スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ
※少し修正しました


まさかの襲撃

二日目も日が落ち始める頃、【楓の木】のメンバーは全員拠点に集まっていた。

 

「やったー!オーブが大量に手に入ったよ!」

「今回集めたオーブは横取りした分を含めて全部で68個……確かに大量だな」

「ほとんどが大規模ギルドから横取りしたオーブだからな……防衛が成功したらポイントが一気に加速するな」

 

【炎帝ノ国】と激突した二組はその後、メイプル組は【炎帝ノ国】の周りにあるギルドを、コーヒー組は他の大規模ギルドを幾つも襲撃し、オーブをちっきりと奪っていた。

 

「でも、【炎帝ノ国】のオーブを手に入れてから他のギルドを攻撃したんだけど……二つしか手に入らなかったよ」

「こっちは大規模ギルドの防衛中を狙ったから大量に手に入ったが……やっぱ予想以上に戦闘が激化してるんだな」

「そうね。小規模ギルドだけじゃなく、中規模ギルドも大分やられちゃってるからね」

 

【炎帝ノ国】のオーブを奪ったことで、【炎帝ノ国】はこちらの狙い通りに動かざるを得ないだろうがそれでも想定よりも戦闘が激化していることは予想外であった。

 

「やっぱりー、人数が多い大規模ギルドが有利だねー。向こうは同時に動けるからねー」

「確かにそうだね。僕達は少人数だからどうしても防衛中は専念しないといけないからね」

 

ミキの言葉にカナデが頷く。

大規模ギルドの最大の強みは人数の多さだ。攻撃と防衛、それらを同時に行えるということはポイントも稼ぎやすい。

対して【楓の木】はどうしても防衛中はそちらに専念しなければならず、ポイントの加算にどうしてもブレーキがかかってしまうのだ。

 

「【楓の木】の順位は現在四位……このペースで上位十位以内に入れるかどうかは微妙なところだな」

「イベントは残り二日だから……大規模ギルドの攻勢が益々盛んになるでしょうね」

「この防衛が成功したらまた攻めに行くとして……組分けはどうするんだ?」

 

クロムのその質問に、参謀を務めているサリーが提案していく。

 

「メイプルはカスミとクロムさんで、コーヒーは私とマイで、ミキはユイとシアンという編成で行くべきだと思います」

「なるほど、編成としては妥当だな」

「今のサリーは弱体化させられているからな。今はブリッツと朧に頼っている以上はそれが定石だな」

「うん。当初の考えは私とマイとユイ、CFとミキとシアンの編成だったけど今の私じゃ撹乱しきれそうにないからね」

「サリー……」

 

まるで空元気のように話すサリーにメイプルは心配そうな声を洩らすも、サリーは大丈夫と言わんばかりの顔をメイプルに向ける。

 

「大丈夫だよメイプル。確かに痛い目にはあったけど、このまま泣き寝入りする気はないわ。絶対にサクヤに仕返しするから、その時は宜しくね」

「うん!分かったよサリー!!」

 

サリーのその言葉にメイプルが元気よく頷く。

 

「どちらにせよ、今は集めたオーブをしっかり守らないとな」

「じゃあー、出入口に罠を設置しておくねー」

 

ミキはそう言って、部屋の外に繋がる入口に【底無し毒沼】と【バリケード】、十個の【樽爆弾】を設置する。

 

「……本当に質が悪いトラップだよな。無差別だからある意味マシかもしれないが」

「対象を選べたら、それこそ悪夢だな……」

 

クロムとカスミが何とも言えない表情で呟く。

それから一時間。他のギルドの襲撃もなく平和に過ごせていた。

 

「やっぱり、初日の大暴れが効いているみたいだな」

「そりゃ、大規模ギルドの襲撃さえも返り討ちにしたんだ。【炎帝ノ国】は立て直しに必死で奪還に動く余裕はないだろうし、他の大規模ギルドだって攻めに行くのは躊ら―――」

 

クロムの言葉にコーヒーが相づちを打とうとするも、僅かに笛の音が聞こえてくる。

 

「……笛の音?」

「まさか……」

 

誰もが次第に大きくなる笛の音に首を傾げる中、コーヒーとサリーは襲撃者の正体を察して警戒して入口を見やる。

直後、【バリケード】で塞がれた入口が爆発し、同時に【樽爆弾】も巻き込まれるように爆発してしまった。

爆発によって煙が立ち込める中、それを掻き分けるように現れたのは……

 

「マジかよ……」

 

ペイン、ドレッド、ドラグ、フレデリカ、サクヤ、レイドを筆頭とした【集う聖剣】の魔法の上位プレイヤー達からなる15人の者達であった。

 

「このタイミングで【集う聖剣】が攻めに来るのかよ……!」

「そんなに驚くことかい?そこに大量のオーブがあれば狙いに行くのは当然ではないのかな?」

 

