スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


四層と危機一髪ゲーム

イベントが終わって一ヶ月と少し、十月に入ったある日。

この日は第四層が追加される日だ。

コーヒーがいつものようにログインすると、メイプルとサリーは既にログインしていた。

 

「やっぱりCFも来たわね」

「そりゃそうだろ」

 

サリーの言葉にコーヒーは若干呆れ気味に返す。

 

「それでどうする?早速行く?」

「パーティーは最大八人だから……俺達が先行した方がいいだろ」

「そうね。それに……あ」

 

サリーが誰かに気づいたように顔をそちらへと向け、コーヒーとメイプルもそちらに顔を向けるとミキがいた。

 

「あ!ミキー!!」

 

メイプルが笑顔で手を振ると、ミキも気づいて手を振り返しながらこちらへと近づいてくる。

 

「おー、三人はもう来てたんだねー。今日はどうするー?」

「一足先に四層に行こうって話してたのよ。ミキも行くでしょ?」

「行くー」

 

満場一致で一足先に上層へ上がることを決めたコーヒー達はそのまま上層へ上がる為のボスがいるダンジョンへと向かって行く。

 

「最近はフィールドに出るとプレイヤーの闇討ちが多くてツラいんだよな」

「……まあ、あの動画が間違いなく原因でしょうね。私も時折生暖かい眼差しを向けられて少しツラい」

『あはは……』

 

例の動画で晒し者にされた二人は揃って肩を落とし、メイプルが曖昧な言葉を洩らす。

ちなみに移動は【暴虐】モードのメイプルに背中に乗ってである。だから闇討ちされる心配もない。

取り敢えず、コーヒーは気を取り直して今回のボスについて話していく。

 

「一応、ログイン前にボス情報を確認したんだが……どうやら二体いるみたいだな」

『そうなの?』

「一応、HPが共有のようだから、片方を集中して攻撃してもいいみたいだが……」

「どんなボスモンスターなのかなー?」

「早くログインしたかったからそこまで詳しく調べてはいないから分からないが……何とかなるだろ。メイプルがいるし」

「ついでにCFもね」

 

そんな談笑をしながらフィールドを駆け、目的のダンジョンへと到達する。

ダンジョン内もメイプルが轢く、もしくはコーヒーが頭を撃ち抜いて倒しながら進み、ボス部屋へとあっという間に到着する。

 

『着いたよー!!』

「オッケー!さっさと終わらせよう」

 

扉を開けて中に入ると、部屋の奥にいたのは四人の三倍近い背丈の鋼のゴーレム二体。

もし意識があったなら、【暴虐】メイプルが入った瞬間に頭が真っ白になっていただろう。

だが……

 

「……人型と鳥型、だよな?」

「そうだねー。人と鳥だねー」

 

完全にタイプの違うゴーレムにコーヒーは何とな~く嫌な予感を覚える中、サリーが動く。

 

「朧!【幻影世界(ファントムワールド)】!!」

 

サリーが朧に指示を出してメイプルを四体に増やす。

鳥型のゴーレムは早々に空へと飛んだので、四体のメイプルは人型ゴーレムに攻撃を仕掛けていく。

当然、人型ゴーレムの攻撃はメイプルに通用しない。だが、メイプルの攻撃も人型ゴーレムには通用していなかった。

 

『どうしよう!?ダメージが全然入らないんだけど!?』

「えっ!?」

「……あー、成程。そういうことかー……」

「んー?どういうことー?」

 

ミキが聞いてきたので、コーヒーは曖昧な笑みを浮かべながら気づいたことを話していく。

 

「あのボスモンスターはメイプル対策なんだよ。メイプルを封じるなら同じ個性の相手をぶつけて決着をつけさせないという、な」

「あー……盲点だったわね。メイプルには貫通攻撃スキルがないからダメージを与えられないし、メイプルもHPが減らないから【影ノ女神】も発動しない……CF、よろしくね」

 

サリーも納得しつつ、コーヒーなら倒せると討伐を放り投げる。

 

「はいはい……っと。迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)

 

コーヒーはおざなりに返しながらもクロスボウを構え、【名乗り】と同時に人型ゴーレムに向けて矢を放つ。

すると、空にいた鳥型ゴーレムがその鋼鉄の翼を強く羽ばたかせ、突風を起こして矢を明後日の方向へと流した。

 

「「『…………』」」

「……【サンダージャベリン】!!」

 

