スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


森の探索

「さてと……この森を調べるとするか」

 

メイプルとサリーと別れたコーヒーは、背筋を伸ばして周囲を見渡していく。

この時間帯にはオカルト系モンスターが出ないのか、不気味な程にひっそりとしていた。

朝もいたらサリーにとっては地獄であったが。

 

「ついでに……群れなすは光の結晶 暁を照らす光は我が従者 此処に顕現し我が守手となれ―――【クラスタービット】」

 

コーヒーは昨日手に入れたスキル【クラスタービット】を【口上強化】を使って発動する。

コーヒーの目の前に現れたのは……棺桶だった。

 

「……形状は最後に自分のイメージしたもので固定されるんだな」

 

コーヒーは思わず苦笑いしながら、【クラスタービット】の基本形状をどうしようかと考える。

 

「……そうだ」

 

コーヒーは思いついたように【クラスタービット】の形状をイメージする。

棺桶だった光の結晶は一瞬で光の粒子となり、次いで形を整え始めていく。

数秒で出来上がったのは、コーヒーの背中に翼のように展開された6本の両刃の剣と、尾のように配置された片刃の剣であった。

 

「おお、まさにイメージ通りだな。しかも、此方の方が格好良いな。うん」

 

コーヒーは自画自賛してウンウンと頷く。これが厨二病患者と呼ばれる原因の一端であることにも気付きもせずに。

 

「さて、改めて探索を始めるとするか」

 

7本の剣を背中の後ろに携えたコーヒーはこの森の探索を始めていく。

最初に足を踏み入れた時とは違い、出現するモンスターは狼や猿、鴉等の至って普通のモンスターが出てくる。

 

「うーん……この森は夜の探索がメインなのか?だとしたら……お?」

 

コーヒーは木の上にいた猿型モンスターが手に持つものを【遠見】を使って確認する。

猿型のモンスターが持っていたそれは、銀のメダルだった。

 

「モンスターが直接銀のメダルを持っているのか。こりゃラッキーだ」

 

コーヒーは不敵に笑いながら、その猿型のモンスターにクロスボウを構える。

猿型のモンスターはコーヒーが狙っていることに気づいたのか、俊敏な動作で木から木へ飛び移って逃げ始めていく。

 

「迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)。閃け雷光 天地を翔て彼方を撃ち抜け―――【閃雷】」

 

お馴染みとなった【名乗り】でステータスを強化して、【口上強化】した【閃雷】を放つ。

《疾風のゴーグル》を喪った為、AGIが下がってはいるが、それでも十分に弾速に達している矢は猿の後頭部に突き刺さった。

 

【閃雷】を食らった猿は体を痺れさせて木の上から落ちていく。コーヒーは落ちていく猿に狙いを定めて引き金を引く。

落下地点と交差するように放たれた矢は、今度は猿の腹に突き刺さり、猿は光の粒子となって消えていった。

 

「よし!メダル……む?」

 

ガッツポーズを仕掛けたコーヒーだが、すぐにその目が鋭くなる。

理由は簡単。コーヒーと同じくこの森を探索していたらしい三人のプレイヤーの一人が、そのメダルを拾ったからだ。

 

「人の戦利品を横取りとは、いい度胸だな……」

 

コーヒーはギラギラと眼を光らせ、そのプレイヤー達を確認していく。

プレイヤーは三人とも男。武器は弓、剣、槍という比較的バランスの良いパーティーだ。

 

「纏うは迅雷 刻むは万里を描く軌跡 金色の雷獣となりて駆け抜けん―――迅れ、【ライトニングアクセル】!」

 

【口上強化】と【詠唱】を使った【ライトニングアクセル】で、コーヒーは一直線にそのパーティーに向かって走っていく。

同時に、【クラスタービット】を攻撃体勢にし飛蝗の津波を先に放っていく。

 

「な、なんだあれは!?」

「うわぁああああああっ!?」

 

突然の蒼銀の飛蝗の津波に、三人はなすすべなく呑み込まれる。津波が通り過ぎると、三人の装備は決して無視できない程、ボロボロとなっていた。HPも少ないながらも減少している。

 

「猛るは雷光 煌めく蒼雷の一閃 その雷刃を以て敵を切り裂け―――断ち切れ!【ボルテックスラッシュ】!!」

 

そんな三人にコーヒーは容赦なく【ボルテックスラッシュ】を辻切りのように一閃させる。

一刀両断。

そんな言葉が思い浮かぶ程、雷の刃は三人のプレイヤーを切り裂いた。

 

