スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


イベント終盤

砂漠に飛ばされてから4日経った6日目の夕方。

 

「このメダル……どうすっかな」

 

山岳地帯にある森の中を歩いていたコーヒーは二枚の銀のメダルを弄んで悩んでいた。

あれ以降、流石にダンジョン探索にうんざりしてしまい、【クラスタービット】の練習も兼ねてプレイヤーキルによるメダル回収に方針を変えてフィールドを移動していた。

 

プレイヤーに遭遇したら、【クラスタービット】で装備を破壊してキル。そんな事をこの4日間で三桁台になる程繰り返していた。

しかし、ほとんどのプレイヤーはメダルを所持しておらず、回収出来たメダルは最初に銀のメダルを五枚渡されたプレイヤーの内の一人だけ。

 

この時点で銀のメダルは十枚集まったが、余分が二枚出てしまったのだ。

その後も銀のメダルを求めてプレイヤーを狩りまくっていたが、その誰もがメダルを持っておらず完全に余分をどうすべきか悩む羽目になったのである。

 

ちなみに今のコーヒーの姿はメタルアーマー状態なので、端から見れば怪しさ満点の不審者である。

それでコーヒーだと気付かずに襲うプレイヤーが多数出現し、全員が返り討ちにあったのは言うまでもない。

 

「基本的にメタルアーマー状態で戦っているが……やっぱり動きづらいな」

 

本来は体にくっ付けて使うものではないので、どうしても動きが鈍ってしまう。具体的には水の中で動くような感じだ。

これで近接戦闘は流石に無理だろう。

 

「本当にどうするか……」

 

コーヒーは呟きながら掌の二枚のメダルを弄んでいると、気配察知スキルに何かが引っ掛かる。

コーヒーは襲撃に備えて辺りを警戒していると、左側の藪から気配を捉えた相手が飛び出てくる。

出てきたのは……サリーだった。

 

「あ、な―――」

 

何だサリーか、とコーヒーは警戒を緩めようとしたが、そのサリーはコーヒーに容赦なくダガーを振り下ろした。

 

ガキン!

 

「……は?」

 

止まることなく攻撃してきたサリーにコーヒーは呆けた声を出すも、次のサリーの言葉でその理由を察する。

 

「うわぁ……まさかメイプル並みに硬いプレイヤーが他にもいるとか……でも、悪いけどそのメダルは奪わせてもらいますよ」

(あ。これ、サリーが俺に気づいていないパターンか)

 

第一、今のコーヒーはメタルアーマーで顔まで隠れている。それでコーヒーだと気づくには無理がありすぎる。

 

(メタルアーマーを解除したら戦わずに済むんだろうが……正直、少しサリーと戦ってみたいな)

 

サリーがどれ程強いのかに興味があったコーヒーは正体を明かさず、無言で格闘の構えを取る。クロスボウを出したら、一発でバレるからだ。魔法も同様だ。

 

「やる気ですね……まあ、当然でしょうけど」

 

サリーも戦闘の意思を感じ取り、両手のダガーを油断なく構える。

静寂。

どちらも動かずに様子を窺う状態。冷たい風が二人の間を突き抜ける。

 

「「…………」」

 

まるで無限のように感じる数秒間。先に仕掛けたのはコーヒーだった。

 

「ッ!」

 

正面からの右ストレート。

サリーは顔に迫っていた拳を体を捻ってすれすれで回避し、同時に右手のダガーを振り抜こうとする。

 

自身の腹部に迫る刃を、コーヒーもサリー同様に体を捻ってかわし、その勢いを利用して回し蹴りを放つ。

その蹴りをサリーは上体反らしでかわし、そのままバク転して蹴りを放とうとする。

 

コーヒーは顎に迫っていた蹴りを顔をずらしてかわし、()()()()()()()()()()()()()裏拳を放つ。

当然、裏拳は虚しく宙を切るも、目の前にいたサリーは少しして溶けるように消えていく。

そして、裏拳を放った方向から正面のサリーが消えた時の逆再生のように姿を現していく。

 

「……まさかこれが失敗するなんてね。結構皆、最初は引っ掛かるのに」

 

サリーが不敵に笑いながら呟く。

コーヒーが気づけたのは、単に気配察知スキルを切っていなかったからだ。

それで目の前にいたサリーから気配がなく、後ろからサリーの気配がしたので裏拳を放っただけである。

 

