スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


最終日は浮遊島へ。提案はラスボス

七日目。

第二回イベントの最終日、コーヒー達はこれからどうするかを相談していた。

 

「やはり、ここでイベントが終わるまで待つべきだな」

「そうね。最終日だからメダルを狙ってくるプレイヤーが多いだろうしね」

「そうだね……せっかく集めたメダルを失いたくないしね」

「じゃあ、もうここで時間を潰す方向でいいか。今からメダルを集めても十枚揃うか怪しいし」

 

やはり時間まで此処に居ようという考えが大半を占めていた。今から外に出てダンジョンを探そうにも、周りのプレイヤー達がコーヒー、メイプル、カスミの持つ金のメダルを狙って襲いかかる可能性が高く、メダルやアイテム探しどころでは無くなる可能性が十分にあるからだ。

 

「じゃあ、メイプルの持っている娯楽アイテムで遊びましょうか」

「じゃあ、【クラスタービット】でテーブルと椅子を用意するか。地べたというのも少しどうかと思うしな」

 

コーヒーはそう言って、今日の分の【クラスタービット】を使用し、テーブルと四人分の椅子を用意する。

 

「……本当に便利ね、それ」

「それに関しては同感だな。空中での足場としても利用できたし、かなり便利なスキルだよ」

「形は不格好だがな」

「……そこはスルーして下さい」

 

カスミのダメ出しにコーヒーが溜め息を吐く中、何故かメイプルが何かを考えるかのように難しい顔をして俯いていた。

 

「?メイプル?どうしたの?」

「…………」

 

そんなメイプルにサリーが疑問を露に声を掛けるも、メイプルはサリーの問いに答えない。

やがて、何かを思い付いたようにメイプルは顔を上げ、真剣な表情をコーヒーに向けた。

 

「コーヒーくん。その【クラスタービット】で―――」

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

―――運営の管理部屋。

 

「イベントもついに終盤だな」

「そうだな。メイプルとサリーに銀翼と海皇を倒されたけどな」

「持っていかれた卵は……亀と狐だったからまだマシな部類だよ」

「鳥と狼だったら、本当に最悪だったけどな」

「例のダンジョンも無事に攻略しちゃったし……」

「初日二日で銀群飛蝗と幻想鏡はCFに倒されたしな……」

 

メダルスキルをチェックしていた男が死んだ魚のような目で呟く。

 

「ああ……銀群飛蝗だけでなく、幻想鏡も倒されたのはショックだったな……」

「おかげでレアスキルが付与できる素材を二つも取られちまったし……」

「このイベント限定アイテムだから、自動的に【破壊不可】が付いちゃうしな。装備したら自動的にユニークシリーズ扱いとなるし」

 

イベントの不具合がないか確認している男が疲れたように溜め息を吐く。

将来実装するシステム絡みのアイテムがこうも立て続けに取られたら、溜め息の一つも出てくるものだ。

 

「その後はプレイヤーキルに動いていたから、それ以上の被害は無くなったのは不幸中の幸いだよ」

「まったくだよ……そういえば、【天空殿】は今はどうなってるのかな?」

「そっちは誰も入っていないな。まあ、そこへ行く為の転移陣は超高難度ダンジョンの最深部に設置してあるから当然だけどな」

「【天空殿】にも一つだけ卵を置いてたよな。後、レアアイテムと大量の換金アイテムも」

「あの卵か……中身は持っていかれても一番マシなやつだったよな?」

「ああ。一応、高難度ダンジョンの攻略報酬として配置したんだけど……流石に到達できないだろ」

「だよな。今はペインを中心としたパーティーが攻略中だけど、このダンジョンは最低でも丸三日はかけないと無理な筈だし、ゲーム内時間で昨日挑戦したペイン達でも攻略は少し難しいだろうな……驚異的な攻略スピードだけど」

「これで攻略されても素直に祝福できるさ。真っ当な手段で、仲間と共に苦難を乗り越えた先に得た結果なら……いいんじゃないか?」

「だな。それよりメダルスキルのチェックを―――」

 

メダルスキルをチェックしていた男の一人が作業を再開しようとしたが、ある映像を見つけて急に無言となった。

 

「?どうした?急に黙ったりして」

「皆……これを見てくれ」

 

その男は理由を答えぬまま震える手で機械を操作していく。

そうしてモニターに映し出されたのは……リアルタイムで空に浮いて移動している蒼銀の小舟だった。

その小舟には……メイプル、サリー、コーヒー、カスミの四人が乗っている。

 

