スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


予想外は続く

「CF……?」

「それ以外の誰に見えるんだよ?」

 

サリーがフラフラと立ち上がりながらの半信半疑な言葉に、コーヒーは呆れ半分で返す。

サリーはマップ情報からコーヒーが拠点に戻っていることは分かっていた。時間を稼げば救援に駆けつけてくれると予測はしていたが、レイドという強敵によってそれも間に合わないと思っていた。

 

だが、コーヒーはサリーの下に駆けつける為に【名乗り】だけでなく【聖刻の継承者】と【疾風迅雷】、サリーと同じ【ドーピングシード】を全て使い、メタルボードに乗って凄まじい速度で向かったのである。

 

防衛は極振り四人衆がいるので隙を突かれる心配もない。最初はメイプルが飛んで行きそうだったが、コーヒーが自分の方が早いと説得し居残ってもらったのである。

少しくらいは文句を言いたいところだが、今はこの場を切り抜けるのが先決だ。

 

「唸るは雷鳴 昂るは信念の灯火 雷鐘響かせ威厳を示さん―――瞬け、【ヴォルテックチャージ】!」

 

コーヒーは【クラスタービット】で周りに壁を作ると同時に【口上強化】した【ヴォルテックチャージ】を使う。

そのまま、必殺の詠唱を唱え始める。

 

「昇るは助力を願う晃雷 降り注ぐは裁きの雷雨 積乱雲に潜む雷鳥は(さえず)り 金色の雷獣は天に舞う 轟く落雷は地を焦がし 浴びし者は無慈悲に灰燼と帰す 鳴動の(そら)より招来(きた)りし(いかずち)よ 咎ある者達に神罰を!」

 

【口上詠唱】を加えた【口上強化】により、長々しい詠唱を唱え終えたコーヒーは必殺級となった上級魔法を発動させる。

 

「限界を超えし蒼き雷霆よ降り注げ!【ディバインレイン】!!」

 

掲げた掌から放たれる蒼い雷。太い雷は空へと昇っていき、大量の蒼雷として一気に降り注いだ。

威力が最大まで引き上げられた落雷は広範囲に渡り、更なる援軍として来た【集う聖剣】のプレイヤーやサリーを追いかけて来た第三勢力のプレイヤー達を次々と吹き飛ばしていく。

 

「それじゃ今の内に……っと、悪いが少し我慢しろよ」

 

コーヒーはそう言ってサリーを正面に抱きかかえ―――俗に言う“お姫様抱っこ”で担ぎ上げた。

 

「えっ?ちょっ!?」

 

お姫様抱っこされたサリーは目を白黒させて困惑の声を上げるが、コーヒーは構わずに二つの【クラスタービット】でメタルボードを形成。それに飛び乗って一気に上空へと離脱していく。

 

お姫様抱っこで抱きかかえた理由は至極単純。明らかにフラフラで限界なサリーでは途中でメタルボードから落ちる危険性があったからである。

十分に空に上がったところで、コーヒーは【聖刻の継承者】を解除し、更なる切り札を使う。

 

「刻むは絶望 無明の闇へ誘うは千の槍 我が血潮で祈る間もなく消えるがいい―――【魔槍シン】!!」

 

自身のHPを半分以上消費して、コーヒーは【魔槍シン】をだめ押しと言わんばかりに放つ。【聖槍】の方を使わなかったのは、まだ温存しておきたいからである。

 

夥しい落雷が降り注ぐ中で、上空に顕れた紅い槍十字の紋様から無数に放たれる黒い槍。それが容赦なく炸裂しプレイヤー達をどんどん葬っていく。

最初は数人程度の犠牲だった人数が、コーヒーによって一気に三桁へと繰り上がった。

 

「これだけやればもう追ってこないだろ。それじゃ、さっさと帰るぞ」

 

コーヒーはサリーを抱きかかえたままメタルボードを操作し、【楓の木】の拠点へと帰っていくのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「ううっ……何あれー……威力が凄くおかしいよー……」

 

レイドの肩に担がれたフレデリカが力なく呟く。

最初は突然現れた蒼銀の壁に訝しんだフレデリカだが、聞こえてきた声からコーヒーがいると分かり、全力でこの場から離脱することを大急ぎで全軍へと指示した。

 

理由は単純。コーヒーには広範囲攻撃魔法があり、偵察隊や事前調査から【蒼銀の悪魔】がコーヒーであると判明していた為、大技が来ると確信したからだ。

だが、それはフレデリカの予想を大きく上回る結果となった。

 

