 

「迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)!【疾風迅雷】!【ライトニングアクセル】!!」

 

今度は壁の押し潰しと察したコーヒーはスキルでAGIを大きく強化すると、迷わず全速力で奥を目指して走っていく。このタイプの罠は、奥にある扉へと脱出するのが定番であるからだ。

実際、ここは部屋というより長い通路となっており、道幅も車五台分程度の広さはある。故にコーヒーは奥を目指したのだが……

 

「い、行き止まり……」

 

引戸でも回転扉でもなく、ただの壁であった事実にコーヒーは引き攣った笑みでそう呟く。両壁はすでに道幅の半分まで迫っており、今から引き返して仕掛けを探していたら間に合わない。

 

「ここで挑戦失敗……いや、諦めるにはまだ早い!」

 

コーヒーは自身を奮い立たせると、見える範囲で周囲を見渡していく。壁や床に不自然な点はない。天井には……中央に不自然な凹みが列を成すように幾つもあった。

 

「あれか!」

 

あれが解決に繋がる仕掛けと直感したコーヒーは、一切迷わずにクロスボウの矢でその凹みの一つを射ち抜く。すると天井の中央がドミノ倒しのように開いていき、そこから縄梯が垂れ下がる。

その縄梯の一つにコーヒーは飛び付くと、すぐに天井裏へと上るのでった。

 

「本当に嫌な仕掛けだ……これ作ったやつ、性格が悪いだろ」

 

押し潰さんと迫り来る両壁に長い通路、加えて挑戦は一回のみ。初見では間違いなく見抜けず騙される。

一先ず危機を脱したことでコーヒーはその場にへたり込むと、下から鈍く大きな音が響き渡る。押し潰されずに済んだとコーヒーは安堵の息を吐きかけるが、後ろから響いてきた音で遮られた。

 

「ま、まさか……」

 

コーヒーは恐る恐るといった感じで後ろを振り返ると、遠くから黒光りする巨大な球が猛回転しながら迫って来ていた。

 

「絶対性格悪いだろ!!【ヴォルテックチャージ】!【ライトニングアクセル】!!」

 

再度AGIを強化し、再度全力疾走して迫る黒い鉄球から逃げ出すコーヒー。トラップの定番と言えば定番ではあるが、十中八九加速スキルを使うであろう罠を連続、それも休む間を与えずだからまさにその通りである。

 

コーヒーは強化された【ライトニングアクセル】を使って全力疾走するも、迫り来る鉄球は猛然とした勢いで徐々に距離を詰めて来ている。このままだと追い付かれた挙げ句、押し潰されて死亡となるだろう。

 

冷や汗を感じながら暫く走り続ける中、人一人が這って入れそうな穴が用意された壁が見え始める。彼処で止まってからの匍匐前進(ほふくぜんしん)では、絶対に逃げ切れない確信がコーヒーの中にはあった。

 

「鬼畜にも程があるわっ!!」

 

コーヒーは独り文句を叫びながら、スライディングでその穴に滑り込んでいく。滑り込んだ為、脚と背中が地味に痛いが、引っ掛かることなく穴の中に潜ることに成功する。

コーヒーが穴に上手く滑り込んだ数秒後、鈍い音と地響きが届き渡った。

 

「本当に心臓に悪ぃ……次はどんな仕掛けが……」

 

勢い故に穴をそのまま滑りきっていたコーヒーは払う動作をしながら立ち上がり、周囲を見渡す。そこには扉が一つあるだけで何かしらの仕掛けが隠されている様子はない。

 

「……何もないなら少し休もう。流石に二度も全力で走ったから、精神的に少しキツい」

 

コーヒーはこの部屋の安全を確認してから、改めてその場に座り込んで休んでいく。念のために【クラスタービット】による屋根で天井からの不意討ちを防げるようにして。

 

「……よく考えたら、メタルボードで移動したら楽だったんじゃ……いや、鉄球で潰された可能性もあるし結果オーライか?」

 

追い込まれると視野や思考が狭まると思いながらも、十分に休憩したコーヒーは意を決して扉を開ける。扉を開けた先には、まるでRPGダンジョンにある時計塔の内部のような、木製の歯車があちこちで回転している光景が広がっていた。

 

「……ここはメタルボードで楽しよう。うん」

 

使える物は基本的には使うコーヒーは、メタルボードで移動して楽することを選んだ。一回しか挑めない上、殺意がてんこ盛りだった仕掛けのせいで、マトモな攻略は諦めたのである。

 

コーヒーはメタルボードに乗ると、足場となるであろう歯車を無視して移動していく。下は底が全く見えない為、落ちれば間違いなく強制退場か死亡のどちらかだろう。足場が歯車のみなので、常に移動しなければ無理矢理落とされるのは確実だ。

 