コーヒーは気を取り直すように雷の槍を放つも、今度は鳥型ゴーレムが口から風球を放って相殺してしまう。

 

「「『…………』」」

「【クラスタービット】!!」

 

今度は蒼銀の津波を放つも、先程と同じ突風で進行を阻まれ、逆に押し返されてしまう。

 

『あの鳥さんは……』

「完全にCF対策ね。完全に二人を封じに来たわね」

 

どうやら運営は遠距離攻撃に強いボスでコーヒーを封じにかかったようである。

 

「ちくしょうがぁああああああああっ!?」

 

コーヒーはやけくそ気味に【聖刻の継承者】からの【聖槍ファギネウス】で仕掛けるも、鳥型ゴーレムは人型ゴーレムの後ろに隠れ、人型ゴーレムが輝いて白き槍の弾幕に耐えていく。

 

「貫通攻撃無効スキル持ちかよ!?集え!【グロリアスセイバー】!!」

 

ピンポイント対策にすっかり冷静さを失ったコーヒーは速攻で【グロリアスセイバー】を放つも、今度は鳥型ゴーレムが人型ゴーレムを掴み上げて空を飛んだ為に回避される。

 

「落ち着きなさい!馬鹿CF!!」

「ごぶふぅっ!?」

 

サリーから鋭いチョップが入り、頭に叩き込まれたコーヒーは頭を押さえてその場に踞る。

 

「まったく、冷静さを欠いてスキルを無駄使いしてどうするのよ!!」

「……すいません」

 

サリーのチョップで頭が冷えたコーヒーは確かにムキになりすぎたと反省する。

 

「でもー、どうしようかー?ボクじゃあー、アイテム投げても吹き飛ばされるだけだしー」

「まあ、あの鳥にも攻撃能力はさほど無さそうだし、遠距離攻撃にしか反応してないから……何とかなるわね」

 

サリーはそう言うとダガーを抜き、髪と瞳がマリンブルーへと染まっていく。

 

「【終式・睡蓮】―――【超加速】」

 

サリーはそう呟くと、一気に加速して人型ゴーレムへと斬りかかっていく。

人型ゴーレムは当然サリーに攻撃を仕掛けるが、サリーはそれを紙一重で避け、逆に切り裂いていく。

そして、連続で20回切り裂くと人型ゴーレムが半透明な青い華に包まれ、華が弾けると同時に光となって消えた。同時に鳥型ゴーレムも光となって消えていく。

 

「『…………』」

「おー、すごいねー。華が散ると同時にボスも倒れたねー」

 

今回は完全に役立たずだったコーヒーとメイプルは遠い目で無言。ミキは手を叩いて素直にサリーを称賛する。

 

「サリー、今のスキルは?」

 

【暴虐】を解いて気を取り直したメイプルの質問に、髪と瞳の色が元に戻ったサリーが振り返って説明する。

 

「【終式・睡蓮】。簡単に説明すれば時間内に短剣による物理攻撃を20回連続で当てると、相手を問答無用で即死させるスキルよ。スキルによる攻撃はカウントされないし、使用後のデメリットは大きいけどね」

「そうなんだー。それと、凄くカッコよかったよ!!」

「ふふ、ありがとメイプル」

 

目を輝かせて称賛するメイプルにサリーは笑みを浮かべて受け取る。

 

「……サリーならメイプルを倒せそうだな」

「そうでもないわよ。この場合、メイプルなら【ヴェノムカプセル】に潜れば大丈夫になっちゃうからね」

「そうかー。直接攻撃を当てないとダメだって言ってたからー、猛毒には近づけないんだねー」

「そっ。だから、ちょっとCFが羨ましいかな。メイプルに黒星を付けたCFがね」

「あれはノーカンだろ。互いに本気だとは言えなかったし。それに、今のメイプルに勝てるか凄く怪しいしな」

 

何せ無敵モードが追加されたのだ。あれになったら時間切れとなるまで逃げ続けるしかない。もしくはノックバック効果のある攻撃をひたすら当て続けて近づけさせないくらいだ。

 

ちなみに【暴虐】中に変身すると、【暴虐】は強制的に解除されるようであり、【影ノ女神】への変身は基本、普通の状態で変身した方が良さそうとのことである。

取り敢えず無事にボスを倒した四人は第四層へと足を踏み入れる。

 

「へぇ……」

 

洞窟を抜けて早々に目に写ったのは夜の世界。

煌めく星に赤と青の二つの満月。

建物は木製で和を意識した造り。

 

