スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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そして、メイプルの新たなスキルが発動する!!
てな訳でどうぞ


影と水面

メイプルが致命的なダメージを負った。

その事実に【楓の木】のメンバーのほとんどに隙が生まれてしまった。特にマイとユイ、シアンが明らかに動揺している。

 

「はっ!?い、癒せ【ヒ」

「遅い」

 

シアンが我に返ってすぐにメイプルを回復させようとした瞬間、ドラグのスキルで硬直が無くなっているペインがあっという間にシアンとの距離を詰め、逆袈裟で斬り裂いた。

 

「きゃああああああっ!?」

 

シアンが吹き飛ばされながら悲鳴を上げる。シアンから藁人形が現れ、両断されて燃えるように消えていく。

【身代わり人形】のおかげでシアンは生き残ったが、すぐに行動を起こせなくなった。

 

「やっぱりこのコンボは凶悪だねー。もうペインには誰も勝てないよ」

 

フレデリカが笑みを浮かべて自分達の勝利を確信する。

一体どういう意味だと誰もが思っていると、ドラグが説明を始めた。

 

「サクヤの【英雄の協奏曲】は演奏中はステータスが上限無しでどんどん上昇するんだよ。その上昇効果は全部ペインに移されているから、その上昇率も上がっているんだよ」

 

何とも凶悪なコンボに【楓の木】のメンバー全員が苦い顔となる。

【英雄の協奏曲】は一秒ごとにHP・MP以外の全ステータスが6%上昇し続けるスキルだ。音色が響く限り上昇し続け、上限はない。ただし、音色が止むと奏でられていた時間の間、上昇した分だけステータスが減少するというハイリスクなスキルでもある。

 

そして、【口上強化】により上昇率が7%に変わり、全員のバフはフレデリカによってペイン一人に注がれた。

つまり、今のペインには真っ当な方法では勝てないのである。

そんな中、イズが声を上げる。

 

「皆!メイプルちゃんの為に時間を稼いで!!」

 

イズはそう言って【粘着弾】をペインに向かって投げ飛ばす。対するペインは先程と同じようにイズとの距離を詰め、横薙ぎに剣を振るう。

 

「きゃあっ!?」

 

斬られたイズは本来ならそれでHPが0となるが【身代わり人形】によって生き残り、シアンと同じように飛ばされ、壁際に叩きつけられる。

 

「わかったよー」

 

ミキはそう言ってペインに向かって【捕縛網】を投げつけるも、ペインは残像さえも残す速度でミキに急接近して切り裂く。

 

「あうっ!?」

 

ミキも【身代わり人形】で事なきを得るが、イズ同様に壁際まで飛ばされ、叩きつけられてしまう。

 

「【ミラーデバイス】!【ヒール】!」

 

カナデがその間に【ミラーデバイス】で【ヒール】を連続で放ってメイプルのHPを回復させる。

だが、それが隙となって今度はカナデが斬り伏せられる。

 

「うわぁっ!?」

 

カナデもシアンとイズ、ミキと同じく【身代わり人形】で生き残るも、衝撃から地面を転がっていく。

 

「くそ……!このままだと全滅だ……ッ!」

 

コーヒーはレイドと鍔迫り合いをしながら苦い表情をする。何とかメイプルの方に向かいたいが、レイドがそうさせてくれないのだ。

【夢幻鏡】を使えばすぐに向かえるだろうが、それを使えばコーヒーは緊急の回避手段を失ってしまう為安易に使えない。

 

サリーも演奏を止めるためにサクヤへ攻撃を仕掛けようとしてはいるが、フレデリカを始めとした魔法部隊の攻撃によって近づけずにいる。

完全な劣勢の中、カナデによってHPが満タンとなったメイプルは動く。

 

「初代より受け継ぎし機械の力 我が武具を対価とし 三代目として此処に顕れん―――【機械神】!!【全武装展開】!!【攻撃開始】!!」

 

【機械神】を発動したメイプルが黒く輝く兵器を全身に纏い、レーザーや銃弾、ミサイルを次々とペインに向かって放っていく。

 

「未知のスキルか!だが―――」

 

ペインは自身の上昇し続けるステータスとプレイヤースキルを用いて迫り来る攻撃をかわし、もしくは切り捨ててメイプルとの距離を詰めていく。

 

「【カウンター】!!」

 