……小回りで飛行ができるコーヒーには関係はなくなってはいるが。

そんなズルで奥へと目指していると、何の前触れもなく横殴りの風がコーヒーに襲い掛かった。

 

「空中飛行対策……じゃないな、これ。もしそうならもっと強く風が吹く筈だし」

 

メタルボードに足を固定していたので、屈む程度で済んだコーヒーはそう結論付ける。もしそうなら、上空から叩き落とす勢いの風を起こすのが普通であるからだ。

実際、道中は風だけでなく、吹き矢や手裏剣などの飛び道具が飛んできている。振り子のような鎌もある為、移動の妨害目的の仕掛けであることは確かだ。

 

その飛び道具は【雷旋華】や【クラスタービット】で難なく防ぎ、振り子のような鎌は華麗に無視。今までの苦戦が嘘のようにぐんぐん進んでいき、コーヒーはあっさりと奥へと到達する。

そんな運営が見たら遠い目をするであろう方法で奥に辿り着いたコーヒーは、台座に置かれていた印籠をまじまじと見つめていた。

 

「これ、取っても大丈夫なやつか?けど、これ以外に怪しいものはないし……」

 

ウンウン悩んでいたコーヒーであったが、意を決してその印籠を手に取る。同時にアイテム取得のメッセージが届き、これでクリアと分かって安堵の息を吐いた。

 

「《絡繰七つ道具》……印籠なのに七つ道具ってどうなんだ?」

 

名称に対して疑問に思いつつ、コーヒーは改めてその印籠の効果を確認した。

 

 

============

《絡繰七つ道具》

装飾品の装備枠を五つ追加する。

《絆の架け橋》等の特殊な装備はこの装備の装備枠に装備できず、同一の名称と効果を持つ装備の重複はできない。

この装備枠に装備するとステータスのプラス補正は半分となり、スキル並びに効果は弱体化する。

※他プレイヤーへの譲渡不可

============

 

 

「メイプルの《救いの手》と似たようなものか。いや、弱体化するから一概に同じとは言えないか?」

 

コーヒーは検証の為に一度《ブルーガントレット》を外し、《絡繰七つ道具》を装備する。装備枠を変更しようと《絆の架け橋》と《信頼の指輪》を追加された装備枠に移動しようとしたが、装備不可と表示されるだけに終わる。

 

次は一度外した《ブルーガントレット》を追加された装備枠に装備するよう操作すると、今度はすんなりと装備することができた。

 

「……説明欄にある通り、ステータスの補正が下がってるな。スキルや効果の方は弱体化するとあるが、今は装備が……あ、あれがあったか」

 

コーヒーは思い出したようにインベントリを操作し、死蔵状態であった《フォレストクインビーの指輪》を装備する。【VIT+6】と10分毎にHPを一割回復する効果を持つ指輪に、弱体化の説明が新たに記載された。

 

「10分毎が20分毎に延長か……弱体化は基本的にマイナス方面が二倍になる感じか?これじゃ確かに《絆の架け橋》とかは除外されるな。メイプルの《救いの手》も除外対象になりそうだな」

 

装備すればステータスに補正が入るので、武器の装備枠を増やせる《救い手》が大量装備できると、ゲームバランスが崩れかねないのは容易に想像できる。もっとも、同一の装備の重複はできないとあるので余計な心配だろうが。

 

「少なくともスキル付の装備品向けだな。本格的に活かせるのはまだ先か」

 

色々と疲れはしたが、将来性が高そうなレア装備が手に入ったコーヒーはニンマリと笑みを浮かべる。

そうして新たな装備を手に入れたコーヒーは、律儀に絡繰屋敷の外で待機していたクロムと合流し、今回得た情報を共有した。

 

「装備枠を増やす装備か。デメリットはあるが、スキル付きの装備ならメリットの方が強そうだな」

「それで、クロムはどうする?一度町に戻ってフラグを立ててから挑むか?」

「いや、俺一人だとクリアできるか怪しいからな。最後の方は変化しないだろうが、前半の仕掛けはランダムの可能性がある。複数人で挑めるなら、そうするに越したことはないだろ」

「それもそうだな」

 

この絡繰屋敷の仕掛けは挑戦毎に変わると掲示板にあったと思い出したコーヒーは、クロムのその言葉に納得の意を示す。

今回は矢の雨、水攻め、迫る壁だったが、仕様からしてクロムが挑んだ時も同じになるとは限らない。可能ならカナデと一緒に挑んだ方が成功する確率が高いだろう。

 

「そこのお二人さん、チョーっとお話しよろしいですか?」

 

そんなコーヒーとクロムに、とあるプレイヤーが声を掛けながら近寄って来る。コーヒーとクロムは誰なのかと声がした方に顔を向けると、そこにいたのは見知らぬ女性プレイヤーだった。

 

