スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


サリーの危機

サリーは現在窮地に陥っていた。

七時間もの間、一度も拠点に帰還せずにオーブの奪取に専念した結果、計十個のオーブの奪取に成功した。

同時に次の作戦に必要なことも終わったので、ようやく帰ろうという時にそれが起こっていた。

 

そう、百人以上のプレイヤーにいつの間にか包囲されてしまっていたのだ。

サリーはメイプルにメッセージを送った後、イズの作成したアイテム【ドーピングシード】を使って自身のステータスを底上げし臨戦体勢となった。

 

そして、聞こえてくる声から彼らを指揮するプレイヤーがフレデリカとわかり、生き残る術を紡ぎ出した。

そう、あのハッタリによる撹乱である。

 

「【攻撃誘導】!」

 

サリーが一度目の魔法攻撃を紙一重でかわす。

すると前衛のプレイヤーの動きが変わり一気に前進してくる。

偽の情報は無事に【集う聖剣】のメンバー全員に行き届いているようだ。

 

「ありがとうフレデリカ」

 

見事に騙されてくれた彼女に小さく礼を言うと、サリーは前進してきたプレイヤーの攻撃を先程と同じように紙一重でかわす。

 

「【攻撃誘導】!」

 

その言葉を聞いてプレイヤー達の動きに鋭さがなくなる。

予想外は迷いと焦りを生み、動きを鈍らせる。

だが、この予想外は長くは続かなかった。

 

「【攻撃誘導】!」

 

三回目の魔法攻撃をかわす。そこで事態が動いた。

 

「同時に燃えよ、【多重炎弾】!!」

 

彼らを指揮していたフレデリカが突如攻撃に参加し、無数の炎弾を放って来る。サリーは驚きつつもそれを紙一重で避ける。

 

「全軍、【攻撃誘導】と【流水】は存在しないものとして行動せよ!守護の壁よ 重なり連ねて我等を守りたまえ―――連なり守れ、【多重障壁】!!」

 

フレデリカのその言葉と援護で浮き足立っていたプレイヤー達は動きが戻り始め、サリーは内心で再び驚く。

いずれハッタリだと気付かれるのは分かっていたが、バレるのもその対応も早すぎる。

そんなサリーの疑問に、フレデリカは間抜けにも明かしていく。

 

「その反応、やっぱり実在しないスキルだったんだね?ドレッドの報告からサクヤちゃんがその可能性を指摘した時は半信半疑だったけど、ホントに当たるなんてね。はぁ……後でサクヤちゃんからディスられるなぁ……」

 

フレデリカが若干暗い顔で溜め息を吐くも、サリーはドレッドに偽【流水】を見せたのは失敗だったと思うと同時にチャンスだとも思った。

 

何故ならフレデリカが自力で導いた結論ではなく、そのサクヤというプレイヤーの入れ知恵。なら、混乱させられる余地は十分にある。

サリーはここで本物を使うことを決める。

 

「【一式・流水】!」

「そんなハッタリはもう通用しないよ!魔法攻撃!」

 

フレデリカはサリーが性懲りもなくハッタリをかましたと判断し、後衛の魔法部隊に指示を出して魔法を次々と放たせる。

サリーは襲いかかる一点狙いの魔法を紙一重でかわし、面攻撃の魔法は両手のダガーで後ろへと弾き飛ばした。

 

「魔法を弾いた!?」

 

フレデリカが目を見開いて驚愕の声を上げる。他のプレイヤーも明らかなスキルによる現象に困惑して再び動きを鈍らせる。

 

「どういうこと?【流水】は本当に実在するスキルだったの?でも、サリーちゃんは【一式・流水】って言ってた。まさか、【攻撃誘導】も効果が違うだけで本当に実在するスキル?それとも名称が違うだけ?」

 

フレデリカが難しい顔をして必死に思案している間にも、サリーは包囲している者達に攻撃し続ける。

 

「【二式・水月】!」

 

囲むように襲いかかってきたプレイヤー達をサリーは自身を中心に波紋のように広がる斬撃で一閃する。

 

「【七式・爆水】!」

 

背後から襲いかかってきたプレイヤーの斧をサリーは紙一重で避け、強力なノックバック効果がある斬撃をがら空きとなった胴体に叩きつけて吹き飛ばす。

吹き飛ばされたプレイヤーは迫ってきていた味方を巻き込んで地面を転がっていく。

 

「凄い……全然違って見えるよ」

 