クロムの悪態に、ペインが涼しげに言葉を返し、言葉を続けていく。

 

「偵察隊が君達【楓の木】が大規模ギルドを襲撃してオーブを集めていると報告があったからね。横取りするなら今がチャンスだと判断したまでさ」

 

ペインはそう言うが、実際はエゴを通すための大義名分に近いものである。

互いにベストとは言えないが、それでもある程度は対等な条件で挑めることが出来る。今回の【楓の木】の行動はペイン達上位の実力者に早期襲撃する口実を与えてしまったのだ。

 

【炎帝ノ国】のオーブも含めた大量のオーブ。それは他のギルドメンバーを納得させられるだけの魅力をもたらした。

 

「どうやら暴れ過ぎたみたいだな……」

 

コーヒーが苦い顔で呟く。ドレッドの台詞からいずれ【集う聖剣】が攻めに来るとは分かっていたが、これほど早いタイミングで襲撃に来るとは流石に予想外だったのである。

 

「やっほー、サリーちゃん。足の調子はどうかなー?昨日はまんまとやられたから、きっちりお返しさせてもらうよー?」

 

フレデリカの揶揄する言葉にサクヤは呆れたように溜め息を吐き、サリーはブリッツを呼び出し、【砂金外装】を使わせてからその背中に乗る。

 

「やっぱりー、足の調子は最悪みたいだねー?」

「……自分がしてやったみたいな言い方は不快なので止めていただきませんか?ザコデリカさん」

「ザコじゃないよ!それに、これくらいはいいでしょ!?」

 

サクヤの毒にフレデリカが文句を言う中、レイドが刀に手を当ててコーヒーに視線を向ける。

 

「予定通り、CFは私が相手をする。異存はないな?ドレッド」

「ああ。デスペナ受けてる状態で勝てるとは思えねぇし、今回はギルドで攻めに来てるんだ。それくらいは受け入れるさ。俺は今回はあちらの相手をするさ」

 

ドレッドはそう答え、視線をカスミとサリーへと向ける。

 

「……見事に罠を突破されちゃったねー」

「ドレッドとフレデリカ、サクヤのおかげだ。ドレッドが感で見つけ、サクヤのサポートを受けたフレデリカが魔法で壁と爆弾を吹き飛ばし、障壁で地面の罠もやり過ごしたからな」

 

ミキの呟きにドラグが罠を突破した種明かしをする。その言葉に【楓の木】の面々は確かにこのメンバーなら看破と突破は容易だと納得する。

 

「それでは始めようか……」

 

ペインが剣を抜いたことで、他の者達も次々と自身の武器を抜き、構えていく。

同時にメイプル達も武器を抜いて構えていく。

数秒の沈黙。それを破ったのは【集う聖剣】側であった。

 

「集え、聖光なる勝利の剣(エクスカリバー)!」

「瞬け、神速烈火(クイックドロウ)!」

「高鳴れ、不滅の聖雷剣(コレダーデュランダンル)!」

「叩き割れ、大地の震略者(ガイアクエイカー)!」

 

ペインを筆頭に前衛組が【名乗り】を使い、前へと出る。

 

「同時に速めよ、【多重加速】!」

「唸れ、【痛感の旋律】!」

 

フレデリカの魔法が移動速度を上げ、サクヤの笛が与ダメージを増加させる。

 

「―――【身捧ぐ慈愛】!!」

 

その間にメイプルが【口上強化】を施した【身捧ぐ慈愛】を発動させ、【楓の木】も臨戦態勢となる。

 

「迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)!弾けろ、【スパークスフィア】!!」

 

コーヒーも【名乗り】を使い、スピード重視で【詠唱】込みの【スパークスフィア】を放つも、ペイン達は容易く避けてしまう。

そして、レイドはコーヒーへと斬りかかった。

 

「チィ―――ッ!」

 

コーヒーはクロスボウでガードしつつ、展開したままの【クラスタービット】を槍のようにしてレイドに放とうとするも、レイドはそんな暇は与えないと言わんばかりに猛攻を仕掛けていく。

 

「そのスキルは確かに厄介だが、操作には意識を割く必要があるのだろう?なら、操作させる隙を与えなければいいだけだ」

 

レイドは武器を激しく打ち合わせながらそんな事を呟くが言うほど簡単ではない。だが、レイドのプレイヤースキルがそれを可能としてしまっていた。

 

「【雷翼の剣】!」

 

コーヒーは近距離で対応するしかないと判断し、クロスボウに雷の剣を出現させ、同時に【クラスタービット】をクロスボウの銃床に集約。剣の形状にしてクロスボウをダブルセイバーのような形にさせる。

 

「……随分とおかしな武器に変えたな」

「ほっとけ!」

 

