ギルド【楓の木】を設立した翌日。
コーヒーはメイプルとカナデ、イズと一緒に鉱山に向かっていた。
「これが噂の空飛ぶ亀くんかー」
「これは噂になって当然よね」
「本当にメイプルは素でやらかすなぁ……」
巨大なシロップに乗ってフィールドを飛んでいるカナデとイズ、コーヒーはそれぞれの感想を洩らす。
メイプルはメダルでスキル【
その理由が【クラスタービット】のようにシロップと一緒に空を飛びたいからという理由だけでだ。
【
この飛行方法、【クラスタービット】よりかなり便利すぎる。【クラスタービット】には一人一つという人数制限があるのに対し、こちらはシロップに乗せられるだけいけるのだから。
「今日はカナデとイズさんが採掘、メイプルが護衛で俺は両方。ピッケルもレアドロップ率に補正がつくのを拝借してくれたから頑張っていこー」
「「「おおー!」」」
コーヒーの宣言に、メイプルとカナデ、イズは腕を掲げて同意する。
今日の目的は【ギルドホーム】内の工房に素材を溜め込むために、ギルドメンバーは二手に別れて行動している。
カナデは第二回イベントの中で手に入れたルービックキューブ型の杖のスキル【
そのスキルで【採掘V】が出たから鉱山班に配属されたのである。
「あー、また下のプレイヤー達が魔法と矢で攻撃してきてるね」
「全部コーヒーの【クラスタービット】で防がれてるけどね」
下の方から飛んでくる魔法と矢を、シロップの周囲に展開していた【クラスタービット】で悉く防がれている光景を収めながらカナデとイズは呟く。
フィールドをふわふわと飛んでいる亀という姿に、シロップをレアモンスターと間違えて攻撃を仕掛けるプレイヤーが後を絶たない。
攻撃が来る度にメイプルが急降下してプレイヤー達に注意しているのだが、その度に足が止まってしまっているのが現状だ。
なので、コーヒーはイラッとして実力行使に出てしまった。
「迸れ、
空に向かって掲げたコーヒーの手から一筋の蒼い雷が空へと昇る。
その蒼い雷は一定の高さに到達すると、無数の落雷となってフィールドに降り注いだ。
【名乗り】と【口上強化】で強化された無数の落雷はモンスターはおろか、シロップを攻撃しようとしていたプレイヤー達も容赦なく吹き飛ばしていく。
「「「…………」」」
「これでしばらくは下も大人しくなるだろうな。今の内に目的の場所へゴー」
この日、『空飛ぶ亀が怒って雷を降らせた』と話題となるのだが、当の本人達は知るよしもなく鉱山へと向かっていく。
辿り着いた洞窟内ではイズとカナデが採掘、メイプルは弱い毒攻撃で護衛、コーヒーも二人を護衛しつつ安全が確保されれば採掘に参加と鉱石を求めて奥へ奥へと進んでいく。
「鉄鉱石、灰結晶、石ころ……」
「まあ……ここは種類が多い分、レアな鉱石が出にくいからな。多少は仕方ないだろ」
「そうそう!質より量だよ量!」
「メイプルちゃん……それは流石に……」
メイプルの発言にイズは苦笑い。コーヒーとカナデも似た反応である。
鉱石ならば量より質だ。
コーヒーは苦笑いしつつ、背後から近づいてきていたゴーレムの頭部に、《カレイドエピラー》に付与されているスキルによって六角形の紫の鏡が追加されたクロスボウを構え、連続で引き金を引く。
文字通り、銃弾の如く連続で放たれた矢は多少はズレつつもゴーレムの頭部に全部突き刺さり、光の粒子となって消えた。
「弦を引っ張る必要が無くなったから、完全にガンマンだな。連続で撃つと反動もあるし練習しないとな」
「これでガンマンポーズを取ったら様になるね」
「それカッコいい!カッコいいよ!!」
「せっかくだしやってみたら?」
「勘弁して下さいマジで」
三人からのガンマンポーズコールに、コーヒーは土下座してはね除ける。
本当に情けない光景だが、自身のメンタルが守れるなら安いものである。
「あ、そういえば私も【名乗り】を取得したんだよ!口上は『蹂躙せよ、
どうやらメイプルも【名乗り】を取得したようである。
「そ、そうだな……凄く似合ってるよ」
「そうね。メイプルちゃんにピッタリね」
「そうだね。僕の場合は何になるのかな?」
コーヒー達の感想に、メイプルはどや顔で受け取る。
その後、最奥まで採掘したコーヒー達は、しれっと来た道を全部覚えていたカナデの案内で一度も道を間違うことなく外に出るのであった。
ちなみに採掘はイズもいたことで上々の結果だった。
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一方、森の中で木材と布のドロップアイテムを集めていたサリー、クロム、カスミはモンスター達と戦っていた。