「「「「……………………」」」」

 

その光景に理解が追い付けないのか、誰もが揃って無言となる。

やがて、徐々に現実を、その映像の意味を理解してき―――

 

「「「「…………なぁにぃいいいいいいいいいいいいい―――ッ!?」」」」

 

画面を見た全員が、信じられない思いで絶叫した。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「……実行した俺が言うのもなんだが、運営が頭を抱えている姿が想像できる」

「……そうね。こんな使い方をするなんて、運営は絶対に予想外だったでしょうね」

「……そうだな」

 

コーヒー、サリー、カスミの三人は空を飛ぶ蒼銀の小舟の上で遠くを見つめながら呟く。

メイプルがコーヒーに提案したこと。それは【クラスタービット】で空を飛べないかというものであった。

結論から言えば、メイプルの目論見は大成功。四人は空を飛んである意味安全に移動中である。

 

だが、【クラスタービット】は一つにつき一人しか空を飛んで移動出来なかった為、五つ分の【クラスタービット】を一つに纏めることで全員乗せての移動が可能となった。五つ分を一つにして同時に操るのは流石に厳しいもので、スピードはそんなに速く出せないが。

 

形状が小舟なのは誤って空から落ちないための安全措置だ。内側に取っ手もあるので早々に落ちはしない。

そしてメイプル主導の下、メイプルとサリーが出会ったカナデという赤髪の少年が手に入れたようなレアアイテムを求めて、浮遊島の探索に乗り出したのである。

 

「さあ、目指すはあの浮遊島!出発進行ー!!」

「「「おおー……」」」

 

どこぞの海賊船の船長のような決めポーズで浮遊島の一つを指差すメイプルに、コーヒー達は力なく腕を掲げて言葉を返すのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

―――運営の部屋では。

 

「「……あかん」」

「「「「……これは、あかん!」」」」

 

件の映像を見た全員が絶叫した後、揃って頭を抱えていた。

本来は転移の魔法陣でしか行けない場所を、こんな方法で直接行く等本当に予想外だったからである。

 

「なんでここまでぶっ飛んだ調整をしちゃったんだよ!?」

「だって、銀群飛蝗を倒すなんて不可能だって思っていたから……それに、普通は戦闘以外には……」

「その結果がこれだろうが!!」

「メイプルと関わったら、【異常】が【普通】になるんだよ!?」

 

この移動方法を提案したのはそのメイプルなので、男の言い分はまったく間違っていない。

 

「メダルスキルは入念にチェックしろよ!?少しでもおかしな使い方が出来そうなやつは絶対に修正しろ!!いいな!?」

「了か―――げっ!?メイプル達が【天空殿】がある浮遊島に向かっているぞ!?」

「「「何だとぉッ!?」」」

「彼処は本来、俺達の悪意の塊のダンジョンの最深部からしか行けない場所なのに!!」

「やべぇぞ!彼処にある【幻獣の卵】がメイプル達に持っていかれちまう!!」

「大量の換金アイテムもだぞ!?あれらを全部売れば、四人で山分けしても一月は余裕で豪遊できるぞ!?」

「卵と換金アイテムの他には何がある!?」

「ヤバいやつで言えば、レア素材【神の鋼】にスキル【流水短剣術】が覚えられる巻物、後は自身のデメリット効果時間を減少するスキルを有したユニーク装備《月夜の髪飾り》があった筈だ!」

「最悪だ!?本当に、最悪だッ!!」

「ペイン達の攻略はどうなってる!?」

「まだ六割しか進んでいません!!どう考えてもメイプル達の方が先に到着します!!」

 

どう足掻いてもメイプル達の到着が先と知った者達は一斉に崩れ落ちる。

 

「こうなったらメダルスキルだけでも何とかするぞ!!絶対に、絶対に手を抜くなよ!?」

「「「「了解です!!」」」」

 

これ以上自分達の予想外な方向にゲームを進ませないよう、彼らは立ち上がって入念にメダルスキルをチェックしていく。

その努力は……実ることはないと知らずに。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「綺麗な場所だね、サリー」

「……そうだねメイプル。本当に綺麗な場所ね」

「まさかこんな方法で浮遊島に来れるとはな……」

「何か、凄い罪悪感を感じてしまう……」

 

飛行して四時間。コーヒー達は空にある浮遊島の中で、純白と言って言いほどの綺麗な神殿が佇んでいた場所に降り立っていた。

綺麗に整備された水路に、手入れされたように綺麗な庭。心地よく囀ずる小鳥達。

 

