スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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タイトルの通り、あの歩く非常識と出会います
てな訳でどうぞ


ラスボス少女との邂逅

あれから一ヶ月が経過した。

コーヒーもあれから順調にレベルを上げ、今やトッププレイヤーの一人に数えられる程となった。

だが、コーヒー自身は手放しで喜べないでいる。

 

その理由は単純。例の【口上強化】のせいである。

【口上強化】が【廃棄】できない以上、なるべく使わないようにしているのだが、威力と効果上昇という誘惑に負けてちょいちょい使ってしまっているのだ。

 

それでも、周りに誰もいない一人の時のみの使用に留めていたのだが、運悪く、他のプレイヤーにその現場を目撃されてしまったのだ。

 

その結果、コーヒー自身が有名になりかけていたのも相まって、情報掲示板に痛い口上を告げるプレイヤーとして話題となり、完全に周りから厨二病患者扱いされる羽目となってしまったのだ。

 

厨二病患者扱いされたコーヒーは苦肉の策として【口上強化】の取得方法の情報を拡散し、仲間(犠牲者)を増やそうと画策したが、その前にクロムがやらかしていた。

 

クロムが先に掲示板で話題に上げてくれたおかげで、【口上強化】が【呪いのスキル】という認識が定着してしまっていたのだ。実際、【廃棄】が出来ないスキルだからある意味間違いではない。

 

そのため、【廃棄】できない上に痛々しい台詞を告げるよう誘惑する効果に屈しない為、他のプレイヤー達は間違って取得しないように気をつけるようになってしまったのだ。

 

それならキャラを作り直せばいいのではないか?という疑問が出てくるのだが、運が悪い(?)ことに、ユニーク装備とレアスキルがあるのでそれも選べない。

 

結果、コーヒーはこのキャラを使い続けるしかなかったのであった。

そんなコーヒーは現在……

 

「イズさん、この量だとどれくらいの性能になりますか?」

「そうねぇ。この素材の量だと、HPは100、AGIは20、DEXは8くらいかしらね?費用の方は大体400万Gね」

「そうですか……もっと素材を集めてみます」

「お金の方は大丈夫なの?」

「ダンジョンで手に入れた、自分には意味のないアイテムを売っているのでそこそこは」

「そうなの。さすが【蒼き雷霆】と言ったところかしら?」

「止めてくださいお願いしますその名で呼ぶのは」

 

イズの店で装備作成の相談をして、土下座して懇願していた。

 

「別にいいじゃないかしら?トッププレイヤーはそれぞれ二つ名が付いているんだし」

「その二つ名に、【厨二病患者】も含まれているから嫌なんですよ。おかげで俺のメンタルが毎回傷ついてるんです。特に【CF(シーエフ)】という、どこぞのゲームキャラのコードネームを真似た略称の威力が強烈なんですよ!!」

 

むしろ、コーヒーというキャラネームより、CFという略称の方が多くのプレイヤーに浸透しているのだ。

その破壊力は……パラシュート無しのスカイダイビングレベルである。

 

「それは……御愁傷様としか言えないわね。コーヒーだと実際の飲み物と混同しそうだし」

「……うぁあああぁぁぁ……」

 

イズのだめ押しに近い慰めに、コーヒーはカウンター前で崩れ落ちて泣き言を洩らす。

そんなコーヒーの現在のステータスはこうなっている。

 

 

===============

コーヒー

Lv.42

HP 435/435(+48)

MP 153/153(+33)

 

STR 36(+30)

VIT 5(+14)

AGI 89(+59)

DEX 62(+38)

INT 21(+34)

 

頭装備 疾風のゴーグル 【HP+10 AGI+15 DEX+5】

体装備 震霆のコート・雷帝麒麟 【VIT+8 AGI+16 INT+8】

右手装備 雷霆のクロスボウ・閃雷 【STR+30 DEX+20 INT+10】

左手装備 (装備不可)

足装備 黒雷のカーゴパンツ 【HP+8 MP+8 DEX+13】

靴装備 迅雷のブーツ 【AGI+28 INT+14】

装飾品 フォレストビークイーンの指輪 【VIT+6】

    マジックグローブ 【MP+5 INT+2】

    マジックリング 【MP+10】

 

スキル

【狙撃の心得VIII】【弩の心得VII】【一撃必殺】【気配遮断IX】【気配察知IX】

【しのび足V】【雷帝麒麟の覇気】【無防の撃】【ソニックシューター】【砕衝】

【アンカーアロー】【流れ星】【跳躍V】【壁走りV】【体術IV】

【連射III】【魔法の心得III】【遠見】【暗視】【射程距離強化中】

【釣り】【水泳IV】【潜水IV】【採掘IV】【HP強化小】

【MP強化小】【毒耐性中】【口上強化】【MPカット小】【MP回復速度小】

===============

 