メイプルが先のペインの攻撃の威力を次の自身の攻撃に乗せるスキル【カウンター】を使って攻撃を仕掛けるも、ペインは前進しながらあっさりと避けてしまう。

そして、再度接近したペインはそのまま流れるように剣を振るい、メイプルをどんどん攻撃していく。

 

「く……うっ……!」

 

武装がどんどん破壊され、攻撃が自身に当たる度にHPが僅かに減少する。それも一度に減る量も徐々に大きくなってきており、このままでは削り切られるのは明白だ。

 

「【破砕ノ聖剣】!!」

「ああっ!?」

 

ペインの防御貫通攻撃がメイプルに決まる。本来ならここでメイプルのHPは0となるのだが、【身代わり人形】のおかげで事なきを得る。

 

「癒せ!【ヒール】!!」

 

そして、何とか復活したシアンがメイプルに向かって【ヒール】を放ち、減少したHPを回復させる。

 

「やはりまずは……」

 

ペインはそう呟くとメイプルから一旦離れ、シアンとカナデに顔を向けた。

 

「【黒煙】!!」

「【退魔ノ聖剣】」

 

カナデが辺り一面に黒い煙を放つもペインはあっさりと消し飛ばし、そのままシアンとカナデを一瞬で斬り裂いた。

 

「シアンちゃん!カナデ!」

「これで回復役はいなくなった。例の奇妙な藁人形もどうやら一回限り。もう君達に勝ち目はない」

 

光となって消えるシアンとカナデ。それを背にペインは勝利を確信してメイプルへと再び向き直る。

回復役を潰すのはセオリーであり間違った行動ではないが、これがミスであったことにペインは後に気づくこととなる。

 

「二分たったわ!これでメイプルちゃんのスキルがようやく発動する!」

 

イズがそう告げた瞬間、メイプルの冠が黒い光を放ち、メイプルの足下に大きな影を作り出していく。

そしてメイプルの足下の影が植物のように伸び―――メイプルを一気に包み込んだ。

 

「メイプル!?」

「今度は何に変身するんだ……!?」

 

クロムがあながち間違っていない言葉を吐いた直後、メイプルを包み込んでいた影が四方に飛ぶように解き放たれる。

 

「…………」

 

漆黒のウェディングドレスのような服装。交差するように巻かれた黒い目隠し。手には影が形作ったかのように揺らめく黒い剣。

そんな格好をしたメイプルが自身を中心に広がった円上の影の上で佇んでいた。

 

「「「「…………」」」」

「キャー!!凄く似合ってるわよメイプルちゃん!!」

「おー、漆黒の花嫁さんだー」

「「メイプルさん素敵ですー!!」」

 

衣装チェンジしたメイプルにコーヒー、サリー、クロム、カスミが言葉を失う中、イズは何故かおおはしゃぎ、ミキは平常運転、マイとユイは目を輝かせていた。

【集う聖剣】もメイプルの今の姿に困惑し、サクヤは困惑しつつも演奏を止めずに見守っている。

 

当のメイプルは無言のまま「いや~、照れるなぁ~」と言わんばかりに空いている手を頭の後ろに当て、首を傾けている。

だが、すぐにやるべき事を思い出してかペインに顔を向け―――一気にペインに向かって走り出した。

 

「!!【残光ノ聖剣】!!」

 

そこでペインも我に返ってスキルを発動させ、極太レーザーのような光の斬撃をメイプルに飛ばすも―――

 

「なっ!?」

 

メイプルはその斬撃をものともせずに突き進んでいた。

それだけではない。今のメイプルにHPバーが存在しないのだ。

明らかな異常にペインは嫌な予感を覚えた瞬間、肉薄したメイプルが右手に持っていた黒い剣を振るう。

ペインは咄嗟に剣を盾にするも、黒い剣はペインの剣をすり抜け―――ペインだけを斬り裂いた。

 

「ぐあっ!?」

 

黒い剣に斬られたペインのHPが一気に1となる。【不屈の守護者】が発動したがそれは幸運でもなんでもない。

完全な無敵状態に加え、防御不可の超攻撃。幾ら強化されたペインでも勝てる見込みはない。

だが、ペインはこれには時間制限があると睨んで一度距離を取ろうとするも―――動きが遅い。

 

