てな訳でどうぞ
毒竜をボコボコにし、シアンがいたことで鹿と大樹をさくっと倒してギルドホームに帰ってきた翌日。
マイとユイ、シアンは来て早々にサリーにギルドホーム内にある【特訓場】へと連れられていった。
これは、三人に貫通攻撃に対する回避とそれぞれのスタイルによる戦い方を身につけさせるのが狙いである。
サリー曰く、自分が知る限りのほとんどの【貫通攻撃スキル】には発動までにはほんの僅かな【タメ】の時間があるとのこと。他のスキルは名前を言い切ったら即発動に対し、貫通攻撃には注意しないと気づかないくらいの遅れがあるとのこと。
コーヒーの【無防の撃】はすべての攻撃が貫通攻撃になるため、そういった【タメ】は存在しないどころか全部が貫通攻撃だから、回避のハードルがゲキ高。
実際、【訓練場】でコーヒーとメイプルが戦ったらメイプルが完敗となったのだから。緊急回避の【暴虐】も【魔槍シン】であっという間に撃沈。つまる所、コーヒーはメイプルにとって天敵と言える存在である。
それにマイ達三人は毒竜の周回でレベルが大分上がったとは言え、技術的なものは未熟なままなのだ。
そこでサリーは掲示板やネットで判明している貫通攻撃スキルの資料と、素の技術で再現したスキルの動きによる実践練習で三人に回避能力を上げようというのがサリーの狙いであった。
そんな中、コーヒーはギルドホームに顔を出していた。
「そうか。サリーの方はもう始まったのか」
「ああ。CFは今日はどうするのだ?」
「今日は、数日前に町の中で見つけたちょっと気になる場所に行ってみようかと」
「……ああ、またおかしなスキルを手に入れに行くのか」
クロムの諦めたような呟きとカスミの呆れたような眼差しに、コーヒーは多少の自覚もあって無言を貫く。
ちなみにイズはマイ達三人の装備の作製。カナデは二層の図書館に入り浸り。ミキは三層の外で釣りである。
「まあ、俺に出来ることは今の所無いし、行くだけ行ってみるってことで」
コーヒーはそう言って三層の町へと出ていく。
コーヒーが出ていった後、クロムとカスミは二人で話し始めていく。
「絶対、また強力なスキルを手に入れてくるだろうな」
「……まったく否定できないな。うちのメンバーは知らないところで強くなるからな」
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ギルドホームを後にしたコーヒーは、数日前に見つけた町の中にある謎の昇降機へと向かっていく。
その昇降機は沈黙しており、加えて昇降機を操作する端末に一つだけ鍵穴がついていたのだ。
コーヒーは試しに【自由への翼】をその鍵穴に差し込んでみると、端末が音を立てて稼働したのだ。すぐに引き抜いた為そのまま沈黙したが、【自由への翼】が此処で使うアイテムだと分かったこと、昇降機は地下へと降りることから向こうに何があるか分からない為、その時は探索に乗り出さなかった。
「向こうには何があるんだろうな。機械の町だから機械関係のものがあるのかな?」
そんな事を呟きながら歩いていると、一人のプレイヤーがコーヒーの進路を塞ぐように現れる。
「お前がコーヒー……CFだな?」
進路を塞ぎコーヒーに話しかけてきたのは、白髪赤目の白い鎧に身を包んだ少年だ。
まったく見覚えのない少年にコーヒーは内心で首を傾げていると、少年はそんなコーヒーに構わずに話を進めていく。
「俺はカミュラ……厨二病患者のお前を倒す男の名だ」
カミュラと名乗った少年は目で射殺さんと言わんばかりにコーヒーを睨みつける。
いきなりの宣戦布告と失礼極まりない言葉、とうか今にも襲いかからんばかりの雰囲気を纏うカミュラに、コーヒーは苛立ちを覚えながらも益々困惑していく。
「CF……お前とクロム、赤毛のプレイヤー……【楓の木】の男性プレイヤーは俺が倒す―――」
自分だけでなくクロムとカナデもターゲットに入っていることに、コーヒーが本当に困惑していると、カミュラは堂々と宣戦布告する。
「―――“非リア充”である、この俺がな」