 

【雷帝麒麟】のスキルは《震霆のコート》のスキルスロットに付与することで1日5回はMP消費0で麒麟の魔法が放てるようになった。【破壊成長】があるから防具を変える必要もない。

 

《疾風のゴーグル》はイズお手製のオーダーメイド装備だ。特殊能力はないがステータス補正は中々のもの。流石、生産職のトッププレイヤーと言ったところである。

 

ゴーグルの作成時は素材も金額も本気で注ぎ込んでいなかったので、今はユニーク装備に負けず劣らずの性能を持つサングラスやグローブ、アクセサリーの類を作って貰おうと素材集めに没頭しているのである。

 

イズもコーヒーのユニーク装備に匹敵する装備を作って欲しいという依頼に、生産職プレイヤーとしての血が騒いだので、二つ返事で了承したのである。

 

今は素材とのにらめっこが続いているが、妥協は一切したくないので、ほぼ毎日イズの店で相談しているのである。

そんな中で店の扉が開く。イズとコーヒーがそちらに目を向けると、店に入ってきたのはクロムだった。

 

「いらっしゃい……あら?どうしたのクロム?まだ盾のメンテには早いはずだけど?」

「ちょっと大盾の新入りを見つけてな。衝動的に連れてきた」

 

確かにクロムの後ろには、黒髪黒目の初心者装備の明るそうな女の子がいた。

……どこかで見たような気がするのは気のせいだろうか?

 

「まあ、可愛い子ね……通報した方がいいかしら?」

「通報しましょう今すぐ。二人同時に同じ内容の通報をすれば、速攻でBANされるでしょうから」

「待て待て待て二人とも!今のは言葉の綾だって!!」

 

二人揃って青いパネルを空中に浮かべ、コールボタンに指を向けるコーヒーとイズに、クロムは焦ったように制止の声を上げる。

 

「分かってるわよ。冗談が通じないわね」

「先に冗談を言ったのはそっちだろ。それに通報してるならとっくにしてる」

「全くもう心臓に悪い……って、通報する気満々だったのかよ!?」

「僕ぁ恨みを忘れない!」

「それは逆恨みだろ!?」

「はいはい、二人とも喧嘩しない。その子もどうしていいのか困っているしね」

 

もうお馴染みになりつつあるコーヒーとクロムのやり取りを、イズがいつものように仲裁する。

実際、黒髪の女の子はアワアワとどうしたものかと困惑しているので、コーヒーとクロムは内心で反省する。

小動物のようで可愛い反応だと思ったのは、コーヒーだけの秘密である。

 

「おっとそうだった。実は、この子が格好いい大盾が欲しいって言うから顔見せだけでもって連れてきたんだよ」

「なるほどね。私の名前はイズ。見ての通り生産職で、その中でも鍛冶を専門にしてるわ。調合とかも出来るけどね」

「俺はコーヒーだ。後、その大盾使いには気をつけておけよ?口が軽いからあっという間に情報が拡散されるぞ?」

「ひでぇなおい!?俺はそこまで口は軽くねーぞっ!?」

「そうね。クロムは確かに口が軽いほうね」

「イズまで!?」

 

イズに真っ正面からぶった切られたクロムは分かりやすく肩を落とす。

クロムは確かに本当に隠してもらいたいことに関しては口が固いが、それ以外では簡単に口が軽い。

おかげで【呪いのスキル】という印象が真っ先に定着し、【口上強化】を広めることが出来なくなってしまったのだから。

 

「え、えーとぉ……」

「おっと悪い。また置いてきぼりにしてしまったな」

「あ、いえ!大丈夫です!私はメイプルって言います!」

 

どうやら黒髪の女の子はメイプルという名前らしい。二度も置いてきぼりにしたのに……本当に良い子である。

 

「メイプルちゃんね。大盾を選んだのは何でかしら?」

「えっと……痛いのは嫌だったので、防御力を上げようと思って……」

「それならVIT特化装備が良さそうね……でも……予算、ないでしょう?」

「……さ、3000Gで足りますか?」

「最低でも100万はいるぞ。高性能を求めるなら、素材と金も倍いるようになるしな」

「ひゃっ……ばっ……!」

 

メイプル絶句。まあ、今のメイプルには目が眩むような金額だから当然の反応だろう。

 

「うう~……しばらくオシャレはお預けだなぁ」

 

分かりやすく肩を落とすメイプルに、コーヒー達は慰めの言葉を送る。

 

「まあ、そんなに落ち込まなくても大丈夫よ。お金も素材も気付いた時に貯まっているものよ」

「急ぐならパーティーを組んでダンジョンに潜る手もあるぞ」

「そうだな。ダンジョンにはお宝もあるし、お金を貯めるのにも盛ってこいだよな?強力な装備も稀にあるしな?」

 

