スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


オーブ集めと防衛

サリー達と別れたコーヒーは木の上や茂みの中、岩陰等に身を隠しながら素早く移動していた。

コーヒーは素性を隠すため、【雷帝麒麟】と人前での【名乗り】の使用は禁止となっている。使えば、間違いなくコーヒーだとバレるからだ。

 

【クラスタービット】も同様であり、【聖刻の継承者】も【雷翼の剣】も奥の手として温存しなければならない。

かなりのハードプレイだが、それでもやらなければならない。

 

「道中で見つけたギルドは12……小規模は五つ、中規模が四つ、大規模が三つか……」

 

マッピングを施したマップとギルドの規模を思い浮かべながらコーヒーは一人呟く。

【楓の木】が上位十位以内に食い込むには、どこよりもオーブを多く稼ぐ必要がある。

しかし、最初の戦闘は不意討ちと先制攻撃で余裕を持って勝利を掴めたが次も上手くいくとは限らない。

 

加えて、フィールドにあるアイテムは装備の耐久値を回復させるもののみ。

ポーション等の回復アイテムは素材アイテムを含めて事前に持ち込んだ分だけである。

イズとミキがいるので【楓の木】はポーション不足を心配する必要はないが、他はそうもいかないだろう。

 

「最終日は魔法の支援が弱まるだろうが……同時にオーブを奪える量も減っているだろうからな」

 

コーヒーは現在使用許可が降りているスキルを思い浮かべながら、作戦を練り上げる。

練り上げた作戦は……擦り付けだ。

 

「まずは……大規模ギルドのオーブだ」

 

コーヒーは茂みに隠れ、道中で見つけた大規模ギルドのオーブに視界を向ける。大規模ギルドのオーブらしく、外に配置され、障害物もない。ただし、防衛プレイヤーはおよそ60人程。かなりの数である。

普通なら、近づくことすら困難だが、コーヒーには関係ない。

 

「【鷹の目】」

 

コーヒーは【鷹の目】で自身とオーブとの距離を正確に把握していく。距離は……十分に射程圏内だ。

 

「矢羽根に繋がるは魔力の糸 その糸で手繰り引き寄せん―――【アンカーアロー】」

 

コーヒーは【アンカーアロー】を使い、遠くからオーブに当て、すぐさま引っ張ってオーブを掠め取った。

 

「な!?オーブが!?」

「彼処だ!追え!」

 

目の前でオーブを奪われたことで、防衛プレイヤー達は群がるようにコーヒーがいる場所に向かって走っていく。

当然、コーヒーは逃げる。大規模ギルドの方へと。

 

十八番スキルが禁止されている以上、こうして互いに潰し合わせるという方法でオーブを回収しようというのだ。

そして、そのまま大規模ギルド同士で潰し合わせていく。

 

「よくも俺達のオーブを奪ってくれたな!!」

「何を言っているんだ!?先に攻めてきたのはそっちだろうが!!」

「ふざけるな!!お前達が先に仕掛けたんだろうが!!」

 

互いに食い違う主張。だが、彼らは戦い争っていく。

大規模故の混戦状態となる中、コーヒーはまたしても【アンカーアロー】で大規模ギルドのオーブを回収。混乱に乗じてそのまま離脱しようとする。

 

「柔軟なる疾き風 剛健なる迅き雷 迅雷風烈の息吹となりて走破せよ―――【疾風迅雷】」

 

しかも、【口上強化】した【疾風迅雷】でAGIを約三倍にして。

当然、それに気づいたプレイヤー数人が進路を塞ぐようにコーヒーの前へと立ちはだかる。

 

「ブリッツ、【電磁結界】」

 

コーヒーはブリッツのスキルを使用。一分間は実質無敵となったコーヒーは正面から強硬突破する。

コーヒーに気づいたプレイヤーは剣や斧、矢や魔法をコーヒーに向けて振るうも、剣や斧は避けられ、矢や魔法はコーヒーの身体が蒼い羽根が舞うと同時にぶれて通らない。

 