サリーは自身の感覚の変化に驚く。

今までの集中した自分の見ていた世界が高速に感じられる程に剣は遅く感じられ、恐怖センサーも明確に、はっきりと使えている。

 

近い未来の危険が全て過去に起こったことのように把握できる。

だからこそ―――新たな襲撃者にも気づけた。

 

「!!」

 

背中に走る悪寒。感じた直感のままにサリーはその場から飛び上がる。

それとほぼ同時に、紫電を迸らせた刀がサリーが先程までいた地面に突き刺さった。

 

「新手……!?」

 

サリーが振り返り様に白い仮面と黒い服を着たプレイヤーを視界に収めた瞬間、恐怖センサーがもの凄い警鐘を発したことに、サリーは一気に冷や汗を流す。

 

「レイドー!ナイスタイミングだよ!」

 

対照的にフレデリカは嬉しそうな声を上げている。あの様子からしてこのプレイヤーも【集う聖剣】のギルドメンバーなのであろう。

 

「……サクヤの予想通り、まんまと一杯喰わされていたようだな、フレデリカ」

「うぐっ!?」

 

レイドと呼ばれたプレイヤーの指摘に、フレデリカはバツが悪そうな表情で胸を押さえる。

 

「帰ったら、サクヤから辛辣な言葉が降り注ぐだろうが……今はこちらが先決だ」

 

レイドはそう言って地面から引き抜いた、紫電が迸っているカッターナイフのような筋が入っている刀を構え直し、サリーと正面から対峙する。

 

「サリーだったな。二番煎じで悪いが……そのオーブは私達が奪わせてもらうぞ」

 

低く透き通ったレイドの言葉。鬼のような仮面と相まって、思わず萎縮しそうになる。

だが、サリーとてここで負けるわけにはいかない。何としてでも生き残り、包囲を突破する。

 

その決意の下にサリーは両手のダガーを構え直して正面から対峙する。

まるで時間が止まったかのような静寂。それが辺り一面を支配する。

それを最初に破ったのは、レイドだった。

 

「高鳴れ!不滅の聖雷剣(コレダーデュランダル)!!」

「速めよ、【加速】!」

 

レイドが【名乗り】を使い、自身のステータスを底上げする。同時にフレデリカも魔法でサポートする。

 

「切り裂け!【紫電一閃】!!」

 

レイドが一瞬でサリーとの距離を詰め、横薙ぎに刀を振るう。

胴体を深く切り裂かれたサリーは空気に溶け込むように消えていく。

同時にレイドは振り払うように回し蹴りを放つ。

 

その回し蹴りを本物のサリーは避け、カウンターに繋げようとする。

レイドは回し蹴りの勢いを殺さぬまま刀を逆袈裟で振るい、サリーのカウンターを妨害する。

サリーは飛び下がってその一撃を避け、背後から攻撃してきた別のプレイヤーの攻撃を紙一重でかわしてカウンターで背中を切り裂く。

 

切り裂かれたプレイヤーは背中から赤いエフェクトが散るも、フレデリカの魔法で防御力が上がっていた為一撃では倒れなかった。

 

「前衛は包囲を突破されないように待機!後衛は隙を見て魔法攻撃でレイドを援護!彼女に付け入る隙を与えるな!同時に燃えよ、【多重炎弾】!!」

 

レイドの到着ですっかり落ち着いたフレデリカは他のプレイヤー達に指示を出しつつ、レイドを援護する為に魔法を放つ。

 

「【三式・水鏡】!」

 

サリーは自身に迫る複数の炎弾を正面に展開した水で構成された円状の盾で防ぐ。

その盾にぶつかった炎弾は吸い込まれるように消える、もしくはまるで鏡で反射されたようにフレデリカへと迫っていく。

 

「嘘!?」

 

フレデリカは咄嗟に横へと飛んで自身に迫っていた炎弾をかわす。

【三式・水鏡】。展開した水盾で攻撃魔法を無力化、または一定確率で相手に返すスキルである。

 

「焼き焦がせ!【雷鞭刃】!!」

 

そんな防御姿勢のサリーにレイドが垂直の大振りで刀を振り下ろす。

本来なら距離があって届かないはずの刀身は伸びるように分断され、紫電を轟かせながらサリーの頭上から迫っていく。

 

「蛇腹剣!?」

 

ゲームにしか出てこない創作武器の登場にサリーは驚きつつも紙一重でかわし、素早くインベントリから取り出した【粘着爆弾】を蛇腹となった刀に投げ飛ばす。

 

「む……!?」

 

レイドはその行動に違和感を覚えてすぐに引き戻そうとするも時既に遅く。蛇腹となった刀は白い粘着物によって地面に縫い止められていた。

 

