スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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今回は原作主人公サイド。
てな訳でどうぞ。


防御特化と男の娘

一方その頃、メイプルは五層の高い場所に位置する雲の上で、白いワンピース姿で日光浴とばかりの大の字で寝転がっていた。

 

「浮遊城、楽しかったなー」

 

観光目的でサリーと共にダンジョンに挑み、頂上で記念撮影した余韻に浸っているメイプルの表情は、とても幸せそうである。そのサリーとは浮遊城の攻略でそれなりに時間が経過したため解散となったが。

 

残りの層の観光はまた日を改めて行うことにし、今度はコーヒーも誘おうとメイプルが持ちかけ、サリーが少し歯切れの悪い返答で頷いたが……別に構わないだろう。

そんな感じで一人ゆったりとしていたメイプルであったが、視界の片隅に入った城に釘つけとなった。

 

「あれ?あそこにお城なんてあったけ?」

 

場所ゆえにフィールドの遠くまで見通せる位置にいたメイプルは、その城へと意識を向ける。普段からのんびり景色を見ていることが多いため、ちょっとした違和感に気付き易いのだ。そんな額に手を当て、目を細めてじっくりとその城を見つめようとしたメイプルであったが、城が溶けるように消えたことで失敗に終わる。

 

「消えちゃった……もしかして、レアイベントかも!」

 

メイプルは残念がるどころか逆に目を輝かせると、呼び出したシロップに乗って城が消えた場所へと向かい始める。

実を言うと、メイプルはマルクスの【一夜城】やヒナタの【氷の城】のような城を出現させるスキルが欲しいと考え始めていた。その理由は城の天辺で高笑いしたらカッコ良さそう!という、効果は二の次の見栄え的な考えからだ。つまり、いつものパターンということである。

 

「この辺りだったと思うんだけど……」

 

目的のエリアに到着したメイプルは辺りをキョロキョロと見渡して城を探し、シロップも首を動かして周囲を見渡しているが、何処にも城が見当たらない。

一度地上に降りて探そうかと考えていると、離れた場所で銀色の城が突き破るように姿を現した。

 

「あっちだ!」

 

城を発見したメイプルは目を輝かせ、ワクワクしながらその城を目指して進んでいく。その城からは様々な色の光線が放たれており、地上に向かって攻撃しているのは明白だった。

 

「注意して進まないと……【身捧ぐ慈愛】【天王の玉座】」

 

攻撃されたら大変なので、白いワンピース姿から久しぶりの大天使装備へと装備し直したメイプルは【身捧ぐ慈愛】と【天王の玉座】を発動し、万全の態勢で幾条もの光線を放つ城へと近づいていく。

幸い、光線はメイプルに向くことはなくすんなりと近づくことができた。

 

「【魔導の門】【深淵の扉(アビスゲート)】【フレアレーザー】【レールガン】」

 

その城のバルコニーに背が低く、童顔のプレイヤーが複数のスキルを発動して幾条もの火と雷のレーザーを地上に向けて放っていた。地上には氷で構成されたモンスターの群れがおり、氷のモンスター達は城に対して攻撃を仕掛けているが、何条ものレーザーによって薙ぎ払われている。

 

青いローブを身に纏い、水色の水晶を手に持つ姿はまさに魔法使いだろう。そんな魔法使いに、メイプルはそのまま近づいていった。

 

「あのー」

「ん?……ええっ!?」

 

メイプルに話しかけられた魔法使いは、疑問符を浮かべながら振り返り、空飛ぶ亀(シロップ)が間近にいたことに驚いて声を上げる。普通は誰もいない……というか、いても城の上にいる魔法使いには話しかけられないので、呼び掛けだけでなく天使の羽を生やした純白姿のプレイヤーが、空飛ぶ亀の上で玉座に座っていたら驚くのは当然である。

 

「あ、驚かせてゴメンね」

「い、いえ大丈夫です。確かに驚いたけど……」

 