コーヒーは駆け抜けながら、襲いかかってきたプレイヤー全員にヘッドショット五発をプレゼントして駆け抜けていく。

ヘッドショット五発を喰らったプレイヤーは例外なくその身体を光に変えて消えていく。

 

後はこのまま拠点に帰るだけ。道中で見つけた戦闘中のギルドは、オーブがあれば掠め取る。

結果、コーヒーは四つのオーブの奪取に成功した。

 

帰還中、サリーからオーブ奪取成功のメッセージが届いたので自身もオーブ奪取に成功したと送信して拠点を目指していく。

そして、自軍の入口に待機していたクロムに奪取したオーブ四つを手渡した。

 

「すごいな……この短時間で……」

「感心するのは早いぞ。内二つは大規模ギルドのオーブだから、防衛のハードルは自然と高くなる。メイプル達にも注意するよう伝えておいてくれ」

「了解だ。コーヒーはまたオーブの回収に行くんだろ?」

「当然。少しでも多く稼がないといけないからな」

 

コーヒーはそう言って、現時点でのオーブの位置がわかるマップを渡して再びオーブ奪取に戻っていく。

【避雷針】の即席MP回復アイテムでMPを回復しつつ、オーブのあるギルドを探していく。

 

「ここは十人か……行けるな」

 

次にコーヒーが見つけたギルドは背後が断崖絶壁に阻まれ、オーブの周りも岩壁が正面以外を覆っている、比較的防衛に向いている場所だ。

オーブを守っているプレイヤー達もそこに固まっており、少人数なら無傷で奪い取るには厳しいだろう。

―――本来なら。

 

「【扇雛】―――【連射】」

 

コーヒーは【扇雛】で先制攻撃をしかけ、続く【連射】で間髪入れずに撃ち抜いていく。

襲撃を受けたプレイヤーは何とか武器を構えようとするも、クロスボウではあり得ない連射に殆どなすすべなく葬られるのであった。

 

「オーブ回収……次はあっちへ行ってみるか。この程度の連中なら、追われても大丈夫だし」

 

オーブを持つと常に危険になるため、コーヒーはすぐに方針を決めて未開の方向へと進むのだった。

―――防衛組では。

 

チュドォオオオオオオンッ!!

 

「よーし!また防衛成功!」

「「「はい!」」」

 

大爆発した入口を背に、右腕を突き上げてはしゃぐメイプルにマイとユイ、シアンの三人は笑顔で同意する。

今のところ、襲撃に来たギルドは全員罠で出鼻を挫かれ、立て直す間もなく威力がおかしい初級魔法と鉄球、たまに爆弾の餌食となっていた。

 

「外にいるクロムからのメッセージだよ……次は大規模ギルドの襲撃だって」

「じゃあー、急いで【底無し沼】を設置するねー」

 

釣り人故にAGIが高いミキが急いで入口に向かい、あるトラップアイテムをセットする。同時に【樽爆弾】も入口付近に幾つも設置していく。

そうして設置し終えたミキがメイプル達の下に戻った時点で、鬼の形相の大規模ギルドの面々が次々と姿を現した。

 

「よくも私達の―――」

 

先頭の女性プレイヤーが一歩踏み出した瞬間、周囲の地面が泥濘となり瞬く間に身体が地面へと沈んでいく。

 

「ちょっ!?何よこれ!?」

「どんどん身体が沈んでいくぞ!?」

「こうなったら、前の連中には申し訳ないが彼らを踏み台にして―――」

「弾けろ、【スパークスフィア】!!」

 

指揮官らしきプレイヤーが苦渋の決断を下そうとしたところで、カナデが今日限定で使えるスキル―――コーヒーの使う魔法の一つである【スパークスフィア】を使用。

カナデの手から放たれた雷球は浮き足立つ大規模ギルドの面々に迫り―――【樽爆弾】を爆発させながら吹き飛ばした。

 

