スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

26 / 147
オリキャラ登場です
てな訳でどうぞ


それは釣りではない

イベント五日目。

コーヒーは五日経った今でも変わらずに赤牛を狩り続けていた。

 

「これで目標までは稼げたか……途中から止めはブリッツに任せたからブリッツのレベルもそこそこ上がって新スキルも手に入ったな」

 

コーヒーはステータス画面を確認しながら呟く。

ブリッツの新スキル【電磁砲】は【砂金外装】発動時に使用可能なスキルで、雷の砲撃を放つ攻撃スキルである。

 

【スナイパー】と【属性強化】を取得出来る分は稼げた上、ギルド報酬の為のポイント分も十分に集まったから後は適度にやる程度でいいだろう。

 

ちなみにコーヒーが今目指している場所は傾斜が目立つ山岳地帯。【壁走り】を使っても普通は厳しい場所だ。

此処にも赤牛が湧かないことはないが、スペースが限られているのと、そもそも移動に苦労する場所な為に誰もいなかった。

 

最も、【クラスタービット】と遠距離攻撃持ちのコーヒーにはある意味穴場ではあったが。

というか、二日前に此処に足を運んだ際、火山のような形状の山で中心がぽっかり空いた場所に、大量の赤牛が呑気に過ごしていたのだ。大穴場である。

 

ただ、そこの赤牛をすべて狩った後で再び湧くことはなく、次の日になって再び訪れると大量の赤牛がまたしても呑気に過ごしていた。

そこで、コーヒーはここが一日限定の穴場だと分かり、一回は必ず此処へ訪れることを決めたのである。

また、その場所で奇妙なアイテムも見つけていた。

 

「【自由への翼】……【聖刻の道標】と同じアイテムなんだろうが、何処で使うんだろうな?」

 

インベントリから取り出したアイテム―――翼の形状をした錆び付いた鍵を手で弄びながらコーヒーは呟く。

このアイテムは例の穴場に他にも何か無いのかと調べた際、その場所の中心に落ちていたアイテムなのだ。しかも、アイテム名以外は何も分からないというおまけ付きで。

 

そんな怪しさ満点のアイテムを、コーヒーは捨てもせずに自身のインベントリへと再びしまう。あんな目にあったのにも関わらず、懲りていないようである。

 

「そろそろ目的の場所だな」

 

道中で見かけた赤牛を狩りながら目指していたコーヒーは、意識を切り換えて前を向く。

その穴場の山のすぐ傍で、デカイ魚が宙にふわふわと浮いて漂っていた。

 

「ブフゥッ!?」

 

あまりの衝撃にコーヒーは思わず吹き出してしまう。

一瞬メイプルかと思ったが、メイプルにはシロップがいるし何より何か新しいスキルが手に入ったら基本的には報告するはず。

運営からそんなモンスターが実装されたという報告もないので、一番あり得る可能性は……

 

「……メイプル以外にもおかしなプレイヤーがいたのか……」

 

実際、そのデカイ魚の背には一人のプレイヤーが座っているし、よくよく見れば釣竿を垂らしている。

何で釣竿をぶら垂らしているんだと思っていると、そのプレイヤーの垂らしている釣竿の釣糸の先には……赤牛が食いついていた。

 

「…………は?」

 

コーヒーはそのあまりにも非常識な光景に間抜けな声を洩らす。思考が半ば停止した状態の中、釣られた?赤牛はデカイ魚に食べられて消えていった。

 

「…………」

 

そのあまりにも現実離れした光景に我に返ったコーヒーは頭痛を覚えながらも【クラスタービット】のメタルボードに乗ったままデカイ魚に座っている人物に近づいていく。

 

デカイ魚に座っていたのは麦わら帽子を被った藍色の髪の女性プレイヤー。

身長はメイプルやサリーと同じくらい。服装は釣り人らしき格好で、髪は長くうなじ辺りで纏めている。

後、一部の発育が良いのも特徴の一つだ。

 

「んー?わー、驚いたよー。空を飛べる人が噂の亀さん以外にいるなんてねー」

「……ここで何やってんの?後、名前は?」

 

