イベントも終わり、コーヒー達は専用フィールドから通常フィールドへと転移した。
転移してから数秒後、各プレイヤーに今回の最終結果が表示された青色のパネルが浮かび上がる。
「やった!!今回は二位だ!!」
「二位と言えば、CFの最初のイベントの順位だったわね」
「確かに。狙ってはいなかったが同じ成績になったな」
十位までなら報酬が変わらない為、十位以内に入れば十分と考えていたから今回の成績は大快挙である。
今回の最高ランクの報酬はギルドメンバー全員に銀のメダル五枚と自身のプレイヤーネームが刻まれた木製の札【通行許可証・伍】。ギルドマスターのメイプルには全ステータスを5%上昇させるギルド設置アイテムも送られた。
「どうやらこのアイテムは次の階層に役立つアイテムみたいだな」
「ええ。出番はまだだけどね」
「何はともあれ……皆、お疲れ様!!」
メイプルの労いの言葉に【楓の木】のメンバー全員が笑顔で頷き、全員でギルドホームへと向かうのであった。
―――――――――――――――
あれから数日後。
メイプルの提案で【楓の木】はギルドホームで今回のイベントの打ち上げをすることとなり、メイプル以外は既に全員集まっていた。
「遅いですね、メイプルさん……」
「私も何か買ってくるって飛び出したっきり……これなら私も一緒に付いていった方が良かったか……」
「メイプルが一人で行動か……また予想外なことが起こりそうだな」
「止めろコーヒー。本当にあり得そうだから言わないでくれ」
「……その時はメイプルだからで諦めよう」
そうこう話している内に、ギルドの扉が開いてメイプルが帰ってきた。
「……本当に予想外なことが起こったな」
「そうだな……」
コーヒーとクロムが揃って苦笑いする中、お約束を果たしたメイプルはいい笑顔でサリーに歩み寄っていく。
「ただいまー!」
「うん、お帰りメイプル。で、後ろの皆は?」
サリーの視線の先には【集う聖剣】の六人と【炎帝ノ国】の六人。
何故一緒なのかと問うとドラグとフレデリカが呆れたように答えた。
「そんなのこっちが聞きてぇよ」
「いつものメンツで狩りに行こうと思ってたら……いきなりメイプルちゃんに声掛けられて連れて来られたの」
「それで流れでフレンドにもなったからね!強い人同士の繋がりを持つみたいな感じで!」
そう言ってメイプルが見せるフレンド欄にはこの場にいる全員の名前が並んでいる。
このメンバーでは魔王も真っ青となって逃げ出すだろう。
「せっかくのご招待だ。断るのも失礼じゃないか」
「イエス。狩りも何となくでしたし、断る理由もありませんでしたから」
ペインとサクヤは断るのは逆に失礼と感じて素直に招待を受けたようである。
「ああ。急ぎの用でもなかったからな。好意の招待を断るのも無礼千万というものだろう」
「テンジアの言う通りですね。それに【楓の木】がどんなところなのかも興味がありましたし」
テンジアの言葉に同意しながらミザリーが興味深そうに室内を見やる。
「他所のギルドって来たことないから……ちょっと緊張するけど……」
「戦いが終わればノーサイドだ。カミュラもわかっているな?」
「……言われなくても分かっているさ。リア充の殲滅はまたの機会にするさ」
ミィの釘指しにカミュラは憮然として言葉を返す。相変わらずのリア充憎しに何名かは思わず苦笑いしてしまう。
「……やはり、仮面を装備し直したいのだが……正直、恥ずかしい……」
「ノウ。今回は打ち上げですから我慢して下さい。あんな迫力のある仮面では寛げません」
「うぅ……」
サクヤのその言葉に、素顔を晒しているレイドは顔を真っ赤にして俯いていく。
そんなやり取りにペインは苦笑しながら【楓の木】にある提案をする。
「しかし、誘われてご馳走を頂くだけというの少し悪いからな。今回の出費は多少は出させてもらうよ」
「いえいえ!いいですよそんな!!」
「大丈夫だよ。第二回イベント最終日で手に入れた財宝でゴールドは大分余裕があるからね」
「うんうん。山分けしても相当なお金だったよねー!」
その瞬間、コーヒー、メイプル、サリー、カスミの四人は気まずそうに【集う聖剣】から視線を逸らした。
「?どうしたんだい?急に視線を逸らして」
「えーと、実は……」
ペインの疑問にメイプルが代表として第二回イベント最終日のことを話した。
