上空から紫電の鎖が迫る。
同時に、数十個の紫銀の杭も鎖と共に迫ってくる。どちらもまともに喰らえば唯ではすまない。
「柔軟なる疾き風 剛健なる迅き雷 迅雷風烈の息吹となりて走破せよ―――【疾風迅雷】!!」
コーヒーは【クラスタービット】での全方位防御は視界を遮って逆に危険と判断し、【疾風迅雷】で加速して迫り来る【リベリオンチェーン】と【クラスタービット】から逃れていく。同時に自身の【クラスタービット】を地面のそこかしこを叩きまくり、偽コーヒーが仕掛けた【地雷】を誤爆させようとする。
【疾風迅雷】使用後のAGI低下は少々キツいが、デカイ銀飛蝗の時とは状況が違う為、ここで使用すべきと判断した。
だが、それが悪手となる。
「柔軟なる疾き風 剛健なる迅雷 迅雷風烈の息吹となりて走破せよ―――【疾風迅雷】」
偽コーヒーは仕掛けた【地雷】が誤爆させられた時点で【リベリオンチェーン】を解除。そのまま【疾風迅雷】を発動させてコーヒーと同じスピードで迫っていく。両手には、紫銀の片刃の剣が握られている。
「マジかよ!?」
【クラスタービット】の予想外の使い方に驚愕するコーヒーに構わず、偽コーヒーは両手の紫銀の剣を二本とも振り下ろす。
コーヒーは咄嗟にクロスボウを構えて受け止めるも、紫銀の双剣は容赦なくクロスボウを削り飛ばし、コーヒーを後ろへと吹き飛ばす。
「鏡は
偽コーヒーの姿が紫の鏡となってその場で一回転する。
するとその場から偽コーヒーだった紫の鏡は消え、偽コーヒーは先程吹き飛ばしたコーヒーの背後へと現れる。
「【ミラーデバイス】―――穿て、【サンダージャベリン】」
偽コーヒーは再び例の鏡を展開。今度は【サンダージャベリン】を放ってくる。
「防御!!」
コーヒーは回避は困難と判断し、迫り来る無数の雷槍を【クラスタービット】で個別に防いでいく。
「迸れ!
【疾風迅雷】の効果が切れる前に、コーヒーはステータスを強化しながら、修復されたクロスボウで【閃雷】を放つ。
AGIが強化された状態で放った【閃雷】は目で全く追えない程の速さとなるが―――
「我が鏡は汝の写し身 放たれし光は汝へと強く反射する―――【万華鏡】」
偽コーヒーが左手を正面に掲げると、細かい小さな鏡が集合したような、宝石の原石とも取れる形状の紫の鏡を正面に出現させる。
その鏡に【閃雷】が当たった瞬間、コーヒーの左肩に矢が突き刺さった。
「グアッ!?」
スピード故の衝撃から、攻撃を受けたコーヒーは後ろへと仰け反りながら地面を転がっていく。
「迅れ、【ライトニグアクセル】―――断ち切れ、【ボルテックスラッシュ】」
そんなコーヒーに追撃を喰らわせようと、偽コーヒーは【ライトニグアクセル】を使って急接近。右手に持つ紫銀の剣に紫電の刃を宿して斬りかかっていく。
「【扇雛】!防御!」
コーヒーは地面に転がったまま【扇雛】を放ち、【クラスタービット】で振り下ろそうとしていた紫電の刃を防ごうとする。
偽コーヒーは自身の【クラスタービット】で扇状で放たれた矢を防ぎ、紫電の刃を宿した紫銀の剣をそのまま振り下ろす。
当然、その刃はコーヒーの【クラスタービット】に防がれて失敗に終わる。
「【ソニックシューター】!」
「【夢幻鏡】」
コーヒーは矢を素早くセットして放つも、偽コーヒーはあの変わり身スキルを使って難なく回避。【夢幻鏡】で簡単に避けた偽コーヒーは、今度はコーヒーの右側に現れる。
「鏡は分身 写し出し我が身を再現せん―――幻想せよ、【ミラージュロイド】」
またしても偽コーヒーは分身。今度は三体である。
「「「集え、【グロリアスセイバー】」」」
本体以外の偽コーヒーが最強魔法を発動する。素手と強化無しのため、威力はデカイ銀飛蝗に叩き込んだ時ほどではないが、決して楽観視できない威力を有している筈。
しかもそれが三本。普通に考えて耐え切れはしない。