「弾けろ!【スパークスフィア】ッ!!」

 

止めと言わんばかりに【スパークスフィア】が叩き込まれ、三人のプレイヤーはろくな抵抗も出来ずにその場から消えていくのであった。

 

「不意討ちとはいえ、あんまり手応えがなかったな……というか、あの三人。本当にパーティーだったのか?」

 

猿が持ってたメダルを如何にも女好きそうな金髪プレイヤーが拾った際、弓使いのプレイヤーが抗議するように詰め寄っていたり、一匹狼の感じの剣士は我関せずそうであったりと、その場で居合わせた感が満載だった。

 

「ま、これでメダルも五枚だし……探索を再開するか」

 

その辺りの思考をあっさりと放棄し、コーヒーは森の中を再び探索していく。

―――四時間後。

 

「……何もない」

 

あれからモンスターを討伐しつつ森の中を探索し続けていたが、メダルもダンジョンも見つからない。

 

「もしかして、夜限定でイベントフラグが立つのか?」

 

オカルト系モンスターが出てきていた辺り、このエリアの本命は夜でなければ出てこない可能性が高い。

 

「はあ……どうしようか?」

 

探索を続けるか、見切りをつけて別の場所に向かうべきか。

真剣に検討していると、コーヒーから見て右側の森が急に濃霧に包まれ始めた。

 

「……言ってる側から変化が現れたな。このタイミングで濃霧が立ち込めるという事は……間違いなくこの濃霧の向こうに何かがあるな」

 

コーヒーは不敵な笑みを浮かべながら、その濃霧に迷わず足を踏み入れていく。

濃霧の中は本当に濃く、先が全く見えない。

感知系スキルをフルに使い、モンスターの不意討ちに警戒しながら進んでいく。

 

やがて、濃霧の向こうで薄っらとした陰が見え始める。

コーヒーはその陰に注視しながら、慎重にその陰に向かって進んでいく。

ようやく視認出来るまでに近づくと、それは見上げる程の大樹だった。しかも、幹には地下へと続く空洞がある。

 

「さて……今回も鬼が出るか蛇が出るか……」

 

明らかなダンジョンの入口に、コーヒーは警戒しながら中へと入っていった。

 

「……本当に変な場所だな」

 

ダンジョンに入って30分。コーヒーはぐるりと通路を見渡す。

最初は人一人分しか通れなかった通路は、奥に進むほどに大きくなっていき、今ではあのデカイ銀飛蝗が余裕で通れるほど広々としている。

 

それだけではない。通路の途中から、壁や天井、地面にまで鏡がそこらかしこに埋まっているのだ。まるでホラー映画のような不気味さを放っており、正直気味が悪い。

 

もしサリーがいたら、絶対ビクビクしていただろう。だって、オカルト系のモンスターが突然出てきても全く違和感がないのだから。

だが、このダンジョンは分岐もなく一直線。モンスターの一匹も出てこない。あまりにも不自然すぎる状況だ。

 

「モンスターも全然出てこないし……物凄く嫌な予感がするんだが」

 

コーヒーはじわじわと沸き上がってくる予感を感じながら、奥へと向かって歩き続けていく。

 

「にしても……本当に鏡が多いな。この鏡に一体何の意味が……」

 

コーヒーが訝しげに壁に埋まっている鏡の一枚を覗き込む。そこに写るのは髪と目の色を変えた自分の顔。

その顔が、自身が笑っていないにも関わらず―――ニヤリと笑った。

 

「うおおおおっ!?」

 

突然の不意討ちに、コーヒーはすっ頓狂な声を上げて後ろへと下がる。

心臓をバクバクさせながら再び鏡を覗き込むも、そこには冷や汗を流した自分の顔しか写っていない。

 

「本当に質が悪いぞ……サリーなら完全に腰を抜かしていたな」

 

何とか気持ちを持ち直したコーヒーは、再び鏡が散乱する通路を進んでいく。

やがて、その永遠と続くんじゃないかと思える通路も不気味な存在感を放つ扉が現れたことで終わりを告げる。

 

「またボスモンスターか……昨日の今日だから、本当に勘弁して欲しいよ……」

 

流れからしてボスモンスターとの戦いを予感したコーヒーは、うんざり気味に溜め息を吐きながら、両開きの扉を開く。

ギギギ……と固い音を響かせて開いた扉の先には、闘技場のような広い空間が広がっていた。中央には不気味な装飾が施された、全身を写す紫紺の色をした鏡が鎮座している。

 