「【二式・水月】!」
サリーが一回転しながら両手のダガーを振るうと、斬撃がまるで波紋のように広がって周囲のモンスターを斬り飛ばしていく。
無論それだけではなく、攻撃をヒラリヒラリとかわすサリーの体からは青白いオーラが溢れ出ているのだ。
「サリーちゃんも普通じゃなかったか……」
「その青白いオーラは……?」
「スキル【剣ノ舞】って言います。攻撃をかわす度にSTRが1%上昇するんですよ」
クロムとカスミにスキルを説明するサリーに、周囲のモンスターが攻撃を仕掛けていくが、サリーはスレスレで回避していく。
その内の一体が、サリーに向かって魔法攻撃である風の刃を放つも―――
「【一式・流水】」
サリーは右手のダガーで風の刃を弾いて明後日の方向へ飛ばした。
「お、おいっ!?今、魔法を弾かなかったか!?」
「今のスキルは一体……」
あまりにもあり得ない光景にクロムとカスミが驚く中、サリーは律儀に今の芸当の手品を明かす。
「【一式・流水】。【流水短剣術】の中にあるスキルの一つですよ。発動してから三分の間、炎や水等の実体のない攻撃が弾けるようになるんですよ。交換してくれたCFには感謝しないとね」
無論、弱点はある。
【一式・流水】中は武器の耐久値の減少が三倍に膨れ上がる為、本来は多様することが出来ないスキルだ。
しかし、サリーのダガーはユニーク装備。破壊不可であるため耐久値を気にせずに使うことが出来る。
まさに『回避盾』を目指すサリーにぴったりなスキルだった。
「まあ、STRは高い方じゃないからメイプルの【
「……メイプルのVITは一体どのくらいなんだ?」
「メイプルに聞いてみたら?たぶん教えてくれると思うよ?」
「ちなみにメイプルちゃんとコーヒー。戦うとしたらどっちが良いんだ?」
クロムの質問に、サリーは少し考えながらも答えた。
「んー……正直どっちもどっちですかね。メイプルはVITが凄い上にスキルも凶悪だし、CFは手数が多く武器の相性があるので。特にあのスキルはプレイヤー向けだし」
「ああ。第二回イベントでCFが手に入れた【クラスタービット】か。あれは本当に凶悪だからな。下手をすれば丸裸だ」
「丸裸!?」
カスミの言葉の一つにクロムが大袈裟に反応する。
いや、実際に丸裸になることはないから例えだとは分かってはいるが。
「……一体何を想像したのだ?」
「そういえば、メイプルに最初に会った時クロムさんは衝動的に連れて来たと言ってたそうですね……通報した方がいいんでしょうか?」
「待て待て待て!あれは言葉の綾だって!それに、丸裸なんて聞いたら誰だって驚くだろ!?それとその話、誰から聞いたんだ!?」
「CFから」
「コーヒーィッ!!」
サリーの言葉に、二人から冷たい視線を向けられたクロムは思わず頭を抱えそうになる。
二人の中でクロムの株が下がっていく中でも、クロムはちゃんとモンスターと戦闘をしている。
クロムの戦闘は堅実。メイプルのような派手さはないがプレイヤースキルは確実にメイプルを上回っている。
メイプルは素のVITが高く、【悪食】持ちの大盾ゆえに上達しづらいのが原因だが。
「我が堅牢な盾は打ち砕く鎚となる!【シールドアタック】!!」
「……クロムも
「……CFの影響もしっかり出てるわね」
クロムの【口上強化】による攻撃に、カスミとサリーは何とも言えない表情となる。
メイプル、サリー、コーヒー、カナデは異常枠。
イズは生産の面なら異常枠に片足を突っ込んでいる。
普通枠はクロムとカスミの二人だけである。
ちなみに厨二病患者という視点で見ればサリーとカスミ、イズが普通枠だ。
クロムは片足を突っ込み、【詠唱I】を取得しているカナデは面白そうとノリノリ。後は言わずもがなである。
……厳密に言えば、スキルで髪と瞳の色が変わるカスミにも厨二病の要素があるのだが。
「私も……このギルドにいる内に色々な意味で【普通】でなくなるのか?」
「なるんじゃないか?口上もゲームだと割り切れば、結構お得だし」
「メイプルやCF色に染まっていくかもね」
これを素直に喜んでいいのか微妙なところである。
ドロップアイテムを十分に回収し終えたサリー達は、町へと戻っていく。
無事に合流した七人は【ギルドホーム】に向かうのだが……周りから物凄く注目を集めていたのは言うまでもない。
主要原作キャラは強化された(テッテレー♪
リスクがリスクとして機能しないのは……【普通】じゃないから、ね?
感想お待ちしてます