魔法使いはそこまで言いかけるも、何かに気づいたようにメイプルの顔を見つめると、ピンときたような表情で口を開いた。

 

「ひょっとして【楓の木】のメイプルさん?」

「あ、うん。そうだよ」

 

魔法使いの確認にメイプルは特に否定することもなく頷く。普段の漆黒ではなく純白とはいえ、空飛ぶ亀と天使の羽があるのだ。第四回イベントの見所映像でも取り上げられていたので、気付ける人はすぐに気付くのは当然だった。

 

「実は、この辺りで城があったから何かのレアイベントかと思ったんだけど……」

「たぶん、ボクのスキルだね。ボクのスキルには城を召喚するものもあるから」

「そっかー……レアイベントじゃなかったんだー……」

 

レアイベントではなくスキルによるものであったと知ったメイプルは、残念そうな表情で肩を落とす。しかしそれも数秒。あっさりと気持ちを切り替えたメイプルは魔法使いに再度話しかけた。

 

「でも、すごくカッコいい城だよね!ええと……」

「あ、そういえばボクの方はまだ名乗ってなかったね。ボクの名前はシロ。この城の城主様である!」

 

シロと名乗ったプレイヤーは芝居が懸かった仕草をしつつ、ドヤ顔で胸を張る。どうやらメイプルに誉められたことで気分がよくなったのと、こういったノリが好きだからである。

当然、メイプルもこのノリに乗った。

 

「うむ!苦しゅうないぞ、シロ()()()

「グフゥッ!?」

 

メイプルがティアラから冠に装備し直してから王様っぽく告げた瞬間、シロは胸を押さえながら後ろへとよろめいた。

 

「え?急に胸を押さえてどうしたの?」

「ちゃん……シロ、ちゃん……」

 

何故かダメージを受けたシロに、メイプルは困惑しながらも話しかける。そんなメイプルに、綺麗に倒れたシロはか細い声で驚愕の事実を告げた。

 

「ボク……男……女の子、じゃない……」

「え?……ええっ!?」

 

てっきり女の子と思っていたメイプルは驚愕の声を上げる。何せ、シロの顔はまさに“可愛い”であり、その可愛さはマイとユイ、シアンの三人に匹敵する。ゆえにメイプルは、シロを男の子だとは欠片も思ってなかったのである。

 

「ご、ゴメンね!可愛い顔だったからてっきり……!」

「だ、大丈夫……よく間違えられるから……ハハハ……」

 

メイプルがペコペコと謝り、シロは虚ろな目で大丈夫と告げているが、いたたまれない雰囲気が場を支配してしまった。

―――数分後。

 

「おー!このトウモロコシ、槍なんだ!すごく面白いよー!!」

「この《トウモロコシの槍》はモンスター相手だと与えるダメージが十倍になるんだ!《肉球ハンマー》もこの感触が本物の肉球と同じなんだよ!!」

「フニフニで柔らかいよー!!」

 

いたたまれない雰囲気が明後日へと消え失せ、すっかり打ち解けたメイプルはシロの武器コレクションで楽しんでいた。

《トウモロコシの槍》や《肉球ハンマー》という名称でお気付きだろうが、シロが見せびらかしいるのはネタ武器。世界観をガン無視した形状の武器であり、本当に武器なのかと疑うレベルの武器だ。

 

「シロくんは変わった武器をいっぱい持ってるんだね」

「もちろん!武器のコレクションは真の(おとこ)になる条件の一つだからね!」

「真の男……?」

 

シロの発言に対し、メイプルは漢字違いで反芻して首を傾げるも、あっさりと放棄して話を続けていく。

 

「この近くでもそのネタ武器は手に入るの?」

「うん!このエリアで一定数のモンスターを討伐すると、ネタ武器が手に入る隠しエリアへの扉が現れるんだ!モンスターを探したり、追いかけないといけないから、結構大変なんだけどね」

「それならこれがあるよ!」

 

シロの言葉にメイプルはそう返すと、自身のインベントリから数個の缶詰めを取り出す。

 