「輝け、【フォトン】!」

「「ええーいっ!」」

 

マイとユイはミキが取り出す【樽爆弾】を投げ続け、シアンは【フォトン】を放ち続けて襲撃者を次々と爆散させていく。

爆弾の余波はメイプルが【身捧ぐ慈愛】を発動しているので、全く心配がない。

結果、一分足らずで襲撃者達は全滅するのであった。

 

「いやあ、こうも上手くいくと逆に怖いね」

「ミキさんはアイテムの方は大丈夫ですか?」

「大丈夫だよー。今日までずっと釣りをしていたからー、在庫はたっぷりだよー」

 

シアンの心配そうな言葉に、ミキは親指を突き立てて問題ないと告げる。

ミキは様々なアイテムを釣り上げたが、中にはジョークアイテムや換金アイテム、全く役に立たないアイテムも釣り上げており、それはすべて売り捌いてゴールドへと変換させた。

 

おかげでイズの懐はホクホク。稼いだ六割はミキが釣ったアイテムの売却金という結果となった。

こうして、【楓の木】は自軍の防衛と他軍の戦力低下、他者の潰し合わせの誘導を早々に達成させるのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

一方その頃。

【楓の木】から遥か遠くにあるギルド【集う聖剣】ではフレデリカとドラグ、サクヤが防衛担当になっていた。

 

「あー!私も攻めたーいー!!」

「仕方ねーだろ。俺とお前は足がおせぇし」

 

不満を露に叫ぶフレデリカを隣にいるドラグが諌める。

ドラグの言うように、ドラグとフレデリカはAGIはあまり高い方ではない。故に偵察兼攻撃部隊には割り当てられなかった。

 

「イエス。私の場合はAGIが理由ではなく、スキルが防衛向けの能力なのでここにいますが。なので、夜はドレッドさんと共に行動する予定です」

 

フレデリカの正面にいるサクヤの言葉に、フレデリカは頬を悔しそうに膨らませていく。

【集う聖剣】のオーブは防衛には向いていない、平地に囲まれた岩場の上に侵入経路が多い場所だ。

オーブのある周りには天井もなく、奇襲も十分に可能である。

 

幸い、洞窟が幾つもある為、休息には問題はなかった。

そんな暇を持て余していた三人にギルドメンバーの一人が慌てて駆け寄って来る。

 

「報告します!こちらに敵ギルドの攻撃部隊が近づいて来ています!!」

 

その瞬間、三人の雰囲気が変わり、ビリビリとした威圧感が出始めていく。

特にサクヤは既に笛を構えていた。

 

「聞こえるは子守唄 安らかな音色で夢の世界に誘わん―――お休み、【就寝の鎮魂曲】」

 

【口上強化】と【詠唱】を告げ、サクヤが笛を吹いていく。

笛からは透き通るような音色が奏でられ、周囲に響いていく。

突然サクヤが演奏を始めたことに伝令が困惑する中、フレデリカが詳細を確認していく。

 

「数はー?」

「あ、はい……およそ40で、正面から30、後方より10です」

「わかった。それじゃ、俺とフレデリカで正面の連中を蹴散らしてくる」

「し、しかし……」

「大丈夫だよー。そっちは後方からの奇襲に注意しといてねー。まあ、サクヤちゃんが演奏中なら不意討ちなんて出来ないけどー」

 

伝令の不安げな言葉にフレデリカはさも当たり前のように告げ、ドラグと共に最前線へと向かっていく。

二人が最前線に辿り着くと、報告の通り30人ほどが平地を真っ直ぐ向かって来ているところだった。

 

「うちの監視部隊は優秀だねー」

「だな」

 

ドラグは大斧を担ぎつつ迫り来るプレイヤー達を見据える。

 

「叩き割れ!大地の震略者(ガイアクエイカー)!!」

 