驚いたと言う割にはあまりにも呑気な声に、コーヒーは頭が益々痛くなるのを感じながらも話しかける。

 

「ボクはミキ。ただの釣り好きのプレイヤーさー」

「……釣り?」

 

あれの何処が釣りなんだと言う疑問でコーヒーが聞くと、ミキと名乗った少女は相変わらず間延びした呑気な口調で答えていく。

 

「うん、そうだよー。ボクはこのゲームを始めてからずーっと釣りばっかりしてるんだー。おかげで釣ることでしかレベルが上がらなくなったけどー、ボク的には満足さー」

 

この時点でコーヒーは確信した。ミキは間違いなくメイプル並みにおかしなプレイヤーだと。

 

「ところで君はー?名前は何て言うのー?」

「……コーヒーだ」

 

ミキに名前を聞かれたので、コーヒーは少し間を開けながらも答える。

 

「コーヒーかー……無性に缶コーヒーが飲みたくなる名前だねー」

「ちなみにミキ……さんが乗っているその魚は?」

 

姿形からしてジンベエザメに近く、体が空色のデカイ魚にジト目の視線を送るコーヒーに、ミキは呑気な口調で答えていく。

 

「この子はジベェ。この前のイベント中に釣れた卵から生まれたんだー。道中の戦闘も近頃はジベェに任せてるんだよー。後ー、呼び捨てでいいよー。年も近そうだしねー?」

「じゃあミキと呼ばせてもらうが……釣った?卵を?前回のイベントで?」

 

まさかシロップや朧、ブリッツ以外にも卵が存在していたことにコーヒーは内心で驚きながら問いかける。

 

「そうだよー。ジベェはイベント最後の日に釣れたんだよー。それにー、この釣竿と麦わら帽子と服もー、第一層でヌシのようなデカイ魚を釣った後に出てきた宝箱から手に入れたんだよー。いやー、これを使い出してからポーションや爆弾、長靴や宝箱がたまに釣れるんだよねー。ゲームあるあるだよねー」

「いやいやいや!いくらゲームでも普通は釣れないからな!!」

 

ミキの言葉にコーヒーは即座にツッコミを入れる。

コーヒーの言う通り、いくらNWOでもポーションや爆弾、長靴と宝箱は普通は釣れない。ミキが宝箱を釣れる?ようになったのは装備のお陰である。

 

まずはリールが付いた釣竿。これはあらゆる場所で釣りが可能となる釣竿だ。

次に麦わら帽子。これは20%の確率でポーションや爆弾、素材や換金アイテム等の一部のアイテムが釣れるようになる麦わら帽子だ。

最後に服。これは一部を除いて相手の所持品を釣ることが可能となる服だ。

 

これらの入手条件は100時間以上かつ、2000匹以上の魚を釣り上げた者だけが挑めるダンジョンの初回単独クリア。つまり、ユニークシリーズである。

そんなことを知らないミキは相変わらず呑気に釣りを続け、コーヒーはミキの異常さに頭を抱えてしまう。

 

「おー、また釣れたよー。ここの赤い牛さんは食いつきがいいねー。ジベェ、お願いねー」

 

ミキがそう言うと、ジベェは口を大きく開いて釣り上げられていた赤牛を丸呑みする。少ししてジベェの背中からイベントアイテムが現れてふわふわと漂う。

もう、はっきり言ってめちゃくちゃだ。

 

「いやー、ジベェが【空中浮遊】と【巨大化】を覚えた時は嬉しかったよー。お陰でこうしてジベェと一緒に釣りを楽しめるからねー」

「……そうですかい」

「せっかくだからフレンド登録しとくー?ちなみにボクはー、何処のギルドにも入ってないよー」

「……何で入ってないんだ?これだけぶっ飛んでいると、勧誘の一つや二つくらいありそうなんだが」

「んー、釣りしか出来ないって言ったらー、門前払いされたんだよねー」

「……ああ」

 

