スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

23 / 147
てな訳でどうぞ


クエスト【罪架の刻印】

素材集めからおよそ十日後。

コーヒーは第二層の町を歩き、否、捜索していた。

 

「うーん……ここにも誰もいないか……」

 

コーヒーは中央から外れた場所にある家を片っ端から捜索し、中が空き家で誰もいない状態が続いている。

コーヒーがこんな行動をしている理由はただ一つ。何かしらのクエストのフラグがないかである。

実は先日、メイプルがイズのオーダーメイド装備のお披露目と共に新スキルまで披露したのだ。

 

そのスキルの名は【身捧ぐ慈愛】。

このスキルはメイプルの【毒竜(ヒドラ)】やサリーの【流水短剣術】、コーヒーの【雷帝麒麟】と同じようにいくつものスキルが内包されたスキルだが、その中身が強力だった。

 

そのスキルは基本HPを代償に発動するスキルなのだが、その内の一つがメイプルを中心に形成された光のエリア内のパーティーメンバー全員に常に【カバー】が働くスキルなのだ。

早い話、このスキルのエリア内にいる限りはメイプルを倒さないと他のメンバーが倒せなくなるのだ。

 

それも、誰かに当てなければならないという鬼畜仕様で。

サリーは普通に避け、クロムは大盾で防御、カスミもサリー程ではないが避ける。

戦闘員として当たるのはカナデくらいで、コーヒーに至っては避ける以外にも【クラスタービット】がある。

 

というか、コーヒーの【クラスタービット】と併用したら益々鬼畜仕様である。

装備無しでもVITが1000を超えるメイプルにダメージを与えるには貫通攻撃しかなく、その貫通攻撃を【クラスタービット】で防がれでもしたら……相手は涙目となるだろう。

 

実際、その事実に真っ先に気づいたサリーは盛大にドン引きし、メイプルはコーヒーと一緒ならもっと皆を守れると大はしゃぎ。コーヒーは遠い目となり、他のメンバーは顔が引き攣っていた。

 

ちなみにスキル発動中のメイプルは背中に一対の白い翼と頭の上に天使の輪、髪は金で瞳は深い青色とまんま天使の姿となる。

 

そんな圧倒的な力を見せつけたメイプルを前に、コーヒーもまた新しいスキルを手に入れようと町の捜索に乗り出したのである。

 

「ここも……空き家か」

 

コーヒーは扉を開けるも部屋は一つ。ボロボロのベッドと小さなテーブルがあるだけで人はいない。

 

「……ん?なんだこれ?」

 

コーヒーはテーブルの上に置かれてあった四方10センチ程の小さな(はこ)を手に持つ。

 

「アイテム名……【聖刻の道標】?アイテム名しか分からない何て……普通のアイテムじゃないだろ」

 

一応インベントリにしまえるので、何かしらの特殊なアイテムだとは思うが使い道が分からない。

この分だと今日の成果はこのアイテムだけだと思いつつ外へと出ると、家に入った時にはいなかった老人が他の家の壁に背中を預けて地面に座っていた。

 

「おや、こんな辺鄙な場所に人とは珍しい。少しばかり年寄りの話に付き合ってくれんかの?」

コーヒーの目の前に青色のプレートが浮き出てくる。

 

 

==================

クエスト【罪架の刻印】を受注しますか?

《Yes》/《No》

==================

 

 

どうやらあのアイテムはイベントフラグを立たせる為の鍵だったようだ。

コーヒーは迷わずに《Yes》のボタンを押すと老人は再び話し始めた。

 

「遠い昔、とある強大な力を有した聖なる武具があったそうじゃ。その武具は持ち主に刻印を刻んで大きな恩恵をもたらし、町に平和をもたらしておったそうじゃ。じゃが、その聖なる武具は突然現れた邪悪なる者によって、触れた者を異形の怪物に変える邪悪なる武具へと堕ちてしまったのじゃ。その邪悪に堕ちた武具は此処より北東にある遥か遠くの地に封印され、今もそこで眠り続けていると言われておる。この話はすべて儂の祖父から聞いた話じゃ。お伽噺として聞かされたから真実は定かではない……これで話は終わりじゃ。話に付き合ってくれてありがとうの」

 

そこで青いモニターが現れクエストの詳しい説明が表示される。

クリア条件は【血濡れの聖堂】にいるボスモンスターの撃破だそうだ。

 

「うへぇ……またボスモンスターとのソロ戦闘か……NPCの話の内容からして報酬は装備品なのかな?」

 