クロムがこちらにチラリと視線を向けたので、コーヒーは無言で腹パンをクロムに叩き込む。【無防の撃】があるので、クロムの防御力が幾ら高かろうが関係なしで痛みを与えられる。

 

「おぐふぅッ!?」

「黙れクロム。余計なことを本当に喋るな」

 

STRはスキルの影響で半分だが、確実にダメージが入る攻撃を受けたクロムは腹を押さえて蹲る。

 

「コーヒーくん!その格好いい装備はダンジョンで手に入れたんですか!?」

 

しっかりとクロムの言葉を拾っていたメイプルが、目を輝かせてコーヒーを見つめてくる。

その純粋無垢な瞳と、微妙に勘違いしているメイプルを前に、コーヒーは良心に負ける形で自身の装備について話し始めた。

 

「あー……これはユニーク装備って言ってな。普通にダンジョンを攻略しても手に入らないんだよ」

「そうなんですか!?」

「ああ。単独でかつボスを初回戦闘で撃破しダンジョンを攻略した人にだけ送られる唯一無二の装備なんだ。しかも一ダンジョンにつき一つだけ。譲渡も破壊も不可能だから、まさにプレイヤー専用装備なんだよ」

「唯一無二……!!」

 

メイプルが更に目をキラキラと光らせている。ああ、ここまで純粋だと、コーヒーの傷ついた心が癒されそうである。

 

「つまり、ダンジョンを初挑戦で一人で攻略すると格好いい大盾が確実に手に入るんですね!!」

「そう、だろうな……だけど、本当に止めておいた方がいいぞ?一人だと難易度が格段と跳ね上がるし、それで死亡して装備品をドロップして失ったら元も子もないし」

「そうね。コーヒーが言った通り、最初は初心者同士でパーティーを組んだ方がリスクが少ないわよ」

「だな。俺も死亡して何度泣いたことか……」

 

コーヒーがもたらした情報以来、クロムもたまに一人でダンジョンに挑む回数が増えているのだが、中々勝ち星を上げられないでいる。

何度か練習がてらに、コーヒーにダンジョンのギミックを解いてもらってから【麒麟の隠れ家】に挑戦しているのだが、これが中々に上手くいかない。

 

【麒麟の隠れ家】内のモンスターは全て麻痺、スタン攻撃持ち。ボス手前の部屋は落ちたら即死。

それらを乗り越えても、ボスモンスターの麒麟は弱体化した状態でも例の魔法を普通に使ってくる。なので、麻痺とスタンを食らって動けなくなり、死亡という結末が何回も続いたほどだ。

 

おかげで【麻痺耐性大】【スタン耐性大】というスキルが手に入ったそうだが、その分、装備を何回も失う羽目となったようだ。

ちなみに弱体化の事実を知ったコーヒーは、強力なスキルが手に入ったから問題なし!と開き直った。

 

「せっかく知り合ったんだからフレンド登録しておきましょうか?そうすれば、いつでも連絡が取れるから」

「ありがとうございます!クロムさんとコーヒーくんもいいですか?」

「おう。ついでに俺のポーションを分けてやるよ。同じ大盾使いの好だ」

「別にいいぞ。初心者への応援ってことでHPを上げる装備品をプレゼントしてやる。後―――」

「コーヒー?」

「……なんでもないです。はい」

 

イズの迫力のある笑顔を前に、コーヒーはメイプルへの【口上強化】の布教を諦め、素直にフレンド登録と《タフネスリング》をプレゼントするだけに留める。

 

「ハハハ……」

「?」

 

その光景にクロムは苦笑い。メイプルは意味が分からずに首を傾げていた。

そして、イズとクロムともフレンド登録を済ませたメイプルを見送った後……

 

「まさか、一人でダンジョンに行ったりしないわよね?あの子」

「いや、まさかだろ。幾ら装備が欲しいからと言って、さすがに一人では……」

「でも、メイプルは格好いい装備を欲しがってたし……クロムが教えた【毒竜の迷宮】はソロ攻略されたという情報は今のところないし……」

「「「…………」」」

 

『うわぁ~んっ!』

 

毒竜に襲われて泣きながら逃げているメイプルの姿。その光景が容易に想像できる。

 

「……どうしましょ?」

「……メイプルちゃんが負けて帰ったら、大盾使いの先輩の好でNPCショップにある大盾を買ってやるか……」

「……そうなった場合は、俺が暫くの間パーティーを組んで手助けをすることにするよ」

 

三人はメイプルへのアフターケアを真剣に検討するのであった。

だが、その心配は杞憂になるどころか予想の斜め上になることを、彼らはこの時知るよしもなかった。

そして、【厨二病患者2号】になることも知るよしがなかった。

 

 

 




せっかくなので蒼き雷霆ガンヴォルト色を強めてみました(名称だけ)。いかがでしたか?
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