「あれは仕方がない。むしろ、あれだけの威力と未知のスキルが見れただけ良しとするべきだろう」

 

森の中を移動するレイドが仕方ないといった感じでフレデリカを慰める。

フレデリカが離脱を指示した直後、レイドはフレデリカを肩に担いで全力でその場から走り去ったのだ。

 

もちろん、フレデリカも【多重加速】と【多重障壁】を使ってギルドメンバー全員の離脱を援護したが、空からの面攻撃には極一部を除いて無意味と化したのである。

その極一部のレイドは落雷の嵐と槍の弾幕をかわして何とか離脱に成功したが。

 

「ううー……大惨事だよー……サクヤちゃんにめちゃくちゃ責められるぅ……」

 

頭を抱えるフレデリカの脳裏には、真顔で淡々とバカデリカやら天狗デリカやらと罵倒しながら説教するサクヤの姿が浮かんでいる。それを自身は皆の前で正座させられているというオマケ付きで。

 

「偽情報の件はともかく、此度の被害は流石に責めないと思うぞ。あれは完全な想定外だったからな」

 

フレデリカの言う通り確かに大惨事だが、流石に今回は相手が悪すぎたとしか言い様がない。

むしろ、被害を最小限にしようと即座に撤退を指示したことを称賛しても良いくらいだ。

 

実際、レイドが増援として来たことでサリーの動きは防戦一方となり、コーヒーが駆けつけなければ十分な戦果を得られていたのだ。

本当に、運がなかったとしか言い様がない。

 

「一応、ドレッドに此方の状況と、CFと疲労困憊のサリーちゃんが拠点に戻ってるってメッセージを送ったけど……どうなるかなー……?」

 

【楓の木】は既に場所を特定していたが、最も危険なメイプルが常にいるので手が出せずにいる。

それも、大規模ギルドの襲撃さえも返り討ちにしたのだから相当だ。

救援に来たのがコーヒーだから、【楓の木】の防衛は万全。拠点への手出しは不可能だ。

 

「サクヤもいるから、せめて一矢は報いれればいいのだが……」

 

帳消しにはならないだろうが、多少の痛手は与えてほしい。

そんなことを祈りながら、フレデリカとレイドは【集う聖剣】へと帰っていくのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「幾ら作戦の為とはいえ、流石に無茶しすぎだ。メイプルも本当に心配したんだからな」

「……うん」

 

空を移動しながらコーヒーはサリーに今回の無茶を咎める。対するサリーも言葉少なめだが、反省しているように見える。

 

「あ、あのさ……CF……」

「ん?なんだ?」

「出来れば、そろそろ下ろしてほしいんだけど……」

 

未だにお姫様抱っこされているサリーは恥ずかしそうに呟く。まあ、普通に考えれば恥ずかしくて当然である。実際、サリーは顔を恥ずかしそうに背け、頬も若干赤く染まってるし。

 

「却下。そんな疲れきった体じゃ満足に動けないだろ。地上に降りたらちゃんと下ろすからそれまでは我慢しろ」

「うう……」

 

面倒半分、気遣い半分で否決したコーヒーに、サリーは恥ずかしそうに唸る。

コーヒーとて、現実なら絶対にしないがここはゲームの中に加え、誰にも見られていない。だからこそここまで思い切った行動が出来た。

……近い将来、ネタにされるとも知らず。

 

「とりあえず、マップ情報は全部埋まったんだよな?」

「うん……これでプランBが実行に移せる。正直、この分だと他のプランも前倒ししないとキツそう……」

 

プランB。またの名をメイプル解放策。

本来は前衛部隊が崩壊した際にする予定の行動だったが、戦闘が激しく、強敵も何名かいることから早々に発動しないと上位に食い込めないとサリーは感じ取っていた。

 

だからこそ、ここまでの無茶をしたのだが……迷惑をかけたのだからメイプルにもちゃんと謝らなければならない。

 

「となると……メイプルのスキルも」

「うん……一日ずつ解禁する予定だけど、使わざるを得ない状況になるかも……」

 

一応、解禁の順番としては【捕食者】【機械神】【暴虐】の順番だが、トッププレイヤーとぶつかったらどうなるか分からない。

メイプルには新装備《女神の冠》があるが、内包しているスキルの詳細は不明。イズ曰く、瀕死でないと発動しないスキルだそうで戦力としては数えていない。だって、メイプルが瀕死になる可能性は結構低いし。