せっかく受けたクエストを破棄するのもどうかと思い、コーヒーは町から北東にあると思われる【血濡れの聖堂】へと向かうのであった。

ちなみに移動方法はメタルボードと命名した、スノーボード状にした【クラスタービット】で空を飛んで。

 

「此処が【血濡れの聖堂】か……サリーが見たらビビりそうだな」

 

空を飛んで15分。

コーヒーは上空からそれらしき建物を発見して地面に降り立っていた。

 

外見はどこにでもある聖堂なのだが、壁のあちこちが血で汚れており、周りの木々も枯れていて不気味さが強調されている。

これでアンデッド系モンスターが出もしたら、サリーは涙目で逃げ返っているのが想像出来る。

 

「にしても……こんな方法で此処に来て大丈夫だったのか?」

 

無論、大丈夫ではない。

本来、このクエストは道中のアンデッド系モンスターを撃退しつつ、青白い幽霊を追いかける形でここへ辿り着くのだが、空を飛ぶという異常手段でその過程をショートカットしてしまっていたのだ。

 

「ん?幽霊が聖堂の中に入っていったな。しかし、なんで確認するように後ろを向いたんだ?」

 

なので、NPCである幽霊の不自然な行動にコーヒーは首を傾げてしまうことになる。

そんなメイプル並みにやらかしてしまっている事実に気づくことなく、コーヒーは聖堂へと近づき、その扉を開ける。

聖堂の中はひどくボロボロであり、聖画やステンドグラスは見るも無惨な状態。

 

壁に等間隔で設けられた燭台も錆び付いて蝋燭の火も不気味に輝いている。

赤絨毯や長椅子も引き裂かれたようにズタボロだ。

しかも、黒く乾いた血の跡が壁や天井、地面に長椅子の至る所にこびりついているのだ。

 

「おおう……本当にホラー感満載だな……」

 

あまりにも生々しい光景に、ゲームとは理解しつつもコーヒーも流石にビビってしまう。

そんな凄惨と言える場所の祭壇には―――如何にも不気味な雰囲気を醸し出し、赤黒い線が無数に走っている黒い短槍が刺さっている。

 

しかも、その祭壇を中心に四本の短槍がバツ字を描くように配置され、その四本の短槍の中間を繋ぐような円陣が加わった奇妙な紋様が刻まれている。

 

「手に入るのは槍関係のやつかよ……」

 

自身の役に立ちそうにないものが報酬になりそうだと、コーヒーはガックリと肩を落とす。

とりあえずイベントを進めようと祭壇に近づこうとして―――天井からガラスが割れる音が聖堂内に響いた。

 

「!?」

 

突然のけたたましい音に、コーヒーは驚きながらも咄嗟にその場から飛び下がる。上を見れば天井のステンドグラスが粉々に砕け散って割れている。

そして視界を祭壇の方へと戻すと、頭に角を生やし、赤黒く染まっている身体は筋骨隆々。一見すると鬼のようにも見えるが、その顔は馬に近かった。

 

『グゥオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

その怪物が吼えると、怪物の後ろに祭壇を中心に描かれていた奇妙な紋様が紅い輝きと共に顕れる。

同時にその右手から赤黒い短槍が空間を裂いて顕れ、その手に握られる。

 

「あれがボスモンスターか?だけど……」

 

コーヒーは突然現れた怪物だけでなく、祭壇に刺さっている短槍にもHPバーが表示されていることに内心で首を傾げる。

もしかしたら、あっちの黒い短槍が本体なのかもしれない。

 

「迸れ!蒼き雷霆(アームドブルー)!穿つは閃槍 迸るは闇夜に煌めく雷光 雷槍と成りて敵を刺し貫け―――穿て!【サンダージャベリン】!」

 

コーヒーは【サンダージャベリン】を祭壇の黒い短槍に目掛けて放つ。

蒼い雷槍を受けた黒い短槍はHPバーを僅かに減少させた。

 

「本体だからHPが高めなのか?いや、武器という扱いだから減りが悪いのか?なら……」

 

コーヒーはそう呟くや否や、展開中だった【クラスタービット】を津波にして祭壇の黒い短槍に向かわせる。

蒼銀の津波に呑まれた黒い短槍はHPバーを【サンダージャベリン】を受けた時よりもダメージを受けたように減少し続けていく。

 

「ビンゴ!どうやらこっちの方が効くみたいだな!」

 

コーヒーはクロスボウで怪物を牽制しながら【クラスタービット】で黒い短槍を攻撃し続けていく。

 