コーヒーとしてはサリーの実力がある程度分かって満足したので、余分であった二枚のメダルをサリーに向かって投げ渡した。

突然投げ渡された二枚のメダルを、サリーは少し慌てた様子でキャッチする。最初は理解できないような表情をしていたが、すぐに訝しげな表情となる。

 

「……一体、どういうつもりですか?」

「余分なメダルを渡しただけだ」

「……へ?」

 

聞き覚えのある……というか、よく知っている人物の声にサリーは間抜けな顔となる。

それが可笑しくて、コーヒーは笑いを堪えながら【クラスタービット】のメタルアーマーを解き、標準モードと命名した剣の翼状態にした。

 

「CF!?なんであんたがここに!?」

「プレイヤー狩り。ダンジョン攻略はもう勘弁だったから、プレイヤーを狩ってメダルを集めてた」

「……さっきの姿は?」

「例のスキルの応用だ。全身を覆っているから流石に動きづらかったけどな。お前が俺に気付かずに攻撃してきたから、せっかくだから少し戦ってみようと思った」

「あんな姿でCFと分かるわけないでしょ!!……メイプルもだけど、CFも大概おかしな奴に分類されるわね」

「……流石にメイプルほどぶっ飛んでいないと思うんだが」

 

モンスターを食べるプレイヤーと同列に分類されかけた事実に、コーヒーは若干目を逸らしながら反論する。

 

「でも、本当にいいの?せっかく手に入れたメダルなんでしょ?」

「さっきも言ったがそれは余分なんだ。ぶっちゃけ、今から十枚集めるのは無理だし、どうしようか本気で悩んでたからな」

「そう……これでちょうど二十枚だからありがたく受け取っておくわ」

 

コーヒーの言い分にサリーは納得し、お礼を言いながらメダルを自身のインベントリにしまう。

 

「それじゃ、一緒にメイプルのところへ行こうか。もう時間まで大人しく待つだけだし、二位と三位が一緒なら、大抵のプレイヤーは簡単にあしらえるしね」

「メイプルは……ああ、有名だから逃げる奴が多数だったからお留守番か」

「正解。後、ますます厨二病患者に磨きがかかっているわね」

「ぐふっ!?」

 

コーヒーのメンタルに70ダメージ!

コーヒーは胸を押さえる。

メンタルにダメージを受けたコーヒーはサリーの案内の下で、一緒にメイプルが隠れている場所へと向かっていく。

 

道中に遭遇したプレイヤーは、抵抗する間もなく光になっていったがそれは気にすることではない。

そして、メイプルが隠れている洞窟に到着したのだが……

 

「……完全にメイプルの仕業だな」

「……そうね」

 

洞窟内は毒まみれとなっており、メイプルがいるらしい通路は毒の壁で塞がれていた。間違いなく、メイプルがメダルを守る為にやったことだ。

普通のプレイヤーならまともに進めないだろうが、今のコーヒーなら問題なく進める。

 

コーヒーは背中に展開したままだった【クラスタービット】を操作し、蒼銀の津波で毒の壁を意図も簡単に破壊する。

さらに、毒まみれとなった通路を【クラスタービット】で人一人分通れるだけコーティングして安全地帯を確保した。

 

「……そのスキル、本当に便利過ぎるでしょ」

「同感。本来は大量のMPを消費しないと使えないけど、裏技で実質タダだからな。運営は今頃大泣きだな」

「裏技……メイプルと同じスキルスロットね」

「正解。にしても、ここで一人で待ってたら相当暇だっただろうな。メイプル」

「それなら大丈夫よ。今はシロップと朧の育成に力を注いでくれてると思うから」

「……シロップ?朧?」

「ああ、そっか。CFは知らなくて当然か。実はね……」

 

首を傾げるコーヒーにサリーは別れてからの事を簡潔に説明していく。

ついでにコーヒーもプレイヤー狩りに移行した経緯を説明していく。

 

「つまり、滅茶苦茶強力なボスモンスターを倒したら、メダルだけでなくテイムモンスターの卵もゲットしたという事か……テイムモンスターは実装予定のやつの先行配信みたいなもんかな?」

「そっちは妙なスキルが追加された自身の偽物と戦ったのね……まあ、連続で高難易度のダンジョンを一人でやればそう考えるのも仕方ないけど」

「あの偽物はデカイ銀飛蝗並みに厄介だった。素材アイテムはイベントが終わったらイズさんのところに持って行くけどな」

 

そんな会話をしていると、不意に足音が聞こえてくる。

 

「どうやらお客さんが来たようだな……」

「そうね……」

 