 

「っと、そろそろ拠点に着くからこの辺りで降りるぞ」

「う、うん」

 

もうすぐで自分たちの拠点に到着しそうなので、コーヒーは比較的安全な場所で着陸し、サリーを地面へと下ろす。

 

「ここからなら歩い―――」

 

その瞬間、茂みから凄まじい速度で何者かが飛び出て、サリーを攻撃しようとした。

 

「!?ちぃっ!」

 

コーヒーが咄嗟にサリーを庇うように前に躍り出て、襲撃者の攻撃をクロスボウで受け止める。

 

「久しぶりだな、CF」

 

そんな言葉を口にしながら飛び下がった襲撃者の正体は……ドレッドだった。

 

「ドレッド……まさか待ち伏せしていたのかよ?」

「まあな。フレデリカの連絡を受けて一矢報いにな」

「だとしたら失敗だな。オーブ狙いでサリーを攻撃したのが防がれたんだからな」

「そうでもないぜ?」

 

ドレッドはそう言って左腕を掲げる。その左腕には鎖が巻き付いており、その鎖は……コーヒーの右腕に絡まっていた。

コーヒーはこの鎖に嫌な予感を覚え、すぐに外そうとするも、まるで幽霊のようにすり抜けて触れない。はっきりと絡まっているにも関わらずだ。

 

「……これはお前の新しいスキルか?」

「いんや。これはサクヤの嬢ちゃんのスキルだ。【決闘の交響曲】……付与した対象とその対象が最初に攻撃した相手を不可接触の鎖で繋げ、どちらかが死ぬか演奏が止むまで解けないスキルさ」

 

どうやらこの鎖はドレッドのスキルではないようだ。

 

「しかも、こいつの主導権は俺。俺が引っ張ればお前は引っ張れる……つまり、お前は自分から仲間のところへ行けないのさ」

「……本当に嫌なスキルだな」

 

本当に厄介なスキルにコーヒーは苦い顔で呟く。

今の状態でトッププレイヤーの一人であるドレッドと戦うのは厳しい。となれば、数の差で不利を悟らせて撤退させるのが定石だが、この鎖のせいでそれも使えない。

加えて、鎖の長さは約八メートル。ロングレンジにも持ち込めない。

 

「まっ、俺には有難いスキルだけどな。おかげで……お前とサシでやり合える」

 

ドレッドは不敵に笑いながら両手のダガーを構える。

どうやら個人的な事情も交えているようである。

 

「しかも、HPが半分以下だな?どうやらフレデリカの連絡にあった槍の方はHPを代償にして使うスキルだな?それも、回復を阻害するというオマケ付きで」

 

【魔槍シン】の効果を見事に当ててきたドレッドに、コーヒーは思わず舌打ちしてしまう。

しかし、順当に考えれば当然の結果だとも思う。

 

「そっちの嬢ちゃんが応援を呼んでも構わねぇが……場所を変えようぜ」

 

ドレッドはそう言って【楓の木】の拠点から離れるように走り始める。

コーヒーも、鎖が巻き付いている腕が引っ張られた時点でドレッドの後を追って走り始める。

そして、サリーはその場に残される。

 

「まずい……!」

 

この状況をまずいと思ったサリーは急いで救援のメッセージを飛ばそうとするも、ドレッドの言葉を思い出してすぐに指を止める。

ドレッドは応援を呼んでも構わないと言った。つまり、近くに伏兵がいる可能性が高い。

 

「今、守りを手薄にさせるわけにはいかない……!」

 

サリーはメイプル達にメッセージで手短に状況を伝え、同時に守りに専念するように伝える。

サリーはそのまま疲れた体に鞭を打って、周辺の探索を開始していく。

 

推測の域でしかないが、状況からしてサクヤというプレイヤーが近くにいる筈。

この状況を打開するために、サリーは再び無茶を覚悟して動いていく。

一方、ドレッドとコーヒーの方も本格的に突入しようとしていた。

 

「三回目のリベンジマッチを始めようか、CF―――瞬け!神速烈火(クイックドロウ)!!」

「上等だ!今回も返り討ちにしてやるよ!迸れ!蒼き雷霆(アームドブルー)!!」

 

互いに【名乗り】を使い、それぞれの得物を構えて激突する。

日を跨いだ深夜、【神速】と【蒼き雷霆】の激闘の火蓋がここに切って下ろされるのであった。

 

 

 




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