ドラグは【名乗り】で自身のステータスを底上げする。【口上強化】を含め、最初は抵抗があったが慣れれば大したことはなく、むしろ便利なスキルである。

 

「大地を割砕し蹂躙せん―――【地割り】!!」

 

ドラグが大斧を地面に振り下ろすと、前方およそ25メートル、深さ65センチほどの裂け目が無数に生まれ、迫って来ていたプレイヤー達の動きを止めていく。

 

「同時に燃えよ、【多重炎弾】!!」

 

フレデリカは【詠唱】で消費を抑えた【多重詠唱】で無数の炎弾を次々と放っていく。

 

「重列な進行で吹き飛ばさん―――【重突進】!」

 

フレデリカが魔法を放つ中をドラグが突進する。

振り抜かれる凶悪な斧が裂け目から脱出したところのプレイヤーを地面に叩きつけるようにして切り裂いていく。

 

「燃え盛る斧で薙ぎ払わん―――【バーンアックス】!」

「連なり守れ、【多重障壁】!数多に噴き出せ、【多重水壁】!」

 

ドラグが炎と共に斧を振るってプレイヤーを炎に包む。ドラグの猛攻を耐えて攻撃スキルを放ってもフレデリカの次々繰り出される障壁で威力を削られ、大したダメージを与えれない。

 

「大地の槍で穿ち砕かん―――【グランドランス】!」

「同時照射せよ、【多重光砲】!」

 

ドラグが地面を叩きつけて自身を中心に八本の岩の槍を地面から突き出させ、フレデリカの周りに展開された四つの魔方陣から光のレーザーが放たれる。

たった二人で30人を相手しているのにも関わらず、ドラグとフレデリカは簡単に彼らを圧倒していた。

少し時間を遡り、【集う聖剣】のオーブ周辺では。

 

「……よし、今ならオーブを掠め取れる。陽動組が注意を惹いている間に奪い取るぞ」

 

ドラグとフレデリカが相手している連中と同じギルドに所属している十人ほどのメンバーが岩陰に隠れてオーブ奪取の機会を窺っている。

二人が相手している連中は陽動。本命はこちらの奇襲部隊である。

だが、それも失敗に終わる。

 

「……あれ?……なんか……眠……た……」

 

一人が声を途切らせながら地面に倒れ込む。それを皮切りにまた一人、また一人と地面に倒れていく。

倒れた連中は全員寝息を立てており、眠ってしまっているのが容易に想像できる。

 

「くそ……なん、で……」

 

隊長格の男性プレイヤーは何とか襲いかかる眠気に耐えるも、それも無意味となる。

何故なら、メンバーが地面に倒れた音で【集う聖剣】のギルドメンバーがこちらに気付き、武器を抜いて近寄って来たからだ。

 

「……く……ぅ……」

 

男は何とか武器を構えて抵抗しようとするも、刻一刻と強くなる眠気に足下が覚束ず、視界も定まらない。

本命の部隊はそのまま、なすすべなく彼らに葬られるのであった。

 

「たっだいまー!」

「こっちは上手く全滅させたぜ。そっちはどうだった?」

 

防衛を成功させてオーブの近くに帰還したフレデリカとドラグに、サクヤは演奏を止めて質問に答えていく。

 

「イエス。こちらにも10人ほどのプレイヤーが来ましたが、夢の世界と共に帰って頂きました」

「あー、やっぱり私達の方が陽動だったかー」

「中々知恵が回る連中だな。普通ならそれで上手くいくが、今回は相手が悪かったな」

「イエス。【就寝の鎮魂曲】は直ぐに効果を発揮しませんが、範囲内に入れば目視できずとも通用しますので」

「いやいや、サクヤちゃんの演奏は目視しなくていいでしょ」

「ノウ。【決闘の交響曲】は目視しなければ無意味ですので」

 

そんな三人を、ギルドメンバー達は尊敬と少しの嫉妬が混じった眼差しで見つめるのであった。

 

 

 




敵さんも強化されました(てってれー
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