本来は上昇し続けているはずのAGIがまるで0になったような感覚にペインが足下を見ると、地面から伸びた影の手が自身の足を鷲掴みにしている。

そんなペインに、例の黒い剣が頭上から迫って来る。

 

「やられたよ……」

 

ペインはさっぱりとした表情でそう呟き、そのまま両断されて光となって消えた。

 

「ちょ!?嘘でしょ!?」

「あの状態のペインが負けるとか……本当にどうなってんだよ!?」

 

その光景にフレデリカとドラグは怯み、サクヤも驚いて演奏を止めてしまっている。ドレッドとレイドも口にこそ出てはいないが驚愕の表情を浮かべていた。

 

ペインの敗北に【集う聖剣】が困惑し混乱する中、メイプルは今度はドラグに肉薄し切り裂く。

 

「あがっ!?」

 

当然、斬られたドラグは光となって消え、今度はドレッドへと襲いかかっていく。

 

「いっそ清々しい気分だ……」

 

ドレッドは抵抗もせずに目を閉じ、諦感と共に切り裂かれた。

 

「なっ……」

 

その光景にレイドが完全に絶句する。

それが隙となり、コーヒーはレイドの刀を弾き飛ばし、【クラスタービット】の刃で切りつけようとする。

 

「くっ!」

 

レイドは咄嗟に後ろへ飛ぶも、【クラスタービット】の刃は仮面に当たり、破壊される。

露となった顔は美女と呼べる程の整った顔立ちだが、仮面を破壊されたレイドの態度に変化が訪れる。

 

「……あっ……あっ……あっ……」

 

顔を真っ赤に染め、わなわなと震え始めたかと思ったら、レイドはコーヒーに背を向けて屈みこんで、慌てふためいたように自身の画面を操作し始めた。

 

「か、仮面!早く予備の仮面を装備しないと……!!」

「…………」

 

その先程までと全く違う姿にコーヒーは思わず動きを止める中、覚束ない動作で仮面を装備し直したレイドは咳払いして一言。

 

「……待たせたな。このまま―――」

 

その言葉はメイプルに両断されて阻まれるのであった。

 

「…………」

 

あまりにもあんまりな結果にコーヒーは再び言葉を失い、下手人のメイプルも、「……何か、ゴメンね?」と気まずそうな雰囲気を発している。

【集う聖剣】の前衛が全員やられたことで、後衛は大急ぎで逃げようとする。

 

「私も逃げますけどー!?サクヤちゃん!!」

「イエス!【痺れる調律】!!」

 

フレデリカの言葉にサクヤが頷き、スキル名を告げて演奏を始めようとする。

そこでサクヤの視界にサリーの姿が写った。髪と目の色がマリンブルーとなっているサリーの姿を。

サクヤは嫌な予感を覚えるも既に遅い。

 

「【零式・水面(みなも)返し】!!」

 

笛が吹かれるとほぼ同時に発動するサリーのスキル。その瞬間、サクヤの体が麻痺を受けたように硬直した。

同時にサリーがブリッツの背中から降り、明らかにAGIが0ではないスピードでサクヤへと肉薄していく。

 

「な、何故呪いが―――」

「教えるわけないでしょ」

 

サクヤの言葉にサリーはバッサリと返し、両手に持つダガーでサクヤを切り刻む。

結果、サクヤも光となってその場から消えるのであった。

 

「例の痛手のお礼、しっかりと返したからね」

「【多重加速】!!」

 

すっきりした表情でサリーが呟く中、フレデリカは大慌てで移動速度を上げながら入口へと向かう。

ここでフレデリカはミスを犯した。地面のトラップは障壁を張ってやり過ごしていた事実を失念するというミスを。

その結果。

 

「うぎゃー!?沈むー!?」

 

【底無し毒沼】に他のメンバーもろとも引っ掛かり、体の半分以上を紫に変色した地面へと沈めてしまった。

毒はメイプル対策で耐性のあるスキルや装備で問題はないが、移動は一気に遅くなり、他のメンバーの足も止まる。

 

「「彼方の敵を攻撃せん―――【飛撃】!」」

「っ!【多重障壁】!」

 

背後から聞こえてきたスキル名に、フレデリカは咄嗟に障壁を幾つも展開するも、攻撃を放ったのはSTR極振りのマイとユイだった。

 

「あ」

 