「【砕衝】!【跳躍】!!」
コーヒーは地面に向かって【砕衝】を放ち、同時に【跳躍】で飛び上がる。
スキルを放った衝撃も相まってコーヒーは天高く飛び上がり、放たれた分身偽コーヒーの三本の紫電に光る宝剣を難なく回避する。
三体の分身偽コーヒーは役目を終えたように粉々に砕け散り、本体の偽コーヒーは空中にいるコーヒーに向かって紫銀の津波を飛ばしていく。
「固定!」
コーヒーは【クラスタービット】を自身の足下にボードのように展開。それを足場代わりにしてさらに飛び上がり、迫って来ていた紫銀の津波を回避する。
そして、再び蒼銀の足場を出現させ、その場に足を下ろして滞空する。
「正直、あのスキルが厄介だな……」
偽コーヒーのスキルは自身と同じ。だが、一つだけ自分には持っていないスキルがある。
そのスキルは【雷帝麒麟】や【クラスタービット】のような複数のスキルを内包しているのだろう。
その何れもが鏡を使っているから間違いない。
だが、偽コーヒーは基本スキルに任せた攻撃ばかりしてくる。
そして、【夢幻鏡】という変わり身のスキルは再び使用してくるまで少々間があった。
つまり、連続で使えるスキルではない。
「我は鏡に願う 相対するもの得物を我が腕に―――【鏡面武装】」
そんなコーヒーの考えを遮るように、偽コーヒーが頭上に左手を掲げる。
左手に菱形の鏡が回転しながら現れたかと思うと、それが派手に砕け散り、コーヒーの持つクロスボウが偽コーヒーの手に握られた。
「武器をコピーすることが出来るのかよ!?あの鏡も何でもありか!?」
何で自分一人で戦う羽目になるモンスターはこうも異常なのかという心境で叫ぶコーヒー。
偽コーヒーはそんなコーヒーに構わず、スキルを発動させる。
「虚構の鏡は無限の射手となる―――【ミラーバレット】」
口上と共にスキル名を告げた途端、偽コーヒーの持つクロスボウの台座に一枚の小さな六角形の鏡がセットされる。
偽コーヒーは鏡が装着されたクロスボウをコーヒーに向け、
「おいおいおい!?クロスボウを銃のように使うんじゃねぇよ!?」
コーヒーは思わず偽コーヒーにツッコミを入れたが、クロスボウでは考えられない連射攻撃にコーヒーは【クラスタービット】を併用しながら矢の弾幕を防ぎ、かわしていく。
スキルの【連射】と比べれば連射速度こそ劣っているが、【連射】は一度使うと最後まで放たれる。
だが、今偽コーヒーの連射は自由に連射できる上に本数制限無し。【連射】よりも遥かに厄介である。
「迸れ!
コーヒーは再びステータス強化。【口上強化】した【ソニックシューター】を放つ。
「我が鏡は汝の写し身 放たれし光は汝へと強く反射する―――【万華鏡】」
再び偽コーヒーの正面に展開される多面の鏡。【ソニックシューター】がその鏡にぶつかった途端、倍の速さでコーヒーに返ってきた。
「攻撃反射スキルか!!」
【万華鏡】が相手の攻撃を倍にして返すスキルだと分かったコーヒーは二度目とあって自身に返ってきた矢を【クラスタービット】で防ぐ。
先ほどのダメージも【閃雷】を返された結果だったのだろう。倍の速度で返ってきたのだから、目で追えなくて当然である。
コーヒーは考える。偽コーヒーを倒す為の手段を。
敵のスキル、行動パターン、自身のスキル……
それらを統合させ、勝利への道筋を組み立てていたコーヒーは一つの結論を導く。
「……【夢幻鏡】を使わせた直後の至近距離で【グロリアスセイバー】を叩き込む。それで一撃で決まる筈だ」
【夢幻鏡】は本当に厄介なスキルだが連続使用はできない筈。
自身のHPの減り具合から、ステータス自体は自身と同じ筈。
なら、【夢幻鏡】が使えない状態で最強の魔法を叩き込む。
それが、コーヒーの導き出した結論だ。
だが、偽コーヒーは連射可能なクロスボウで攻撃を仕掛け、魔法も鏡のスキルを使って連続で放ってきている。
なら、どうやって近づく?