「奇妙なアイテムだな。だが……」

 

レイドがそう呟くと、【粘着爆弾】で絡め取られた蛇腹となった刀を根元からへし折る。柄だけとなった刀をすぐさま鞘にしまい、次いで抜刀すると先程と同様の形状の新たな刀身がくっついていた。

 

「そんな……!?」

 

せっかくのアイテムが無駄に終わったことにサリーが悔しげに呟くも、レイドも内心では舌打ちしたい気分であった。

レイドが使う刀は蛇腹の形状となるだけでなく、耐久値が無くなっても事前に用意した専用の刀身があればすぐに再使用できる特殊な武器だ。

 

だが、生産職プレイヤーに事前に用意してもらった刀身にも数の限りがあり、武器の特性上修理も受け付けない。

つまり、レイドは貴重な一本をサリーによって無駄に使わされてしまったのだ。

 

「【超加速】!【影分身】!!」

 

それでもサリーは諦めず、生き残る為に戦い続ける。

 

「【疾風迅雷】!!」

 

分身してスピードが上がったサリーに対し、レイドは【超加速】の上位互換スキル【疾風迅雷】を使用。二倍となったAGIで何人ものサリーを次々と斬り捨てていく。

 

「輝き唸れ!【雷楼牙】!!」

 

サリーが残り一人となったところで、レイドは地面に刀を突き刺し、突き刺した刀を中心に地面から顔を出すように現れた六つの雷をそれぞれが違う挙動を取らせながらサリーへと向かわせる。

 

「くっ……」

 

サリーは自身に迫る雷を何とか避けながら、援護射撃の魔法を【一式・流水】で弾いていく。

ギリギリで避け、避け切れないタイミングで放たれた魔法を弾くサリーは防戦一方。完全に主導権を握られてしまっている。

 

「負けない。絶対に負け……?」

 

そして、ついに限界が訪れる。

足の動きが止まり、膝からガクンと崩れ落ちた。

そんなサリーに炎弾と石弾、蛇腹となった刀の切っ先が迫って来る。

 

「【八式・静水】!!」

 

サリーは咄嗟にスキルを発動し横へと転がる。襲いかかる魔法はサリーの体をすり抜け、ダメージが通らない。

【八式・静水】。体の装備品の耐久値を代償に最大十秒間、敵の攻撃をすり抜けられるスキルだ。先のテンジアの【飛撃】もこれでやり過ごしたのだが、連発が出来ないスキルでもある。

限界を迎え、立つことすらも満足に出来なくなったサリーにレイドが無情に近づいていく。

 

「中々のプレイヤーだな。フレデリカが念のために応援要請をしなければ、少なくない被害が出ていただろう」

 

レイドのその言葉にフレデリカは得意げな表情で胸を張るが、まんまと騙されていたのだから微妙である。

 

「だが、それもここまで。無茶をした代償がここで現れたな。極限状態であれほど動いたのだ。遠からず限界を迎えるのは目に見えている。ここまで抵抗したお前に敬意を表し、一撃で葬ってやろう」

 

レイドはそう告げると、刀を頭上に掲げ、紫電を刀身に漲せる。

それをサリーは目付きを鋭くさせ、睨み付けながら言葉を口にした。

 

「次は……負けないから」

 

それは負け惜しみであり、宣戦布告だった。

同時にここで一デスすることに、サリーはギルドメンバーの皆に内心で謝る。

そんなサリーに、ついに止めが差される。

 

「吹き飛ばせ、【破雷】」

 

振り下ろした蛇腹となった刀と共に、極太の雷がサリーに真っ直ぐ迫る。

サリーは殺られると確信して目を閉じ―――

 

轟音。爆発。

 

明らかな高威力の一撃は轟音と爆発を起こし、盛大な土煙を舞い上がらせた。

 

「……何?」

 

だが、レイドの口から洩れたのは疑問の声だった。

何故なら、伝わってきた感触が明らかに硬いものを叩いたそれであったからだ。

そして土煙が晴れると……蒼銀に輝く壁がレイドの一撃を遮っていた。

 

「……え?」

 

轟音が響くも衝撃が全くこないことにサリーが疑問に感じて目を開けると、サリーを守るように背中を向けている蒼く輝く槍十字の紋様を顕現させた人物がいた。

 

「本当にギリギリだったな。だが、間に合って本当に良かったぜ」

 

その人物―――コーヒーは背中を向けたまま安堵の息を洩らすのであった。

 

 

 




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