『ウォオオオオオオオオッ!!』

 

怪物は天に向かって咆哮を上げると、上空に怪物が背負っている紋様が顕れる。

怪物は自身が持つ黒い短槍をその紋様に目掛けて投擲する。

投擲した黒い短槍が紅く光る紋様に直撃した瞬間、その紋様から無数の黒い短槍が現れて一斉に降り注いできた。

 

「マジかよ!?」

 

槍らしからぬ攻撃にコーヒーは驚きつつも、【クラスタービット】も使ってその槍の雨をかわし、防いでいく。

しばらくして槍の雨が止むと、怪物のHPは何もしていないのに半分以上減っていた。

 

「【クラスタービット】のHPが四分の一も削られるとか……どれだけ威力高いんだよ、あれ」

 

かわし切れない攻撃を【クラスタービット】で防いでいたコーヒーはあの攻撃の威力に内心で引き攣る。

しかし、まだ戦闘は終わってないので【クラスタービット】で再び例の黒い短槍を攻撃していく。

再び蒼銀の津波に呑まれた黒い短槍はHPバーを削られていき―――

 

パリン

 

『ウゥオオオオオオオオオオオオオオッ!?』

 

黒い短槍のHPバーが尽きて砕け散り、同時に怪物から絶叫と共に身体から光が放たれる。

 

オノレェッ!!コノママタダデハ終ワランッ!!キサマニ呪イヲ刻ミツケテヤル!!

 

叫ぶしか出来ないと思っていた怪物はそんな恨み言を残し、光となって消滅した。

 

ピロリン♪

『スキル【魔槍の呪い】を取得しました』

『スキル【魔槍シン】を取得しました』

 

新しいスキル取得の知らせ。

コーヒーはどんなスキルが手に入ったのかと画面を操作して確認していく。

 

 

===============

【魔槍の呪い】

HP・MP以外のステータスが常に50%低下する。

MPが自然回復しなくなる。

HP回復量が70%減少する。

※このスキルは【廃棄】出来ません。スキルスロット付与も同様。

===============

 

===============

【魔槍シン】

自身のHPを犠牲にして、上空から槍の雨を広範囲に降らす。消費するHPの量が多い程範囲は上昇する。

使用してから2時間の間、HP回復を一切受け付けなくなる。

口上

刻むは絶望 無明の闇へ誘うは千の槍 我が血潮で祈る間もなく消えるがいい

===============

 

 

「…………は?」

 

【魔槍の呪い】の内容にコーヒーは思わず目が点となる。

その後、画面を閉じたり、目を擦ったりしてスキルの内容を何度も確認するも、内容は変わらない。

やがて徐々に現実を理解していき……

 

「本物の呪いのスキルじゃねぇか!!」

 

コーヒーはその場に頭を抱えて蹲った。

【魔槍の呪い】はまったく良いとこ無しのバッドスキル。しかも【廃棄】は不可能。

呪い(笑)のスキルと呼ばれた【口上強化】、【名乗り】、【詠唱】等比ではない、本物の呪いのスキルである。

 

【魔槍シン】はHP代償の強力な攻撃スキルみたいだが、【魔槍の呪い】のせいでそれも台無し。

予想だにしなかった弱体化にコーヒーはショックを受けていると、青い画面がコーヒーの前に表示される。

 

 

===============

ボスモンスター【魔槍の傀儡】を倒さずに【堕ちし聖槍】を破壊したため。

エクストラクエスト【聖刻の継承者】が発生しました。

クエストを受注しますか?

《Yes》/《No》

===============

 

 

「……ん?」

 

新しいクエストが発生したことにコーヒーは疑問に感じつつも、投げ遣りな気分でクエストを受注する。

すると、自身のインベントリにしまっていた【聖刻の道標】が勝手にコーヒーの前に出てきたのだ。

目を白黒させるコーヒーの前で【聖刻の道標】は青い光を放つと、文字を形作っていく。

 

「二日後……再びこの地に……」

 

コーヒーが反芻するように呟くと、【聖刻の道標】から光が消え、自身のインベントリへと戻っていった。

 

「特別なクエストのフラグを建てたのか……これをクリアしたら【魔槍の呪い】が消えるのかな?というか、消えてほしい」

 

とにかく、二日後に発生するクエストを何としてもクリアすると決め、その日はログアウトするのであった。

 

 

 




元ネタは緑の神父。あれはカッコいいよネ!!
感想お待ちしてます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。