「……は?」
カミュラのその言葉にコーヒーは思わず間抜けな声を出すも、カミュラは用事が終わったと言わんばかりにその場を立ち去るのであった。
「……本当に何だったんだ?アイツ……」
何故リア充扱いされたのか分からぬまま、コーヒーは目的の場所に向かって再び歩き始めるのであった。
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一方、コーヒーに宣戦布告したカミュラは、町の広場にいる数人のプレイヤーと合流していた。
「待たせたか?」
「いえ、そんなに時間は経っていませんよ。シンとミィはまだ来てませんが」
カミュラの言葉に、神官を思わせる服装をしている金髪の女性プレイヤーは大丈夫と伝えると同時にまだ来ていない人物の名前を告げる。
「はあー……このメンバーで大丈夫かなぁ……?僕が足を引っ張らないかなぁ……?」
「安心決定。もう少し自身と皆の実力を信じたらどうだ?マルクス」
魔導師らしく灰色ローブを着ている、マルクスと呼ばれた男性プレイヤーの自身無さげな呟きに、全身を白と水色を基調としたスーツのような服装に身を包み、腰に二振りの長剣を携えた水色の髪の長身の男が不安を和らげるように話しかける。
そんな水色の髪の男に、カミュラは仇を見るような眼差しを向ける。
「テンジア……新入りの癖に随分と大きな顔をしているな?」
「私は温良恭倹を心得ているつもりだが……そう見えないのなら謝罪しよう」
「いえいえ。テンジアは十分に謙虚ですよ。むしろ、カミュラの方がテンジアの謙虚さを見習うべきです」
「……ふん。俺達のギルドマスターの兄と宣う男を見習えと?冗談は休み休み言え、ミザリー」
ミザリーと呼ばれた女性の諌めに、カミュラは鼻を鳴らして真っ向から拒絶する。
「あくまで従兄妹で血の繋がりはないのだがな……」
テンジアと呼ばれた水色の髪の男は困ったように溜め息を吐く。
従妹である彼女とはある程度連絡を取り合う仲で、テンジアがゲームを始めたのも、従妹が楽しそうにゲームの話をしていたので興味を持ったのが理由である。
……ゲームでの従妹の演技には内心で苦笑していたが。
「気にしなくていいよー。カミュラは単にリア充が嫌いなだけだから」
「理解不能。それなら、何故彼処まで私に敵意を向ける?」
「ミィと従兄妹だからですよ。カミュラはそれが憎くて仕方ないそうです」
「唖然失笑。従兄というだけで憎いなら、全員が憎悪の対象となると思うんだが?」
「従兄が憎いんじゃない。ギルドマスターの従兄だから憎いんだ」
テンジアの呆れを含んだ言葉に、カミュラは憎々しげに吐き捨てる。
そんな彼らの下に、赤と黒の服とマントに身を包んだ、赤髪赤目の女性プレイヤーが威風堂々とした歩みで近づいていく。
「待たせたな、ミザリー、マルクス、カミュラ、兄上」
待ち人の一人―――【炎帝ノ国】のギルドマスターであり、【炎帝】の二つ名を持つミィがカリスマ性の高さを伺わせる凛とした声で話しかける。
「ミィ。ここではテンジアで構わないと何度も言っているのだが……」
テンジアは困ったように言葉を口にするも、対するミィはどこまでも堂々とした雰囲気で告げる。
「兄上は兄上だ。兄上を名前で、しかも呼び捨てで呼ぶ等、私には出来ない」
「頑固一徹……本当に頑なだな」
あくまで兄と呼ぶことを止めないミィに、テンジアは口では呆れつつも表情は然程嫌そうでもない。
「それはテンジアも同じですよ。ミィがギルドに誘ったのに、貴方はそれを断って、加入条件を満たしてから入ったのですから」
「至極当然。周りがしっかりと納得しなければ凝りとなる。それで不協和音が起きるのは本意ではないからな」
「それでミィがテンジアのレベル上げに一緒に行くから、不満は結局起こっていたんだけどね」
マルクスがその光景を思い出してか、疲れたように息を吐く。
「確かに。あれでは本末転倒だから流石に頭痛を覚えたものだ」
「……兄上なら間違いなく戦力になると判断したからだ」