「その缶詰めは……?」

「これを使えば、モンスターがいっぱい寄ってくるよ!」

「それ本当!?さっそくお願い!」

「任せたまえー!」

 

そう言うや否や、メイプルはさっそく缶詰めを使う。その数秒後、氷の結晶のような姿をしたモンスターがわらわらと群がるように姿を現し始めた。

 

「すごいね、その缶詰め。【マジックタワー】【紆余曲折】照射せよ、【レイ】【連続起動】」

 

缶詰めのモンスター呼び寄せ効果にシロは感心しつつ、スキルを発動。城の隣に出現した塔から白い光線が何度も放たれるが、特筆すべきはそこではない。その塔から放たれた光線が意思を持つかのように折れ曲がり、次々とモンスターを撃ち抜いているのだ。

 

「すっごーいっ!光線がジグザグに曲がってるよ!!よーし、私も―――」

 

その光景にメイプルは目を輝かせて興奮。自身も参戦と言わんばかりに短刀を掲げて【毒竜(ヒドラ)】を放とうとしたが、それに待ったをかける者がいた。

 

「あ、ちょっと待って。【宵闇の祭壇】【歪な(さかづき)】【邪法の陣】」

 

待ったをかけた人物―――シロは間髪入れずに三つのスキルを発動する。城のバルコニーに立っていたメイプルを中心に不気味な祭壇と杯、おどおどしい魔法陣が出現し、まるで邪悪な儀式の生け贄に捧げられる天使のような光景が展開される。

……実際は生け贄ではなく教祖か司祭であるが。

 

「これで毒の魔法は格段に強くなるよ。では、おもいっきりどうぞ」

「そうなんだ。じゃあ―――滲む混沌 出でるは猛毒の化身 三首の顎ですべてを穢さん!喰らえ、【毒竜(ヒドラ)】!」

 

シロの説明を受けたメイプルは納得したように頷いてから、【口上強化】込みで【毒竜(ヒドラ)】を発動。いつもより凶悪な見た目となった三首の毒竜が短刀から出現し、モンスターの群れに向かって容赦なく毒のブレスを放つ。

 

毒のブレスはいつもより強力になっているのか、ほぼ一撃でモンスター達を光に還してしまっていた。しかもそれだけに終わらず、連続で毒のブレスを放つ始末である。

 

「おおおっ!いつもの【毒竜(ヒドラ)】より強くなってるよ!!空を覆うは(よこしま)なる雲 濡れ滴るは毒の雨 平野に降り落ちて生命を蝕め!【アシッドレイン】!!」

 

強化された毒魔法に興奮したメイプルはその勢いのままに【アシッドレイン】を発動。城を中心としたかなりの広範囲に毒の大雨が降り注ぎ、【蠱毒の呪法】も合わさって一帯にいたモンスターは次々と(たお)れていく。

 

「念のために張っておこうかな……【清浄なる屋根】」

 

万が一毒で城が消えてしまわないよう、シロはスキルを使って城を強化する。自身への毒の方はメイプルの【身捧ぐ慈愛】の範囲内にいるので一切問題ない。

 

「これ、周りにプレイヤーがいたら一大事だね」

「……あ」

 

あまりに広範囲に降り注ぐ毒の大雨に対して呟くシロの言葉に、メイプルは今気付いたと言わんばかりに間が抜けた声を洩らした。

 

「ど、どうしよう?これ、途中で止められないんだけど?」

「た、たぶん大丈夫だよ。こんなに広く降り注ぐなんて予想外だし、次から気を付ければいいよ」

「そ、そうだね!こんなに広い範囲は予想外だよね!」

 

やらかしたと冷や汗をかきながら互いに弁護し合うメイプルとシロ。哀しいことに、一番懸念していたことが現実になっていた。

 

「え……?なんで毒の雨が―――」

 

運悪く(?)レベル上げでモンスターを狩っていたプレイヤーがその毒の雨に晒されてしまい、そのまま即死。しかも雨の範囲内に入っていたプレイヤー達も同様の被害に合ってしまった。そのことで後日、一部の掲示板が盛り上がることとなったが……不運な事故と結論が出たので大きな問題に発展することはなかった。

