スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ
※スキル名を変更しました


卵と演奏会

「次はどの浮遊島に行こうかな?」

「出来れば、挑戦系の場所がいいなぁ……」

「そうね。アイテムがタダで手に入る場合は、アイテムに一切手を付けずに立ち去った方がいいわね」

「ああ。本当に良心が痛むからな」

 

例のお宝神殿を立ち去って空の旅を再開したコーヒー達は、ゆったりと進む蒼銀の小舟の上で今後の方針を話し合っている。

いくら早い者勝ちとはいえ、直接乗り込んで何の苦もなくレアアイテムを手に入れる行為には流石に強い抵抗がある。

というか、カスミの言う通り良心が凄く痛む。

 

「俺は今ほどメイプルの恐ろしさを実感したことはない」

「うん。メイプルは天然だからね。狙ってやっている訳じゃないから余計に……ね」

「まったくだ。次は何をやらかすのだろうな」

「?」

 

三人が背中を向け、顔を寄せ合って小声で会話する光景に、元凶たるメイプルはよく分かっていないような顔で眺める。

メイプル―――リアルでの本条は至って普通なのに、何でこんな予想外なことをやらかすのか……

 

「……ハァ」

 

そんな疲れたように溜め息を吐くコーヒーの両手には、サリーとの交換で頂いた金の卵が納められている。

理由は勿論、孵化させるためである。

 

「しかし、それがモンスターの卵か。一体どんなモンスターが孵化するのだろうな?」

「うーん、モンスターだから何が出てきても不思議じゃないけど……シロップと朧が孵化するのに何れくらいかかったんだ?」

「んー、大体3時間かな?」

「やっぱそれなりに時間がかかるのか……ちなみに他のアイテムはどうだった?」

 

コーヒーは卵を抱えたまま肩を竦め、今回手に入れた他のアイテムについて聞いていく。

 

「うーん、この【流水短剣術】は複数の攻撃スキルの集合体みたいね。たぶん、カスミのあのスキルと似たようなものだと思う」

「【神の鋼】は素材アイテムみたいだね。一つしか使えないって書かれてるから、コーヒーくんが手に入れたアイテムと同じだと思うよ」

「メイプルから譲ってもらった《月夜の髪飾り》は……自身のスキルによるデメリットの効果時間を減少してくれるスキルが付与されているな」

 

どうやら、色違いの宝箱は相当レアなアイテムが納められていたようである。

 

「……他の宝箱には何が入っていたんだろうな」

「箱の数からして、ランクを落としたレアアイテムか財宝の類だとは思うんだけど……」

「「「…………」」」

「……これ以上、この件で考えるのはよそう。本当に胃に穴が開きそうだ」

「「……そうね(だな)」」

 

この件に関しては本当に考えたくない。この年で、胃痛に悩まされたくないから。

そんな罪悪感を背に、空の旅を再開して30分。

コーヒー達は自然が豊かそうな、島の中央に白い石で作られた広場がある小さな浮遊島に着陸した。

 

コーヒー達は手分けしてこの浮遊島を探索するが、狼や椋鳥、栗鼠や狐等のモンスター以外には何もなかった。

そして、着陸してから30分後。コーヒー達は島の中央に集まっていた。

 

「ここはモンスターの住処のようだ。島の中央らしき場所にある転移の魔法陣以外には何もないところを見る限り、此処は既に攻略された後のようだ」

「そっかぁ……じゃあ、次の場所に向かう?それとも此処で過ごす?」

「そうね……モンスターもそこまで強くないし、普通のプレイヤーじゃもう此処には来れないから、ある意味一番安全だし……それに、見つけた小屋で面白いものもあったしね」

 

サリーはそう言って手に持っていた物をコーヒー達に見せる。

 

「これは……リコーダー?」

「ええ。見つけた小屋の中にはバイオリンやフルート、トランペットにピアノまで、色々な楽器が置かれてたわ。インベントリにしまえないからこのエリア限定のアイテムだろうけど……気分転換や暇潰しには丁度いいでしょ?」

 

確かにサリーの言う通り、暇潰しに演奏は丁度いいのかもしれない。

 