コーヒーとサリーは示し合わせたように、互いの得物を構える。【クラスタービット】も標準モードに戻して臨戦態勢である。

 

「ん?」

 

姿を現した侵入者は一人。桜色の着物と紫の袴を身に纏い、刀を一本装備した女性プレイヤーだ。

何故か、サリーと顔を見合わせていたが。

 

「確か……前回イベント七位のカスミさんか」

「そっちは二位のCFだな。ああ、私に戦闘の意思は……って、何故急に四つん這いになっているのだ?」

 

プレイヤーネームではなく、不本意な略称で呼ばれたコーヒーはショックからその場で四つん這いになる。

そんなコーヒーに構わず、サリーがカスミに話しかける。

 

「気にしなくていいわよ。それで……どうしてここに来たのかしら?」

「私も金のメダル持ちだからな。それに、【蒼銀の悪魔】に遭遇したくないから身を隠そうと思ってな」

「……【蒼銀の悪魔】?」

 

聞き慣れない名称に首を傾げるサリーに、カスミは【蒼銀の悪魔】について説明していく。

 

「ああ。私も他のプレイヤーから聞いたのだがな……そいつは人型で全身を蒼銀で覆っているそうだ。遭遇したら最後、装備品をボロボロにされた挙げ句に倒されるのだそうだ。加えてダメージも与えられないとも言っていた」

「…………」

 

カスミの説明に、物凄く心当たりがあるサリーはジト目でコーヒーを見つめる。ほぼ間違いなく、メタルアーマー状態のコーヒーだと分かったからである。

 

「ともかく、私に戦闘の意思はない。勝てるとも、逃げられるとも思えないからな」

「まあ、襲ってこないなら別にいいわよ。CFもそれでいいよね?」

「……どうぞご自由に」

 

サリーの確認に、コーヒーは四つん這いのまま投げやり気味に任せると伝える。

その後、何とか復活したコーヒーは【クラスタービット】で安全地帯を作りながらサリーとカスミと共に奥へと向かって行った。

 

「まるでシンの【崩剣】のようなスキルだな」

「前回八位のアイツか……言われてみれば確かに」

「けど、能力は此方の方が凶悪よ」

「確かに。これは完全に対プレイヤー向けのスキルだな。装備を破壊されれば、相手は為す術がほとんど無くなってしまうからな」

 

【蒼銀の悪魔】の正体を知ったカスミは何とも言えない表情で呟く。

そうこう話している内に、メイプルが居るであろう奥の小部屋に辿り着く。

 

「頑張れー!シロップ!朧!」

 

そこでメイプルは、蟻のモンスターと戦っている小さな亀と同じく小さな狐を応援していた。

サリーから聞いた話では、亀がメイプルがテイムしたシロップ、狐がサリーがテイムした朧である。

 

「メイプル、ただいま」

「おかえり、サリー!って、あれ?コーヒーくんとカスミさんも一緒だったの?」

「たまたま会ってな。せっかくだから合流することにしたんだ。毒の壁は……例のスキルで突破させてもらった」

 

コーヒーのその言葉に、メイプルは思い出したように気づいた。

 

「あっ、そういえば結構毒まみれにしてたんだけど……」

「CFが例の……【クラスタービット】で安全地帯の通路を作っちゃったのよ」

「そっかぁ……じゃあ、また毒を張り直さないとね」

「その必要はないぞ。俺が【クラスタービット】を使って道を塞ぐから」

 

コーヒーは言うが早いか、【クラスタービット】を操作して小部屋の入口を綺麗に塞いでしまう。ついでに本日未使用の【クラスタービット】も全部使って三重にして通路を完璧に塞ぐ。

 

「「「…………」」」

「これで安心して過ごせるだろ。並みのプレイヤーじゃ入るどころか武器を失ってしまうからな」

「おおおおおっ!凄い!凄いよコーヒーくん!これなら安心して眠れるよ!」

「……まあ、安全が確保出来るなら良しとしようかな」

「……そうだな。これでプレイヤーの襲撃は心配しなくて済むと考えよう」

 

コーヒーの行動にメイプルは大絶賛。サリーとカスミは何とも言えない表情で苦笑いしながらも楽出来るならいいかと自身を納得させた。

 

コーヒー達はこうして、お互いの出来事を語ったり、娯楽アイテムでゲームに興じる等して、何事もなく平穏に過ごせることとなった。

ちなみに蒼銀の壁は、ダンジョンに入ったプレイヤーの武器を幾つも破壊して泣かせていた。

 

 

 




次回、運営が泣く(イベントはまだ続く)
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