ミィのその言葉に、マルクスとミザリーはもちろん、カミュラでさえも素直に頷いて同意する。
「ふん……実力に関してだけは認めてやる。お前は【崩剣】に勝ったのだからな」
「同感。テンジアと戦えって言われたら……一目散に逃げるよ」
「ええ。テンジアの剣捌きは見事なものです」
「……閑話休題。シンはまだ来ないようだな」
テンジアの少々強引な話題の逸らしに、ミィは表情を変えず、カミュラは仏頂面のままだが、マルクスとミザリーは思わず苦笑してしまう。
「いよう!待たせちまったか?」
そのタイミングで片手剣と盾が標準装備の男性プレイヤー、【崩剣】のシンが到着する。
ちなみにマルクスは【トラッパー】、ミザリーは十位以内にランクインしなかったが、その見た目から【聖女】と呼ばれている。
ちなみにテンジアはミィから【氷刃】という二つ名を命名されている。カミュラは【スナッチャー】を命名してもらっている。
こうして、【炎帝ノ国】の上位戦力メンバーが揃った一同はフィールドの外へと向かうのであった。
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―――同時刻。
三層にあるとある湖畔にて。
「ここは不思議なお魚さん達や蟹さんが一杯だねー。ジベェ、【水鉄砲】ー」
釣糸に掴まっているガチガチに固そうな黒蟹に、ミキはジベェの【水鉄砲】を当て、あっという間に素材アイテムの甲殻を手に入れる。
ミキは再び竿を振るって釣糸を湖に垂らすと、十秒もしない内に次の獲物がかかる。
「今度は何かなー?」
ミキは慣れた動作でリールを巻いて引き上げる。次に釣れたのは……クーラーボックスだった。
「おおー。釣り好きに必須のクーラーボックスだー。これは嬉しいなー」
ミキはニッコリと笑顔を浮かべながらクーラーボックスを手に取り、詳細を確認していく。
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《釣人の冷却箱》【DEX+10】
【釣りの宝物庫】
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【釣りの宝物庫】
釣りで得たアイテムを専用のインベントリにしまうことができる。
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「おおー、これは釣ったアイテムをー、通常のインベントリとは別でしまえるようになるのかー。所持制限もないみたいだしー、これからは釣れたアイテムがたっぷりしまえるぞー」
ミキは上機嫌でクーラーボックスを肩にぶら下げ、巨大化したジベェに乗って町へと帰っていくのであった。
―――運営では。
「サリーがおかしい。普通はスキルの動きと速さは再現できない」
「【炎帝ノ国】のテンジアも少しおかしいよな。あの二人と同じく【破壊王】を手に入れてるし」
「ステータスはSTR・AGI型の一般的な構成だな。VITとHPが低いことを除けば」
「それよりヤバいのがミキとカナデだ。ミキは《釣人の冷却箱》を、カナデは【魔導書庫】を手に入れやがった」
「あー……あれかー……」
「《釣人の冷却箱》は単体では大したことないんだけど……釣りの【ユニークシリーズ】持ちのミキだと一気に凶悪になるんだよな」
「ポーション、爆弾が実質無制限で持てるようになるからな」
「カナデの【魔導書庫】も……引き次第では相当化けるんだよなぁ……」
「……本当に【楓の木】には俺達の悪ふざけを突破した奴が集まるんだよ……」
「第四回イベント……大丈夫だよな?」
その心配そうな呟きに、誰も答えることはなかった。
ミィ様の内心では……
(お兄ちゃんを呼び捨てなんて出来ないよ!本当は“兄様”にしたかったけど、流石にまずいから“兄上”で妥協してるのに……お兄ちゃんのバカ)
……兄に甘える妹であった。
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