「確かにな。どうせなら、ちゃんと演奏したいところだが……その小屋に楽譜の類は無かったか?」

「あったわよ。ついでにカスミの外見に似合いそうな三味線も」

「よし行こう。今すぐ行こう!」

 

三味線という単語が出た時点で、カスミがもの凄い勢いでサリーに迫っている。

髪飾りの時といい、もしかしたらカスミは和風のアイテムが好きなのかもしれない。

そんな感想を抱きながらサリーの案内でログハウス風の少し大きめの小屋へと辿り着く。

 

小屋の中には確かに、バイオリンやフルート、トランペットにピアノ、ハープに三味線、オカリナやハーモニカまで、多種多様な楽器が楽譜と共に大量に置かれてあった。

 

「本当に楽器だらけだな……」

「ええ。私も最初に入った時は少し驚いたわ。もしかしたら、ここは演奏で攻略する場所だったかもね」

「だとしたら、ここを攻略した人は相当演奏が上手だったんだろうな」

 

これだけ楽器が大量にあるのだ。イベントに音楽が関わっていると考えるのは至極当然のことである。

 

「むう……やはり上手く弾けないか……」

「うぅ~……変な音しか出ないよ~」

 

一方でカスミは三味線を、メイプルはバイオリンを弾いて変な音しか出ないことに肩を落としていたが。

 

「さっそく楽器を弾いているな……何でメイプルはバイオリンなんだ?」

「いやー、普通じゃ弾くことは出来ない楽器だから、せっかくの機会だし頑張って弾いてみようかと」

「あー、何となく分かるわ。そういうオーケストラの楽器って、触る機会自体少ないからね」

「そうだな。楽器は個人で買うとそれなりに高いしな」

「それで、サリーはどれにするの?」

「そうね……私はこのオカリナにしようかな。CFはどれにする?」

「俺は……卵を早く孵化させたいからパスかな」

 

皆と演奏するのも面白そうだが、今はこの卵を少しでも早く孵化させたい。

 

「そうか。それなら仕方ないな」

「とか言ってー、実は音痴であることがバレたくないんじゃないの?」

「そんなわけないだろ」

「あはは……」

 

サリーのからかいにコーヒーはジト目で返し、メイプルは若干困ったように笑う。

そんな訳で、コーヒーは卵を温める為に、メイプル達は楽器を弾く為にこの浮遊島に留まることを決め、思い思いのままに過ごしていく。

小屋の中ではさすがに狭かったので、中ではなく外で過ごしていたが。

 

「外にいるのにモンスターが襲ってこないな。この小屋周辺が安全地帯に設定されているのかもしれん」

「これだけ音を出してもモンスターが近寄ってこないからそうかもね」

「んん~~、全然上手く弾けない!」

「一時間経過したか……一回インベントリにしまうか」

 

サリーとカスミは時間が経つにつれて、徐々に綺麗な音を奏で始めているが、メイプルは未だに変な音しか出てこない。

コーヒーは出来のいい陶器のような手触りを感じながら撫で、胡座をかいて卵を温め続ける。

そうして過ごすこと凡そ三時間。ついにコーヒーが持つ金の卵に変化が現れた。

 

ピシッ!

 

「おっ!生まれるぞ!」

「早く卵を地面に!」

 

卵にヒビが入ったことで、コーヒーは安定した地面に卵を置く。

そしてついに金の卵が割れ、中から生まれてきたのは背が金の棘で被われた針鼠だった。

針鼠は体をブルブルと震わせると、パチパチと金色の電気を自身の周囲に放電し始めていく。

 

「おおー……無事に生まれたな」

「うん!無事に生まれたねー!この子もかわいいよ!」

「電気系のモンスターか……CFにぴったりね」

「確かに。きっといいコンビになるな」

 

そんな会話をしていると、針鼠はコーヒーに近づいていく。

コーヒーは少し緊張気味に撫でると、針鼠は嬉しそうに目を細める。

それと同時に卵の殻が薄く輝き始める。

 

その輝きは次第に強くなり、卵の殻は金の指輪へと変わった。

コーヒーはその指輪を拾って詳細を確認していく。

 

 

===============

《絆の架け橋》

装備している間、一部モンスターとの共闘が可能。

共闘可能モンスターは指輪一つにつき一体。

モンスターは死亡時に指輪内での睡眠状態となり、一日間は呼び出すことは出来ない。

===============

 