 

そんな見事にやらかしたメイプルの活躍によって、モンスターの討伐数が規定値に達した。それにより、雲の地面からせり上がるように隠しエリアへと繋がる扉が姿を現した。

 

「これが隠しエリアへの入口?」

「そうだよ。実際に見るのは初めてだからたぶん、だけど」

 

若干の不安要素を残しながらも、メイプルとシロは氷で作り上げられた扉の入口を潜っていく。

入口そのものが転移陣になっていたようで、内側から光を放つ扉を抜けると、そこは宝箱が一つだけ鎮座している氷の部屋であった。

 

「ではさっそく、ご開帳!!」

 

シロは待ってましたと言わんばかりに宝箱の蓋を開ける。中にはモナカのような盾と、アイスバーのような棍棒が入っていた。

 

 

==========

《モナカの大盾》

【HP+450 VIT+300】

【弱点属性追加・火】【損傷加速】【炎上耐性低下・特大】【火属性ダメージ増加・特大】

==========

 

==========

《アイスバーメイス》

【STR+120 VIT+55】

【属性攻撃・氷】【弱点属性追加・火】【損傷加速】【火属性ダメージ増加・大】

==========

 

 

「凄く偏った性能だね」

「変わった効果はない代わりに、補正が大きいね。リスクも大きいけどね」

 

見た目が冷凍菓子……アイスとあってか火属性に対して滅法弱い武器にメイプルは苦笑い。対してシロは、ステータス補正のデカさとデメリット過多のスキルを見て冷静に分析していた。

 

意外かもしれないが、ネタ武器はそのふざけた見た目に反して性能は結構良いのだ。実際にそれを使って戦うのはシュール以外の何者でもないが。

 

「ちょうど二つあるから一つは持っていっていいよ」

「いいの?どっちも異なる武器だけど……」

「大丈夫大丈夫。それにこのエリアは時間さえ経てば何度でも挑めるから」

「じゃあお言葉に甘えて!」

 

メイプルはシロの言葉に甘えて《モナカの大盾》をその手に取る。武器だけど食べられたらいいなと内心で思いながら。

 

「後、ちょっとしたお詫びもかな。あのイベントで、ちょこっと参加しただけで美味しい思いもしちゃったし……」

「?」

 

シロの言葉の意味が分からず、メイプルは疑問を露に首を傾げる。その反応が予想通りだったのか、シロはその理由を説明し出した。

 

「実はボクもししょーやギルドのみんなと一緒に、この前のイベントの最高難易度に参加しててね。最終日のあの巨大ボス二体の戦いにちょっと参加しただけで、銀のメダルが手に入っちゃったから……」

 

シロのちょっと申し訳なさそうな表情に、メイプルは少し想像してみる。少し参加しただけで、精一杯頑張っていた人たちと同じ報酬……確かにちょっと後ろめたいと思った。

 

「あー、いいよいいよ!私たちだって、周りのモンスター無視して大きいのに挑んじゃったし!」

「そう言ってくれると嬉しいよー」

「そういえば、シロくんってギルドマスターなの?」

「ギルドマスターはししょーだよ。ししょーは(おとこ)の中の(おとこ)だからね!ギルド名は【OTOKOの花道】だよ!」

 

なんだかんだですっかり打ち解けたメイプルとシロは、色々と話し合った後、フレンド登録して別れるのであった。

 

 

 




『五層で毒の大雨に遭遇した。何かの特殊イベか?』
『毒の雨。もしかしたらメイプルちゃんじゃね?』
『その可能性が高そう。毒の雨=メイプルちゃんだし』
『近くにメイプルちゃんはいなかったんだけどな』
『何かしらのスキルで範囲を広げたんじゃないか?』
『もしかしてその範囲の広さが予想外すぎてああなったのかも』
『本当に不運だったんだな』

一部のスレ抜擢。
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