フレデリカは罠にかかった時点で詰んでいたと悟り、全ての障壁と他のメンバーもろとも吹き飛ばされ、涙を浮かべて光となって消えるのであった。

 

「……勝った、のか?」

「みたいだな。ふぅ……本当に危なかったな」

 

カスミの呟きに、クロムが同意しながら疲れたようにその場に座り込む。

 

「同感。今回勝てたのは間違いなくメイプルのおかげだな……それで、一体どういうスキルなんだよ?」

 

コーヒーもその場に座り込み、漆黒の花嫁姿のメイプルに説明を求める視線を向ける。

当のメイプルは、ジェスチャーで少し待っててほしいと伝えてくる。どうやら、あの姿では会話は出来ないようだ。

少ししてメイプルは元の姿となり、カナデとシアンが復活したところで先程の姿について説明を始めた。

 

「あれは【影ノ女神】というスキルと言ってね。HPが一割以下になって二分後に自動で発動するんだよ。変身中は喋れないけど、その間は攻撃が全く効かなくなってAGIも100で固定されて、あの剣で攻撃したら防御不可の即死攻撃になるんだよ。しかも、一定範囲内の敵のAGIを0にするから、逃がす心配もないよ。一日1回の上に変身中は他のスキルは使えなくなるし、変身時間も三分と短いけどね」

「……凶悪過ぎるでしょ」

 

髪と瞳の色が元に戻っているサリーの言葉に、イズとミキ、極振り三人衆以外はコクコクと頷く。

何せ、メイプルを倒すのに制限時間まで設けられたのだ。HPが一割を切ったところで二分以内に倒さなければ、無敵のラスボスとなって襲いかかってくるのだから。

しかも、そのスキルが付いている《女神の冠》はVIT特化に加え【破壊成長】付きなのだ。本当にコーヒーの装備よりヤバい装備である。

 

「というかイズさん。何であんなにはしゃいでいたんですか?」

「だってー、目隠しと剣、服の色は固定だったけど、全体の服のデザインは私が決めたんだものー!」

 

……どうやらあの衣装は運営が用意したものではなく、イズが一から作ったデザインのようであった。

 

「天使、化け物、メカに続いて、今度は女神か……」

「いや、あれは邪神、というか死神だろ」

「本当にメイプルの進化は予想がつかないな」

「うん。僕はやられたから見てないけど……とりあえず凄いことだけは分かるよ」

 

コーヒー達は揃って遠い目となるが、コーヒーはサリーの方も確認することにする。

 

「そういえばサリーはあの時何をしたんだ?AGIも戻っていたし」

「【零式・水面返し】。相手のスキル効果を受けた瞬間に発動すると、自身が受けていたデメリット効果をその相手に全部移した挙げ句、三分間はデメリット効果を受け付けなくなるスキルよ。少しでもタイミングを外したら失敗するし、失敗したら一分間は一切動けなくなっちゃうけどね」

 

何ともシビアなスキルだとコーヒーが思っていると、クロムが疑問の声を上げる。

 

「そんなスキルがあるなら、何でまともに受けてしまったんだ?それを使っていれば、呪いを受けずに済んだんじゃないのか?」

 

最もなクロムの疑問に、サリーはバツが悪そうに顔を逸らしていく。

 

「あ、あの時は……結構限界だったし……予想外で対処に遅れたと言うか……」

 

何処と無く歯切れの悪いサリーの物言い。誰もが首を傾げていると、コーヒーは気づいたように声を上げた。

 

「もしかして、例のあれは幽霊系のスキルだったのか?」

「!!」

「あー、そっかー。それじゃあ防げなくて当然だよね」

 

コーヒーの言葉にサリーがビクン!と反応し、メイプルも納得の言葉を洩らす。

サリーはホラーが大の苦手。あの時も弱々しかったのは疲れだけでなく、お化けの精神ダメージもあったからだとコーヒーは理解した。

そして、見事に理由を当てられたサリーはと言うと……

 

「CF!余計な事を言うんじゃないわよ!!」

「ちょっ、蹴るな蹴るな!」

 

誤魔化すようにコーヒーをゲシゲシ蹴っていくのであった。

 

 

 




メイプルは死の女神へと進化した(テッテレー
こんなぶっ壊れスキルでもメイプルなら大丈夫と思えるのは……毒されている証ですかね?
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