 

「サリーが言っていた通りだな……装飾品は《フォレストクインビーの指輪》を外すか」

 

コーヒーは《フォレストクインビーの指輪》を外し、《絆の架け橋》を装備すると針鼠は嬉しそうに体を擦り寄せる。

コーヒーは針鼠を抱えて頬擦りしながら、新たに追加されたステータス画面を確認していく。

 

 

===============

ノーネーム

LV.1

HP 120/120

MP 60/60

 

STR 25

VIT 20

AGI 60

DEX 55

INT 40

スキル

【電撃】

===============

 

 

「最初に名前がないのもサリーが言った通りだな。名前はどうするかな」

「ちゃんと考えなさいよ?どこかの誰かさんみたいに苦労させないようにね」

「うっさい」

 

サリーの指摘にコーヒーは眉を顰めながらも真剣に名前を考えていく。

その間、針鼠はシロップと朧と顔合わせ。その後は三匹仲良くじゃれあっていた。

仲が良いようでなりよりだ。

少しして名前が思いついたコーヒーはシロップ達に近づき、針鼠を抱き上げ、互いに目を合わせる。

 

「ブリッツ。それがお前の名前だ。嫌か?」

 

コーヒーの言葉に、針鼠は嬉しそうに目を細める。どうやらお気に召してくれたようだ。

 

「さて……俺はブリッツのレベル上げに行くかな。ここには丁度モンスターもいるし」

「じゃあ私がそのモンスターを捕まえてくるよ!捕まえてきたモンスターは全部ブリッツが倒したらいいよ!」

「いいのか?」

 

確かにメイプルならモンスターを無傷で捕まえることは出来る。

しかし、メイプルやサリーだってシロップと朧のレベルを上げたい筈だ。

にも関わらず、自分の都合に協力を申し出てくれたことにコーヒーは疑問を露に問いかける。

 

「うん!メダルをくれたお礼をしたいしね!サリーもいいよね?」

「うん。良いわよ。借りは返せる時に返した方がいいからね」

「そっか……じゃあ、頼む」

「任せて!」

 

メイプルはそう言って、意気揚々と森の中へと入っていく。

それから一分。

メイプルは合計十匹の椋鳥と栗鼠を抱えるように持って帰ってきた。

 

「早かったな」

「うん。蝙蝠を捕まえに行った時よりもずっと早いし多いわね」

「いや~、森に入ったらモンスターが結構いたんだよね」

「しかし、そんなに多いなら此処に来る途中で遭遇しそうなものだが……」

「もしかして……楽器の音色に引き寄せられたとか?」

「うーん、そうかも」

「まあ、まずはブリッツのレベル上げだな」

「そうだった!はい!」

 

麻痺によって身動きが出来ない椋鳥と栗鼠達をメイプルは地面に置く。

 

「ブリッツ!【電撃】!!」

 

ブリッツが椋鳥にくっついて金色の電気を放電する。

ブリッツの電気を食らった椋鳥は光となって消えていく。

 

「レベルが上がってないな……この辺りもサリー達と同じか」

 

そんな感じでコーヒーはブリッツにメイプルが捕まえてきたモンスターを倒させていく。

それを繰り返した結果、ブリッツはレベルが上がり、丸まって攻撃するスキル【針玉】とシロップと朧も覚えている【休眠】と【覚醒】、そして背中の針を飛ばす攻撃スキル【針千本】を取得した。

そして―――

 

『ガオ~!終りょ~う!今から五分後に元のフィールドに転移するドラ!戻って30分後にスキルとメダルの交換を行うドラから、メダルの受け渡しはその間に行うと良いドラ!!』

 

ヘンテコドラゴンのアナウンスが流れ、長かったイベントもついに終わり。

これでまた皆とはお別れだ。

 

「じゃあ、また戻ったら」

「ああ、また会おう」

 

カスミとの再会を約束、コーヒーはカスミとフレンド登録し、第二回イベントはついに幕を閉じるのであった。

 

 

 




コーヒーくんのテイムモンスターは鼠にしちゃいました
妖精だと個人的な主観だと最上位になっちゃうから……ね?
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