服装はシャツに短パンと如何にも軽装であり、髪はセミロングの薄い水色で、白いニット帽と眼鏡を装備している。まるで探偵か記者のイメージを抱きそうな少女は、興味津々で二人に話し掛けた。

 

「偶然聞こえてきたのですが、あの絡繰屋敷に隠し要素があったのですか?差し支えなければ教えて頂けませんか?もちろん、明かせる範囲で大丈夫ですし、ノーなら素直に諦めますよ」

「……すまないが君は一体?」

「おっと失礼。自己紹介が先でしたね」

 

クロムの紳士的な対応に少女は確かにと頷くと、背筋を正して名乗りを上げた。

 

「私の名はシャーベット。フリーの情報屋をやってます」

「情報屋?それって掲示板とかにある類いのやつか?」

「ええ、その通りです。私の場合はクエストのフラグやアイテム入手の経緯を主に取り扱ってます」

 

シャーベットと名乗った少女はクロムの質問にそう返すと、自身のインベントリを操作して何かしらのリストを纏めた紙を二人の前に差し出した。

 

「“被ダメージを半減する火系統スキル”、“二刀流を手軽に実現できる剣術スキル”、“索敵を阻害する指輪”、“機械パーツで構成された剣”、“即死を与える毒”……これ、全部本当にあるのか?」

「もちろんありますよ。情報は信用が命。まあ、最初はガセを掴まされもしましたが……」

 

シャーベットはそう言ってニッコリと笑みを浮かべて、告げた。

 

「そういったクソプレイヤーは、匿名で吊し上げてハブらせました」

「お、おう……」

「そ、そうか……」

 

シャーベットの有無を言わせぬ迫力に、コーヒーとクロムはある意味敵に回してはいけない人物だと察した。

 

「と、とにかくどうやって情報を得ているんだ?やっぱり金か?」

「基本的には情報と情報の交換ですよ。私の欲しい情報を対価に、相手の欲しい情報を提供することで多くのプレイヤーから情報を得ているんですよ。フリーなのもその辺りが理由ですね。ギルド所属だと警戒して口が固くなるので」

 

シャーベットのその返答にコーヒーとクロムは納得する。情報というのはそれだけで武器になる。それがどこかのギルド所属であれば、そのまま戦力の増強に直結しかねないからだ。

しかし、シャーベットは完全なるソロ。加えてプレイヤー情報は扱わない為、比較的安易に頼りやすいのだろうと察することができた。

 

「ま、その代償でパーティーが組みづらい上、メダルとも縁遠いですけどね」

「だから通常で手に入るスキルやアイテムの情報を集めている、と……それを加えても、どうして直接情報が欲しいんだ?確実なのは自身で攻略することだろ」

「今回は簡潔に言えば依頼ですね。少し前に装備枠を増やしたいプレイヤーが私に接触しまして、私の持ってる情報じゃご希望に添えなかったんですよ」

「優良な装備ゆえに困っているプレイヤーってとこか?」

「大体そんな感じですね」

 

シャーベットの肯定と取れる返答に、コーヒーとクロムは苦笑いで顔を見合わせる。

 

「クロム……そのプレイヤーに心当たりがあるんだが」

「奇遇だな。俺もだ」

 

もしそのプレイヤーがコーヒーとクロムの予想通りであれば、確実に脅威度が引き上がってしまう。敵に塩を送るか、口を閉ざすか……判断が難しいところである。

 

「でしたらご本人と直接交渉しますか?フレンド登録しておけば、何時でも連絡が取れますので」

「……そのフレンドに、大手ギルドの奴もいるのか?」

「もちろんいますよ。誰かまでは教えませんが」

 

コーヒーの疑問に対し、シャーベットは何てことのないように答えつつも肝心なところは口にしない。情報屋を自称する以上、個人情報に関しては口が固そうである。

 

「この“蓄積したダメージを衝撃波として返す反撃スキル”は【カウンター】とは別なのか?」

「過去イベント交換スキルの【カウンター】とそれは別ですよ。サービスで言えば、それは大盾使い専用スキルです」

「……六層のドクロの騎士の報酬内容でどうだ?」

「あの理不尽骸骨騎士のクリア報酬ですか。その情報は持っていないので取引成立ですね」

 

その中でクロムはしっかり情報を手に入れ、シャーベットとの取引を成立させるのであった。

 

 

 




オリキャラ紹介。
テンジア/天城 秀一(あまぎ しゅういち)

【炎帝ノ国】所属の男性プレイヤー。大人。
マイとユイと同じスキル【破壊王】を所持しており、STRとAGI重視(この二つにしか振っていない)のステ振りとあって、二人と違って機動力がある。
当然一撃貰えばアウトではあるが、元来の反射神経の良さと驚異的な勘により、第四回イベントまではノーダメであった。
ミィとは現実では従兄妹であり、極一部にはそのことで嫉妬の視線を向けられている。

キャラモチーフはGV爪のテンジアン。
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