レイドは蛇腹剣に変えて振るっていき、コーヒーはダブルセイバーとなったクロスボウを両手で振るって迫る刀身を弾いていく。

片方は強力なノックバック効果。もう片方は強力な武器破壊効果。威力を抜きにすれば凶悪な刃である。

コーヒーがレイドと戦う間にも、ペインはメイプルに猛攻を仕掛け、ドレッド達も攻撃を仕掛けていく。

 

「【土波】!!」

 

ドラグが地面に斧を叩きつけて地面を波打たせ、マイとユイにぶつけてメイプルを吹き飛ばす。

【身捧ぐ慈愛】の効果範囲から外れたマイとユイにドラグが追撃しようとするも、クロムが【カバームーブ】で間に入って防いでいく。

 

「メイプル!解除した方がいい!」

「う、うん!分かった!」

 

対策を取られていると分かったサリーの指示に、メイプルは頷いて【身捧ぐ慈愛】を解除する。

実際、後方の【集う聖剣】の魔法部隊からは防御貫通能力のある魔法が放たれており、カスミがドレッドの相手をしている間にサリーが【一式・流水】で優先的に弾いているのだから。

 

「ハァッ!!」

 

メイプルに接近したペインが剣を振るう。

対してメイプルは【悪食】でペインを倒そうと黒き大盾を構える。

だが、そのタイミングでペインは剣をピタリと止めた。

 

「【光砲】!!」

 

同時にフレデリカがその大盾に向かって一条の光線を放ち、【悪食】を無理矢理発動させて一条の光線を吸い込ませた。

 

「フッ!!」

 

さらにカスミの相手をしていたドレッドが投擲用のダガーを大盾に向けて投げ、またしても【悪食】を強制的に発動させる。

ペイン達のこの行動。【炎帝ノ国】の偵察をしていた部隊の者から戦闘の詳細を詳しく聞き、メイプルのあの大盾のスキルは自動発動の上に回数制限が設けられていると気付いたからだ。

 

「【ディフィンスブレイク】!!」

 

ペインが防御貫通スキルを発動してメイプルに向かって振り下ろす。

メイプルはチャンスと思って大盾を構えるも、ペインの一撃は大盾に触れずにそのまま振り下ろされた。

 

「【多重石弾】!!【多重炎弾】!!」

 

フレデリカが二つの魔法を発動して複数の石弾と炎弾を発動させ、メイプルの大盾にぶつける。

 

「うわわっ!?」

 

スキルを利用したフェイントに見事に引っ掛かったメイプルはまたしても、フレデリカの多重魔法によって【悪食】を強制的に発動させられてしまう。

同時にノックバック効果のある魔法を受けたことで後ろへと吹き飛ばされる。

 

そして、ドレッドの投擲用のダガーが体勢を立て直そうとしたメイプルの大盾に再び当たり―――音を立てて弾かれ、そのまま吸い込まれずに地面へと落ちた。

 

「彼等は英雄 響き渡る音色で力を漲らせ 勝利の旋律を奏でん―――響け!【英雄の協奏曲】!!」

 

【悪食】が打ち止めになったと【集う聖剣】のメンバー全員が確信した瞬間、サクヤが【口上強化】と共にスキル名を告げて演奏を始めた。途端、【集う聖剣】の全ての者に不思議なオーラが纏わりつく。

それが、必殺の合図だった。

 

「我が足に宿るは神狼 その速さで(はや)く (はや)(はや)く駆け抜けん―――【神速】!!」

 

ドレッドの姿が消える。

 

「我は凶戦士 血湧き肉踊る咆哮で 荒ぶる戦場を突き進まん―――【バーサーク】!!」

 

ドラグの体から、不思議なオーラとはまた違ったオーラが溢れ出る。

 

「戦場を蹂躙する蛮勇の戦士よ その猛き怒りを以て 総てを打ち砕かん―――【ベルセルク】!!」

 

レイドの眼が蒼く輝き、発光する。

 

「すべての力を彼の者へ!【多重全転移】!!」

 

フレデリカが魔法を発動すると、全ての効果がペインへと移される。

眼を蒼く輝かせたペインの姿が消え、一気にメイプルの前へと再び躍り出た。

 

「我が一撃は汝の罪を裁かん―――【断罪ノ聖剣】!!」

 

振り抜かれる光輝く剣。レイドの【ベルセルク】によって威力が三倍となった一閃は【捕食者】とコーヒーが咄嗟に飛ばした二つ目の【クラスタービット】を容易く両断し―――メイプルを大盾と鎧ごと深々と斬り裂いた。

 

「うっ……ぁ……」

 

体に走る激痛にメイプルの思考は一瞬停止し、そのまま壁際まで弾き飛ばされる。

そして、メイプルのHPは残り1となり、漆黒の冠は妖しく輝くのであった。

 

 

 




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5/15
読み返してみて「あ、【悪食】に関する描写をすっかり忘れていた」と気付き、その辺りの修正を行いました。
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