「……これ、鏡からボスモンスターが出てくるやつだ」

 

何とも分かりやすい光景に、コーヒーは呆れたように呟く。

鏡から出てくるモンスターの定番は、悪魔やドッペルゲンガー等のオカルト系モンスターだ。

それなら、この場所にダンジョンがある理由も、通路に鏡がそこかしこにあった理由も説明がつく。

コーヒーは何とも言えない気分になりながら、不気味な紫紺の鏡に近づいていく。

 

アメジストを鏡に、縁を悪魔的な装飾にした、本当に気味が悪い鏡の正面でコーヒーは足を止める。

鏡に写っていたコーヒーは最初こそ同じ表情をしていたが、次第にニタァ……と口元を歪めていく。コーヒー本人は表情を変えていないにも関わらずだ。

 

「……ボスはドッペルゲンガーだったか」

 

コーヒーがそう呟くと同時に、不気味な鏡が一人でに粉々に砕け散る。鏡が砕け散った場所には、暗黒魔導師のような格好をした自分と同じ顔をした存在が宙に浮いて佇んでいた。

 

「……格好と装備が違う辺り、劣化コピーなのか?」

 

暗黒魔導師のような服装と、武器を持たず素手であるもう一人の自分に、コーヒーは呆れ気味にクロスボウを構える。

だが、その予想は直ぐ様裏切られる。

 

「【ミラーデバイス】―――弾けろ、【スパークスフィア】」

 

偽コーヒーがスキル名を告げた途端、偽コーヒーの左右に紫紺の鏡が突然現れる。

その鏡から、紫の雷球が幾つも飛び出て、コーヒーに向かって迫って来た。

 

「ッ!迸れ!蒼き雷霆(アームドブルー)!!」

 

明らかに自分とは違う攻撃方法に、コーヒーはステータスを強化し、偽コーヒーに向かって走りながら、紫の雷球をかわしていく。

 

「穿て!【サンダージャベリン】!!」

 

紫の雷球を全てかわし切ったタイミングで、コーヒーは【サンダージャベリン】を放つ。

放たれた雷槍は偽コーヒーに迫るも―――

 

「【クラスタービット】」

 

紫銀を放つ光の結晶で難なく防がれた。

 

「幻想せよ、【ミラージュロイド】」

 

偽コーヒーがそう告げると左右の鏡が回転し、鏡が偽コーヒーに姿を変える。

 

「「「潜れ、【地雷】」」」

 

三人の偽コーヒーがそう告げた直後、二人の偽コーヒーはパリンという音と共に砕け散る。コーヒーが何もしていないにも関わらずだ。

それより厄介なのは【地雷】だ。

 

【地雷】はコーヒーが持つ魔法の一つであり、半径10メートル以内の場所に強力なノックバック効果を持つ踏み込み式のマジックトラップを地面にセットする魔法だ。

それが偽コーヒーの周りに3つ。迂闊には踏み込めない。

そんなコーヒーの考えを他所に、紫銀の津波がコーヒー目掛けて迫って来る。

 

「防御!」

 

コーヒーは自身の【クラスタービット】を盾にして、偽コーヒーの【クラスタービット】の攻撃を防ぐ。

 

「解除ッ!【ソニックシューター】ッ!!」

 

偽コーヒーの攻撃が止んだ瞬間に、まだ使いなれないために言葉を発しながら【クラスタービット】を操作し、【ソニックシューター】で偽コーヒーの頭部を貫こうとする。

 

「【夢幻鏡】」

 

偽コーヒーがそう告げた直後、コーヒーの攻撃が偽コーヒーの頭部を貫く。

だが、頭を撃ち抜かれた偽コーヒーはそこから亀裂を迅らせ―――粉々に砕け散った。

 

「変わり身系のスキルか!?」

 

あれで倒せたとは全く思っていないコーヒーは、急いで偽コーヒーを探し始める。

そんなコーヒーの耳に、偽コーヒーの声が届いた。

 

「輝くは不屈の雷光 残響する雷吼は反逆の証 雷呀の鎖と為りて一切合切を打ち砕け―――迸れ、【リベリオンチェーン】」

 

その言葉に、コーヒーが急いで頭上を見上げる。

そこで目に写ったのは、足下の魔法陣から無数の紫の鎖を飛ばしてくる偽コーヒーの姿だった。

 

 

 

 




偽物の能力はヤツを参考にしました
お化けエリア+鏡=偽物はありだよネ!
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