町中には水路が走り、灯りは静かに道を照らしている。

そんな町の中心には、一際高い建物がある。

 

「探索する?しちゃう?」

「あの水路では何が釣れるかなー?」

「その前にギルドホームだろ」

「そうね。まずはギルドホームが先ね」

 

探索より先にギルドホームを確認することにし、コーヒー達はギルドホームへと足を運び、内装を一通り見て回ったところで残りのメンバーがログインしたことに気付く。

 

「パーティーは最大八人だから……二つに分けるべきか?」

「でもそれだと二度手間だから、私だけが加わって皆を連れてくるよ」

「それだと……あ、いや、大丈夫か」

 

サリーは苦戦しそうだと思ったが、よくよく考えたら余裕で終わることに気づいた。

 

「……あー、確かに。マイとユイ、シアンがいればすんごい簡単に終わるな。うん」

 

コーヒーも戦車パーティーになることに気づき、ボス戦は簡単に終わると頷く。

 

「じゃあ、行ってくるね」

 

そう言ってメイプルは一人三層へと戻って行く。

 

「……俺達はどうする?先に探索するか?」

「それも良いけど……やはり皆を待つべきね。この階層の町は広いから、ちゃんと手分けして探索しないと」

「それもそうだな」

「じゃあー、ボクはそれまでここで釣りをするよー」

 

皆が第四層に来るまで待機と決まって早々、ミキはさっそく釣りを始めていく。

 

「おー。さっそくかかったよー」

 

ミキがそう言って釣竿を引き上げると、釣り針には黒ひげ危機一髪!という名の玩具のような小さな樽が引っ掛かっていた。

 

「これはー、ジョークアイテム【ビリビリ危機一髪】だねー」

「……アイテム名からして不穏だな」

 

コーヒーが嫌な予感を覚える中、ミキが黒ひげ船長を樽の中へと押し込む。

途端、辺り一面に煙が舞い、晴れた先には……首から下を幾つもの縦穴が空いた樽に閉じ込められたサリーがいた。近くにはカラフルな剣が幾つも散らばっている。

 

「…………」

「……ミキ。これはどんなアイテムなのかしら?」

 

ひどく平淡なサリーの声。まるで火山が爆発寸前の前の静けさのような雰囲気である。

 

「んーとねー、やり方自体は黒ひげ危機一髪と同じだけどー、当たり以外だと静電気を受けたような痛みが走るんだってー」

「地味に痛いやつだな……」

 

わりと有名な玩具がジョークアイテムとして出てきたことにコーヒーは苦笑いするが、サリーは瞬く間にこめかみに青筋を浮かべていく。

 

「ミキ!早くこれを解除しなさい!!」

「んー、当たりに突き刺すかー、一時間経過しないと解けないみたいだよー。ちなみにー、選ばれるのは起動者の近くにいる人の誰かだってー」

「……さすがに一時間もこの状態はまずいからな。サリー、悪いが我慢してくれ!」

 

コーヒーはそう言って剣を拾い、樽の縦穴に突き刺す。

 

「ひゃうっ!?」

「外れか……次はこれだ!」

「わきゃあっ!?CF!後で覚えておきなさいよ!!あうっ!?」

 

サリーを早く解放するべく、コーヒーは片っ端から剣を樽の縦穴に次々と刺していく。

十回目でようやく当たりに突き刺さり、サリーは煙と共に解放された。

 

「…………」

「サリー……俺が言うのもなんだが大丈夫か?」

 

コーヒーの言葉に答えず、サリーは無言で近くに落ちていた【ビリビリ危機一髪】を拾い、黒ひげ船長を押し込む。

当然、またしても煙が舞い上がり、今度はコーヒーが樽に閉じ込められる。

 

「ラッキー。CFに仕返しが出来るわねー」

「サ、サリーさん……?」

 

その妖しい笑みからコーヒーは思わずサリーをさん付けで呼ぶが、サリーは構わずに剣を拾い上げる。

 

「出来る限り、遅~く解放してあげるから安心してね?」

 

サリーはそう言ってニッコリと嗤い、剣を樽の縦穴に向けて構える。

 

「普通は早くだろ!?」

 

コーヒーは思わずツッコミを入れるが、サリーは構わずに剣を樽の縦穴にゆっくりと突き刺すのであった。

そして、コーヒーが解放されたのは……剣が残り一本の時であり、その時のサリーの表情はとても爽やかだった。

ちなみに三層のボスは戦車パーティーの前にあっさりと倒された。

 

 

 




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