「まさか、最終日で浮遊島に直接乗り込んでいたとは……」
「ですから、ええと……その……」
「気にすることはないさ。むしろ、逆に気を遣わせてしまったね」
「ま、お宝は基本早い者勝ちだからな。財宝を残してくれただけマシってもんさ」
言い淀むメイプルにペインは気にしなくて良いと告げ、ドレッドも早い者勝ちとして特に気にしていない。
「私とサクヤはギルド結成時からの関わりだからその件とは無縁だな」
「イエス。無縁ですから私達にはどうでもいいことですね」
レイドとサクヤはこの件に関しては部外者な為、こちらも気にしていない。
「まあ、最高のお宝は取られちまったが……もらったお宝はギルドの運営資金として大いに役立ったからいいか」
「横から取られた感はあるけどねー」
ドラグとフレデリカも少々複雑ながらも特に恨めしく思っていないようだ。
その後、【炎帝ノ国】もそれなら自分達もという感じで今回の出費を少し負担し、メイプルの音頭で打ち上げが開始された。
「そういえば、このケーキだけは買ったんですよね?」
「そうなのよ。私の生産職フレンド、というよりパティシエさんにお願いしたのよ。何たって彼、料理と調合なら私より上だからね」
「あー、アイツかー。『ギルドに入ると俺の料理を口にするプレイヤーが減るから何処にも入らない』と言っていた」
どうやらその人物はイズとクロムの知り合いのようである。
「このケーキ、すごく美味しいよー!!」
「というかこのケーキ、『カフェピグマリオン』の限定ケーキじゃない!!」
「イズさんの料理も美味しいですー!!」
「ふふっ、ありがとう」
ケーキとイズの絶品と言える料理を楽しむ中、運営からの通知が届く。
『ガオー!この通知は今回のイベントの見所を総編集した動画ドラ!再生時間は長いドラから、腰を下ろしてゆっくり見たら良いドラよ!!個人で見るも良し!ギルドにあるモニターで皆と一緒に見るのも良しドラ!!それじゃあ楽しんでね、ガオー!!』
あのヘンテコドラゴンの口調で書かれたメッセージには確かに一つの動画が付属している。
「せっかくだしモニターに映して皆で見ようよ!」
メイプルのその提案に全員が頷き、ギルドに備え付けられたモニターで送られた動画が再生される。
最初はペインが映り、次にミィが映っていく。
「こうして客観的に自分を見ると、思わず自画自賛しそうになってしまうな」
「ああ。だが、ここはこうすべきだったと思うシーンもあるがな」
「確かに」
話し合っている間も映像は流れていく。しかも、ナレーション付きで。
「あー……これはあの夜の……」
「あの時の夜か……あの時は決まったと思ったのだがな」
フレデリカが死んだ魚のような目となり、レイドも苦笑して映像を見る。
しかし次の瞬間、それらは一気に吹き飛んだ。
「「ぶふぅっ!?」」
コーヒーとサリーは揃って吹いてしまう。何せ映ったのはあのシーン―――コーヒーがサリーをお姫様抱っこしたシーンだったからだ。
「あら、コーヒーも結構やるわね♪」
「チッ……やはりCFは俺達非リア充の敵だ……!」
イズが茶化すように、カミュラは憎々しげに言葉を口にする。
「あー、これは確かに見所として選ばれるな」
「同感。動画としては本当においしいシーンだからな」
「これは……確かに見所として入って当然だな」
「しかもサリーちゃんの顔も若干赤いし……むふふ~」
『まさにヒロインの絶体絶命のピンチに駆けつけるヒーローのようなシーンドラ!!』
周りが生暖かい空気に包まれる中、件の二人は……
「……ぉぉぉぉぉ……」
「……公開処刑された……こんな恥ずかしいところを大勢の人に見られるなんて……」
コーヒーは恥ずかしさから頭を抱え、サリーも同じく恥ずかしさから顔を両手で覆っていた。
「メイプルちゃん。このシーン、スロー再生できる?」
「うーん……スロー再生は出来なさそうだけど、再生箇所を操作すれば何度も見れるかな?」
「じゃあ、それでお願い。こんなおいしいシーン、繰り返した方がおもし―――もったいないからね」
「止めろぉっ!?」
ある意味恐ろしい事を実行しようとするメイプルとフレデリカにコーヒーは本気で止めるように懇願する。
「お願いメイプル。リピート再生は止めて。お願いだから本当に止めてください」
サリーもメイプルの両肩に手を置いて、必死に懇願する。