「装着ッ!」
コーヒーは【クラスタービット】を自身に鎧を着せるように展開していく。
可能な限り、全身を包むように。
コーヒーの身体は瞬く間に蒼銀の光の粒子が纏わり付き、ゲームに出てくるような全身装甲の騎士へと姿を変えた。
「……名付けてメタルアーマーだ」
コーヒーはそう呟いて、偽コーヒーに向かって歩き始めていく。流石にぶっつけ本番だった為、かなり動きづらいからである。
「【ミラーデバイス】―――弾けろ、【スパークスフィア】」
偽コーヒーは矢の弾幕を続けながら、鏡を展開。鏡から紫の雷球を幾つも放っていく。
偽コーヒーの放った矢は【クラスタービット】の装甲に悉く弾かれる。雷球も、全身を完全に覆うことで無意味。
雷球が止み終わると、コーヒーは再び歩き始めていく。クロスボウを悠然と構えながら。
「【パワーブラスト】」
コーヒーはスキル名を告げて矢を放つ。
「【夢幻鏡】」
偽コーヒーはそれを【夢幻鏡】で回避。三度目はコーヒーの背後に現れる。
偽コーヒーはそのまま、紫銀の津波を放とうとするが―――背後に振り返ったコーヒーに手を鷲掴みにされた。
「俺の予想通り、そのスキルで回避したな。お前はスキルで防御はしても自身で回避はしなかった。今みたいに攻撃すれば、ほぼ間違いなくスキルで回避すると読んでいた」
ギリギリ、とコーヒーは偽コーヒーの掴む手に力を入れる。偽コーヒーは逃れようと暴れるが、STRが同じな為か全く振りほどけていない。
「唸るは雷鳴 昂るは信念の灯火 雷鐘響かせ威厳を示さん―――瞬け、【ヴォルテックチャージ】!」
【ヴォルテックチャージ】を使い、次の同系統の魔法の威力と効果を倍にする。
続いて、MPポーションを使い、MPを回復する。
そして、逃げようと【クラスタービット】も使って暴れている偽コーヒーの無防備な腹に、クロスボウの先端を突き付ける。これで、フィニッシュだ。
「掲げるは森羅万象を貫く威信 我が得物に宿るは天に座す鳴神の宝剣 神雷極致の栄光を現世へ―――集え!【グロリアスセイバー】ァアッ!!」
クロスボウを犠牲に放たれる蒼雷の宝剣。
コーヒーの最強の魔法は偽コーヒーに炸裂し―――容赦なく吹き飛ばした。
吹き飛ばされた偽コーヒーは壁に激突し、蜘蛛の巣の如く亀裂を迅らせていく。
そのまま偽コーヒーは光の粒子となり―――その場から完全に消え去っていった。
コーヒーは残心したまま、修復されていくクロスボウをゆったりと下ろしていく。
やがて、完全に倒したと確信したコーヒーは【クラスタービット】を解除した。
「うっかり解除しちゃったなぁ……早く使い慣れないと無駄にしそうだ」
コーヒーは自身に呆れながら、偽コーヒーが消えた場所に近づいていく。
偽コーヒーが消えた地面には、銀のメダル二枚と巻物一つ、紫の鏡の欠片二枚だった。
「これでメダルは7枚か……巻物の方は……【職人のレシピ】?…………」
辺りに沈黙が訪れる。
そして。
「俺じゃ覚えられないスキルじゃないか!チクショウッ!!」
巻物をおもいっきり地面に叩きつけた。
スキル名からしてどう見ても生産職プレイヤー向けのスキル。完全にコーヒーにとってはハズレである。
「……これはイズさんに渡すとして……こっちの欠片はなんだろうな?」
巻物を拾ってインベントリに閉まったコーヒーは、気を取り直して地面に落ちていた二枚の鏡の欠片を確認していく。
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【幻想鏡の欠片】×2
装備品の素材アイテム。装備品一個につき一つしか使用できない。
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「情報少なッ!?しかも装備一個につき一つだけかよ?」
コーヒー、本日二度目のアイテムに対しての咆哮。
生産職プレイヤーのオーダーメイドは素材と金を注ぎ込めば、高性能な武器になる可能性があるが、これは一つしか使用できない。
こんな縛りがある以上、レア素材だとは思うが本当に情報が少な過ぎる。
気付けば、中央に転移の魔法陣が出現して輝いている。
「……今度はどこに繋がってるんだろうな」
コーヒーは疲れたように溜め息を吐きながら、転移の魔法陣に足を踏み入れる。
光に包まれたコーヒーの次の転移先は……
「……砂漠、だな」
辺り一面、何もない黄土色一色の砂漠であった。
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