ミキのその言葉で、コーヒーはすごく納得した。

戦闘も支援も出来ない釣りプレイヤー。端から見れば役に立つとは思えないプレイヤーだ。

だが、彼女の釣りは【普通】の釣りではない。

 

【釣り】でアイテムそのものは釣れないし、何より現在進行形で釣り上げられている赤牛も本来は釣り上げることも出来はしない。

とりあえず、コーヒーはミキとフレンド登録した後、疲れた表情でその場を後にするのであった。

 

「また赤い牛さんが釣れたよー。ジベェ、【水鉄砲】ー」

 

最後にジベェが口から放ったレーザーの如き水砲を流し見て……

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

―――その頃運営では。

 

「……CFがあのプレイヤーに接触したな」

「【俺達の悪ふざけダンジョン】をクリアしたあのプレイヤーか……」

「ああ。前回のイベントの超低確率かつ釣りでしか手に入らない、中身が魚の【幻獣の卵】を最終日で釣り上げちまったアイツだよ……」

 

男は死んだ魚のような瞳で画面を見ながら呟く。

この事実に気づいたのは、メダルスキルのダメージから立ち直ってから数日後である。

その時はコーヒー達の空の旅と、無駄に終わったメダルスキルチェックのダブルコンボですぐに気づくことが出来なかったのである。

 

「なんで、釣り限定で手に入る設定にしたんだよ……」

「だって……普通は七日間も連続で、同じ場所で釣りなんかしないじゃないですか……」

「つまり……ミキも【普通】じゃなかったんだな……」

「もしあのプレイヤー……ミキが【楓の木】に加わったら……」

「「「「…………」」」」

「……静観しよう。まだ、加わると決まったわけじゃないしな」

「それに……加わっても今さらの気もするしな」

 

男のその言葉に全員が頷く。だって、【楓の木】の殆どが【普通】から離れてしまっているのだから。

 

「……なんでこう、おかしなプレイヤーは一ヵ所に集まるんだろうな?」

「俺に聞くなよ。後、変わったプレイヤーは他にもいるだろ」

「ああ……【集う聖剣】のサクヤと【炎帝ノ国】のカミュラか……」

「サクヤは【俺達の悪ふざけクエスト】をクリアして《演奏の杖》を手に入れて……カミュラは攻撃系統スキルを半分の確率でコピーする大盾を手に入れたからな……」

「サクヤの《演奏の杖》はちゃんと奏でないと効果を発揮しないけど……発揮したら強力なんだよな。後、《演奏の杖》とは別のスキルも強力だし」

「けど、あれはHPを犠牲にするからなー。乱用はできないだろ」

「……メイプルやCFにワンチャンあると思う?」

「CFは厳しいけど、メイプルならワンチャン―――」

「うぉおおおおおおおおおおおいっ!?」

 

突然の大声に、一同はギョッとした表情で叫んだ人物に顔を向ける。叫んだ男は頭を抱えて振りかぶっていた。

 

「どうした!?いきなり叫んだりして!?」

「またメイプルだよ!今度は悪魔を食べやがった!!」

「はあっ!?何で悪魔を食べてんだよ!?今回は期間内に特定のモンスターからイベントアイテムを集めるだけの筈だろ!?」

「例の空飛ぶ亀で、イベントフラグを大分ショートカットして悪魔ボスとの戦闘に突入したんだよ!!」

「マジかよ!?」

「本当に何なんだよ!この前なんて、今度実装する第三層のクエストキーアイテム【かつての夢】を手に入れちゃうし!」

「それを言ったらCFもだろ!?同じくキーアイテム【自由への翼】を拾っちまったんだからな!」

「そっちはまだマシだろ!?メイプルは【機械神】が手に入るのに対し、CFは属性とエフェクトが追加されるだけなんだからな!」

「そう言われれば……いや、それで追加される属性は……」

「……あ」

「どっちにしろダメじゃないか!?」

「なんでこう、ピッタリなスキルばかり手に入れちゃうのかなぁ!?」

「知るわけないだろ!!」

 

頭痛の種が増え、胃痛に悩まされるのが日常であった。

 

 

 




こんなキャラも居てもいいよね?
感想お待ちしてます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。