二人の懇願を受け、リピート再生は何とか回避され、見所映像は続いていく。
「あの時のタイマン勝負か」
「あの時は勝負に勝って試合に負けた感じだったよな」
「そうね。見事にしてやられちゃったし」
「仕返しした貴女が言うと嫌味に聞こえますね。次戦う時までに幽霊関係のスキルを手に入れますので、首を洗って待っててください」
「!?」
サクヤの宣戦布告にサリーがビクリと反応する。どうやら、サリーの弱点はバレてしまっているようである。
「?何で幽霊関係のスキルなのー?」
「教えません。なので自分で考えてください、チビデリカさん」
「チビ言うな!それにサクヤちゃんだって大して身長ないでしょ!!」
口喧嘩に突入する二人を尻目に、コーヒーが【グロリアスセイバー】を発動したシーンでミィは苦笑して呟く。
「あの時は、最大まで強化した【火炎牢】が破られるとは思わなかったな」
「これでもCF曰く、最大じゃないそうですよ?」
「……まだ上がるのか」
サリーの言葉にミィは何処か諦めたような表情となる。
そして次のシーンへと移る。
「あ、ミィが泣いて立ち去っている場面だな」
「!?」
「完全敗北を喫したあの時か。ミィも流石にショックだったからな」
「あ、ああ。あまりのショックで気が動転してしまったんだ」
テンジアのフォローにミィは何故か慌てたように頷いて同意する。
運営もロールプレイに影響を及ぼすシーンは流石に選ばなかったようである。
そして、例のメイプル対ペインのシーンへと突入する。
「これにやられたんだよな」
「しかも、大量に増殖するんだよな」
死神メイプルを見たドレッドとドラグが虚ろな目で呟く。
「思い出すだけでつらい」
「俺なんか、遠くからの魔法で吹き飛ばされたんだよな」
「私は相対していないが……あの阿鼻叫喚の光景には思わず絶句したからな」
男性陣でやられていないのはコーヒーとクロム、テンジアくらいだろう。カナデは違和感なく女性陣に混じっている。
「……チッ」
カミュラはそんなカナデにも舌打ちと共に敵意を向けていたが。
そのままミキの爆撃シーンが映し出される。
「……空中戦艦だな」
「ああ、空中戦艦だ」
「ほとんど絨毯爆撃だろ、これ」
「逆なら……いや、津波に流されてどっちにしろ結果は同じか……」
この分だと、ミキには【空中戦艦】という二つ名が送られそうである。
「……オーブを釣り上げてますね」
「ああ、釣り上げているな」
ミキのオーブの回収シーンで、ミザリーとミィは諦めたような目で呟く。
次にカナデがメイプル達を増産するシーンでは……
「……こういうカラクリだったのか」
「あの鏡、凶悪すぎるだろ」
『まさに合わせ鏡ドラ!!』
メイプルが死神になり、元に戻ったと思ったらまた化け物になり、トドメに機械化して大暴れしたシーンでは……
「……何でもありなんだな」
「……本当にどうなってんだろうな」
「……本当に存在自体が反則だよ」
「イエス。本当に異常極まりないです」
『まさに変幻自在!びっくり箱なメイプルさんドラ!!』
クロムの【カバームーブ】による変則移動による防御と異常な回復力のシーンでは……
「……クロムも異常だったか」
「体力盾のリア充が……」
『まさに不屈!不死身と呼べるプレイヤードラ!!』
そして、最後にメイプルが毛玉となって兵器を生やし、マイとユイに担がれて歩き回ってるシーンが流される。
「俺もメイプルに追いつかないとな。負けたままでいるのは嫌いなんだ。今回のイベントでメイプルのスキルも大分把握できたことだし、次は勝ってみせるさ」
ペインは打倒メイプルに意気込み、瞳に闘志を宿す。
「でも、メイプルだからね。またおかしなスキルを手に入れて進化しますよ?」
「だよなぁ。毒、天使、羊毛まみれ、化け物、メカ、死神になるメイプルだからなぁ」
「ああ。全部少し目を離しただけでそうなってるからな……そんなメイプルに追いつくのは簡単じゃないぞ」
そんな事実に対してメイプルは若干不満そうに言葉を告げる。
「私は普通にプレイしているだけなんだけどなぁ……」
『何処が!』
「ええっ!?」
間髪入れずにその場にいた数名を除く全員のツッコミに、メイプルは心底驚くのであった。
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