そして圧倒的な存在感を放つ純白の神殿。

本来は転移の魔法陣を通って来る場所をこんな方法で直接赴いた事に、コーヒーは少なからず罪悪感を感じずにはいられなかった。

 

「私も同意見だけど……その辺りを考えるのは止めましょ」

「……そうだな。まともに考えると、無性に胃が痛くなりそうだ」

「よーし!それじゃああの神殿を探索しようかー!」

 

元気なくコーヒーに同意するサリーとカスミとは反対に、メイプルは元気一杯に探索を勧めてくる。

まあ、アイテムは欲しいので、コーヒー達は良心を押し殺してこの場所を探索することにした。

そうして入った神殿の中には……

 

「……宝箱がいっぱい、だな」

「……そうね。宝箱がいっぱいあるわね」

「……ああ。宝箱がいっぱいあるな」

「わー!宝箱がいっぱいだー!!」

 

大はしゃぎするメイプルとは違い、コーヒー達は若干虚ろとなった瞳で宝箱の山を見つめる。

転移の魔法陣もあったことから、これがダンジョンを攻略した報酬の品の可能性が濃厚になったからだ。

これでコーヒー達が全部回収した後で、正規の攻略者が此処に訪れた際に何もなかったら……あまりにも不憫過ぎる。

 

「メイプル……宝箱は一人一つにしましょ」

「え?どうして?」

「もし此処に正規の攻略者が来た時、空の宝箱だけ、もしくは何も無かったら……俺なら泣いて崩れ落ちる」

「そうだな。流石に、良心の呵責に耐えきれない」

「あー、確かに……流石にちょっとズル過ぎたかなぁ?」

 

コーヒー達の言い分にすんなり納得したメイプルは、素直にサリーの提案を呑む。

 

「じゃあ、あの色違いの宝箱だけ持っていこうよ!数も丁度4つだし!!」

 

そう言ってメイプルが指差すのは、他の宝箱とは色合いが違う宝箱だ。メイプルの言う通り、数も丁度4つだから四人で分けるには丁度いいだろう。

そのメイプルの提案にコーヒー達は素直に頷き、比較的距離が近い方の宝箱にそれぞれ赴く。

 

「さて、この宝箱には何が入っているかな?」

 

コーヒーはそう呟きながら宝箱を開く。

宝箱の中には、巻物が一つ入っていた。巻物を宝箱から取り出すと、宝箱は光の粒子となって消滅していく。

 

「スキルの巻物か。スキル名は……【流水短剣術】?」

 

どう見ても、コーヒーには不要なスキルである。

それに、短剣術ならサリーに渡した方が良いだろう。

コーヒーは宝箱の中身の交換、もしくは巻物を貸しとしてサリーに渡そうとサリーの方に顔を向けると、そのサリーは困ったように宝箱の中身を見つめていた。

 

「?サリー?どうしたんだ?そんな困ったような顔して」

「……あー、CF。実はね……」

 

サリーが困った表情のまま、宝箱の中身を取り出す。

サリーの両手に納められていたそれは……ギザギザ模様が入った、縦30センチ程の金の卵だった。

 

「それって……」

「間違いなくシロップや朧と同じモンスターの卵でしょうね……良かったら交換しない?」

「本当に奇遇だな。俺の方も【流水短剣術】というスキルの巻物だったから、交換を申し込もうとしてたんだよ」

「本当に奇遇ね。じゃあ、交換で」

 

お互いがお互いに不要だった為、コーヒーとサリーは互いの宝箱の中身を交換する。

 

「頼むメイプル!その髪飾りとこの黒いインゴットを交換してくれ!この通りだ!」

「え、あ、いや、別に良いですよ!?良いですから、顔を上げて下さい!!」

 

メイプルとカスミの方も、互いの宝箱の中身を交換していた。厳密には、黒いインゴットを献上するようにメイプルに突きだし、おもいっきり頭を下げているカスミに、三日月を模した髪飾りを持ったメイプルが慌てて同意している感じだが。

こうして神殿の宝箱を一人一つだけ手に入れたコーヒー達は、蒼銀の小舟で再び空の旅へと向かうのであった。

 

余談だが、イベント終了間近でダンジョンを攻略したペイン達は、大量の換金アイテムで互いに喜びを分かち合っていたとの事。

後にその事実を知ったコーヒー達は、内心で彼らに謝罪したのは言うまでもない。

 

 

 




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